ヘスティア&アレイス
騎士道マリア/ヘスティア > (原因不明の、三年前を彷彿とさせる災害によって、本部に増設された医務室には患者達が犇めき合っていた。ヘスティアはベットの合間を縫い、そこへ運ばれた騎士のひとりへ駆けよる。)「……アレイスっ……!」(この災害に乗じて攻めてきたヨズアとの前哨戦で負傷を追っていたのは知っていた。彼はしばらく安静にし治療が終わるまで戦場には出ないはずだったが、満身創痍で行き倒れていたという報を聞くに、通り魔かイモータルあたりにやられたのだろう。騎士を贔屓することなど元騎士団長としては以ての外なのかもしれない。けれど、彼には自分が必要な気がしていてもたってもいられなかった。例え思い上がりでも構わない、このまま死なせて閉まっては今までの自分の存在意義すら揺らいでしまうと、ある種ヘスティアは腹をくくっていた。)「アレイス、誰にやられたの、言える?私です、ヘスティアです!」(司祭からの治療は受けているのだろうが、例え微力でも足しになればと頭の中では既に不得意な治療魔術の詠唱を組み立て始めていた。)「……っ、いい、大丈夫…喋らなくても構いません。じっとしていて…」 (2/27 23:19:11)
マリア/ヘスティア > (頬に手を当て、あなたの瞳をじっと見た。良かった、まだ冷たくはなっていないようだ。)「……我が敬愛する祝融の貴婦人よ、生きとし生けるものを暖めうる炉の営みの、窯の糧の、その慈悲をわけ与えたまえ、ヘスティアの字に於いて希求する。聖なる騎士、名をアレイス。そなたの眼差しが彼に注がれんことを──太陽の名のもとに……」 (2/27 23:19:28)
グレー/アレイス/終焉 ◆ > ヘスティア……万騎長……(と、あなたが治療呪文を唱え始める……そして、それは間違いなく効果をある程度はもたらしたはずだろう。しかし、既に遅すぎた……)イモータル……子供の姿のイモータルに致命傷を…………もう……間に合わないかもしれません……(と、最期に言葉を紡ぐ。せめて最後は、男として、魔術師として……) (2/27 23:31:03)
グレー/アレイス/終焉 ◆ > …………まず、弟に1つだけ、伝えてください。「ごめんな。また、お前を残して逝くことになって。来世で、待っている……」と。(そして、今度は、貴女のために。言葉を紡ごうか。)あなたは俺にここまでしてくれた……どうか、貴女の罪として背負わないでください……ゲホッゲホッ……俺は、貴女が初恋の人で本当に良かったと思っている。貴女が俺の人生を狂わせたと誰が言おうとも……俺は……それでも貴女を…… 愛しています。 ありがとう……そして……ごめんなさい…… (2/27 23:31:21)
グレー/アレイス/終焉 ◆ > (涙が一筋……そして、あなたの温もりを確かめようと頬に手を触れた後に……彼は瞼を落とすが……最期に……笑顔になった。最期は、笑顔で逝こう。そう、彼の意思が、そうさせたのかもしれない。そして、手は脱力し……心の臓が止まり……そして、彼の炎は_____消えた。) (2/27 23:31:33)
マリア/ヘスティア > 「子供姿の、イモータル……それに、こんなふうにされたのですね。あぁ……」(全身を滅多刺しにされた姿は、あなたとヘスティアが魔術師であるからこそ余計に、その怪我の酷さよりも強くおぞましいものに見えた。あなたを傷つけたそのイモータルが神に背いたという事が、神の望んだ『言葉』をもってしなくても、視覚的に一瞬にして理解出来る。近代兵器を扱うウェンディア人であったとしても、その光景に思想が覆りそうになるくらい、その夥しき傷跡はあまりにも冒涜的だった。だからこそ、祈りで、言葉で、魔術で対抗したかった。祈りが通じないなどと言うことは思いたくなかった。)「……っ、弟さん… 雷鏡さん、だよね。うん…えっ、アレイス、駄目。気をしっかり、お願い」 (2/28 01:09:46)
マリア/ヘスティア > (手を握り締めながら必死で呼びかける。だけど、あなたの言葉は既に死期を悟っていた。頭をふるふると振るわせながらも、言葉を失うまいと声をかけ続ける。やがて言う事が尽きれば、あなたの名前を呼ぶ事しか出来なくなったとしても、それでもヘスティアは静寂に屈したくはなかった。)「アレイス…アレイス、アレイスッ、アレイス!ねぇアレイス、アレイスってば、アレイス、ねぇ!」(あなた自身で決めた字の魔力に願いを託そうと。負けてたまるか、自分だけでも信じなければと。)「あ………」(──〝感情は魔力を左右しない。人為によって魔術を左右できる方法は、呪文のみである。冷静さを失った瞬間、その魔術は綻びてゆくだろう。〟今この瞬間、あなたの掌の冷たさに、ヘスティアはそれを悟る。悪いのは神さまじゃない、私だ。人間は、あまりにも愚かだ。あなたの存在が大切だったからこそ、私は冷静でいることが出来なかった。) (2/28 01:10:09)
マリア/ヘスティア > 「謝らないで、お願い、嬉しかったよアレイス、私は、私は……」(あなたの名前を必死で呼んでいる時、ヘスティアは現実逃避からか頭のどこか別の部分で、あなたとの決して多くはない記憶を思い返していた。ヘスティアはあなたの前で、何度も自分と彼の義妹、コーフを比べてみせた。自分に無いものを全て持っている、自分とは正反対の女性だったから、彼女はきっとお誂え向きだったのだ。〝コーフではなくあなたが好きだ〟と言われたかった。きっと何か運命が違ってアレイスと結ばれたとしても、彼が癒しを与えられる女性にこそ魅力を感じ、いつか自分のような強かな女を見限るような普通の男性であるという事を否定できない限り、彼の事を愛せはしないし、遅かれ早かれ終わっていたのだと思う。だからきっと、あえて引き合いに出すことで、安心したかった。いつしか芽生えていた、奇特な想いを向けてくれているあなたの気持ちに応えられるものなら応えたいという想いは、ヘスティアさえ預かり知らぬ間に期待に変わって。さらに期待は、卑しい慰めを当てにしたものに変わっていたのだ。 (2/28 01:10:49)
マリア/ヘスティア > アレイスを振った後、何度か思った。何かと弟の話をする彼ももしかして自分と同じなのではないかと。〝雷鏡ではなく、あなたのほうが好みだ〟と、〝雷鏡ではなく、あなたの騎士としての働きを見ている〟と、そう言ってあげられたら私たちの関係は何か違ったのだろうかと悔やんだ。……実際、本音なのだ。雷鏡が英雄と言われていようが、腕が立とうが、アレイスとは初めから比較の対象ですらない。ヘスティアが見ていたのは雷鏡よりも、不器用でも必死でもがき、生きていたアレイスで、そんな彼に惹かれる所が無いわけではなかった事もまた、事実なのだから。けれどそんな走馬灯のような思い出に付随した自分の考えも、あなたの言葉を聞けば浅はかだったと思い知る。……あんな弟さんを持って、自分と比べないほうが、妬かないほうがどうかしてるのに。それでもあなたは最後まで彼を気遣って穏やかな笑みを浮かべていたから。自分のコーフに対する感情などあまりにもちっぽけで恥入りそうになるくらい、あなたは大きく、深く、慈愛に満ちた、気高き騎士だった。) (2/28 01:11:10)
マリア/ヘスティア > 「……何も、知らなかったよ。」(騎士長でもない、一人の一般騎士が召されただけ。戦争中なのだ、珍しい事でもない。なのにどうしてこれほど心が揺さぶられるのか────……その訳がやっとわかった気がした。自分を好いてくれていた事など、きっかけでしかなかったのだ。あなたが気になってしまい、気持ちに応えられるものであればと考え、知らずに目が離せないでいた本当の理由は……騎士への尊敬だ。浅ましい嫉妬など持たぬ、どこまでも純粋で美しい心は、騎士道精神の体現だった。ヘスティアは、アレイスを愛したかったのではない。アレイスのようになりたかったのだ。)「……アレイス……」(この瞬間、その名前は魔力を失ったのだろう。脱力した手をヘスティアは、いつまでも離せずにいた。) (2/28 01:11:41)
マリア/ヘスティア > (頭の中で、こだまし続ける。真名も知らない君の名が。)〆【騎士道】 (2/28 01:11:53)