火津彌&董

死の水-治療失敗-

マリア/火津彌 > (『若様、奥様が────』董の異変についての報を聞きつけて、火津彌は手に持っていた柄杓を取り落した。ばしゃ、と音を立てて、手水が玉砂利と紫色の袴を濡らす。)「……わかった、今行く。」(三年前の狂水の災害を彷彿とさせる、何か恐ろしい悪意がこの帝国を渦巻いている。こびりついてやまない最悪の想定を振り払うように廊下を駆け抜け、勢い良く障子を開け放す。)「……響希っ!どないした、大丈夫……か……」(そこで彼が目にしたものは、虚空に向かって泣き叫ぶ愛妻の姿だった。)「……響希、響希ッ、僕や、落ち着け。おい…おい!」   (3/3 03:23:32)
マリア/火津彌 > (肩を掴んで揺さぶるも、妻の目はどこか虚ろだった。正気に戻そうと、ぴしゃりと頬を打ってから、力いっぱいその震える身体を抱きしめる。)「……くそ……誰がこんな事ッ……ヨズアか、ヨズアの民の仕業かあぁァッ……!」(退役してから随分と丸くなった────というよりは、このような感情を持つ事を避けていた。再び自分の中についた種火を、変わり果てた妻の姿を前にして火津彌は消すことが出来なかった。)「……響希……」(ついさっき頬を引っ叩いたその手で、柄にもなく優しげに、落ち着かせるように髪を撫でた。もういつまでも日和見を気取ってはいられない。抑え込んでいた性分というものに訪れた限界を感じていた。きっと自分は戦火に身を投じる事になるだろう。……そうなれば、今くらいは力の限り、妻を労ってやりたかった。)   (3/3 03:23:39)
マリア/火津彌 > 「……大丈夫や、何も怖い事はない。僕がついとる。な、響希。言うたやろ、お前の事は、離してやらんと。」(暦の上では春といえど、二人はまだ冬を越してはいない。火津彌は妻を抱きすくめる腕をきつく強めて、腹をくくるかのように身体の中の息をすべて吐いた。)   (3/3 03:23:44)


ゑゐりあん/董 > (董が謎の発狂を起こしたと聞きつけた火津彌が見た光景は、体中を汗や涙でぐっしょにと濡らし、いつもの元気な彼女からは想像できないほどにやつれた妻の姿であった)つき…み…つ…(焦点の合わぬ目で力なく畳に向かって何か治療を行っている董。火津彌はそんな董の肩を揺らしたが董に反応はなく、ただ茫然と火津彌の顔を見つめるだけであった。それを見かねた火津彌は董の頬を叩きその体を抱きしめた。すると董も徐々に正気に戻ってきたのか、震える手で火津彌を抱きしめる)つき…みつ…ッ(何かにおびえるように歯をカタカタを鳴らし、もう二度と離すまいといわんばかりの力で火津彌を抱きしめる。それでも普段の半分以下の力しか出ないのは、董の体力がなくなっている証拠であった)よか…った…よがっだぁ…ッ(もう出る涙すらないのか、目から涙こそ出ることはなかったがそれでも泣いているときのような声を出し安堵する董。そして火津彌の顔を見て安堵した表情を浮かべる)生きてる…生きてる…あぁ…月光…ッ(会話ができるようになったとはいえ、いまだに現実と幻覚の区別がついていないようであった)   (3/3 15:27:52)


マリア/篠 > 「今、助けてやるからな…呼吸を整えろ…」(背中をとんとんと叩き、董を落ち着かせようと試みる。)「かけまくも畏き祓え戸の神々達……諸々の禍事在らんをば、祓い給え清め給えと申す事を聞こ示せと、畏み畏みもう申す……」(やがて手のひらの動きがゆっくりと止まり、董の背中を撫でた。応急処置くらいになれば、後は巫子の伝手でもなんでも使って助けてやろう…。董の顔を覗き込み、治療が成功したかどうか窺った。)「水……飲めるか?ずいぶん汗をかいてるな。今、持って来させる。砂糖を溶かしたのでもいいぞ、ん?甘いのがいいか…?なんでも飲みたいものを言え、響希。……な……。」(そのまま董を抱き抱え、布団まで運んで寝かせようとした。)   (3/3 15:47:36)


ゑゐりあん/董 > はぁ…はぁ…っ(彼に背中を叩かれ徐々に呼吸も落ち着いてきた董。そんな中火津彌は治療を試みようと魔術を唱える。魔術を唱えている間の董の様子は大人しいものだった。そして魔術の詠唱が終わり、董を抱きかかえて布団まで運ぼうとした途端。董は火津彌を押し倒し、馬乗りの状態になって彼を見下ろす)はぁ…ッはぁ…ッ(乱れ髪から覗くその表情は、悪霊に憑りつかれたかのような形相であった)だめ…(そういうと董は火津彌を見下ろしてそういった)もう…どこにも…いかないで…(そういうと手を伸ばし、立てかけてあった愛刀のうちの一振り、玉響を手に取り抜刀する。そして火津彌の右手と自身の右手を重ねる)月光はさ、目を離すとすぐどっかに行っちゃうもんね(その口調は先ほどとは打って変わっていつもの董そのものであった。…が、言葉に含まれるどす黒い何かを、火津彌は肌で感じるだろう)だからさ、こんな風に手を重ねて離れないようにすれば…(そういうと董は刃先を下にして玉響を振り上げる。まるで、二人の重なった手に突き刺すかのように)どこにも行かないよね…?(そういうと董は笑顔を浮かべ、玉響を振り下ろした)   (3/3 16:00:33)


マリア/篠 > 「……………えっ」(ぼうっとした目を向けていた董が、次の瞬間火津彌を組み敷いた。体格が違うとはいえ相手は女で、しかも体力も落ちているはず。火津彌が董のされるがままになったのは、彼が油断をしたということもあるだろうが……それ以上に、強い激情が、執念にも似た何かが董を動かしているのだろうと思った。線が切れたように理性を抑えられなくなっている董は、それでも、こんなに自分を愛してくれていて。火津彌はどうしたら妻を傷つけずに落ち着かせる事が出来るのか考えながら混乱していた。)「……響希、落ち着け……ちょっ、」(玉響が二人の重なった手に迫る。火津彌は下から手を回し、董の体をぎゅうっと抱きしめ、転がるようにして刃から逃れた。玉響は布団を突き刺しており、火津彌は畳の上で、董に乗りかかって両手を抑えていた。)「……阿呆っ……!正気に戻れっ…!」   (3/3 16:31:49)
マリア/篠 > (その時の火津彌は、見たこともないような悲しげな顔をしていただろう。悔しさや遣る瀬無さに支配されることはいくらでもある人生だった。だけど、『どこにも行かないで』の言葉に二つ返事を返してやれないこと、返したところで、その場しのぎにしかならないかもしれないこと。それが今はどうしようもなくて、遣る方無い悲しみを覚えた。)「どこにも……………」(ごく、と喉を嚥下させ、静かに、覆い被さるようにして董を抱きしめる。)「行かんよ……」(やっぱり自分は、裏切り者の星の元に産まれてきたのだ。)〆   (3/3 16:32:06)