鬼若
鬼の詩「結」前編大和守/鬼若 > (『────こんの大馬鹿ぁあぁぁっっ!!!』。叫びと共に吹っ飛んできたのは拳だった。綺麗に鳩尾目掛けて放たれたそれは、衝撃と動揺で一切動けなかった鬼若に容赦無く入る。あまりの痛みに一切の言葉すら出てこず、ただ鬼若は鳩尾を押さえて悶えていた。【彼女】に生前の記憶が戻った。それによる突然の豹変。鬼若にとっては喜ばしい事ではあるのだが、そもそも突然すぎて状況が理解出来ていない、というのが現状である。)「…………なぁ、に、……すんだよッ、くそ姉貴ぃいぃッッ!!!」(痛みが引いてくれば冷静になった頭で段々と状況を把握し、突然殴られた事による怒りを叫んだ。何故突然殴られた。そもそも馬鹿とは一体何なのだ。脈絡の無さすぎる言葉には疑問しか浮かばない。『あんたが馬鹿だからその根性叩き直そうとしただけでしょうがこの馬鹿ッ!!! ばぁあっかっ!!』。先程までの敬語は一体何処へやら。暴言ばかりを吐く彼女だが、そこには二人にとっての【日常】があった。) (2/20 20:03:04)
大和守/鬼若 > 「はぁあぁっ!? 馬鹿って何だよ馬鹿って!! お前本当に変わんねぇなッ……っ、?」(【馬鹿】という言葉に対し、怒りのままに怒鳴っていたものの──途中で、言葉が止まった。何時の間にやら鬼若の瞳からはぽろぽろと涙が溢れており、自分が泣いている事に驚いた様に慌てて涙を拭った。『なーに泣いてんのよ全く……まぁ、分からなくはないけどね。……てか、筑紫あんためちゃくちゃ変わったわよね! その目とか……どしたの。もしかして無くした? そもそも軍人になってたのとか凄い吃驚したんだけど。大佐だっけ』。彼女は呆れた様に溜め息を溢してみせるも、ぽんぽんと鬼若の頭を乱雑に撫でれば鬼若の様子の変化に対し、興味津々といった様子で疑問をぶつけた。彼女の記憶の中の鬼若には確かに両目があった。それだというのに、今の鬼若には左目が無くて。それに加えて、その軍服。彼女はかつて兵だったのだから、それに見覚えがある。) (2/20 20:03:36)
大和守/鬼若 > 「……これはまぁ、ほら。火傷、しちゃってさ。あぁ、あんたが居なくなってから軍に入って……うん、そう。今じゃ大佐なんて位に就いてるよ」(『……へぇ、そうだったんだ。大佐なんて凄いじゃん。頑張ったね』。火傷の事に特には深入りせず、ただ鬼若の功績を称えた。血は繋がっていない。ただ昔に鬼若を拾ったのが彼女で、彼女が自分の事を【姉と呼べ】とふざけて言っただけ。それでも、姉の様に優しく微笑んでいて。『あ、そうだ。あんたさ、好きな人とか出来た? 名前は?』。だがそれも直ぐに悪戯っ子の様な表情に変わり、にやにやと笑みを浮かべながらそう問いを投げ掛けた。)「……まぁ、出来たよ。えっと、先代元帥様で……今は、大将をやってる方。白梅様って言うんだけど……あぁもう、恥ずかしいからこの話終わりな!」(恥ずかしそうに鬼若は顔を背けるも、彼女はただ笑みを浮かべて。『そっか。……そっかあっ。なら、良かった。それなら、もう……大丈夫そうだね』なんて言葉に含まれた不穏さに、鬼若は怪訝に瞳を細めた。)【鬼の詩「結」前編】〆 (2/20 20:03:48)