火津彌&アンダンテ

アンダンテ・ファヴォリ

マリア/火津彌 > (全くこの大陸ときたら、神様が天秤をひっくり返したのではないかと思うありさまだ。 ウェンディア王国は無くなり、ヨズア連邦と国号を変えて統合した。帝国人とてその報を聞かないで要られるほどのんきなやつは居ないだろう。しかし、例年通り名物の花祭りは開催するというのだから一体何がどうなっているのか……と言いたいところだが、意外にも火津彌はこの状況に共感を覚えていた。 おそらくは死期を悟った人間が、長らく会って居なかった知り合いの元を突然に訪ねたりするものと似たようなものなのかもしれない。着慣れない洋装に身を包み、黒いタイを締めて花なんか抱えている出で立ちの自分は、まさしく似たような目的で一度も足を踏み入れた事のない知り合いの店を訪れようとしているのだから。) 「……こ…ここか?本当に……リ・ゾ・ル・ウ・ト……あぁ、ようやく見つけた……ようやくか!」   (3/29 16:04:22)
マリア/火津彌 > (休戦中に滞在した時も自分では王都を堪能したつもりでいたが、まだ知らない一角があったものだ。方向音痴も手伝ったかもしれないが、とにかく見つけた。尊華帝国軍間者にして、情報屋兼手紙の密配人としてその筋では慣らしているという男────アンダンテ。ここは、彼の店だ。 扉に手をかけ、ゆっくりと開けると店内の明かりが、路地と面を取っ払った火津彌の素顔を少し照らした。 奥に居る店主の顔を認めると、ふう、と己をねぎらうように長い息を吐いて、閉じた目を開ける。) 「久しぶりやな、僕が解るか?……あー、」 (皮靴の音を響かせて椅子に座ると、店内をぐるりと見回して、注文でもするかのようにぽつりと呟いた。) 「”飴色の夜想曲”……だったかな。この店の看板商品は。」   (3/29 16:04:32)


清瀬/アンダンテ > (正しく嵐が過ぎた、と喩えてもおかしくない出来事が王国を襲った。その王国たる国の名は既にヨズアの民により変えられた。元あった面影もじきに薄れていくのだろう。死の水、ウェント陥落と修羅場を潜った我々であったが、緊張の走る空気は春一番に吹き飛ばされて花祭りは滞りなく開催されている。元々繁盛もしていないこの商売はお陰さまで上がったりだ、オウトスイートだの皆あっちに流れていく。……この店もそろそろ引き際かもしれない。いつまでたっても料理の腕は上達しないし、メレンゲは上手くたたないし、なんてったって此処のスイーツは美味しい、中々の偏見であるが、甘味に関しては尊華よりも秀でている気もする。蓄音機だけが音を伴いレコードを回している寂しい店の番をしていると、心地いい暖かさにうつらうつらと船を漕ぎそうになる。)   (3/29 16:48:22)
清瀬/アンダンテ > 「……いらっしゃいませ」(戸を鳴らす音と人の息遣いに入り口の方を見れば、何の戯れか眠気なんてものは一瞬で吹き飛んだ。正直度肝を抜かれた、こんな所で顔を見るとは思わなかった。火津彌少将、と声に出しかけて色々と思いとどまる。待て待て、落ち着こう。彼はもう戦線からは身を引いているし、仮に現役だとしても此処でその名を出すのは正しくない。頭を掻きながらメニューを持って彼の元に向かおうとした時、彼が放った注文にニヤリと口の端を上げた。)   (3/29 16:48:24)
清瀬/アンダンテ > 「────はいよ、折角なら此処に座りなよ、火津彌サン。……なんだなんだぁ、そんなに粧して誰かと観光か?」(メニューブックでカウンター席の背凭れを叩いて火津彌に手招きをする。品定めでもするように彼の姿をまじまじと見つめる。洋風の服に花、柄になくこの人も浮かれているのだろうか、なんて思ってはみるが真意がよくわからない。女ができて丸くなったとか色々言われてるが、何もなく此処に来るような人ではない筈。思い当たる節もなく若干身構えつつ、ドリッパーに水を入れて沸かし始める。珈琲ぐらいは淹れてやろう。顔見知りの誼とか疲れてそうだからとか、理由はそんな所。)「今日は何の用で来たんだ、それとも休憩に立ち寄っただけか?」   (3/29 16:48:35)


マリア/火津彌 > 「おや」 (火津彌はアンダンテの返答を聞き、心底意地悪な含み笑いを浮かべた。) 「僕はもう注文したはずやぞ、この店は客に”何の用か”と聞く訳か。それとも、”どんな塩梅にしましょうか”とお伺いを立ててくれとるのかな。」 (ほお、そうか、なるほどな。そう漏らしながら隣の椅子に花を置き、くつくつと喉を慣らして腕を組んで火津彌は肩を揺らした。もったいつけても仕方がない。駄目で元々、カウンターに片腕を載せて世間話のような温度でオーダーを通した。) 「咲夜中将についての情報はあるか?なければ無いで構わない。万事屋雷鏡と言う店にも頼んどるんやがな、お前の店を失念するとはとんだ耄碌やったわ。」 (話している最中でも、アンダンテは手際良く喫茶の用意を初めていた。店内を満たす薫香とレコードの音に副交感神経を刺激されながら、火津彌はいつになくリラックスしていた。)   (3/29 17:05:07)
マリア/火津彌 > 「観光と言えば観光か。いや、ちょっと挨拶まわりにな。後で家内にも会うか?……いや、どっちゃでもええ。」 (カウンターの下に隠れて見えなくなった花束をもう一度手にとり、あなたに見せるように掲げる。挨拶周りひとつするにも、どうにも素直でないこの男は何かあなたを試すような口ぶりで『何色に見える?』と言った。)   (3/29 17:05:12)


清瀬/アンダンテ > (“そういうつもり”で来た癖に、人を弄るのが趣味だとしたら中々に悪い人だ。濾紙やサーバー、カップに受け皿といった食器を出しながら、返事はせずにしかめっ面のような苦笑を浮かべて愉快に睨んでみせた。注文や本題の前に前戯を挟んで茶化すのは典型的な尊華人の特徴、それが楽しいと思えるのだから自分もまだまだ帝国の人というわけだ。まどろっこしい前置きに対してすんなりと出されたそれは“咲夜中将”と呼ばれた人の情報。火にかけられたケトルを眺めながら顎を数回撫で、様々な記憶と情報を捲る。)「中将……ああー、んーと……どうだかなぁ。一線を引いたり姿を眩ませたり、“そういう人”について詳しい奴は居ないわけじゃないけど……生憎と聞いたことがないな」   (3/29 17:59:43)
清瀬/アンダンテ > (珈琲粉で横着はしてしまうが、味覚を楽しませる為に吟味しに来た客じゃないから怒られやしないだろう。そのなんでも屋についてなら色々と聞くものだが、あの女軍人を、ねぇ。『なければ無いで構わない』とは、依頼というわけではないのだろうか。ケトルを取ってドリッパーとカップにお湯を通しながら、気楽な方へと進んだ話題に談笑を挟む。)「おーおー、やめて下さいよ。ったく、惚気話に付き合わせるなら俺より適任がわんさか────」(窓から店の外を覗いて肩を竦める。特に気にしていなかった花束を掲げられ、『何色か』と問われては言葉を詰まらせた。表情は顔に出にくい方だと思っていたが、今回ばかりは不機嫌が露呈するのが見えないなりに自分でもよくわかる。   (3/29 17:59:45)
清瀬/アンダンテ > 色を聞くとはまた嫌らしい、火津彌の顔を見てもこの問い掛けが戯れか本気かわかったもんじゃない。世界はいつも──今も例に漏れず──黄色のフィルターに包まれている、空はいつだって青々しい緑だ。……これが本物の世界で、皆が見ているのは偽物の色であればと何度想像したことだろうか。壁の照明、包み紙、カップと視線を忙しなく移して、色を判別するというよりも同じ色を探していた。あとは己の感覚。貴方が座った椅子からは一席分ずれた所の机に肘をかけると目を細めて、渋りつつ答えた。)「……何の真似だよ。黄色…いや、橙か?」   (3/29 17:59:56)


マリア/火津彌 > 「そうか、解った。」 (中将についての返答を聞き、短くそう相槌を打った。情報がある素振りを見せればいよいよ金の話になるのだろうが、さしもの彼でもそうかんたんに尻尾を掴無というわけにはいかない、むしろそうであればとうに軍に提出している情報なのだろう。─────果たして二人の男はカウンターをはさみ、一人は花を持って問答。俄に拗ねたような不機嫌顔を晒したアンダンテに火津彌はたじろぐでもなく、目を細めて笑った。)「そうか。お前には、黄色に見えるか。……偶然やな。僕にもそう見える。」(アンダンテが色盲の類である事は聞き及んでいるが、多数派の立場から”正解”を押し付ける事もなく、彼と同じように見えた色を答えた。あるいは皮肉と受け取られるかもしれないが、続く言葉は答え合わせのように、火津彌の意図を垣間見せるだろう。)「人によっては”こがね色”だとか、”たまご色”だとか言うかもしれんな。何の真似かと不可解ならば、ただそれだけのお遊びやと思ってくれ。要するに、些細な事で深い意味はない。   (3/29 19:52:35)
マリア/火津彌 > (これが何色だろうとどうでも良いと言えばどうでも良い。それに、アンダンテが人とは違う景色を見る事ができるならぜひとも共有してほしいし、同じであればそれはそれで喜ばしいのだ。)「そう、挨拶まわりやと言ったやろ、これはお前に。」(そう言いながら、ふわふわとした丸い花をつけたミモザの花束をあなたに手渡した。珈琲を堪能したら、次の場所へ行こう。カウンターに両肘をついて、まるで別れを惜しむようにゆっくりと目を閉じる。)「達者でな」(小さな呟きレコードにかき消されるだろう。渦中の王都でいつもどおりの皮肉を交わし、優雅に珈琲なんか淹れるお前の姿は、狂ったこの世界で確かに揺らがぬ日常を描いてくれた。それでいいのだ。その姿が、見たかったのだ。)   (3/29 19:52:42)
マリア/火津彌 > (なあ、お前は生き急ぐなよ。”答え”なんて、ほんまはどうだっていい事や。赤でも青でも、白でも黒でもなくていい。劇的なエンディングなんて、迎えなくてもいい。お前はお前の人生を続けてくれ。)   (3/29 19:53:02)
マリア/火津彌 > 「そう言えば……このレコードの曲、なんて言うんや?」(歩くような速さで)〆【アンダンテ・ファヴォリ】   (3/29 19:53:27)