ディラン&禍善

奇跡

シロー/ディラン > 「⋯⋯っ」(医務室とは名ばかりの隔離室に足を踏み入れたディランは、息を飲むと僅かに眉を顰めて、発症者を視界から外すように思わず視線を下げてしまった。⋯⋯⋯この災厄によって、整備士の中に発症者がいたり、兵器の製造をしても運用する騎士が足りないなどの理由で工房はほぼ昨日を停止してしまっており、整備士らは仕事を失っているに近い状況に陥っていた。近頃は工房内でやる事もなく居座っているディランを見兼ねてか、時間があるなら発症者に祈りを捧げて欲しいとの連絡を騎士から受け、こうして足を運んだ次第だが、ディランはあまり気乗りがしないのだった。)「⋯⋯失礼します⋯⋯っ」   (3/11 23:46:51)
シロー/ディラン > (気を入れて一歩踏み出せば、焦点の合わない視線と共に発症者達の喚き声が体を貫いた。背中を丸めて逃げるように進んでいくと、寝台の一つに横たわる比較的静かな人が目に入った。長い髪が印象的で、女の人に見える。自分もああだったとはいえ、暴れる人に近づくのは怖いという理由で大人しく見える人へと近づいていく。)「⋯⋯⋯」(自分に背中を向けるように体を横にして横たわる後ろ姿を見て、静かに息を吐く。自分でさえ、アデルグント団長に助けられた稀有な例。騎士でもない自分の祈りにそこまでの奇跡が熾せるとは到底思えないが、やる以上そんな気持ちではいけないと腹を括り。その肩に静かに手を伸ばし、割れ物を扱うかのようにおっかなびっくり、震える両手を乗せた。)「あ、安心してください、祈りを⋯⋯捧げに来ました⋯⋯」(抵抗がなければ、此方を向かせようと少しずつ力を込めるだろう。   (3/11 23:46:53)


大和守/禍善 > (けらけらころころくすくす。ちいさく、そして静かに笑みを溢し続ける。と思えば次の瞬間にはぐずぐずとまるで涙を溢し、またはどうしようもなく愛がほしいと嘆いていた。その姿も今は身を潜めていて、何を思っているのか感情の灯らない表情を浮かべぼんやりとしていた。辺りの声など聞いていない。貴方の声も耳に入らず、感覚が鈍っているのか肩に手を乗せられても反応を見せず。だが、力の抜けた肢体が勢いよく仰向けになれば流石に異変に気付く。)「っあ、ァ……う、あ、は、なァにだぁれ……ふ、ふへ、くすくす、ふ、ぅ、っえ、あ、……あー、……愛、祈り、祈り、? それは、あ、愛、……だっ、け、あは、ふふ、わかんなッ……っひ、……ッ」(途端、禍善はわらいと悲哀と求愛とをその様子を一気に変えるだろう。けれど叫ぶかと言われたら否で、暴れるかと言われたらそれも否で。饒舌に語るだけで特に何の害もない発症者。ただ今の禍善は何時もの面頬を着けていないせいで口元が見えるだろう。口元には醜い火傷跡が蔓延っていて、禍善がそれを隠す理由が容易に納得できる代物。普段なら必死で隠しただろうが、狂気に陥ったその思考ではそこにすら行き着けないのだろう。)   (3/12 00:11:22)


シロー/ディラン > 「う⋯⋯っ⋯⋯⋯⋯大丈夫、大丈夫です、落ち着いてください⋯⋯」(思わず肩に伸ばしていた手を引っ込めてしまった。口元の火傷も相まって、静かに狂気を孕んだ表情を振りまく様子に不気味さを感じて喉を鳴らすと、震える手をそっと手に重ねる。今にも自分に襲いかかってきそうで、ばくばくと鳴る鼓動の音と共に息が僅かに荒くなる。恐怖を隠しきれずに激しく揺れる瞳を、もし襲いかかってきたらという理由で一挙一動を見逃さぬよう彼の腕に向け。重ねていた手を離すと、静かに祈りを捧げるのだった。)「偉大なる太陽よ、私の願いを聞き届けてください。かの者を蝕む毒をその神聖なる輝きの元に浄化してください。⋯⋯太陽の名のもとに⋯⋯」(⋯⋯大丈夫、と繰り返した言葉は、単に襲われるのが怖いから落ち着いてというだけのものであった。拙い祈りを手を組んで捧げると、重ねて震えながら祈り続けた。)「どうか、かの者に母なる太陽の暖かさを分け与えてください、同胞を襲うことの無いよう、どうか、お願いします⋯!お力をお貸しください⋯⋯!」   (3/12 00:32:33)


大和守/禍善 > (貴方が手を組んで、そして捧げる祈りの半分すらも禍善は理解出来ていなかっただろう。ぐちゃぐちゃと三つの主張が混ざりあっていた脳内はやがて透き通った泉の様に平静を取り戻し始め。)「っあ、う……」(最後に小さく、呻いた。溢れていた感情は元の瓶へと詰められて、奥深く仕舞われては倒す事の無い様大切に扱われるのだ。ことりと瓶は置かれ、後には掴み所の無い煙だけが残るのだ。)「あ、れ……あ、ああ、……えっと、迷惑掛けちゃってごめんね~、有難う。……助かった、君のお陰だよ」(へらへらと、先程までの感情は綺麗に消え去ったかのように飄々と言葉を紡いだ。けれども最後の感謝の言葉には心からの思いを込めていて、小さく笑みを浮かべてみせた。本当に、貴方が今此処で助けてくれなかったら、ずっとこのままだとかそういう事もあったかもしれないのだから。……あんな姿じゃ、女の子達に振られる事間違いなしじゃないか、なんて胸中で軽口を叩いてみたのは良いものの。嗚呼、でも本当に。……有難う。)   (3/12 00:56:25)


シロー/ディラン > 「⋯⋯⋯⋯」(無論、司祭達の魔術のように目の前で奇跡が顕現することは無かった。騎士としての霊性も、騎士修道会で信仰を捧げ続けた経歴もその全てが騎士団の魔術師達に劣る自分では当たり前か、と達観する気持ちが心のどこかにあったのか、緊張を孕んでいた視線は彼がアクションを起こした途端に見開かれた。)「あっ⋯⋯」(思わず零れたのは情けない声で、知性を取り戻したかに思える纏まった言葉を受けて漸く顔を輝かせた。)「ああ⋯⋯良かった⋯⋯!⋯⋯ああいえ、ただ天道様に祈っただけです、俺は何も⋯⋯。良かったです⋯⋯。⋯⋯⋯⋯あぁ、騎士に話を伝えてきますね、失礼します」(君のお陰なんて言われても実感はなく。ただ太陽にお祈りしただけの身としては、感謝すべきは神様であり自分ではない、と苦笑いを浮かべた。こんな風に感謝をされた経験は少なく、その後いたたまれなくなったのか声を上げると、先程と比べて少し軽い足取りで部屋を出ていくだろう。)「───ありがとうございます⋯⋯」(その後、工房に戻る前に礼拝堂によって、手を組んで祈りを捧げるのだった。【奇跡】   (3/12 21:21:35)