ニーナ&禍善

ものくろーむ

マリア/ニーナ > (ふわふわ、ひらり。音もなく舞い落ちる、羽みたいな粉雪が夜の帝都を優しく染めていた。白い息を吐き、白い服に身を包んだ白い肌の”天使”が、小さな翼をぱたぱたさせて人気のない道を往く。ニットのセーターは彼女には大きすぎるみたいで、膝の上まで包む裾はワンピースのように見えた。大きな襟口は肩をずり落ちて肌を見せていたけど、寒さなんかへっちゃらという顔で、くるりと翻る。)「……この雪、ぜんぶお砂糖だったらいいのになぁ……。そしたらおなかいっぱい食べられるのにぃ。」(余らせた袖に包まれた手をふわりと空に差し出すと、ふわふわと雪がその上に落ちる。雪はセーターの網目の繊維の上に休んで、水銀燈を受けてきらきらと輝いていた。)「……おにいちゃん。どこ……?」(もう何度目かわからないくらい口に出した、独り言。”生前”の淡い記憶を頼りに、それだけを求めて彷徨ってきた。───そう、彼女はイモータル。いくら見た目が無害そうでも、天使だなんて質の悪い皮肉なのだ。人の理を外れた異形に過ぎないのだから。)   (2/21 22:18:15)


大和守/禍善 > (しんしんと、雪が降る。帝都に似合った白は音もなく、けれど寒さを連れて存在する。こんな日に仕事は嫌だと愚痴りつつ来たものだが、当然肩を出す事など出来ず黒の羽織を重ねる事で防寒を行っていた。何時の間に大通りから外れたのか辺りは人通りが少なく。ふと、人では有り得ない翼を携えた者が目前に居るのを捉えた。)「こないな寒い日に……どないしたの、愛らしいお嬢はん」(イモータル。害を為している様には見えないが、貴女が人類の敵であるのは間違いない。けれど寒そうな容姿の貴女を無視する事は出来ず。貴女の側へ寄れば優しく声を掛けようか。)「貸しいやあげるから羽織っておくれやす。風邪を引いおいやしたら皆が悲しんでしまうえ」(そう言うが早いか、羽織を脱げば貴女にそれを羽織らせた。白に黒。うん、最高の色合いだな、なんて内心軽口を叩く。ふざけている訳ではない。これは本心だ。貴女が異形であれど愛らしい少女である事には変わりなく、それに似合う物や色合いを見つけて何故喜ばないのか。とまぁ禍善はこんな人柄である為。貴女が害意を示さない限りこれを続けていく事は、貴女の姿を見てもただの少女の様に扱っている様子からして明白だろうか。)   (2/21 22:47:13)


マリア/ニーナ > 「へ……?」(声を掛けてきた少し背の高い女性に、この少女はさしてうろたえる事もせず、こてんと首を傾けてシャム猫のようなオッドアイを向けた。肩にかけてもらった羽織をしばらく眺めてあなたの言葉を聞いていたかと思えば、次の瞬間にはにこっと笑ってあなたの手を取った。)「あなた、だあれ?私はニーナ!ありがと、これくれるの?」(ニーナの名乗った少女の視線は、次にあなたのつま先から頭のてっぺんと動く。きれいな服に豊かな胸、長く赤い髪─────赤い髪……赤い髪…。一瞬だけ、目が泳いだ。ニーナの髪は薄い桃色をしていたけれど、自分と似た遺伝子を探している彼女にとっては、暖色であるというだけで興味の対象だった。けれど、きっとあなたは”おにいちゃん”ではないだろう。男性であればあるいは、と。ニーナはあなたの女装にすっかり騙されていたのだった。)   (2/22 01:24:31)


大和守/禍善 > 「くふふ、お前様がえらい愛らしいさかい。醜い男が寄り付かへん為の魔除けとして持っとって──『八百万よ傾聴せよ。愛き無垢なる子らにその御力を示せ。悪を滅し灰とし塵と為す炎の加護を』」(手を取られれば、イモータルであれ女性に触れられるのには嬉しいのか思わず笑みを溢した。その笑みはフェイスベールに隠されているお陰で見えないが、恐らくにやけている事だろう。女の装束に身を包んだとしても、その性格が変化する訳ではない。言い回しを変えただけで、つまりは『君みたいな可愛い子はすぐ騙されちゃいそうだから』という事だろう。何度も失敗してはいるが無駄に経験は積んでいる故か、女性に対して行う様に貴女の肩へ指を這わせた。つまりは羽織へと触れ、詠唱を行う。ふわりと、仄かに赤い光が羽織を覆っては直ぐに消えた。今この瞬間から、これは貴女にとってはほんのりと暖かいだけの羽織。だが、貴女へ害意を持っている者が触れればその手を灰にしてしまいそうな程の熱を秘めた羽織となる。つまりは、男避け──というよりかは敵避けの方が正しいだろうか。)   (2/22 13:09:03)
大和守/禍善 > 「……嗚呼、名乗りが遅れもうて堪忍な。わちきは禍善。宜しゅうたのんまっせ、……ニーナ」(思わず『ニーナちゃん』と呼びそうになってしまうのを何とか堪えた。この姿でなければそう呼んでいただろうが、この姿だと何分その呼び方は非常に合わなくて。可愛らしい少女を呼び捨てる事に強い抵抗を覚えつつも、禍善は優雅に字を名乗ってみせた。)「……なぁに、愛らしいお嬢はん。わちきの髪に興味あるん? 一本持っていくかえ?」(己の赤い髪を見て、一瞬目が泳いだのを禍善は見逃さなかった。もしかして、と思い己の髪を一房掴み貴女に向けてそれを見せつけるようにすれば、冗談半分のつもりでそれを口にした。髪は女の命だとも言うが、禍善は男である。故にそれは適用されないと断じ、どうするのかなとその口元に笑みを浮かべながら返答を待っていた。)   (2/22 13:09:23)


マリア/ニーナ > マリア/ニーナ> (ほんものの魔術を目にする機会は、生前であってもそう多くなかった。ニーナはくりくりとしたまなこをフシギそうに向けて、あなたの手を握ったまま、もっくりと黙ってそれを聞いている。耳慣れない語調に彩られたどこか艶やかな言葉は、ニーナにとって、きちんとぜんぶを理解できるほどカンタンではなかったけれど、少なくとも敵意を向けられていたり、悪く言われている訳じゃない事くらいはわかった。)「……わぁ、わぁ!?」(ほんのりと暖かくなった羽織に驚いて、きらきらとしたまなざしを向ける。ぎゅうっと羽織ごとじぶんを抱きしめるようにしてから、くるくるとその場を回った。)「あったか~い!」(体重なんて感じさせないように軽やかな足が、つもりたてのパウダー・スノーを舞い上がらせる。あなたの名乗りを耳にしてはたと動きをとめると、羽織と髪と雪とが、後からついてくるようにふわりとたなびき、そして重みに従ってゆっくりと落ちた。) (2/22 21:00:16)   (2/22 21:07:40)
マリア/ニーナ > 「カゼンさん?…よろしく…していいのかな?だって、ニーナは……。」(ゆるゆるとうつむきがちになる視線といっしょに尻すぼみになった語気は、突然あなたの言葉によってすこしだけ元気を取り戻す。)「あっ、ううんっ!あの…あのね、ニーナ、おにいちゃんを探してるの。カゼンさんのかみのけとニーナのかみのけ、ちょっと色が似てるかな?って……。ねぇ、ニーナに似てるひと、見たりしてないよね。」   (2/22 21:07:49)
マリア/ニーナ > (”おにいちゃん”の記憶は、この雪で白くそめられた空とじめんの境目よりも、水銀灯のぼやけた光よりも曖昧だ。おにいちゃんの顔も、声も、交わした言葉も、どんなふうにして遊んだのかも、何一つ覚えていなかった。ただひとつ確かに胸にしまっているのは、おにいちゃんが居たんだという事実と、おにいちゃんについてのことを話すおかあさんの後ろ姿。こんなばけものになってしまってもおにいちゃんのコトを忘れなかったのだから、きっとニーナはおにいちゃんが大好きなのだ。大好きなおにいちゃんのことを、思い出したかった。)「ニーナ、おにいちゃんのことなんにも知らないの。だから、なんにも答えられないの。でも、いたの、絶対にいたの。それだけ、わかるの……。」(さみしげな目はうるうると涙を湛えて、助けを乞い願うような視線をあなたに送った。)   (2/22 21:07:57)


大和守/禍善 > 「……お前様がイモータルっちゅう事はとうに知っとる。その上で話し掛けてるんやさかい。宜しゅうで構わへんよ」(俯きがちになっていた貴女の様子を見かねてか、禍善は優しく言葉を口にした。それが偽りでも何でもなく本心である事は、そのハッキリとした声色からして読み取れるだろうか。)「……おにい……か。ううん、見てへんな……」("おにいちゃん"。その言葉にゆるゆると首を横に振り、表情には出さずとも貴女の力になれない事を悔やむ。貴女自身の持っている情報も少ない中、新しい情報を提供出来ないのは非常に辛い。……嗚呼、そう言えば一人居たような気もしたけれど。ソイツは違うだろうと決め付け、切り捨てていたのだった。)「一人じゃ見付けるんは夢のまた夢……せやけど、安心しとぉくれやす。わちきも探すのを手伝うで。そやさかい、そないな悲しそな顔……しいひんで?」(情報を提供出来なくとも、探すのを手伝う事は出来る。貴女の瞳に浮かんだ涙を袖でそっと拭っては、安心させる様に優しく笑みを浮かべた。)   (2/22 22:03:26)


マリア/ニーナ > (ひとりごとみたいにして終わらせた言葉だったのに、あなたに見透かされていた事をしって、ニーナは驚いた。イモータル……つまりは、ニーナがばけものになってしまった事を、カゼンさんは知っていたというのだ。それに、おにいちゃんを見つけてくれるのを手伝ってくれるのだと言う。ニーナはうれしくて、目に涙をいっぱいためてあなたを見上げた。)「……ありがと……カゼンさん。……ニーナにやさしくしてくれて。こんな、ばけものになっちゃったニーナに。」(次の瞬間にはぱあっと輝くような笑顔を咲かせて、ニーナはカゼンに小指を差し出した。)「ニーナ、やくそくする。カゼンさんには”ちから”を使わないって。…ニーナ、たいせつなひとを傷つけたくないから。」(儚い指切りをかわし、あなたとニーナは顔見知りになった。カゼンさんがニーナにとってたいせつなひとかどうかは、まだわからないけれど。でも思ったの。あなたが”おにいちゃん”なら良かったなぁって。)〆【ものくろーむ】   (2/22 23:39:29)