アデルグント&ゼロイバ
紅鏡大和守/アデルグント > 「う"っ…………っ、あ……ぁ……」(彼女を看取ってから何れ程の時間が経ったのだろう。万騎長が亡くなったという事で騒がしかった医務室は更に騒然としたものになり、居たたまれなくなったアデルグントは医務室から飛び出していたのだった。かと言って執務室に戻る事も出来ず、何処に行くかと明確な目的も無いままにふらふらと歩く。心にぽっかりと穴が空いたような気持ちの悪い喪失感がアデルグントを深く支配していて、口からは言葉にも為らぬ呻き声と思わしき音が溢れ落ちる。ぐるぐる、ぐじゅぐじゅ、ぐちゃぐちゃ。目眩の様に足元が覚束ず不安定で、膿んだ傷口を弄る様に気味が悪く、泥をかき混ぜるかの様に粘り気が強い何とも形容し難い暗い感情。それらはずっとアデルグントの中を渦巻いて、我が物顔で居座って。明朗快活な団長の面影など、今やそこには無かった。) (3/5 01:06:54)
ゑゐりあん/ゼロイバ > …ん?あれは…(そんな暗い感情に押しつぶされている彼女とは打って変わり、何の変哲もない日常を送っていたゼロイバ。歩きながら煙草を吸っていると、前方に随分とやつれた様子の騎士団長が目に留まる)…ちょっと…ほっとけないねぇ(そういうとゼロイバは煙草の火を指でもみ消し、急ぎ足に彼女のもとへと向かう)よっ、団長さん。…元気ないね。何かあったのかい?(いつもの明るい調子で、しかしどこかに相手を慮る控えめさを交えながら挨拶をするゼロイバ)…もしよければさ、何かあったか聞かせてくれないかい?嫌なら別に強制はしないけどさ(遠回しに言うのはあまり性に合わないため、さっそく本題に入るゼロイバであった) (3/5 01:11:49)
大和守/アデルグント > 「……ぁ、あ、あぁ、……ゼロイバ……か」(後方から声を掛けられれば驚きからか一瞬びくりと体を揺らした。今は動作一つ一つが自棄に億劫で、緩慢ながらも貴女の顔を見返し。控え目ながらも明るく笑みを浮かべれば、記憶の中から貴女の字を引っ張り出して挨拶を口にするも、貴女の問いにその笑みはゆっくりと消えていき口を暫し閉ざした。)「…………ええと……」「……さっき……な。万騎長のヘスティア様……居るだろう。会戦の時に負った傷が深かったらしくて……それで……」(こんな話を貴女にしていいのだろうか、なんてアデルグントは戸惑っていたものの、貴女の声色に混ざっていた優し気な色を感じ取っては話す事を決意し。ゆっくりと、ではあるが語り出す。段々と小さくなっていく声、果てには途中でアデルグントは語るのを止めてしまった。その先は、言わなくてもわかるだろうか。否、どうか察してほしい。これ以上を語るのは、アデルグントには少し……かなり酷な事となる。思い出すだけでも涙が浮かんでくるし、まだ癒えそうにもない心の傷が疼いて痛いのだ。アデルグントは微かに俯いて、それ以降は何も語ろうとはしなかった。) (3/5 01:29:29)
ゑゐりあん/ゼロイバ > (決心をしてくれた彼女がゆっくりと、おびえながらも話してくれた。きっと辛いだろうに。悲しいだろうに。彼女は話してくれた。たった数言程度の言葉を時間をかけて話し、最後は言葉にすらなってなかったが、それでもゼロイバは全てを察した)…そうか。ありがとな、話してくれて(そうか。ヘスティア万騎長が死んだのか。彼女が団長だった時代はまだ自分は牢屋の中だったが、それでも聡明な人物だったと聞き及んでいる。そのあとを継いだ彼女にとって、ヘスティアはきっとただの前任者という枠組みだけでは済まないものがあったのだろう)少しあるかないかい?立ち話をするのもなんだろうしさ(そういってゼロイバは彼女の歩幅に合わせるように歩き出した) (3/5 01:39:02)
ゑゐりあん/ゼロイバ > しっかし…いい人ばかりが居なくなっていくね。消すなら、あたしみたいなどうしようもない悪人を消せばいいのに。神様も理不尽だねぇ。…それとも、善人だろうと悪人だろうと、命はみな平等ってかい?(歩きながら自分の思ったことを述べるゼロイバ。元海賊、ゼロイバ。彼女は多くの人間を殺してきた。無抵抗の人間を殺さないという矜持はあったものの、それでも多くの人間を殺してきた。私利私欲のためだけに。多くの人間を殺してきたのはヘスティアも一緒だろうが、それでも彼女には大儀があったはずだ。まだやりたいことがあったはずだろうに、為すべきことがあったはずだろうに)はは。…馬鹿らしいね(本当に馬鹿らしい。自分みたいな人間だけが今もこうやって生を謳歌しているのだから。この世界は、本当に馬鹿らしい)…万騎長は…最期に何か言ってたかい?(ふと気になって、アデルグントに尋ねる。口にしてくれなくてもいい。嫌なら答えなくてもいい。そう思いながら) (3/5 01:39:07)
大和守/アデルグント > 「……ああ」(少し歩かないか、という貴女の言葉に小さく頷いて、こつこつと固い足音を立てながらアデルグントはゆっくりと歩き始めた。時間が経てばこの暗く濁った思いも何処かへ行ってくれやしないだろうか。そんな思考は歩くにつれて薄れていき、代わりの様に思いばかりが増していく。気持ちが悪い。気味が悪い事の思いは果たして何時収まってくれるのやら。)「…………さぁ、ね……。あたしにはもう……」「…………何も、分かんない、よ……」(暫しの沈黙の果てに、『分からない』という言葉だけを絞り出した。それは返答に迷った故の適当な誤魔化しだとか、そういうものではない。『分からない』。もう何も『分からない』。──『分かりたくない』。理解を拒み無理解を叫び続ける頭蓋の中は、今や理解する余裕すら無理矢理奪おうとするかの様に強く強く鳴り響き痛んでいて、堪らずアデルグントはその痛みを少しでも和らげようと片手を頭の横に添え押さえていた。) (3/5 10:11:23)
大和守/アデルグント > 「ヘスティア様は……。……──最後まで、国の事を思っていらしたよ。……きっとまだやりたい事だってあった筈なのに、……」(最期の彼女の表情を見れば、それは明らかだった。けれどもそれを見届けたのは最期に居合わせたアデルグントだけで、他の者はそんな事なんて分からないだろう。嗚呼、本当にあの御方は、最後まで『太陽』として強く輝いていたのだ。何と言われようとアデルグントの中ではそれが全てであり、唯一。けれど、嗚呼……何も、伝えられなかった。ぽつんと残された、『恋慕』という己の中で唯一はっきりと色を持っていた感情すらも暗く黒くゆっくりと染まっていくのを感じた。)「あの方を救えなかった。助けられたかもしれないのに……それなのに、救えなくて……。救えなかった癖に、あたしは、私は……」(『このまま生きていて良いのだろうか』、という最も黒い感情はついぞ発される事は無かった。俯いてしまっているせいで表情は見えないだろうが、見えたとしたらそれは全く何も無い。ただの虚無で無感情で、名前も無い一つの感情だった。) (3/5 10:11:36)
ゑゐりあん/ゼロイバ > …そうか。本当にこの国が大好きだったんだな、万騎長は(最期の言葉を聞けたのならば、まだいいほうだろう。最期の最期に言いたいことを言えずに死んでいく者だっているのだ。そう考えると、ヘスティアは言いたいことを言って死ねたのだから、まだ幸せなのだとゼロイバは考えた。すると、アデルグントがヘスティアを救えなかったことを悔いる言葉を述べ始めた。それを聞いたゼロイバは彼女の肩に手を置き、彼女の顔は見ずに言葉を紡ぎ始めた)…今からいう話は、団長様にとって聞きたくない話かもしれない。…少し厳しいことだし、万騎長が何を言ったかもあたしはわからないから見当違いのことを言うかもしれない。…だけど…それでも言わせてくれ (3/5 13:08:37)
ゑゐりあん/ゼロイバ > (そういうとゼロイバは一呼吸おいて、再び口を開いた)万騎長は、団長に後悔をしてほしいと思ってるとは…あたしは思えないね。確かに万騎長の死は悲しいし、団長にとってはあたし以上に悲しいかもしれない。…でも万騎長は。先代団長は、団長に騎士団を託したんだろう?団長はたった一人の団長だ。たった一人の“騎士団の長”なんだ。いつまでも万騎長の死を悲しむのは、万騎長だって望んじゃいないとあたしは思うよ(そこまで言ってゼロイバは足を止める。そこは、人気のあまりない裏庭であった)…でも、辛いよな。悲しいよな。後悔すんなって言われても…無理な話だよな(裏庭をじっと見つめながら、やはりアデルグントの方は見ずに、そう呟くゼロイバ)悲しくて悲しくて…絶望の淵に押しつぶされちまいそうだよな (3/5 13:08:42)
大和守/アデルグント > (己の肩に貴女の手が置かれれば、アデルグントは一体何だと目を一瞬丸く見開いた。……一体、貴女は何を言うつもりなのか。その内容が全く予想付かず、多くの可能性が浮かんでは消えていった。)「…………」(──嗚呼、確かにそうだ。貴女の言う通りでしかなくて、それに対する言葉すらも出てこない。貴女の言葉をよく噛み砕き、理解し、嚥下して。)「そう……だな。確かに、ヘスティア様は……そんな事を望みは、しないだろう。こうして、騎士団長がくよくよし続けてるのも、駄目な……筈、だ。……けど、だけど……」(きっと、『太陽』の様な──否、事実アデルグントにとっての『太陽』であるあの御方はそれを望みはしない。騎士達の為に、国の為にと生きていた、あの方なら。最期までウェンディアの事を仰っていたあの御方なら。望みはしないのだと、それは理解している。『騎士団長』である己がこのまま悲しみに潰されるのが良くない事も。だけど一人の人間としてそれは、受け入れる事が出来なくて。受け入れられなくて。) (3/5 16:29:48)
大和守/アデルグント > 「…………『好きな人』を失って、直ぐに立ち直れる訳が無いでしょう……。でも、『騎士団長』としてこのままじゃいけないのは分かってます……。だから、『騎士団長』としてじゃなくて……一人の人間として……悲しませて、下さい」(嗚呼、本当に……何故言えなかったのだろう。私は、結局。彼女に、ヘスティアに、好きだと思いを伝える事が出来なかった。アデルグントの初恋は、相手に告げる事すら叶わず散ったのだ。堪らず、貴女から目を背け。)「……ごめんなさい、可笑しな事を言ってしまいましたね」(思わず涙を一粒溢しながら、一言そう呟いた。自分なんかの感情に付き合わせてしまって、本当に申し訳ないと思ってしまう。) (3/5 16:30:02)
ゑゐりあん/ゼロイバ > でもな(アデルグントの言葉を黙って最後まで聞いたゼロイバはそういった)団長はたった一人だ。一人の人間だ。…でも、独りじゃない(目を背けたアデルグントの肩に手をまわすゼロイパ。そして、優しく彼女の髪を撫でる)副団長や他の騎士たちがいるんだ。もちろん…あたしもな(そういうとゼロイバは両手を広げアデルグントの方を見る)来な。ここは人も滅多に来ないから、人目を気にする必要はない。あたしも口は堅いしな、誰かに言うことなんてないから安心しなよ。…今ここで辛いことを吐き出しちまいな。言いたいこと全部言っちまいな。今ここで、馬鹿みたいに泣いて、馬鹿みたいに後悔して、馬鹿みたいに絶望して。もう出ないってくらいまでぶちまけなよ。そうして全部ぶちまけて、すっきりしたら誓うんだ。…万騎長の遺志を継ぐんだって。万騎長の分まで生きるんだって。馬鹿なあたしだけどさ、受け止めてやることくらいは…できるからさ(柔らかく微笑むゼロイバ。その笑みは、普段の荒々しい彼女からは到底想像できないような、やわらかな暖かさが確かにそこにあった) (3/5 16:44:26)
大和守/アデルグント > 「え、あ…………」(髪を撫でられる感覚。その感覚は今までに味わった事が無くて、突然の事に肩をびくりと揺らし、続けられた言葉に二度目の驚きが訪れる。そんな事、『騎士団長』である自分が部下にして良いのかと。甘えても良いのかと、アデルグントは困惑していたが。──貴女の姿が、まるで聖母の様に思えて。視えて。ぽふんと小さく音を立てて、貴女の胸に飛び込んだのだった。)「~~~~っう、あ、ぁう……っ」(ぽろぽろと、涙がどうしようもなく溢れた。押さえ込んでいた愚痴やらが、堰を切った様に飛び出した。)「……なんで、なんでなんでなんで……ッ!! ……なんで、ヘスティア様を救ってくれなかったんですか、っ……!! ……だって私、……頑張りましたっ、今までで『一番』ってくらい頑張って……それ、なのにッ……!!」 (3/5 19:23:55)
大和守/アデルグント > (……何時も何時も、そうだった。昔から変わらない。何れだけ願っても変わってはくれなかった。そう、神様というのは何時も──)「──どうして何時も『一番』だけ奪うんですかッ!! 私が何をしたって言うんですかぁっ!! ──神様のッ、……ばぁぁぁあぁあかっ!!!!」(まるで子供の癇癪の様に、アデルグントは幼い暴言を吐いた。きっと貴女を驚かせてしまうだろうか。けれど、今は吹っ切れたのかその姿がどう見られようと構わないようで、ぐずぐずと涙を溢しながら愚痴を溢していた。彼女も、ヘスティアもアデルグントにとっての『一番』で、『唯一』だった。恋心を抱いたのもヘスティアが『唯一』の相手。そんな多くの『一番』を、『唯一』を。神というのは容易く奪い去っていくのだ。あと何れ程奪い苦しめれば気が済むのですか。……もう、いい加減にして欲しい。) (3/5 19:24:10)
大和守/アデルグント > (けれどそうして叫んだ事により、アデルグントの心の底に溜まっていた暗く濁った感情は大分姿を消していた。)「…………すいません、お見苦しい姿を見せてしまって。でも……有難う、御座います。貴女のお陰で……決意が、固まりました」(体を離しては貴女から数歩離れ、そして頭を下げる。貴女が居なければずっとこの感情を吐き出せず留まったままだっただろう。だからこそ、貴女には感謝しかなくて。)「私は、ヘスティア様の御遺志を継ぎ、そしてあの方が在られた様に自分も在る事を」(次に顔を上げた時には、その表情を固く引き締め。『太陽』であるあの方に届きます様にと、願いながら。そう、誓い、『宣言』した。) (3/5 19:24:30)
大和守/アデルグント > 「────太陽の名の元に」 (3/5 19:24:38)