ディラン

そうあれかし

シロー/ディラン > (シュクロズアリ旅団に敗戦したウェンディア王国は、国号をヨズア連邦と改め、領土の再編に加え、ヨズア人及びヨズア文化との協調路線を取る事となった。そして敗戦から数週間が経過した春。例年通りに行われる事となった花祭りの真っ最中である王都は、喧騒に包まれていた。敗戦国である事実を感じさせない程の賑わいに包まれた城下町は、この戦乱の世にありながら平和という言葉が似合う様相を呈しているのだった。)「すみません、このユリの花束をください」 (そんな王都の一角にて、花屋に並んだ作業着姿の男、ディラン。幾らかの紙幣を支払って大きめのユリの花束を紙袋に入れて貰うと、手に提げて歩き出す。大通りからも外れ、本部への帰路からも逸れて、何処か重たい面持ちであった。)「⋯⋯アシュトン」(ディランが立ち止まったのは、小道を少し進んだ先の路地。変わりのない石畳で舗装された道であったが、つい数日前、この場所は仲間の血で染まっていた。花祭りだという事から清掃があったのか、汚れの一つ既に分からない道の隅を見下ろして、紙袋の中から花束を取り出して両手で抱えると、その場で片膝を着いた。)   (4/3 20:03:48)
シロー/ディラン > 「⋯⋯聞いて欲しい、アシュトン⋯⋯。俺、絶対船を手に入れる。そうしたら、一緒に色んな場所を見に行こう」(顔を見て、最後の別れは済ませた筈だというのに、参列者が多かった葬儀では居座ることも出来なかったからか、話したい事は思った以上に沢山あった。その筈なのに)「アシュトン⋯⋯⋯」(美味しい物を食べに行こう、チャリティーライブもして、一緒に過ごそう。話したい事は沢山あった筈なのに、いざ口にしようとすると、自分の口は彼の名を呼ぶばかりであった。返事が返って来ない事なんて最初から分かっていて、どうしても虚しくなってしまう。戦争が終わって、これから沢山色んなことをしたかった。計画だって自分なりに立てていたのに、終わりは余りにも突然だった。幾ら名を呼んでも、彼の気の抜けた相槌も、皮肉の一つも聞こえてこない。名を呼ぶ度に虚しさが加速度的に膨らんで、視線を地面に落としたまま、瞳孔を静かに揺らした。)「俺⋯⋯アシュトンのこと忘れないよ⋯、アシュトンが居てくれたから、俺は⋯⋯楽しかった⋯」   (4/3 20:04:05)
シロー/ディラン > (自然と視界が滲んで、ぽたりと雫が地面に染みを作る。彼と共に過ごした証拠である煤汚れが目立つ袖で、目元を拭うと、そっと花束を隅に置いた。)「ずっと仲間だ、俺達⋯⋯」(イモータルが殺したのか、誰が、なんて悔しさは込み上げるけれど、アシュトンの前になると、そんなのは頭から抜け落ちてしまう。静かに呟くと、片膝を着いたまま目を閉じて、顎を引きながら祈りを捧げるのだった。)「私の同胞にどうか、幸せをお与えください。そしていつか、私と彼を引き合わせください。⋯⋯そうなるよう、お導き下さい────」(瞳を閉じた時に溢れ出た涙を睫毛に乗せたまま、祈り続けた。かけがえのない仲間と共にあれるように。⋯⋯⋯もし、一緒になれなかったらその時は、)「───太陽の名のもとに」(神様に〝反抗〟でもしよう。 共に、あらんことを。【そうあれかし】   (4/3 20:04:16)