ギゼム&ヘスティア
マージ会戦シロー/ギゼム > (夕暮れのマージ城砦にて。先んじて前哨基地を落としたヨハンと言葉を交わして別れたギゼムは、目の前の城砦へと向き直って目を閉じた。思い返すのは、カンタリでのヨハンの戦いぶり。⋯⋯圧巻の一言であった。阿岸で出会った時の、世間知らずな坊ちゃんの様な印象が嘘のようであった。リント、スザン⋯⋯そして帝國元帥との密約を終え、幾つもの戦いを経たヨハンは、紛れもない誇り高きヨズアの魔術師。それに比べ、阿岸を守りきれなかった自分。⋯⋯抱いた感情、それは、負い目というには沈鬱としたものではなく。ヨハン、セリヤーナ、フィディアといった旅団員の戦いぶりと戦果に当てられてか、去来したもの。口元に浮かんだひくつく笑みと今にも震え出しそうな両腕、脳裏を染め上げる熱。ヨズア国復興が目前と迫ってきた事が、ただ、ギゼムに流れるヨズアの血を昂らせていた。瞳を開ければ、前へと進み出て来た一人の騎士へと言葉を投げ掛けた。)「⋯⋯マージ砦はこの俺が落とす!!─── 我、ここに希う。」(流れるように紡がれた呪文が続く。) (3/3 22:44:51)
シロー/ギゼム > 「古き神々の御名において、御力を此処に賜らんことを欲す。我、御身の信奉者たらんことを願う者なり、古き言葉に耳を傾けたまえ。」(両の掌を合わせ、指を組み。地の底から響くような重たい声で祈る。)「⋯⋯⋯朽ちし歪なる魂よ、我が字のもとに顕現せよ!!ダー・ニト・ロロイ・ギゼム!彼の者を穿て!」(字を名乗り叫ぶと、辺りに響き渡るように声を張り上げたギゼムに呼応するように、周囲の岩が礫がまるで何かに持ち上げられるように浮遊し始め、弾かれるようにヘスティアへと向かっていった。) (3/3 22:45:01)
マリア/ヘスティア > (原因不明の災害が王国中を騒がせている間に、王都周辺は猛攻を受けていた。ついにカンタリが陥落した時、ヘスティアも治療を切り上げて腰を上げた。砦の下の砂丘を踏みしめながら思い返されるのは、今は亡き部下にかつて言われた言葉。『戦いに勝利して……────……手に入れろ。……────それがお前ができる責任の取り方だ。』)「あなたは正しかったのかもね、トール百騎長。」(旅団と手を組んだ結果がこのありさまだ。自分はヨズアを恨むだろうか?……正直なところ、なんとも言えなかった。これは戦争なのだから、つけこまれる余地を作ったのは自分の責任だ。スザンの前哨基地が欲しいと言われた時から、信用なんかしていなかった。裏切られたとすらも思わない。だけど、この狂水の災害は……三年前にシュクロズアリ旅団が巻き起こしたものとそっくりだ。ここまでするとは思わなかっただなんて、平和呆けも甚だしい。恨むとすれば、歴史から何も学ぼうとしなかった自分自身だ。)「……聖フィニクス騎士団万騎長、ヘスティア。気炎万丈の忌み名を継ぎし者として、この砦を”死守”します。」 (3/3 23:20:12)
マリア/ヘスティア > (あなたの宣戦布告に応じ、騎士然とした兜を被り、腰に提げたフランベルジュの鞘に触れた。騎士団の武器庫から引っ張り出した、持ち主のない剣の一つだった。炎のように波打つ刀身に惹かれたのは、必然だった。『アレイス……あなたの魔術を、少し借りるね。』炉の女神への信仰と、炎そのものへの信仰。二つの信仰を心に思い描いて、ヘスティアは呪文を紡いだ。)「我が仰ぎ見し、祝融の貴婦人よ。枢を護り営む竈の暖かき慈悲と、舞い踊る火花の豪然たる厳威に依りて、我が身を護り給え。─────《アイアン・メイデン ”鋼鉄の処女”》」 (3/3 23:20:20)
マリア/ヘスティア > (ほぼ同時に紡がれた詠唱。攻撃を仕掛けるあなたと、ますは護りに徹しようとするヘスティア。毒婦としての悪名を轟かせる彼女が信仰するのは、皮肉にも処女神である炉の女神だ。男からの蹂躙を指一本たりとも許さないといった気概が、いま彼女に信託のようにして憑依する。炎はヘスティアの三倍はあろうかという女性のシルエットをとり、周囲を滑空する瓦礫を守ろうと立ちはだかった。)「……く、……」(熱気で流れる汗を拭いもせず、ヘスティアは鋼鉄の処女に守られたまま、次なる詠唱を始めた。)「パイス、テレイアー、ケーラー、ガメイラー、ズキュア、エ・ヘーラー。寡婦たる女王に、今赤き供物を捧げん。かの者の角を圧し折り、法灯とせよ。」 (3/3 23:20:30)
マリア/ヘスティア > (詠唱が終わろうとした時に、ヘスティアの目の前に立ちはだかっていた炎のシルエットは溶けるようにして地を這いつくばった。その瞬間、自らへ襲いかかる瓦礫がヘスティアの全員に被弾する。腹を、足を、頭を打たれて、軽い脳震盪に体勢を崩した。しかし炎は、あなたの前まで来たところで、次は巨大な雄牛の形をとるだろう。)「……っぐ…うっ……───────屠れ!《ブレイゼン・ブル ”ファラリスの雄牛”》!!」(苦痛に顔を歪めながら、地を舐めながらも、雄牛に命じる。それはあなたの身体を囲い込み、じりじりと炙り殺そうとするだろう。) (3/3 23:20:35)
シロー/ギゼム > (万騎長と名乗る赤髪の女騎士は、騎士らしい兜を被り魔術を紡いでみせた。あの兜一つにも凄まじい霊性が宿っていると見受けられて、黒目をきっ、と向けると顕現した魔術は強大な炎でありながら、女性の姿をとって立ち塞がる。その姿に戦乙女を幻視して、熱風の余波が辿り着くと同時にギゼムは無意識のうちに歯を食い縛った。)「⋯⋯っ騎士団の万騎長ってのは⋯⋯ッ!!こんなにも⋯⋯⋯!!⋯⋯混血の癖して⋯⋯ッ!」(覇気に押されて、僅かながらに尊華の血を持つ自らを棚に上げてギゼムは悪態を吐いた。ウェンディアという国は様々な民族を食い荒らし、混ざり合い出来た歴史を持つのに⋯⋯ウェンディアの太陽神とやらはさぞ、寛容なのだろう。ウェンディアの信仰の深い部分など一片たりとも知らないギゼムはそう思って、魔術を再び紡ごうと口を開いた)「古き神々よ、御名のもとに我は希う。⋯⋯歪みし魂、封じられし穢れ、今、輪廻の楔より解き放たれよ。我が言霊の前に姿を示せ。」 (3/4 00:13:58)
シロー/ギゼム > (宙に歪みが生じ始め、半透明の黒ずんだ人型が浮遊する。人間一人程の大きさの亡霊は、ヘスティアに向き直り、地へと這い蹲った炎と擦れ違う。目の前で雄牛の姿を取り始める炎に、口の中が乾き、肺を灼くような熱気に咳き込みそうになりながらも、呪文を続けた。)「仇なす者を穿つ槍とならんことを願う。古き神々を汚さんとす、かの者を幾重にも貫き、天高く掲げん。楔を打ち込み、知らしめん。────ぐああああッ!!ぁあぁ゛あっ!ダー・ニト⋯⋯⋯⋯ロロイ・ギゼム⋯⋯ッ!」(雄牛がギゼムを包み込み、激しい熱気にギゼムは苦悶の声を上げる。同時に、浮遊する黒い人形は腕に槍を生み出して、大きく振りかぶると、一直線にヘスティアへと投げた。ヘスティアを貫かんと、流星のように宙を裂いて向かう黒い槍は、役目を終えると人型と共に消えゆくだろう。雄牛の拘束が溶けたのならば、ギゼムは火傷を負った体を庇いながら、声を上げるだろう。)「ヨズアの古き神々に、再び我らが大地を⋯⋯捧げん⋯⋯、はははは⋯⋯っ!」 (3/4 00:14:08)
マリア/ヘスティア > 「……やったかッ……!!」(金槌で思い切り頭を打たれたような痛みと目眩、吐き気の中で、ヘスティアは地に這いつくばり、牛の形をとる炎───《ブレイゼン・ブル》を見つめていた。あの中はひとたまりもない高熱だ。炎の燃え盛る轟音の中で、贄が哭するのを今か今かと待ち望む。呻きを耳にしてから、一瞬も経たない間のことだった。亡霊としか形容しようのない、黒い人影。それが、ヘスティアに肉迫した。)「な……」『敵はまだ──────』(槍を生み出す影から逸らす事のできない瞳が、動揺で細かく揺れた。咄嗟にもう一度護りの呪文を口にしようと、ごくりと喉を嚥下して唇を舐める。息を吸えば、砂埃が混じって咳をしないでいるのがやっとだった。) (3/4 19:33:21)
マリア/ヘスティア > 「《アイアン・メイデン ”鋼鉄の処女”》!─────我が仰ぎ見し、祝融の貴婦人よ、我が身を護り給え。────っぐ、ぅ、あっ…ああああああああァアアッッ!!!!!」(敵を炙る雄牛は、赤の中に青の混じった炎を勢いよく噴き、それからもう一度ただの炎に戻り地に這った。それがヘスティアを護る鋼鉄の処女の形になる前に、影の持つ槍がヘスティアの背中を、一直線に貫く。弓なりに身体を仰け反らせ、もう一度、衝撃で地に叩きつけられるまでの0コンマ数秒はスローモーションのように感じた。ゆっくりと形を瓦解させるファラリスの雄牛。その中で、ヘスティアが見たものは──────)「……なん………で………」(無重力のように髪と髭、ローブを靡かせて、火傷を追いながらも、翛然と立ち尽くす敵の姿だった。)〆 (3/4 19:33:36)