ガデューカ
勿忘草を貴方に捧げてクロ:ガデューカ > ( 朝。毒蛇の朝は早い。日が長くなり始めてきた春だからこそ5時半台はとても涼しくて青々とした素晴らしい朝なのだが、これが冬となると一気に変わる。 さて、今日も今日とて毒蛇は自身の部屋の片付けを朝ごはんの前にする。3月の下旬頃から淡々と進めてきた部屋の片付けも、終わりが近付いて居た。家具はあれど、その他の不必要な物は全て捨てられてしまい、ガランとした部屋でただ1人、クロ ー ゼットを開けながらじっと服を見詰める。元から中身の少ないクロ ー ゼットなのだが、先日買ってしまった洋服や靴、アクセサリ ー が綺麗に丁寧に仕舞われているのを見て、にんまりと微笑んだ。) (4/4 10:22:10)
クロ:ガデューカ > ( 寝巻きのまま朝の食事を取り、全てを片付け終えた後、買ったばかりの服をベッドの上に広げ、じっと見詰める。身体に当て、鏡を見ては別の服を当て、考え込む。そして決めた洋服が、白の下地にピンクや淡い赤色の花柄の、腰に黒いリボンをつけたドレスワンピ ー ス。靴は綺麗な黒色のハイヒ ー ル。髪型は珍しくポニ ー テ ー ルで、気合いは充分だ。普段は余りしない化粧も今日ばかりは慣れない手つきで必死にし、完璧な外出コーデを何度も何度も鏡の前で確認する。「 ..流石に、はしゃぎすぎかね、これは 」なんて、不安の念を口に出せど、踊る心の方が今回ばかりは勝利を握り締めたらしい。さぁ、さぁ。花祭りへと行こうじゃないか。) (4/4 10:22:42)
クロ:ガデューカ > ( __昼。からんからん、と扉を開くと共に可愛らしい鐘の音が鳴る。「 いらっしゃいませ! 」と中から声が上がり、それに対して小さく会釈をしては品物をじっと見詰める。ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐるが、酷く心地よく思えてしまう。そう、此処はオウトスイ ー ト。可愛らしく飾り付けされている店内でケーキ等のデザートをじッと見詰めれば、持参したパーティー用の小さな肩掛け鞄から財布を取り出し「 この、..ガトーショコラを1つと、メレンゲクッキーを..そうだねぇ、3つ頼むよ。」と一言声を掛ける。すると嬉しそうに店員が頷き「 お買い上げありがとうございます、メレンゲクッキーですが、色の指定はありますでしょうか? 」と聞いてくるものだから、うぅんと唸り声を上げ悩み始める (4/4 10:24:10)
クロ:ガデューカ > …が、案外早く決まったそうで、「 そう、だねぇ..1つは黒で、もう1つは..橙。最後は、赤色で頼むよ 」と笑顔で伝える。店員が畏まりましたと言い、少々お待ちくださいと伝え毒蛇を店の隅へと促す。それを素直に従おうとして、ハッと気が付き「 あッ、すまないねぇ、少しこう、明るめの赤色でもう1つメレンゲクッキーを頼むよ 」と慌てて謝罪をしつつ伝えれば、店員は落ち着いた声色で「 大丈夫ですよ、お待ちくださいませ 」と毒蛇に言い、パタパタと奥の方へと入っていった。 (4/4 10:24:42)
クロ:ガデューカ > _ふわりと漂う甘くて柔らかい香り。目を細め、静かに店内を見守っていれば、やはり人気店なようで続々と人が出入りしていく。1人で悩む人。2人で話し合う人。子供が必死に品物を選ぶ所は見ていて酷く心が癒されるものだった。" ママ、あれ欲しい "と無邪気に指を指す子供を優しく撫でながら、はいはいと呆れた様な声色で話すその家族を目で追ってしまう。自分も、あんな風になれるだろうか。_なれるのだろうか……思考回路が沼にハマりそうになる。けれど運良くそこに店員が駆け寄り「 お待たせしました! 」と袋に入った品物を渡してくるから、顔を上げ「 ありがとうね 」と感謝の言葉を述べて店内から出たのだった。) (4/4 10:25:10)
クロ:ガデューカ > 憧れだッたんだよねぇ、昼食にケーキなんて贅沢。ふふ、今日だけ、今日だけさ。..や、もう1つだけ、食べてみたかったのがあるんだよねぇ、行ってみようかね( そんな事を鼻歌交じりに呟きながら次は最近噂のフライドチキンショップへと向かう。手羽元のチュ ー リップ揚げを頼めば、想像以上の量を紙製のバケツへと入れられ、ついつい驚きの表情で感謝の言葉を述べ、人は居れど静かに花を花祭りを眺めれる場所で、1人贅沢な昼食を取るのだった。ガトーショコラを口いっぱいに頬張り、持参した小さな水筒でカモミールティーを楽しみながら..。_そういえば。ふ、と思い出すのは先日出会った騎士団長。彼女との花祭りもとても楽しかった。花言葉を教えつつ様々な花を眺め、選び、買ッたのだった。思い出すだけで自然と笑みが零れてしまう。) (4/4 10:25:31)
クロ:ガデューカ > ( さて、時が流れ夕刻。毒蛇は背伸びをして必死に食べきった手羽元のチュ ー リップ揚げの入っていた空箱を丁寧に畳み、外に置いてあるゴミ箱へと小さく投げ込む。「 お、お腹いっぱいだよ、.. 」と、顔をしわしわにしながらしょもしょも声で云えば、急いで噴水広場へと向かった。そこでは、夕刻だと言うのに朝と変わらずの賑わいでフラワーダンスをする人々が。目を細め、ほんのりと口角をあげる。幸せそうな人々の中に、私も入ろうとした。けれど、2人組で踊る男女を見た途端、一気に楽しが消え去ッてしまうのを感じた。ふ、と少しだけ俯き、その場を通り越す。後ろから聞こえてくる歓声、幸福がまるで追い立ててるように聞こえてしまものだから、ほんのりと駆け足で街から離れ自宅へと帰るのだった。そして、靴も脱がずにベッドに駆け寄り、かがみ込んでベッドの下から大きめの木箱を取り出した。) (4/4 10:25:51)
クロ:ガデューカ > ( 木箱を開き、そこに入っている何十枚もの手紙の隅に入っている小さな小瓶を持ち出せば、木箱の中に丁寧に今日買ったメレンゲクッキーを3つ入れ込む。そして蓋を閉じ、そのまま机の上に置けば、黒い薔薇のメレンゲクッキーと小瓶を鞄の中に入れ、再度駆け出す。慣れないヒールで何度も転びそうになるが転ばない様に駆け足で人気の無い小さな広場に向かう。花祭りだからこそ、普段は居るであろう小さな公園広場にさえ人は居らず。先程まで夕陽が世界を照らしていたと云うのに、今やもう月が天に上がり人々を照らしているではないか。花祭りにいた時とは相反する静寂な広場で、毒蛇は小さく溜息を1つ吐いた。) (4/4 10:27:07)
クロ:ガデューカ > ( ___さぁ、やろうじゃないか。) (4/4 10:27:50)
クロ:ガデューカ > ( 意を決した様に小瓶の中の紫色の液体をこくりと飲み干せば、幸せそうな顔でそのまま広場の真ん中で立ち、空を見上げる。星々が光り、月が毒蛇を照らす。余りにも美しいものだから、ついつい笑みを零しながら、顔を下ろす。目の前にも、周りにも誰も居ない。けれど手を構え、足を構え、1歩、1歩とくるりくるりと回り始める。まるでそれは、フラワーダンスの様で。1歩、また1歩とゆっくりと時が流れるように、砂時計が落ちる様に踊りながらテンポを取るように口ずさむのは、小さな詠唱。「 点に座りし星達よ 」ふわりとドレスワンピースが揺れる。「 蛇の使い手アスクレピオスよ 」1歩、前に進む。「 毒を飲み干し飢えた月 」1歩、下がる。「 愛してやまぬ愛しき良薬 」くるりと回転する。「 止まらぬ世界でただ1人 」さ、と手を動かす。「 静かに散りし鳥兜 」ふらり、と身体が揺れ動く。「 連れて行っておくれ 」ぐらり、と頭が揺れる。「 愛しき地の世界へ 」必死に踊る。踊り回る。) (4/4 10:28:29)
クロ:ガデューカ > ( 不意に紡いでいた詠唱を辞め、青ざめ冷や汗を頬に伝わせているその悲惨な顔でも笑顔を作り、誰も居ないというのに目の前に誰かがいるかのように話を始めた。 「 私、私さ、柄でも無いのにフラワーダンスを覚えちまったんだよ。どうだい、似合うかい、下手だろう?けれど練習したんだよ。アンタとね、踊りたかったんだ。アンタにね、渡したかったんだ。アンタは似合わないって言うだろうけどね、私は、ずっとアンタにね 」__視界がぐらりと傾く。その場に崩れ落ち、何度も咳き込めば地面にボタボタ、ボタッと真っ赤な液体が零れ落ちる。それは。 (4/4 10:28:52)
クロ:ガデューカ > それは、__ガデューカの口からでたものだった。服にべたりと張り付く血を見た途端、ぞわり、と別の意味で背筋が寒気立ッてしまうものだから必死に立ち上がり、ふらふらの足取りで血反吐の付いた口を拭いながら自宅へと帰る。途中何度も咳き込み、血反吐を吐き、何度も転びながらも自宅に帰れば服を雑に脱ぎ捨て、騎士団の制服を身に付ける。髪型だけはそのまま、台所へと向かいコップにさしてあった花を取ろうとする。__ガシャン、とコップが床に落ち、割れてしまうけれどお構い無しに花のみを手に取り、再び外へと歩み出す。何時間も掛けて辿り着いたところは、__崖のある小さな山の中だった。) (4/4 10:29:28)
クロ:ガデューカ > ( _苦しい。苦しい。心臓が締め付けられる。肺が悲鳴を上げ、生理的な涙がぼろぼろと零れ落ちる。小さな山だから、小さな山の半ばだからもっと楽に行けると思っていたのにこんなにも時間が掛かり、こんなにも苦しくなるなんて思わなくて。口から溢れる血を拭う事すら酷く億劫で。風が、髪を撫でる。頬を撫でる。さらさらと草木が音を奏で、耳から脳へと伝わる。ひゅー、ひゅーと掠れた息の必死に整えれば、崖の近くまで歩み寄り、自分の想いを吐き出すのだった。海に向かって叫ぶ若者の真似事を、山の崖からしたのだった。それは、毒蛇の隠してきた全てだった。) (4/4 10:30:49)
クロ:ガデューカ > 仕方なかったんだ、仕方なかったんだ。私は、私は。( 誰にも届く訳じゃないのに、声を絞り出す。)誰の世界にも私は残れなかったんだ、彼奴は死んでしまった、彼奴は結婚した、あの子は強かった強くなれると分かった。けれど、( けど、自分はどうだろうか。)私は何なんだろうね、( 何なんだろう )私、私は。私は1人ぼっちだ、私はアンタが好きだった恋してた愛してただから、だから!!!!( _ぶわ、と涙と血が零れ落ちる。ぜぇ、はぁ、と肩で息をし、震える身体を必死に動かそうとする。) (4/4 10:31:46)
クロ:ガデューカ > ……私は、アンタを愛してたんだ、恋してたんだ、アンタに恋してたんだ、けれどアンタは、私の居ない所で幸せを見つけて、私の知らない人を待たせていると言って私から離れた、私はアンタの世界から居なくなったんだ、居なくなったんだろう、!( __悔しかった。嫌だった。つい最近だった、貴方に対して恋心を抱いていると知ったのは。けれどその時には既に貴方には待ち人が居り、自分が助けれなかった情けなさを更に突き立てるかのように貴方は幸せだと言った。勿論嬉しかった。けれど自分じゃどうしようも無い事実が酷く痛くて堪らなかった。耐えきれなかった。辛かった。だから、作った。作ってしまった。あの小瓶は毒蛇の最後の薬だった。毒薬だった。詠唱は、その毒薬を強くする為の詠唱だった。だからもう後戻りなんてもう出来ない。なのにどうして、どうして__逢いたくなるんだろうか。) (4/4 10:32:13)
クロ:ガデューカ > 会いたい、逢いたい、云えば良かった、いいや言わなくてよかった、離れていく気がしたから言わなかった言えなかった、恋だと認めたくなかった、苦しかった、私は愚かだ愚か者だ、今更後悔して今更逢いたいなんて思って今更、今更過ぎるのに、( いきをするだけでも苦しくなっているのに溢れ出す感情はとめどなくて。ガタガタと震える身体を落ち着かせるように握り締めていたメレンゲクッキーを1つ、口に入れた。真っ暗闇の中、月明かりだけが照らす。山の夜は未だに冷える。メレンゲクッキーを咀嚼し飲み飲めば。ふ、と、突然荒ぶっていた心が落ち着きを取り戻したのだ。まるで子供の怒りが直ぐに落ち着く様に、昂っていた感情がスっと消え去り_帰りたくなってしまったのだ。だから、だから。1度だけ崖から離れようと後ろを振り向いた。けれど1度覚悟を決めたのに辞めようとする中途半端な心を人間を運命は許さなかった。! (4/4 10:32:36)
クロ:ガデューカ > ( __神は、許さなかった。) (4/4 10:32:54)
クロ:ガデューカ > あ、( がく、と身体が後ろに崩れ落ちる。毒が毒蛇を蝕みちょっとした風でも身体を持っていかれそうになるのをもっと考慮していれば倒れる事なんて無かったのに、嗚呼、呆気ない。砂時計が落ちる様に、全てがゆっくりと遅く感じてしまう。ふと思い出すのは昨日出逢った優しい騎士団長。" あの子に情けない姿を晒しちまうなんて、嗚呼、ごめんね "と心の中で謝罪をする。_身体が落ちる。落ちていく。そんな時でも頭の中で楽しかった日々が再生されるものだから、酷く心が締め付けられてぼろぼろと涙を宙に飛ばす羽目になってしまった。腕を伸ばし宙に向ける。何かを掴むようにして手を動かしながら「 しにた、く..な、」なんて呟いたその瞬間、バンッッッと大きな音と共に身体が仰け反る。口腔内に残っていた血を吐き、叩きつけられた衝撃であらぬ方向に向いてしまッた腕と足が酷く痛む。あつい、あつい、あつい。燃えるように身体が熱く感じてしまう。こんな最後が、こんな最後で、嗚呼、最期なのか_ ) (4/4 10:33:06)
クロ:ガデューカ > ( 暗転する世界で、毒蛇は思った。知っていた。分かっていた。嗚呼、嗚呼。) (4/4 10:33:49)
クロ:ガデューカ > ( _愛されていない訳じゃないのは分かっていた。親愛を抱かれていると思っていた。事実そうなのだろう。けれどそれ以上を望んでしまった。耐えられなかった、誰の世界にも残らない自分が認められない自分が透明になっていく自分が酷く恐ろしくて愚かで。耐えられなかった。だからこの苦しみから解放されたかった。けれどやはり最後の最期まで自分は未熟者で。きちんと飛び降りれば楽に死ねた筈なのに、毒で保険までつけてしまうぐらいの覚悟だったのに後ろを向き帰ろうとしてしまったからこんなにも痛くて苦しい結末になってしまった。情けない、情けない。酷く情けなくて、なんとも自分らしい、死に際だろうか。だから今から呟く言葉は、最後の抵抗。抵抗もどき。) (4/4 10:33:50)
クロ:ガデューカ > あた、あたしね、辛くて、つらくて、アンタが、..あんた、が、...すきだ、たんだよ、りあむ、( けら、と小さく笑いながら誰にも届かぬ想いをぽつり。冷えていく体の感覚を無様にも味わいながら掠れた声で静かに貴方の真名を呼ぶ。愛していた恋だった。けれど叶わぬ恋だった。なかった事に出来てよかった。もっとちゃんとあの二人を祝えば良かった。もっとちゃんと彼と話したかった。もっとちゃんと彼女と花について語り合いたかった。もっと、貴方と、一緒に居たかった。真名を呼び合い、愛されたかった。約束破ってごめん。ごめんね。我儘な私をどうか許して。そしてどうか幸せになって。私の居ない世界が現実になるだけなんだ。だからどうか、気にしないで私の死に様を見ないでおくれ__。) (4/4 10:34:03)
クロ:ガデューカ > ( 願いを込めて想いを込めて、そして遂に最後に息を吐き出し、二度と吸われることは無かった。) (4/4 10:34:14)
クロ:ガデューカ > ( 誰もが羨む美しき月夜が世界を照らす。花祭りのあの素晴らしい賑わいは此処迄は届かない。誰にも看取られず、蛇は毒で息絶え花は散った。地獄への道のりをのらりくらりと歩み始めた彼女の手に、ほんのりと握りしめられていたのは食べかけのメレンゲクッキーに、先日買った小さな花。その花は青色の小さな、小さな花。貴方に渡す為の花。渡せなかった花。その花の名は___)【 勿忘草を貴方に捧げて 】 (4/4 10:34:54)