ユピテル

「子供」と「悪」が出会う時

大和守/ユピテル > 「う、うっ、ぁ……ぅ、っえ……」(ひたすら走っていました。ずきずき痛む手も体も何もかもを無視して。息はとっても辛いけど頑張って。やっと切られた手はくっついてくれて、でもずきずきじくじく痛くって。でも二人だって側に居ます。ほら、ちゃんとこの手には人形──が…………)「違う、違う、違う……っ、いる、いるの……二人はちゃんと……いるもん……生きてる、生きてるのおぉっ……!!」(そう、そうです。二人は側に居て、あたしと一緒に走ってくれて、だから、違う。あのお兄さんが言ってた事なんて、本当の事じゃない。二人が返事をしてくれないのだってそう、だって走っていたら喋るのだって難しいから答えが返ってこないのもそう何の不自然さもない事)「はっ、は……っ、う!?」(走っていたら、突然何かにぶつかってしまいました。とっても痛くって、もう、何なのでしょうか。見上げたら……見慣れた、麻袋に白布。それは、まるで────)「おや、ぶん?」   (3/16 16:34:34)
大和守/ユピテル > (『……あ、ァ? なーんだ、……嗚呼、あんたらか。いや~、あまりに帰りが遅いから迎えにきちゃったのよね~』。なんて、ひらひら手を振って親分は答えてくれました。嗚呼、良かった……親分はちゃんとあたし達の事を考えてくれてたのです。)「ほ、ほんと……っ!? ……ね、ねぇ、親分……フィリウスとサンは、ちゃんといる……よね?」(それが、不安で仕方がなくて。あのお兄さんの言葉を否定したくって。だからあたし達の中で一番知識があって、年が上の親分の言葉なら。きっと、信用できる──『あァ? 突然どーしたのかしら? ったくンなの当たり前……』よかった、やっぱりそうなのです。二人はちゃんと居て、存在していて『な訳ねーだろッ!! ったく今更気付いたのかァ? ゲラゲラゲラゲラッ!!』──……。…………え?)   (3/16 16:34:49)
大和守/ユピテル > 「…………そ、そん、な、訳……ないっ……!! だ、だってほら……此処に、いる……のよ。ねぇ、……ねぇ……そうでしょ……ッッ!!」(肩を掴もうと、親分に向かって手を伸ばします。その手を、親分が掴んで。『……あァ? いっつまでそんな幻に浸って酔ってるつもりだよォ、ユピテル。ちゃーんと現実を見やがれ。テメーはな、【悪意】ですらねぇよ。ただの、餓鬼だ。【子供】なんだよ』。勢い良く手が離されて、鈍い痛みを感じます。ひゅ、と息を飲みました。親分は、確か──【子供】を拐って殺すんじゃあ、ありませんでしたか。)「ちっ、ちが……違う、違うもん! 【子供】なんかじゃない、もん……!」(『ゲラゲラゲラッ! そういう所が【子供】らしいッつってんのよ! あァ、最っ高だわッ!!』。……どうして? どうして親分は、この人は。あたしに対して、そんな酷い事を言うの? だって、ずっと、仲間だって。安心できる人だって──家族みたいだなって思っていたのに。もしかして、もしかして、親分は、あたし達を──あたしを。)   (3/16 16:35:03)
大和守/ユピテル > 「いやっっ!!」(左手に、ナイフに変わった人形をサンを持って。思いっきりナイフを振るいました。このままじゃ『殺される』と思ってしまったから。それは頬へと当たり、麻袋ごと肌を引き裂いたのでしょう。徐々に麻袋は赤が滲み出て侵食されていき。『あら? あらあらあら……随分と元気がある【子供】じゃないッ! それにそれにそれにィ、子分の癖にアタシに向かって反逆だなんて良い覚悟がおありね、アタシは別に何もしてないのに、さァ……』。)「ひっ……!!」(最後には低く恐ろしくなった声を聞いて、思わず震えてしまいます。まるで初めて出会った時と同じで──でも、今は二人が……何も答えてくれないから。普通なら怖くない筈なのに、とっても怖くなってしまうのです。『あはッ』『反逆したからには相応の罰を下さねェとなァ!? ユピテル!!』。笑って、嗤って、わらって。親分は──「袋の男」は。その本懐を果たそうと、するのでした。)   (3/16 16:35:18)
大和守/ユピテル > (先ず襲い掛かったのは、仕返しの様に振り下ろされたナイフの痛みでした。あたしの物とは比べ物にならないくらいに鋭くって、早くって。その分痛いのも当然でした。)「──う、ぁ"っ、ッ!! い、ッあ、ぁ、……や、やだ、ぁ、止めて、よぉ、……」(避けきれず二の腕にそれが刺さってしまいました。痛みで座り込みかけたせいでナイフは抜けて、沢山血が出てしまいます。『獲物を前に止める訳ねーだろッ! ゲラゲラゲラッ!!』。泣きそうになりながら言った言葉に、嗤いながらそう返されて。そして殺意が凄くって、こうしてちゃ殺されるのは分かりました。今のあたしは化物だと、不死だと分かっていても怖いものは怖いのです。)「っ、この……ッッ!!」(何かされる前に、ナイフを振り上げてお腹へと刺そうとします。周りはとっても暗くて、あたしは真下にいたせいでよく見えなかったのでしょう。手応えは少なかったけれど、確かにそれは刺さりました。)   (3/16 16:35:40)
大和守/ユピテル > 「だ、大丈夫か、ユピテル……全く、酷いと思うんだけど。……そ、そう、よ、二人の言う通り、よ……!」(嗚呼、やっと二人が喋ってくれた。これでやっと、安心できる。何時もなら出来る筈なのに、どうして今はこんなにも不安なんでしょう──『ゲラゲラゲラゲラ!! あ~~、痛ッたいわァ! てか下手な演技は止めなさいって、最早見苦しいわよ?』──『ねぇ、ユピテル』。そんな、思いに浸る暇もなく。目の前に、麻袋から覗く紅い瞳があって。それに一瞬、怯ん、で。)「…………………ぇ"、ッ、ぁ"……」(───次の瞬間には、首にナイフが刺さっていました。あまりの痛みで、というよりかは。声を出す為の器官までナイフが刺さったせいで、声を出す事が出来ません。勢い良くナイフが抜かれて、血が吹き出して。くらくら、して、ふらふら、して。)   (3/16 16:36:19)
大和守/ユピテル > (『──ゲラゲラゲラゲラゲラッ!! あ~、たまんねェなァ!? そうそう、そういう顔がず~~っと見たかったんだよ……』。にやにやと嫌な笑顔のまま、嗤っていました。今あたしは、どんな表情をしているのでしょうか。きっと、きっと、そう。あたしが今まで見てきた、人達の様な。絶望を浮かべているに、違いありません。)「ぇ、ぁ、あ…………ッ」(声が出ない。何かを訴えたくても、話したくても。……嗚呼、嗚呼。きっと、今まで虐げてきた人達もこんな気持ちで、絶望で。これなら、もう止めた方が良いんじゃないかなって思うけど。でも、心の何処かで、それは駄目だって言われるんです。絶対に人を殺すのを止めちゃ駄目だって、沢山楽しいことをしようって。)(『さァて──そんじゃあ、帰りましょうかァ? 勿論てめェは【子供】として、なァ!』。その意味は、つまりは。本当にあたしを、拐って、殺すつもりなんだと。)   (3/16 16:36:34)
大和守/ユピテル > (それが何より苦しくて、辛くて。死にたくない、という思いが強く、募って。)「────ッ、!!」(よく考える暇も無く。それでも何か行動を起こされる前に、あたしは。全力で押し退けて、そのまま駆けていきます。痛みと出血のせいで何時もより遅いけれど、それでも捕まらない様にって、全力で。そんな中、背後から『へぇ? 随分アタシ好みの展開だわ……安心しなさいなァ、何処に行っても絶対見つけてあげるから……今は見逃してやるよッ!』なんて、声が聞こえたのです。見逃す。つまり今は殺されないという事で──。)「っ"、ぁ……っ」(安心したせい、でしょうか。路地に入った、所で。あたしは、そのまま。意識を、失っ……──て────。)(嗚呼、何て愚かだったんでしょうか。一人から逃げ切れた所で……まだ殺される可能性は、沢山あるのに。本当に、視野が狭いものでした。)【「子供」と「悪」が出会う時】〆   (3/16 16:36:53)