セオドア&ステラ

ヴァンピールの追う夢

清瀬/セオドア > 「やぁ、お疲れ様。皆の様子はどう?………そっか、司祭は負傷者に手を回してるか。オレも何人か診るよ、名簿貸して」(水火に喘ぐ水の脅威は神託を求める魔術師にも襲い掛かる。患者を収容した、臨時的にベッドを並べた大部屋。いつもの愛想を切らしながら険しい顔で入ってきたのはこの騎士団の副団長その人だ。見張りと介護を担当している騎士から現状を聞くと騎士の手からバインダーを抜き取る。此所に字の記された皆は、水に異様なまでに恐怖を抱いた発狂の虜。掌を返した旅団の奴らや帝國の襲撃に皆憔悴と疲弊が溜まっており、現状耐えるしかないこの状況。くそったれが、もっと早めに旅団には厳しい手を打つべきだった。悔やんでもいられないこの惨禍で出来ることは、目の前の彼らを救うこと。足を止めた理由なんてちっぽけなもので、役職の欄に書かれた“司祭”の文字と窶れて尚愛らしい寝顔であったから、ぐらいでいいだろうか。)「こんにちはステラ。しんどかったら返事も無理してしなくていいし、横のままでいいからね」(バインダーを騎士に突き返すとできる限りの通常を装って声色を甘くする。ステラの小さな女らしい手をとると、笑顔と共に手を軽く握り締めた。)   (3/4 20:48:50)


シロー/ステラ > (目を閉じて、悪夢に魘される子供のようにステラは眉間を顰めながら、くぐもった公文の声を上げていた。眠っているのかと言われればそうではなく、現実と無意識の狭間にいるような、自らの考えている事など自覚出来ない程度の脳内でさえただはっきりと恐怖だけを感じていた。シーツを握り締める拳に力が籠って、深く皺を刻み込む。水の化け物に全身を蝕まれる⋯⋯⋯⋯ふと、突然すぐ近くで奏でられた声。他の患者から聞こえる苦悶の声は最早環境音と化しており、確かな知性を感じさせる明瞭な声は明らかな異物であった。はっ、と目を開けると怯えた表情で上体を起こそうとし、臀部を擦りながら背後へと数cm後退りした所で、どこか艶のない金髪を乱雑に振り回して頭を振った。)   (3/4 21:07:51)
シロー/ステラ > 「いやぁ!!!!水の化け物が!蛮族がわたしを!!やだっ!!いやぁぁあああッ!」(金切り声とも呼べる様な声色で叫びながら耳を塞いで、いやいやと頭を振り続け。それでも離れないセオドアに片手を取られると、今度は光のない桃色の瞳をぼう、っと向け。焦点の合わない瞳孔を見開きながら、ぶつぶつと語り始めた。)「わたしを必ず助けにきてくれるんです、物語の騎士様が。勇敢な騎士様がわたしを!!⋯⋯⋯⋯いやぁ!!!その目を向けないでください!!!汚らわしく濡れて⋯⋯あ、貴方も水の化け物⋯⋯ッ!!!」(取られた手をびく、びく、と痙攣させるように震わせると、目を閉じて涙を流しながら祈った。)「太陽神様⋯⋯、わたしを助けてください、わたしも⋯⋯わたしの目もこんなに汚れてます、ですけど⋯⋯どうか、主の御使いをわたしにも⋯⋯どうか⋯⋯ううう⋯⋯」   (3/4 21:07:53)


清瀬/セオドア > (この間のソウの時のように対話をはかれないかと声をかけてみたものの、既に足跡をつけられた雪の大地がその白さと清さを取り戻さぬように、彼女もまた乱れきっけいた。喚く声はこの混乱の中に紛れていく。狂気の効能こそはっきりとしていなかったが、幻覚や幻聴、秘めていた痛ましい過去の誘発による発狂などが挙げられるだろうか。ステラのもう欠片ほどしか残っていない理性はいつ削りきれてしまうかわからない。司祭のように優れた治癒能力など持たない己の魔術でも、祈ればそれは神への手紙となる。)「……神様、どうぞ」(握っていた手を離すと「ごめん」と一言、取り乱した貴方には聞こえないだろう謝罪を口にした。握った手を引き寄せて、静寂を裂く高い声を近づけるように貴方の体を腕の中に納める。抵抗を押し込めるように両手を強く結ぶ。鼻を擽る金の毛先と目の覚めそうなヌーヴォーな匂い。何かを強く訴えるステラの声を上書きするように神への貢物を唱えた。彼を取り戻した時のように、渇きに囚われた心を満たすように。)   (3/4 21:56:45)
清瀬/セオドア > 「栄華頽勢、世は必衰。──流るる水の湧きし御泉にまします神々よ、恵の溢れん輝きの棲み家より出で給え。今曇天の地に救いを、かの者に安息の慈雨を」   (3/4 21:56:47)


シロー/ステラ > (体が浮く感覚がしたと思えば、そのまま目の前の水の化け物に抱き締められる。濡れた瞳が見えなくなった事で僅かな落ち着きを取り戻したかに思えたが、セオドアの紡いだ呪文が終わりを迎えて数秒。とち狂ったかのように瞳を見開いて、口元を恐怖からぴく、ぴくと痙攣させつつもゆっくりと体を離した。)「⋯⋯わ、わたし⋯⋯は、ひっ⋯⋯っ!⋯⋯⋯⋯いや⋯⋯」(このまま、この騎士を騙る何かに殺されてしまうのだろうか。恐怖が脳裏の深い部分へと伝播するにつれて、ステラはどんどんと正常な判断が出来なくなってゆく。何度もしゃくりあげながら、震える両の掌をそっとセオドアの胸へと当てて、今一度体を寄せると、蚊の鳴くような声で呟いた。)   (3/4 22:27:19)
シロー/ステラ > 「⋯⋯ころさ⋯⋯ないで⋯⋯。⋯⋯⋯わたし⋯⋯」(どうすれば殺さずに居てくれるのだろうか。どうしたら見逃してくれるのだろうか。何を捧げたら、そこまで考えて、決壊した。掌に力を込めセオドアの胸元に顔を埋めると、濡れる顔を何度も制服で拭って、顔を押し付けながら咽び泣いた。)「たすけて⋯⋯⋯、⋯⋯アレイス、さん⋯⋯騎士様⋯⋯⋯⋯。アデルグント様ぁ⋯⋯っ、ヘスティア様っ⋯⋯⋯まだ、わたし、司祭になったばかりなんです⋯、何にもできないんです、だから⋯助けてください⋯⋯お願いします⋯⋯っ!⋯⋯う、うう⋯⋯っ!⋯⋯⋯⋯はぁっ⋯⋯!⋯⋯っ!!」(セオドアの胸元に服の上から爪を立てると、そのまま顔を上へと持ち上げて、セオドアの首の根元に噛み付こうとした。   (3/4 22:27:21)


清瀬/セオドア > (効いたか、否か。叫びの聞こえなくなった耳元が一瞬だけ伝えた希望は、虚しくもすぐに似非であると知ることになる。発せられた言葉は己を敵と見なすばかり。靴擦れに苛立つような気持ちが頭を掠って、情けない魔術は彼女も、俺も癒してくれない。奇跡の邂逅を逃したまま呆然と、押さえ込んでいた力はとうに失せていて、されるがままに身をステラに委ねるでもなく任せていた。)   (3/4 23:04:54)
清瀬/セオドア > 「……ごめん」(殺さないでという譫言が、どうしても響かなかった。ソウを救えた時はあんなにも心から安堵したというのに、ステラの何が彼と違うのか。……それは訪れた結果。もたらされた結末がハッピーエンドで幕を閉じたか否か。不幸に終わったこの演目に、妙な感想を抱かないようにしているだけ。食い込んだ爪が胸元を掻けば逆に心は痒くなるばかり。見上げた瞳が描く騎士の理想像にオレは居ないのだろう。ああそうだ、あいつらは誉れ高き理想の、例外泣く自己犠牲と慈愛に満ちたできた奴らさ。やるせなさ?もどかしさ?そんなものではない、ただ少し、疲れただけ。獣が喉笛を噛み切るその静かなる獰猛を見下ろしながら、ステラの頭を両手で支えて、狙いをほんの少しだけ下に逸らした。)   (3/4 23:04:56)
清瀬/セオドア > 「──っ!」(がり、と硬い石が鈍く削れる音がした。ステラの口内に滲むだろう酸味の鉄の味。誰にも見えないように赤毛のカーテンで伏せた顔は、額から汗を一筋流して苦悩に染まっていた。ふと訪れる浮遊感。いつの間にか駆けつけたらしい見張りの騎士にフードを捕まれると、ステラはそのまま別の騎士に身を抑えられていた。嫌だ嫌だと叫び泣く様子をどこか朦朧と見届けていると、有難いことにお叱りと心配をうける。)   (3/4 23:07:14)
清瀬/セオドア > 「ごめんって、そんな目くじらたてて怒んなくてもいいでしょ。……次、ほら。貸して」(床に尻をついた状態で冷たく騎士を見上げると、彼が片手に持ったバインダーを此方へ寄越すように手を差し出した。血の滲んだ首筋に貼られたガーゼは、本来ならば此所で自傷の衝動にかられた患者へと支給される筈だった物だろう。あっという間に赤色が染みていく様子は、これという何もない怠惰な時間。わざと噛まれた、だなんて誰も思わないことだろう。具合の悪いことは都合よく忘れてしまえば悩まなくて済む。この蟠りが消えるのは、丁度鎖骨のあたりの歯形が、肌というキャンバスから薄れる頃。皺を作った制服の襟を正せば、カルテの一枚目が捲られてその字の瞳に映ることはもうなかった。)〆【ヴァンピールの追う夢】   (3/4 23:07:16)