ターラ&ディラン

贖いは墜落の中に

清瀬/ターラ > (すれ違う顔は皆等しく頬に窶れのレッテルを張り付けていた。焦慮に駆られ業を煮やしたり、不虞に胸騒ぎを隠せずにいるのが何でもない他者の筈の自分にも見てとれてしまう。有り難くない以心伝心の理由は最初、号砲を鳴らしながら渇きの地、カンタリを襲った。水に羅針盤を狂わされた船が暗礁へと乗り上げるのは予想に難くないことであるように、一卒の機械騎士に国の行方を任せられた会戦の地はあっという間に潤う大海原となった。鋭い刃の間欠泉は右腕を浚い、仲間の助けもなければ文字通り海の藻屑となり果てていただろう。左手で握った反対の二の腕は、もう前のように仄かな暖かさを返してくれない。未だ馴染まぬその感覚に落胆と離愁のため息を溢しながら、鼻を擽る匂いのかよう扉をひいた。)「失礼、します……。あの、何方かいらっしゃいますか。……ターラです」(一層影を落とした灰色の瞳を伏せがちに、視線は床を泳ぐように視線を揺らめかせていた。向けられる非難轟々を幻聴して両手を固く握りしめると、沓摺の向こう側に行けずにただ誰かが気付くのを待っていた。)   (3/9 22:02:54)


シロー/ディラン > (工房はいやに静寂が広がっていた。イモータルから助け出され、一時の療養期間を経てからというもの。続け様の災難とばかりに突如王都を襲った狂い水の再来。混乱に乗じて、各地ではシュクロズアリ旅団の攻勢を受けた、陥落した、と情報が飛び交い、訳の分からぬ事を叫ぶ発症者の喚き声に包まれる騎士団本部の中心部からは離れたこの工房は決まって静寂が支配している事が多かった。整備士の中に発症者がいたり、兵器の製造をしても運用する騎士が足りないなどの理由で半ば機能が停止した工房内の一角に、ディランは座っていたのだった。⋯⋯そんな中、突然響いた来客の声。)「あっ⋯⋯⋯ターラか、お疲れ様。腕は大丈夫?何か、アーツに違和感があったりとか⋯」   (3/9 22:29:47)
シロー/ディラン > (椅子から体を急いで起こしてカレンダーを見れば、そこには「整備 ターラ」の文字があった。急いで入口へと向かえば、そこにはアーツ部分を抑えた機械騎士がいて。庇うような素振りに何かあったのかと心配げな表情を向けるのだった。ディランもまた、例の災害の発症者であり、アデルグント団長による治療で症状が収まった稀有な例であった。やる事もなく、ただ日々の習慣で工房に出向いては一人過ごす、という時間を送っていた弊害で、どこか感覚がズレていた。小さな診療台の様なものが置かれた一角へとターラを案内し、寝転がる様に促しながら覇気の無い声色で言葉を続ける。)「⋯⋯暫く、戦列に並ぶのは無理だな、安静にしていてくれ。何があっても」   (3/9 22:29:49)


清瀬/ターラ > (活気の失せているのは此所とて同じ事のようであった。重なった予定や慌ただしい毎日が多くて、最後に此所に訪れたのはそういえばイモータルの一件の直後のような気がする。湿に錆びた武器と寂れた工房内。重厚な音をあげることのない名も知らぬ機械だけが睨み付ける、取り残された世界。そこからやってきた整備士は、これもまた縁と呼ぶべきなのか。)「ディラン、さん。……腕は。まだ調整が、必要で」(どこか控え目にぎこちなく伺う彼に誘われるまま後ろを着いていき、診察設備の置かれた一角へと歩きながら手袋を外して腰のベルトに引っ掛けた。黒いカラビナが風鈴のように鳴り、宛ら尾のように皮手袋が揺れる。自分がカンタリへと向かう以前のアーツ調整では、此所で彼の姿を見かけることはなかった。居た堪れない気持ちが募ってどうしようもなくて、しっかりとディランの顔を見ることはできなかった。逃げるように顔を剃らしながら簡易的なベッドに仰向けになり、アーツを貴方へと向けた。)   (3/9 23:02:37)
清瀬/ターラ > 「でも、敵は今も攻めてきて…すぐそこ、まで……」(彼はどこまで知っていだだろうか、私の様態を、この様を。精彩のない声が出撃を咎めた。背けていた顔を思わず向けると詰まりながらにほんの少しの誠意を振り絞った。途中瞳が捉えた憂いげな顔に喉は自然と閉ざされて、塞いでいた不安が溢れそうになる。この人は騎士への反駁にも耳を塞いでくれる人。そう思うと恐怖の捌け口は今や貴方しかいないような気がしてならない。甘え方などは知らない、特別に親しくない相手には尚更であった。それでも何とか“気付いて欲しい”という我が儘のままに、巧妙でもなく下手くそに繕った見栄の内側の幼い心を暴いてほしたがる。)「腕……。無くなっちゃったん、ですね。あはは、私……整備士さんの仕事、増やして……ああ、腕…ほんとにないんだ………」(素直に「痛かった」「死ぬような目にあって怖かった」とはどうしても言えなかった。袖を通したこの空色への反逆をおめおめと口にはできなかった。右腕を僅かに上げて指先から伝うように腕を見つめると、流れた涙を隠すように反対の腕で顔の上を覆った。)   (3/9 23:02:41)


シロー/ディラン > (自分が、イモータル、狂い水、と使い物にならなくなっていた間、ターラは一人戦っていたらしい。話には聞いていたが、その腕の有様をこの目で直接見たのは、これが初めてだった。「調整が必要」ただその一言だけを頭で反芻して、整備士であるからと意識を深層へと落とし込む。手元が狂いそうだから、なんて理由は後付けで、ここまでの負傷を負ったターラの内にある感情を直視するのが怖いからというだけなのは、何より自分が理解していた。)「⋯⋯そう、か。」(敵がすぐそこまで、と耳にして、小さく相槌を返す。そうか、やっぱり噂は本当だったようだ。工房にこもりきりだったディランには確かめる術も勇気も無く、ターラの言葉で初めてまた現実を見た。⋯⋯アーツは、ターラの腕を肩辺りから伸びていた。それは、ターラが戦争で腕一本を失ったことを存外に現していて、金属の冷たさがひやりと指先を刺す。このアーツを取り付けたのは機械技師だろうか、それともハンスだろうか。まだ間もないから調整が必要なのは当たり前で、問題無く手術が完了している事が更に現実味を帯びさせた。   (3/9 23:31:44)
シロー/ディラン > アーツの基盤部分を工具で調整し、手首などの関節の動きを一つ一つ、曲げて確認している所で、ディランの腕が止まった。)「⋯⋯⋯⋯ターラ⋯⋯」(懸念していた事実が目の前で起きたのだった。瞳を袖で隠して肩を静かに揺らす姿を見つめてから、静かに視線を落として、堅いターラの掌を黙って見つめた。現実を見たくなかったのは、ひとえにターラに掛ける言葉の一つも見つからないからであった。自分にしてやれる事が何一つ無かった。何度も迷惑を掛けたのは俺で、最初こそ機械騎士であるターラの保護者気分で気にかけていた自分が恥ずかしいと思った。一回り近く歳の若いターラが命を掛けて戦っていて、自分はといえば騎士に迷惑を掛けた上で、一人ぬくぬくと過ごしてきた。⋯⋯何か、何か言わなきゃ。何度も口を開いては乾いた息だけが漏れるというのを繰り返して、小さくぽつりと呟いた。)   (3/9 23:31:54)
シロー/ディラン > 「⋯⋯ターラは凄く立派だったよ、尊敬する」(ごめんや大丈夫なんてありふれた、責任の持てない言葉を言う気にはとてもじゃないけどなれなくて、一言責任の持てる言葉を呟くに留まり、静かにアーツの整備を続けて行った。)「⋯⋯王国がもしも⋯⋯。⋯⋯どうなっても、俺が整備するから。」(⋯⋯戦わないでくれ、の一言はどうしても言うことが出来なかった。   (3/9 23:32:06)


清瀬/ターラ > (時間が経つにつれて行きどころのない感情は昂るばかりで、慟哭を必死に噛み殺すようにしゃくり上げる。せめて喚いてディランにあたることだけはしないでおこうと口を固く閉ざしても、鼻から声とも形容し難い音が途切れ途切れに漏れてしまう。情けない泣き声が溢れてしまいそうで返事すら儘ならなかった。痛覚を感じることのない筋電義体は機械騎士たる証そのものであり、戦いから逃れることを許さぬ誇りの枷であり、そして初めて見てくれを人と並ばせる為の道具。これがあって初めて、私は手を組んで神に祈ることを許される。目に見えるものを信仰するのが王国の人の性。機械技師という存在はターラにとって、崇拝とも似てとれる尊敬の念を贈る存在でもあった。)   (3/10 22:24:01)
清瀬/ターラ > 「……っ。ごめん、なさい」(声色だけでは心境が読み取れずにいて、視界を黒く塞いでいた左腕をほんの少しだけずらした。右目から見える景色に写った男の姿は、照明の下にやけに蒼然と映る。決して良い方向へと向かわなかった空気に気圧されて咄嗟に出たのは謝罪だった。ディランが何を考えているのかも、何がその瞳を愁いを帯びた色にさせているのかも、手を触れているだろうこの距離に居て尚察することのできない自分は、どうしようもなく嫌な人間。その言葉の空白は、噴き上がろうとする感情は、何者か。)   (3/10 22:24:02)
清瀬/ターラ > 「泣いても、なにもならないです、よね。……だっ、大丈夫です…安静に、します……暫く、は」(何かが変わるわけでもなければ彼は私を特別どうこう想ってくれている訳でもない。何か救ってくれるのではと確証のない期待を思い込んでしまうよりは、まるで自分が誰かの特異であると恥ずべき勘違いをしてしまうよりは。自分ができることと言えば人一倍の努力だけで、整備士が居なければ片腕のない只の一般人以下で。此所にしか居場所はないのに、此所でやりたいことも手の中に収められていない。すがることを咎められてしまえば、私は何ができるだろうか。眦が赤くなるまで制服の生地で何度も擦って顔から腕を退かす。最適解が永遠に見つからず、消え入るように保身を後付けたりして誤魔化すのが精一杯。何をしても彼の機嫌を損ねるか不満を貯めてしまうかに転ぶ未来しか見えず、声は震えるばかりで苦笑も上手く繕えなかった。)   (3/10 22:24:17)


シロー/ディラン > 「いや⋯⋯。⋯⋯⋯⋯っああ、そうして欲しい、そうしてくれ⋯⋯」(謝罪の言葉も、強がりにも聞こえる言葉にも返す言葉が思い浮かばずに。「謝ることなんてない」と言いかけた口を噤んでから、自分の言いたかった事の一つを口にしてくれたターラに被せるように頷くことしかできなかった。⋯⋯アーツには、何ら問題箇所は無く、残酷な程に滞りなく機能していた。静かに工具を置いた音が響いて、部屋を互いの息遣いの音だけが支配する。冷たい金属の腕を掴んでいた手をゆっくりと離すと、ぽつりぽつりと事務的に言葉を紡いだ。最早、そうする事でしか滑らかに口を動かすことが出来なかった。)   (3/10 23:14:01)
シロー/ディラン > 「⋯⋯問題は無かった。至って正常で、日常生活にも問題は無いと思う。また二週間後に定期検査、不調箇所があったらその都度来て欲しい⋯⋯」(ぐっ、と拳を握って、普段はしっかりと上げている前髪が顔を下げた事によって額と目を覆うように落ちて、口の端をきゅっと結ぶのが見えるだろう。前髪の隙間からターラの表情を覗くと、静かに椅子から立ち上がって、ターラももう寝転がらなくていいことを暗に伝える。)「⋯⋯沢山泣いて欲しいよ、この前も言ったけど、ターラは道具じゃないから⋯⋯」(何処か自分を軽んじているような、そうじゃなくても必死に向き合おうとして、年相応な部分を隠そうとするターラの言動は、何処か危なっかしくて見ていられなくて。ターラに視線を向けないまま続けた。)「立派だったけど⋯⋯無理をしそうで、俺は、心配だよ⋯」   (3/10 23:14:03)


清瀬/ターラ > 「わかり、ました。ありがとうございます……」(鬱屈した影を落としながら椅子から立ち上がるディランを見て、恐る恐る体を起こす。照明の強い光に晒されていた瞳は視界に藍色の靄のような汚れを残してチカチカと眼の裏側を刺激する。瞬きと共に解放された冷たい拳を何度か握ったりほどいたりしながら、継ぎはぎに言葉を返した。徐に髪を掻きむしるとヘアピンを外して意味もなく前髪を直したり。覚束ない体を無理やり馴染ませるように、どうしても気になる衝動を誤魔化すような仕草。お礼以外に何を言っていいのかわからずに視線を落としていると、かけられた言葉に胸を刺されたような感覚を覚える。)   (3/12 22:28:54)
清瀬/ターラ > 「別に、私…無理してるわけじゃ……」(心臓の内側を摘ままれたような鈍い感覚は、イモータルに浚われたあの時にも感じたもの。弱音や不全といった弱点を隠していると、不都合があるのだという。周りを不安にさせるよりも強かにあるべきだと思っていたものは、無駄とは言わずとも効能は無かったというのだろうか。不安なんてものは誰しもが思い悩むもの。自分だけが特別、ましてや人並みに才能を振るうことのできない自分が述懐したって、誰かの同情こそあれども空回りな悲劇のヒロイン。戦線に立つことの怖さは、ディランだってよく知っていること。誰か一人だけが、私だけが嘆き慰められるべきではないのだろう。)「あの」(泣いてもいい、その一言が止まっていた涙腺をそっと撫でた。背を向けていたディランを軽く叩くように声を投げ掛ける。靴の踵を爪先で踏んでそっと脱ぎ、ベッドに腰を掛けていた状態から脚を体の方へと引き寄せた。)   (3/12 22:28:56)
清瀬/ターラ > 「もう、ちょっとだけ…此処、お借りしても…いいですか……」(綺麗な含み等はない嘆声を何度も溢した後に、視線を合わせることなく一つ我が儘を要求した。壁に凭れて項垂れると額を腕で隠し、力の籠った足先で、敷かれた白のシーツに皺を作る。)お仕事の邪魔はしません、から。ほんの少しだけ。そうしたら、帰ります、から……」(人前だというのに、子供のように蹲る自分が情けなかった。ディランの言わんとしていたであろう事は何一つとして理解できていないのだろう。年上であるから、仕事上の付き合いという壁があるから。障害となる種こそ沢山あったが、専ら「頼りたい」の一言が見つけ出せぬことが、未だに弱点を露呈できぬ理由であった。)   (3/12 22:29:05)


シロー/ディラン > 「⋯⋯⋯」(無理してる訳じゃない、の一言も強がりのようにすら聞こえてくる。目の前で泣かれてしまった事が切っ掛けで、ディランはターラに激しく同情してしまっていた。ぬくぬくと生きてきた自分に同情など出来るはずもなく、思い返されるのはアデルグント団長、そしてヘスティア万騎長の宣言であった。────『この就任式を。機械騎士達の為のモノに致します』『信念を以て誓いを立てるべし、志ある者よ。』⋯⋯アデルグントの放つ誓に心打たれていたのは、他でもないターラ達、機械騎士なのではないか。『さて、それ程の稀代の名君に対して、何もお返しせずにこの叙任式を終えたくはないと思っている騎士も少なくはないのではないですか?機械騎士達などは、特に……ね。』⋯⋯ターラも、万騎士長の言葉に賛同して武器を掲げ、機械騎士として報いようとしたのだろう。⋯⋯そう思えば、〝もうやめてくれ〟の一言も、〝無理はしないでくれ〟という言葉も掛けるべきじゃないに決まっている。   (3/12 23:38:43)
シロー/ディラン > けれど、もう〝立派だった〟と戦場へ突き放すような言葉も掛けられなかった。ターラの為を思えば、その一言を捻り出すことも出来た筈なのに、彼女の涙を見てそれすらも出来なくなってしまった。まだ若い彼女達に戦う力を与えてしまったのは他でもない自分達なのだ。きっと無い答えを必死で探しながら、ディランは顔を伏せて口元をきつく結んだ。)「ん⋯⋯⋯」(静寂が支配する部屋の空気を裂いたのはターラであった。相槌のような返事を返せば、こんな顔は見せられないし、下手な言葉もかけられないと背中を向けたまま呟いた。)「⋯ああ、好きなだけ居ていいから」(自らの手で彼女を引き込んでおいて、何も出来ない自分がただ情けない。自分が魔術師だったなら、彼女の不安を少しでも拭うことが出来たのか。ちらり、と視線を向ければ、額を腕で押えて項垂れる姿が見えた。自分よりも強い筈の彼女が酷く弱々しく見えた。けれど、その一言で彼女の戦いぶりを貶すような真似はできない。⋯⋯ただ黙って彼女を抱き締めてやれる様な資格が自分にあれば、何か変わったのかな。ターラの家族のことは知らないけれど、例えば父のように振る舞えたなら)   (3/12 23:38:55)
シロー/ディラン > 「⋯⋯っ、た⋯⋯」(体をターラの方に静かに向けると、震える喉で言葉を紡いだ。)「⋯⋯っターラ⋯⋯。⋯⋯⋯⋯俺はターラの味方だから。⋯⋯いつでもターラの事を尊重するし、頼って欲しい。だけど⋯⋯」(決して、これが同情だと、これ以上傷付く姿を見たくないから、というだけだと気付かれたくはなくて、そこまで言った口を噤んだ。最後まで、戦って欲しくないとは言えないのだった。)「⋯⋯いや⋯⋯ずっと居てくれていいから。何かあったら、言って。出来る限りの事をするよ⋯⋯」   (3/12 23:39:08)


清瀬/ターラ > (瞳を閉じれば、音のないそこは世から置き去りにされたヴィンテージの工場。特別入り浸ることもなかった整備士の作業場だが、活気を失ったこの姿が本来のものでないことは言われずともわかる。好きなだけ居ていいという気遣いを孕んだ優しさに漬け込んで、返事をすることもなくただ蹲っていた。生気のない空間は、気を抜けばいつかの会戦の地に意識を放り込もうとしてくる。内臓の皺一つ一つを針先で抉られ、血管には焼けつくほどの劇薬を流し込まれたような、いつまでたっても拭えない痛み。波打つ地と猩々緋の幻覚に苛まれていると、呼ばれた字にはっと我に帰って肩を大きく揺らした。)「っは、はい………」(頼りたいと強く願う反面、その優しさが怖かった。その空白の意図は、暗い顔の本音は、ずっと敏い大人の隠した心は私にはわかるまい。綺麗なばかりでは生きられない世を清く生きられる人は、こんな場所には来ないのだろうと。抱いていた像が悉く辛い事実に塗り替えられていった此処での日々に、いつしか根本的な信頼がごっそりと抜け落ちてしまったよう。)   (3/13 14:08:15)
清瀬/ターラ > 「……ありがと、ございます。………その……いえ、何から、何まで。本当に…………」(口を開けば余計な謝罪やら要望が知らぬうちに溢れてしまいそうで、多くを語らぬうちに口を固く結んでもうほどかなかった。心細さは自身の温もりと思い込みで埋めて、尠くも貴方が居てくれる事だけで救われていると像を結ぶ。小さな頃から恋い焦がれた筈の不自由ない体。それが戦場へと手招く切符だとわかっていながら、誘惑に身を捧げたのは他でもない私の意思。無機質なこの体が、王国の叡智たる彼らの優れた腕がなければ、布団を被って枕に留まらず寝床を濡らし、襲い来る恐怖に怯え屈していただろう。只の騎士ではきっと生きては来られなかった、ディラン達がいてやっと、照らされた歩く道を辿々しく進むことができるのだ。────眠ることも叶わぬ静寂の中で、這い登る罪悪感を振り払いながら、どれだけ二人で孤独を過ごしただろうか。また顔を合わせ縁を繋ぐものは無常にも、勲章の痕を護る英知の利器なのだろう。)〆【贖いは墜落の中に】   (3/13 14:08:29)