鬼若
鬼の詩「承」大和守/鬼若 > 「──……い"っ…………ッたく、本当に、手加減無しにやりやがったなぁ……」(痛みによる呻き声。じくりじくりとその箇所から身を蝕んでいく痛みに数秒悶え、段々と和らいでいけば深呼吸を一つ。それと同時に誰かに対する愚痴も溢れ落ち。今、鬼若の体は夥しい程の包帯によって白く染まっている。昨日、無様にも戦闘のせいで体のあちこちに穴が空いてしまった。それはもう本当に、鎖が貫通したのだからでこぼこの穴。そんな状態に陥ってしまっているのだから仕事などする事が出来ず、鬼若は一人医務室にて治療を受けていた。気を失ってから直ぐに発見され、運ばれたからだろうか。それとも単に巫子の腕が良かったからか。昨日の痛みは大分収まり、何とか自力でも歩ける程にまで回復したが……無理は禁物、というのは鬼若もよく理解している。)「…………また、だ」(けれども、この場所にまで聞こえてきた『うた』を聞き逃す事は出来なかった。よく響く、かつ通る声。ふらり。一時的に医務室に誰も居なかった隙を見て、鬼若は外へ向かった。) (2/19 19:26:37)
大和守/鬼若 > (ざり、ざりと土を踏む。少し開けた、小さな広場の様な場所。その隅で『うた』を紡ぐ人物。──即ち、そこにはつい昨日鬼若の事を手加減無しに痛め付けたばかりの化物……イモータルが居たのだった。けれどもその頭部に角は無く、言われなければ普通の人間だと思ってしまうだろう。)「…………また居た」(『……あら、ご機嫌よう。くたばってなかったんですね。意外に運がお強いお方の様で』。予想はしていた。けれども思わず呟いてしまった言葉に反応し、【彼女】は挨拶と共に鬼若がこうして言葉を交わせる状態へ戻っている事への言葉を口にした。体が丈夫だとか、そんな褒め言葉は一切口にはしない。しかしそれもまた真実であり、見回りの兵が路地に通り掛からなかったら確実に死んでいた。故に、【彼女】の言葉を否定する気は更々無いのだが。それでもそう言われるのは癪な様で、眉を潜めては【彼女】を何処か嫌そうにじっと見つめていた。そんな鬼若の様子をどう捉えたのか、『……嗚呼、そんなに警戒しないでください』、なんて言葉と共に【彼女】はにっこりと笑ってみせた。『私、昼はどうにも襲う気になれないもので』。続けて紡がれた言葉に、鬼若は首を傾げた。) (2/19 19:27:52)
大和守/鬼若 > 「……うん? ……なんで昼は何もしないんだ? お前らみたいなイモータル、時間なんて気にしないで無差別に殺すもんだと思ってたんだが……」(──【彼女】がただの、鬼若にとって何の価値も意味も持っていないイモータルだったのなら、こんな言葉は掛けなかっただろう。けれども、殺されかけて尚も言葉を掛けてしまうのは、【彼女】の見目が紫苑だから。それだけでどうしようもなく戦意を削がれてしまうのは、やはり人間の情というものなのだろうか。『私だって、昼も人を殺す様な野蛮ではありませんよ』と、【彼女】は何処か拗ねたかの様にそう言った。)「…………いや、お前昨日は俺の事思いっきり殺そうとしてたじゃねぇか……」(『そんな相手に話し掛けられる貴方も貴方だと思いますよ。よくも怯えずに話せるものですね』。意趣返しの様に投げ掛けられた【彼女】の言葉に、鬼若は遅れて嗚呼そうだったと気付いた。今更気付き、そして気付いても尚特に怯えやら何やらは浮かばない。) (2/19 19:28:16)
大和守/鬼若 > 「あー……そういえば、そうだった。……別にどうも……こうして生きてるし。まぁ痛かったし、今も痛いけどよ」(鬼若のその言葉と様子を見ては、『……ふふ、ふふふっ。嗚呼、やっぱり面白い人』『普通でしたら、そんな事言えませんよ。』と【彼女】はくすくすと笑ってみせた。それは生前に浮かべていたモノと全く同じで。やはり【彼女】は紫苑であると確信させられて。思わず、鬼若は瞳を細めた。その様子を見て何を思ったのか、【彼女】は鬼若に向けて獲物を食らう捕食者の様な瞳を向けた。『嗚呼、どうかご安心下さいませね。夜になったらきっと──また、遊んであげますから。……それでは、此処等で失礼致します』。密かな宣戦布告。それだけを残し、【彼女】は一人勝手に再び去っていってしまった。鬼若は少しだけ名残惜しそうな視線を向け。けれど直ぐに、同じようにその場から去っていった。──まだ、この詩は続く。)【鬼の詩「承」】〆 (2/19