鬼若

鬼の詩「結」後編

大和守/鬼若 > 「…………おい待て、お前、それどういう意味だ」(『ずっと不安だったんだよねー。ほら、ちゃんと筑紫の支えになってくれてる人が居てくれないと……色々と、ね。あんたは意外に脆いしさ』──鬼若のその質問に、答える事はない。答える様にして言葉を紡いではいるが、それは決して答えではない。鬼若が聞いている事の意味も分かっている。けれど、それを一切無視して返答しようとはしない。一人、答えにもならない言葉を紡いでいた。)「……質問に答えろよっ!!」(『だからさ、それ聞いて安心しちゃったや。きっと筑紫はもう大丈夫だ、……ってね』──その後に続くであろう言葉が、否応なしに浮かぶ。それを否定する様に、聞きたくないと主張するように鬼若は怒鳴った。それでも、残酷な言の葉はやってくる。何れ程拒んでも、【死】は万人に平等にやって来るように。当然の事の様に。それがこの世の理だとでも言う様に。そして、此処に来て。どういう意味だと、質問に答えろと言った事を、鬼若は後悔した。答えていなかった訳では無かった。次の言葉を以てして、それを鬼若への返答としてようやっと完成するのだから。)   (2/21 13:10:35)
大和守/鬼若 > (──『これで、私が居なくなっても大丈夫だね』)   (2/21 13:11:41)
大和守/鬼若 > 「────」(彼女の告げた返答は、思い描いていた言葉と全く同じものだった。嗚呼、これが嘘だったら何れ程良かっただろうか。嗚呼、これが夢だったのなら、何れ程、『……ね、筑紫。私はイモータルなんだよ? 筑紫達の敵。だから、生きてちゃ駄目なの。死ななきゃ、いけない』。鬼若の願いを掻き消す様に、尚も彼女は言葉を重ねる。)「い、イモータルだとかっ……知った事かよ!! 俺にとってはんな事……っ、」(──『筑紫』『目を背けちゃ駄目だよ』。そんな事どうでも良い、と断じようとしたその矢先、彼女の静かな声が鬼若を止める。彼女がイモータルである事は紛れもない事実で、鬼若にとっては敵でなくとも他人からしたら滅すべき対象なのだと。その視点を忘れてはいけないと。それは尤もで、鬼若も何処かで理解していた事だ。それでもそれを否定して欲しくて。自分だけでもそれを否定したくて。──それでも、それは彼女によって否定する事を許されなくて。)   (2/21 13:12:07)
大和守/鬼若 > (『……嗚呼、そうだ。ねぇ、どうせなら筑紫が私を殺してくれないかな』『どうせ死ぬならさー、筑紫に殺されたいんだよね』)「…………は? ……な、なんで、……お、俺は、嫌だ、……絶対、殺してなんか、やらないからな……!!」(突然の言葉に、鬼若は丸く目を見開いた。自分を殺せと。突然そう言うのだから、驚いてしまっても仕方ないだろう。何より、鬼若は彼女を殺したくはない。──生きていて、欲しいのに。でもきっと、彼女はその思いを遮って、死ぬ事を望んでいるのだろう。『……私さ、記憶はちゃーんと戻ったよ。不死でも無くなったよ。だけどね、まだ異能は残ってるんだよ』。暗に、無理矢理にでも従わせるという事を示していた。その異能を行使し、無理矢理自分を殺させるという事を。それ程の覚悟が、もう彼女にはあるという事を。)   (2/21 13:12:24)
大和守/鬼若 > 「……ッ……わ、わかっ、た、から、……頼むから、待って、少し、本当に少しでいいから……覚悟を、決めさせてくれ……」(異能に無理矢理従わされて彼女を殺すくらいならば、自分の意思で殺した方がまだ心残りが無い。その分、苦しくはあるが。縋るかの様に言葉を発し、手で顔を覆っては心を落ち着かせていた。覚悟を、固めていた。『ん、それくらいなら勿論良いよ。……ごめんね、有難う』。……恐らく、これが最後となるのだろうか。それを意識する度に心が苦しくて。辛くて。鬼若は、彼女を殺したくなどないのに。どうせなら、ずっと……彼女と一緒に生きていたかった。笑い合って、色んな事を相談したりして。そんな、ちっぽけな平和を望んでいるだけなのに。それでも、それが彼女が望む事ならば。)「…………分かった。もう、良いぞ。…………俺がお前を、殺してやる」   (2/21 13:12:44)
大和守/鬼若 > (覚悟が固まった、という鬼若の言葉を聞き、彼女は静かに頷いた。彼女は己の体に生えていた剣を無理矢理折り、それを鬼若に握らせた。その鬼若の手の上に、彼女もそっと手を添えて。彼女は、静かに笑みを浮かべた。『──後の世も また後の世も めぐりあへ 染む紫の 雲の上まで……なんてね。その、筑紫の好きな人と……一緒になれたらさ。ちゃんと寿命を全うして、それから来てよ。……私、ずっと待ってるからさ。……幸せになってよ』『筑紫』紡がれた言の葉は、確かに祈りとして為った。鬼若の幸せを願う祈りとして、想いとして。)「…………ッ」(ぽろぽろと、鬼若の瞳からは涙が溢れていた。彼女の言葉が、あまりにも優しくて。矢張殺したくないという気持ちが溢れて。それでも、触れる彼女の手が、強く鬼若の手を握って。その想いに従って。──心臓目掛けて、剣を振り下ろした。)   (2/21 13:13:00)
大和守/鬼若 > (──嫌な、重い、感触。命が、溢れていく。悲鳴は、無かった。ただ、彼女は最後まで笑みを浮かべていた。幸せを願う様に、ずっと。最期に向かうにつれ、ゆったりとその瞳は閉じられて。その蒼い瞳は永久に失われて。──最後には、一陣の詩が在るのみだった。)【鬼の詩「結」後編】〆   (2/21 13:13:21)