ガデューカ

特効薬発見

クロ:ガデューカ > ( 陽が落ち、月の光が世界を照らす。びゅう、びゅう、と風が強く吹き荒らし何度も何度も窓を叩きつける。ガタガタ、がたがたと無機質な音を奏でる窓。どこからとも無く入り込み灯りを揺らす風。 肝心の部屋の中は資料や物で埋め尽くされており、人が埋もれて居ても分からないぐらいにはぐちゃぐちゃになってしまっている…そんな悲惨な状況の部屋の持ち主は何処に居るのかと云えば__夢の中である。)   (3/14 00:12:39)
クロ:ガデューカ > ( ざわざわ、と草木が全身全霊で声を上げ、日差しがそれを見守る。鳥の声、川の流れる音が微かに遠くから聞こえてくる、自然豊かな田舎村。身体の大きな、だが猫背で何処と無く優しげな雰囲気を放つのは紫の髪色を持つ男。手には竹籠、中身は緑色のモノで埋め尽くされており、ハーブの独特だが心を癒してくれる良い香りを放っている。私はそれ見て、「 父さん 」と一言声を掛けて近寄る。 土の蹴る音、振り向く父と呼ばれたその男は、大きな体を丸めて『 また見に来るのかい? 』と苦笑いを零しつつも、手を差し出してきた。_私はソレが、その手が好きだった。   (3/14 00:12:41)
クロ:ガデューカ > 父は薬を作るのが酷く上手だった。父の口癖は『 自然の恵みに感謝しなさい 』と云うものであり、私も感謝の心を忘れないようにしていた。とはいえ、やはり無邪気な年頃の娘。私の村はかなりの田舎で、娯楽なんて余り無かったものだから一日中川遊びをしたり、山で駆け回ったり、巫山戯たり、無茶をしたりと、それはまぁお転婆が過ぎる生活を送っていた。そんな生活を送るからこそ、要らぬ傷ばかりを負っては父や母に治療をして貰っていたのだ。 ある時、鹿や熊狩りをしに行くと言い出した数人の村人に対して父が真剣な眼差しで説明しつつ何かを渡しているのを見掛けたのだ。私はそれが何かを知りたくて、その日、父が自室で調べ物をしている時に" 教えて欲しい "と言ったら、あっさりと父が優しく教えてくれたのだ。   (3/14 00:12:51)
クロ:ガデューカ > 『 良いかい、さっき渡したのは鳥兜だよ。鳥兜の毒は効き目が良いからね、刃物や何かに塗るんだ。そうしたら狩りやすくなるんだよ。』優しそうな顔つきで、鳥兜を見せながら父は教えてくれた。けれど、私はどうにも不思議で堪らなかった。 「 父さん、でも鳥兜は根っこが漢方に、薬になるんじゃなかったっけか 」 そう、鳥兜は子根の部分が漢方薬_つまり薬になるのだ。つい先月、教えて貰ったばかりで私は酷く疑問でしょうがなかった。首を傾げ、うぅん、うぅんと唸りながら考えるけれど、幼い私は理解が出来ない。なんとも情けない顰めっ面を父に見せながら「 分からないや 」と呟けば、父は優しそうに、けれど熊の声のように大きく笑いながら私を抱き上げて部屋から出て、外に向かった。   (3/14 00:13:01)
クロ:ガデューカ > 歩く度に揺れる身体。玄関を開くと、暖かい風が私と父を包み込む。雲が遊覧飛行し、鳥が合唱会をしている中、父は私の身体をその大きな両手で持ち、天に向かって高く上げた。そして、満面の笑みで言ったのだ。 『 良いかい、毒と薬は紙一重なんだ。ある時は毒として牙を向けるかもしれない。けれど、ある時は薬として私達に力を貸してくれるんだよ。御前は、御前の名前はね、ある時は毒として敵に立ち向かい、ある時は薬として皆を救う_そんな、強くて優しい子に育って欲しいんだと、そう願って付けたのさ。 』   (3/14 00:13:16)
クロ:ガデューカ > 『 鳥兜( アコナイト )はね、酷く美しい花なんだよ 』)   (3/14 00:13:23)
クロ:ガデューカ > ( _バサッッッッ と、音がなり床に落ちていた筈の資料が部屋に飛び散る。ふわりふわりと空を舞い落ちる紙には目もくれず、" 床で寝ていた "毒蛇は急いで机に駆け寄り、棚を漁っては適当に物を置き始める。「 ある時は毒として…ある時は、薬として…__ 」ぶつぶつと独り言を呟き、雑に資料を掴み、ペンを走らせる。__何分経っただろうか、否、何十分、_否、否。何時間経っただろうか。いつしか吹き荒らしていた風は止み、月夜が帰り、朝日が部屋に差し込んでくる。毒蛇は顔を上げ、ボサボサの髪の毛に、クマの酷い顔を、口角を上げた。そして、まだ早朝だと言うのにも関わらず急いで部屋から出て走り抜ける。目指すは_苦しむ患者の元。「 毒と薬は、紙一重…!!!コレが本当なら、あの水は命の水は本当に命を芽吹かせる薬になるはずさ…!!!! 」 そんな事を、呟きながら ) 【 特効薬発見 】   (3/14 00:13:33)