リューグナー
神罰の歯車ゑゐりあん/リュ-グナ- > 昔々…とは言ってもそこまで昔でもない昔のお話。とある荒野に小さな村がありました。土地はやせ細り作物は育ちにくく、老人ばかりが住んでいる小さな小さな村。しかし、老人ばかりではあるものの、その村に男の子と女の子がそれぞれ1人ずついました。男の子の名はブルース。正直者で頭が良く、運動がちょっぴり苦手なブルースは村のみんなから“トゥルース”と呼ばれていました。女の子の名はカルナ。運動は得意だけど嘘ばかりを言い頭も悪く、村のみんなからは“カルマ”と呼ばれていました。そんな2人はこの村の出身ではありませんでした。この村で唯一の教会に住む神父様が、村の外れで捨てられていたのを拾ったのです。2人は幼い頃から一緒にいました。一緒に村を散歩したり、神父様からこの村で信仰されている大地の神について教わったり、イタズラをして叱られたり、時に2人で喧嘩をしたり。まるで兄妹のようにスクスクと育っていきました。 (3/21 16:19:48)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > そんな暮らしの中、頭のいいブルースはとある事に気が付きます)どうして村のみんなが作物がいっぱい実りますようにって毎日神様に祈っているのに、作物がいっぱい育たないんだろう(と。神父様や村のみんなはいつも口を揃えて言っていました。「神を信じればいつか必ず救われる」と。しかし、どれだけ神に祈っても村は豊かになりません。そこでブルースはひとつの疑問に辿り着きました)神様は、本当にいるのかな?(そんな疑問を持ったブルースは、まず最も仲の良かったカルナに尋ねました)ねぇカルナ。神様って本当にいると思う?「え?どうして?」だって、村のみんなとか神父様がいっつも神様に、村を豊かにしてくださいってお祈りしてるのに、ちっとも豊かならないじゃん「確かに!私、もっといっぱいご飯食べたいよー!」ね?だから、もしかしたら神様っていないんじゃないのかなぁって思ったんだ「ふーん。トゥルースって凄いね。私そんなこと全然考えないもん。やっぱ頭いいなぁ。でも、トゥルースの言う通りかもなー。私もそんな気がしてきたよ」やっぱり?良かったー。カルナがそう言ってくれると安心だよ「えへへ!どういたしまして!」 (3/21 16:20:06)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > (カルナの賛同を得たブルースは、次に神父様にその考えを話すことにしました。カルナがあぁ言ったんだ。きっと神父様も同じことを考えているに違いない、とブルースは考えていました。しかし)「ブルース…その話…他の人にしたのか…?」え?「他の人にその話をしたのかと聞いたんだ!答えなさい!」カ…カルナにはした…けど…(神父様にその疑問を話した瞬間、いつもは優しかった神父様の態度が一変しました。それは怒りよりも焦りに近いものでありましたが、幼いブルースには神父様の豹変ぶりにただただ怯えるしかありませんでした。神父様の質問に涙目になりながら答えたブルース。すると神父様は安堵したかのような表情になり、優しくブルースを抱きしめました)「いいですか?ブルース、あなたはとても賢い。きっと私よりも聡明な人物になるでしょう。しかし、この世には触れてはならぬ疑問があるのです。もう二度と、そんなことを考えてはなりませんよ」(いつものように。いつも以上に優しい話し方でブルースに語りかける神父様。ブルースはその時はただ困惑しているだけでした。しかし、この時にちゃんとブルースは理解すべきだったのです。神父の言葉の意味に。 (3/21 16:20:35)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > そして月日は流れました。幼かった2人は立派な大人となり、兄妹としての愛情が次第に異性に対する恋情に変わってきていました。そして2人が22歳の時に神父様は病気で死に、ブルースが新たな村の神父様となりました。村のみんなは、神父様よりも頭のいいブルースが神父になったことで、神様もきっと恵みを与えてくれるだろうと喜んでいました。ブルースも村のみんなを救う為に一生懸命神父としての働くことを心に決めたのでした。しかし、それから1年経っても村は豊かにはなりませんでした。そしてブルースは考えました)やはり神に祈るだけではダメなのではないか…?もっと現実的な対処をしなくちゃダメじゃないのか…? (3/21 16:21:42)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > (実はこの村では神への祈り以外には特別なことをしていなかったのです。幼い頃からその事に疑問は持っていましたが、それでも神に祈れば何かが変わる。ブルースはそう信じていました。自分の心に嘘をついていました。しかしその嘘ももう限界です。ブルースは決心しました。村のみんなに1度話してみよう。神への祈り以外の対処法をやってみませんか?肥料や農具の改良など、もっと新しい知識を取り入れてみませんか?と。肥料も使わない、農具も古い。だけど神には祈る。それだけじゃぁ何も変わらないですよ。そう話してみよう。ブルースは共に暮らしているカルナにその心内を話しました) (3/21 16:21:44)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > 「いいと思うよ。私も変だって思うもん。神様の力よりも、トゥルースの知識の方がずっと凄いはずだよ。それに、トゥルースはトゥルースなんだから。トゥルースの言うことが絶対正しいよ」(家族として、兄妹として、そして想い人としてのカルナの言葉を受けたブルースは自信をつけ、村のみんなに自分の考えを打ち明けました。村のみんなもきっとカルナみたいに受け入れてくれるはず。きっとみんなは喜んでくれるはず。そう思っていました。しかしブルースは気付くべきだったのです。神父様がどうしてあそこまで慌てていたのかを)「ふざけるんじゃない!」(ブルースに投げかけられた第一声がこれでした。そしてその言葉に呼応するように)「何を言っているんだ!」「馬鹿も休み休みに言え!」「この異端者が!恥を知れ!」「お前のような者がいるから神は我々を救わないのだ!」 (3/21 16:22:06)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > (貧しい中でも互いに支え合ってきた村のみんなは、ブルースの考えを聞くや否や、まるで人が変わったかのような態度でブルースを罵倒しました。想定外の出来事にブルースはただただ立ち尽くすことしか出来ませんでした。実は、この村に住む老人たちは皆、盲目的に神の存在を信じており、他の技術は不要と考える排他的な人々だったのです。そのせいで若者はとっくの昔にこの村から逃げ出しており老人しかいなかったのです。しかし、今更そんなことに気付いても手遅れでしかありません。その日から、ブルースとカルナの苦悩の日々が始まることとなりました。村を歩く度に暴言を吐かれるのは当たり前。酷い時には2人の持つ畑の数少ない作物が盗まれた事もありました。しかし、そんな仕打ちを受けてもカルナは) (3/21 16:22:49)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > 「私たちの言い方が悪かっただけだよ。ちゃんと話せばみんなわかってくれるから…。ね?」(村のみんなのことを信じていました。きっとわかってくれる…と。しかしブルースは、自分だけならともかくカルナにも危害を加える村人たちのことを徐々に嫌いになり始めていました。そんな生活を続けていたブルース達でしたが、ある日村を疫病が襲います。高熱を出し動けなくなる疫病。村のみんなの半分がその疫病にかかり、カルナもまた疫病に犯されてしまいます)「ほら見ろ。お前たちが神の存在を疑うから神が罰を下したのだ」(村のみんなからそう言われ、2人の居場所は更になくなり始めます)…俺はもう限界だ…。カルナだってああ言っているけど、きっと辛いはずだ…。かと言ってこの村から出るにしても今のカルナは耐えられるはずもないし…。…俺はどうすればいいんだ… (3/21 16:23:21)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > (ブルースは悩みに悩みました。ブルースはカルナに強い恋心を抱いていました。しかしその想いを告げる機会がなく、また勇気も同じようになかった為その想いを募らせるばかりでした。そんな想いを抱いている彼女をこれ以上この村に置いておきたくはありませんでしたが、しかしカルナが疫病にかかった以上無理に村を出ることもできませんでした。ブルースは想い人を、病にかかった状態でこの地獄のような村に置いておかなくてはならなかったのです。そんな地獄のような生活が続き、ブルースが26歳の誕生日を迎えた時のことでした。ブルースはカルナの病気を少しでも軽くする為に、村から離れた場所に自生している薬草を採りに来ていました。その中でブルースはある決心をしました)…俺ももう26だ。いつまで経っても子供みたいなことはやってられない…。…帰ったらカルナに思いを告げよう。好きだって。付き合ってくださいって。…そして2人でどこかに行こう。でかい街じゃなくてもいい。医者がいるでいい。そこに行ってまた2人でやり直そう…。…あんな村はもう…俺たちの居場所じゃない…ッ (3/21 16:24:14)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > (ブルースはこれから村に帰り自身の恋心をカルナに打ち明けて、そして共に村から出よう。そしてどこかで新しい生活を始めよう、と決めたのです。それが自分自身への誕生日プレゼントだ。そう自分に言い聞かせ、告白前に尻込みしそうになる自分に鞭を打ちました)え…(しかし、神は非情でした)嘘…だろ…(己の存在を疑う者へ、神は鉄槌を下したのです。ブルースが目にしたもの。それは村の方で荒れ狂う突発的な台風でした。広い荒野であるこの辺りでは時折つむじ風が発生しますが、しかし今回はそんな比ではありませんでした。まさに台風。よく目を凝らせばその風の中には村の建物の残骸も混ざっているようでした)カルナ…カルナァァァ!!!(ブルースは愛する者の名を叫びながら走り出しました。ブルースが辿り着く頃には台風は消え去っていましたが、同時に村も消え去っていました)なんだよ…これ…(家という家は潰れ、いちばん頑丈だったはずの2人の家でもある教会すらも跡形もありませんでした。そんな光景に呆然としていると、後ろから声がしました) (3/21 16:24:32)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > (振り返ると、そこに居たのは村人たちでした。すると村人のひとりがブルースに近付きました)「見ろ。これがお前たちが神を怒らせた結果じゃ。神を信じぬ愚か者のせいでわしらの村はもう終わったのじゃ」(しかし、ブルースにとって村の未来などはどうでもよかったのです。ブルースが知りたいこと、それは)カルナ…カルナはどこだ…ッ!?(愛する者の居場所でした。目の前の村人に縋り付くブルース。すると村人は教会があった場所を指さしました)…え(徐々に浮かんでくる最悪の結果。ブルースはそれを嘘だと信じようと駆け出しました。積み重なった瓦礫を退かし、彼女の遺体が無いことを証明するために)あるな…ッ!あるなあるなあるな…ッ!!だって…俺は今日あいつに…好きだ……(神の鉄槌は、あまりにも残酷なものでした)…って……(ブルースが見つけたのは、カルナの長く美しい髪でした。この村でそんな髪を持った主はカルナしかいません。そんな髪が血に濡れた状態で瓦礫の下に埋まっていたのです) (3/21 16:24:54)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > 嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ(ブルースは頭を抱えてその場に蹲り、呪詛の如く「嘘」という言葉を繰り返しました。幼い頃から家族のように兄妹のように育ってきた。実は2人は捨て子で神父様の子供では無いことを、本当の兄妹じゃ無いかもしれないことを聞いた時でも、それでも2人は家族であり続けました。些細なことで喧嘩したり、仲直りできなくて泣いたり、勇気を振り絞って謝ったり、そんなことがあったねと笑ったり。2人はいつも一緒でした。そしてこれから先も一緒なんだと、そう思ってました。けど、神は許しませんでした)「神を怒らせた報いじゃな…」 (3/21 16:25:19)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > (村の誰かの声がブルースの耳に入りました。この災害で死んだのはカルナだけでありません。亡くなった村人の知人が、その悲しみや怒りの捌け口にブルースとカルナを使ったのです。「2人が神を疑ったから、神がこの村を襲った」と。そうすることで少しは心が楽になったのでしょう。しかし、その当人であるブルースは。愛する者を失ったブルースは、一体誰を恨めばいいのでしょう?)あぁ…そうか…(「神の怒り?」なら、簡単じゃないか)…神が…殺したんだ…(カルナは神に殺された。そう思うとブルースは少しだけ心が楽になりました)は…っはは…(神がカルナを殺したというのなら)はははははははははははははははははははははっっっ!!!!!!!!!!(神を殺してやる) (3/21 16:25:42)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > (ブルースは半狂乱になり、笑いながら駆け出しました。走って、走って、とにかく走りました。そしてブルースが辿り着いたのは大地の裂け目でした。底の見えない奈落。その前でブルースは立ち止まりました)…神…。…今殺してやるからよ…待ってやがれ…(そういうとブルースは迷わず奈落に身を差し出しました。ブルースは、死ねば神の元へ行ける。そこで神を殺そうと考えました。復讐してやる。復讐してやるんだ…と。しかしそれは“嘘”でしかありませんでしら。カルナが災害で死んだのではなく、神によって殺されたと思うことで少しだけ心が軽くなったブルースが己に吐いた“嘘”だったのです。そんな嘘をついて奈落に飛び込む勇気をつけ、そうして楽になろうと。絶望しかないこの世界から一刻も早く逃げようとしたのでした) (3/21 16:26:01)
ゑゐりあん/リュ-グナ- > …ここは…(目が覚めると、そこは土の上でした。割れた天井からは淡い月の灯りが差し込み、“影”を作ります)…っ(ズキリ、と頭が痛みました。二枚舌をチロりと見せ、白目のない真っ黒な目を動かし、頭痛と共に思い出した記憶と向き合います)…あぁ…(嘘と向き合います)私は…神を殺さなくてはならないみたいですねぇ(「神」に「罰」を与えよう)【神罰の歯車】 (3/21 16:26:16)