アデルグンド

愛しき者に餞を

大和守/アデルグント > 「……花祭りは無事に開催される事になりましたよ、ヘスティア様」(もう、外はすっかり暗くなってしまった。ガデューカという司祭……否、知り合いと共に花を選び、出来得る限り礼を述べに行った後の事だ。アデルグントは己の執務室へと戻り、一つの花束を手にしていた。桃色の薔薇が十一本、丁寧に束ねられたものだ。あの知り合いに花言葉を教わって、それがぴったりだと思ったから。それを持ったまま窓から外を眺めれば、綺麗に輝く月が地を静かに眺めていた。ガラリと音を立てて窓を開ければ、冷たい夜風が中へと入ってくる。身を外へ軽く乗り出して、月を見つめながら言葉を紡いでいく。)「……花祭りは、貴女様と一緒に回りたかったんですけど……なんて」「貴女を救えなかった私が言って良い事じゃ、ありませんよね……」(貴女の事を思い出す時、真っ先に浮かぶのは貴女を救えなかった事だ。あの時、私は誰よりも貴女の側に居た。救うことだって出来た。それなのに救えなかった己の無力さが、未熟さがどうにも許せないのだ。手に力を込めた。花を包む紙がかさりと音を立てて皺を刻む。)   (4/4 14:30:21)
大和守/アデルグント > 「……王国は、随分変わってしまいましたよ」(視線を、月から地の方へゆっくりと下げていく。このウェンディアは、負けた事で王国から連邦へとその姿を変えてしまった。それでも、皆生きている。『花祭り』だって平和に開催されている。それで多くの人が幸せになっているのならば、生きられているのならば。負けた事を良しとは決して言わないものの、こんな状況も悪くないのでは無いかと思ってしまう。そんな事を考えてしまうのが良いのか分からなくて、自分がこのままで良いのか分からなくて。)「……私は、貴女様に言われた事を果たせているでしょうか」「……私は騎士団の光に……なれているのでしょうか」(溜め息を一つ。疑問を、口にした。ずっと考えている事だ。貴女が居ない。導いてくれる太陽が居ない今、この道が正しいかなんて分からない。)「申し訳ありません、長々と。……あぁ、そうだ」(けれどもそれを、亡き人に問うのすら合っているのか分からない。もう一つ溜め息を溢し。窓から離れようとした所で、手に持っている花束を見た。桃色の薔薇。それを買ってきた理由を思い出して、纏う紙を丁寧に剥がした。)   (4/4 14:30:48)
大和守/アデルグント > (十一本に束ねられた薔薇を四本と、七本の二つに分け、両手に持った。)「我が心よ想いよ満ち天空に吹け。分かつ事の出来ぬ氷となり永久に在らん事を。──太陽の名の元に」(ぱきぱきと音を立てて、茎を残し花の箇所がゆっくりと凍っていく。片手には小さな、もう片手にはそれよりも大きな氷像と呼ぶべきモノが出来上がる。それだけに留まらず、二つはゆっくりと縮まっていき。最後には身に付けるアクセサリーとして扱える程の大きさに変化し。二つの小さな結晶を握り締めれば、握った手を祈る様に胸元へ寄せた。)「ヘスティア様」「ずっと、言えなかったのですけれど」(この思いは氷に包まれて、永久に存在するモノとなるのだ。優しく、最愛の、初恋の人の字を静かに呼んだ。心からの愛を、想いを、込めて。)「────この命尽きる時まで、私は貴女様だけを愛していますよ」(願事を星に、エトワールに掛ける様に。愛しき者に、餞を。────貴女に、愛を。)【愛しき者に餞を】〆   (4/4 14:30:51)