ターラ&袋の男

金蓮花

清瀬/ターラ > 「こ、怖ぁ……わ゛っ!! ひっ、もう…やだ…帰りだいぃ……」(夜の街は冷え、暗闇という魔物が冷たい吐息を漏らしていた。機械の右手はに小型の平射砲を、生身の左手には懐中電灯を握り締めて、道なき道を震える脚で進んでいた。飛び去る羽音、木々が揺れ、擦れるる木葉に可愛げのない悲鳴をあげる。泣きべそまでかきながら振り返ることをしないその理由は、威厳ある騎士団長の御言葉のお陰。僅かも灯っていなかった蝋燭に勇気の灯火を分け与えられ、それのみを原動力として、行方を眩ませてしまったとある人を探し迷っていた。)「ディランさぁん…どこぉ……」   (2/16 16:50:36)


大和守/袋の男 > 「あら? あらあらあら……!?」(何時もよりも幾つか高揚した様な声色で、ソイツは驚きを示した。今日も今日とて一人の【子供】を拐うべく、ソイツは闊歩していた。けれどもだけれども、その最中。泣きそうな色を宿した声が耳に入れば驚きと高揚を乗せてその方向を見遣った──と同時に貴女の元へ駆けていき。)「──ゲラゲラゲラッッ!!! 久し振りに餓鬼はっけーん!! いやぁ、最近【その他】ばっかりで困ってたのよね……!! しかもこんな森の中……拐ってって言っている様なものじゃなぁいッ……!! こんばんわぁ、こーんな所で一体ナニをしているのかしらッ! しかも一人で! もしかして迷子? 家出? だったらアタシが拐ってあげようか!? ゲラゲラゲラゲラッッ!!」   (2/16 17:11:06)
大和守/袋の男 > (ゲラゲラと、嗤い声を響かせながら貴女の前へ姿を現した。饒舌にぺらぺらと言葉を紡いでいき、挨拶と同時にひらひらと手を振って手の平にある牙の付いた口を見せびらかそうか。住処に居る一人は【子供】ではあるが、もう一人は本当には子供ではない。だからこそ、【子供】を拐うソイツにとっては【子供】が足りなかった。欲求不満と言っても良いだろう。だからこそ、何時もよりもテンション高く、ソイツは嗤っていた。)   (2/16 17:11:08)


清瀬/ターラ > 「ひ────っ」(ゲラゲラ、ケタケタ。地獄から湧いたようなおぞましい嗤い声に制服の下の肌が一斉に不快感に苛まれた。恐怖に疲れきった心ではその声の正体がわからなくて、光を彼方此方へと向けている。涙を目尻に孕んだ灰色の瞳が、暗闇の中に一つの影を写し出した。)「あ゛あぁぁぁぁ嫌だあぁぁ来ないでぇーーっ!!」(廃れた袋を被り、手のひらには鋭い牙を住まわせた口を携えた化け物。貴方の言葉を遮るようにして、形容のできない怖さを叫ぶことでしか表すことができなかった。後退ろうにも退路を木々が遮り、すくんだ脚はもう何処へも動かすことは叶わない。意識を手放してしまいそうなのを懸命に堪えて、頭をショートしそうなぐらい必死に動かした。)「あ、あぁ……来な……っ。さ、拐う……?ま、まさか…あなたがっ、ディランさんを……」(恐ろしい恍惚さえ浮かべた貴方の言葉に引っ掛かりを見つけ、溢れていた涙が薄れる。震えた腕で銃口を貴方に向けると、探し人の名を呟いた。)   (2/16 17:24:10)


大和守/袋の男 > 「ゲラゲラゲラゲラゲラッ!!! あーー──さいっこうの反応じゃないッ!! だから子供って"タマラナイ"のよねぇ……!!」(貴女の絶叫。貴女の反応全てがソイツにとっては心底心地よいモノだったらしく、ゲラゲラと再び高笑いを発してみせた。大人であったならば余計な知識が邪魔をして此処までは驚いてくれなかっただろう。子供故の純粋さこそが、これ程までの"カイカン"を沸き上がらせてくれるのだ。)「……ディラン…………? 嗚呼、もしかして──!」(『ディラン』。その名に聞き覚えは無かったが、もしかすると先日拐ったあの二人の内の何処かだろうか。可能性があるとすれば──あの男。どうしようもなく虐め甲斐があって、心底楽しかったあの男。次の瞬間、ソイツの全身はぐにゃりと蠢いた。)   (2/16 17:44:07)
大和守/袋の男 > 「コイツの事なら、そうよッ!! 今でもあの日の事は覚えてるわ……全くコイツったらアタシにあっさり騙されちゃって──最高に、"イイ"日だったものッ!! まぁそこまで日にち経ってないし、覚えてて当たり前なんだけどねッ!! ゲラゲラゲラッ!」(瞬きの間にソイツの姿は男の姿に変わった。それは先日拐った男──ディランの姿で、けれども直ぐに元の姿に戻ればどうなのかを問うてみる。何処までも茶化すかのようにふざけて、相も変わらず嗤っていた。)   (2/16 17:44:09)


清瀬/ターラ > 「あ…う゛、ぅ……っ」(接触を肯定した証拠に、貴方の姿が歪んでは整う。つい先日、あんなにも楽しそうに夢を語らったディランその人、夜をつんざくような声が耳障りで堪らなかった。次の瞬間、銃口が降りる。身体の内側から何もかも吐き出してしまいそうになるのを思わず口で塞いで、明かりが地へ墜ちた。いかれた懐中電灯は無機質に、不規則に点滅を繰り返す。こんなキ印に捕まってしまった彼は、もしかして。そんな不謹慎な想像が、木の皮に触れた背中を下へとずり落とした。最初の姿へと戻った貴方にはっとして、恐怖を取り払うように叫んだ。)   (2/16 17:57:56)
清瀬/ターラ > 「わ、私は!聖フィニクス騎士団員、ターラだ…っ。仲間を…拐った、この…っ、化け物め!」(ターラがとった行動もまた、悲しいことに奇しくも虚勢であった。胃から這いずり上がる酸に侵され妬けた喉で、凍るような空気を目一杯吸い込みながら叫び続ける。死という明確で単純で悚然な未来を遠ざけようと必死で、言葉の反復を繰り返すばかりであった。紡ぐのを止めれば死んでしまう、そんな確証のない正しい予感に従うままに、ただがむしゃらに。何とかして立ち上がると抱えた銃で敵意を示し、命をかけて窮鼠となろうと勤める。)「ディランさんを…か、返してもらう……っ。勝負をうけろ、化け物!! 私が負けたら、煮るなり……うぅ、焼くなり……。好きにすればいい但し!ただし…… ディランさんを解放しないなら…今すぐにでも仲間を呼んで、お、お前なんか……一網打尽だ!!この……おまえ、なんて……っ」   (2/16 17:58:04)


大和守/袋の男 > 「……あら? …………へ~~ぇ。ビビってる癖にそんな風に虚勢を張る所とか、本当にアイツに似てるわね……!! アイツも化け物だとかぎゃあぎゃあ騒いでたのよね~! アタシにとってはそんなの誉め言葉よ!!」(聖フィニクス騎士団員──『ターラ』。そう名乗った貴女の姿に何処か既視感を覚え、はてと記憶を思い返す。直ぐにその既視感の正体に気付き、何処か嬉しそうな表情さえ浮かべて言葉を紡いだ。最後にはびしっ、と貴女を指差し、『化け物』という貴女にとっては罵る為であろう言葉を、己にとっては誉め言葉なのだと訂正してみせた。)「あらあら…………勝てないって分かってるのに立ち向かってくる所とか、とっても幼い意地で、子供らしくて……──サイコウ、ねッッ!!」(──嗚呼、その姿が子供らしく本当に"イイ"。恍惚とした表情すら浮かべているのだから、貴女の言葉を聞いているのかとやや不安になるが。)   (2/16 18:22:48)
大和守/袋の男 > 「イイわ──このアタシに勝てるなんて子供みたいな思いも全部ぶっ壊してやるよッッ!!」(その言葉はつまり、貴女との勝負を受けるという事で。その言葉を発した直後ソイツは一歩踏み込み、貴女に向かって勢いよく飛んだ。一気に距離を詰め、その最中に変化させた腕──短剣を横凪ぎに振るったのだった。)   (2/16 18:22:54)


清瀬/ターラ > 「う、五月蝿いうるさいぃっ!!すぐ口もきけなくしてやる、お前なんて…敵じゃ──」(『勝てないだなんて』、そう声を張り上げようとしたのを、無力という見えない手が掴んで引き留める。今すぐにでも逃げ出したかった。帰れば、此所に来なければ、今日だって布団を被って微睡みの中へと旅立てたのだから。与えられた勇気、抱いた正義感、押された背中というのは時に言い逃れを弾く足枷となる。しかしその錘がなければ、こうして騎士道を全うすることもできなかったであろう。良いか悪いかと言われれば、全くもって良である。化け物らしい狂った言葉の数々は、同情の余地を与えなかった。人類にとっての敵である彼女を討とうと、ひけた腰で身構える。互いに独りの世界を満喫していたのが、地面を蹴る音を合図にして融合する。此方へと真っ直ぐ飛んでくるのに気が付いて、直ぐ様平射砲を構えた。本来ならば人が担げる重さではないそれは、彼女が筋電義手を持っている証。迫り来る痛みへの恐怖を打ち払わんと、叫び声と共に砲撃を──星々の眠った空を捉えたまま弾を放った。)   (2/16 18:53:32)
清瀬/ターラ > 「あ痛っ。この…………ぁ、ぐっ……!」(寸前に身を横に引いて、放った大砲を抱えたまま地に転がり込む。別の気に背をぶつけるや否や立ち上がれば、右の脇腹から臍のあたりに向かって走った激痛。黒みの強い青の制服は一直線に切れ、そこからじわじわと血が滲んだ。飛び退いていなければ、きっと傷は更に深かった。そう思うと更に腹が疼いて、心臓が跳ねるのと一緒に血と気力とが噴き出す錯覚に襲われる。霞む瞳で捉えた貴方の姿は、宛ら死神。)「来るなっ、来るなぁぁぁっ!!」(動揺を露にして、形振り構わずに二発、貴方を目掛けて、木々を揺らす音を添えて砲撃をする。)   (2/16 18:53:33)


大和守/袋の男 > 「ゲラゲラゲラッ!!! ──嗚呼、本当に可哀想で見てるのも辛くなる程──最ッッ高に──"ソソル"わッ!!」(肉を裂く感触が、短剣越しに──否。その短剣はソイツの腕そのものだ。腕に伝わったその感触に、満足そうに、その感触に恋すらしているかの様に邪悪な笑みを浮かべた。だからこそ人を殺すのは止められない。この感触がどうしようもなく愛しくて、何度でも感じたいと思ってしまう程に中毒性が高い。だから仕方ない、と自分を正当化しつつ)「……そんな無闇に撃っちゃ、だぁめ。相手を見て、その上でちゃんと冷静に、落ち着いて──やらなきゃ、ね?」(貴女の右手の銃口の狙う場所を冷静に見極め、身を捻れば、決死のそれだってソイツは避けてみせた。その上で、貴女にゆっくりと近付きながらアドバイスでも掛けるように軽い調子で、にっこりと笑みを浮かべた。)   (2/16 19:12:50)
大和守/袋の男 > 「──例えば、こんな風になッ!! ゲラゲラゲラゲラッ!!」(──腕が、再び蠢いた。その笑みを一瞬にして残虐な遊びを心から楽しむようなモノに変化させて。短剣であった筈のその腕は貴女の持つ平射砲へと変化し、手本を見せるような──けれども悪意の色を剥き出しに、貴女目掛けて一撃を放とうか。)   (2/16 19:13:00)


清瀬/ターラ > 「この、嫌…っ。余計な、ことを……っ!」(易々とかわされた必死の反撃。焦りと脱兎を咎める為にばかり意識を向けてしまって、ブレてばかりの己の腕はもう信用ならなかった。……かといって、己の信仰は、魔術師としての腕は、更に信用に足らないもの。煽るような貴方の言葉を聞く限り、余程適正は向こうにある。変幻する腕、それが夢のことであったらどれ程良かっただろうか。目を開けたら瞳に映るものが天井から下がった薄明かりのランプであればと望んだ。浅ましい願いの代わりに飛び込んできたのは、己の手に握られたものと瓜二つ、まるで双子の片割れ。嗤いを砲撃音としたように放たれたそれが、隣の木を薙ぎ倒した。途端に心を捕まれて、無理矢理折られたような気がした。閉まっていた涙腺が決壊して、地面をはたはたと濡らしていく。)   (2/16 19:53:02)
清瀬/ターラ > 「返してよ……返して、あげてよ。ディランさんを…だって──」(掠れた声が故意に遮ぎられた。『だってあの人には』。あの人には夢がある。大海原の果てを、海境を臨むこと。小さなことかもしれないが、自分にはこれっぽっちもない、生きてゆく為の目印。羨ましいと共に自分が情けなくて、それを探すことも下手くそで。騎士団に入っても変わることのなかった現状に、何度絶望したかわからない。何処へと手を伸ばしていいかもわからない憧れを、持っているからこそ。素晴らしい人だからこそ、目の前の異形なんかには。)「邪魔されたら、死んでも死にきれんのや!!」(貴方に教わった通り、お望みのままにしてやる。震えを飲み込んで、左の人差し指をトリガー部分にかける。縫い付けた糸に沿って滑らせるように、射線は貴方のふざけた手を的に定めた。内部に込められた残りの一発を、鏡合わせの武器を撃ち落とす為に放った。)   (2/16 19:53:04)


大和守/袋の男 > 「……『だって』……? ──なァに? ……あの人が私の希望~とかくっさい台詞言うつもりなら、その舌切り刻んでやろうかッッ!! てゆーかごちゃごちゃうッせぇなテメー……自分の玩具を易々と渡す奴が何処に居るっつんだよ!!」(『だって』、と。そこで止まった言葉に、ソイツは怪訝そうに眉を潜めた。その後に続くであろう言葉を思考すれば、自分で考えたモノだと言うのに口端をひきつらせながらも憤慨の言葉を叫んだ。どうにも、ソイツにとってはそんな言葉達は無条件に殺したくなる程嫌いなようで。ふつふつと、ソイツは徐々に殺意を膨らませていたのだった。)「あ──ァ? …………は、ははははッ!! 楽しく、なってきた……ァ……!!! ──ゲラゲラゲラッ!!!」(成る程、とんだ意趣返しだ。怒りのあまりに反応が遅れたせいか、貴女の断罪の銃弾は綺麗に己の武器を貫いた。ぶわっ、と貫かれたその場所から黒い靄が溢れ出る。確かに痛みを感じながらも、ソイツはにたりと笑みを浮かべて嗤ってみせた。)   (2/16 20:26:13)
大和守/袋の男 > 「──死んでも死にきれないなんて、ンな事アタシにゃどうでも良いんだよッ!! ──死ねッッ!! 自分に生まれてきた意味やら価値やらそんなもんが全部、一切無かったと絶望しながら死ねッ!! 今すぐぶっ殺してやる──ゲラゲラゲラゲラッッ!!!」(先程までの怒りと引き換えに溢れ出るアドレナリン。嗤い、嗤いながらも夥しい程の殺意を激情に乗せた言葉を放ち──ソイツは、腕を再び蠢かせ此度は刀へと変化させた。意趣返しとでも言わんばかりに、貴女へと近付けば右手──ではなく、左手目掛けて思いきり振り下ろしたのだった。痛みに歪む貴女の絶望の顔が見たいと。そんな、一心で。)   (2/16 20:26:40)


清瀬/ターラ > 「ひっ……う、るさいぃっ!希望は……希望なんて、ものは…っ」(見つかる筈もない。貴方という存在は謂わば、私たちにとって絶望そのもの。それでも唯一、拐われた仲間へと繋がる希望の藁、地獄に垂れた蜘蛛の糸。手を吹き飛ばされても、痛みを訴えるどころか益々愉悦に浸るばかりの姿は狂人そのもの、一世を風靡した殺人鬼達は、例えば切り裂きジャックはこんな容貌だったのだろうか。靄は深淵の中に溶けていき、今度は左の…腕とおぼしきものが刀へ変わる。肌を露にした落葉樹の木々はその服を地へと脱ぎ散らかしている。カサリ、舞った数枚の落ち葉を置き去りに貴方が左腕を振りかざす。身を捩るようにかわすも完全とはいかなかったようで、左の腕に薄く紅い線が引かれた。既に恐怖の針は振り切ってしまっていた。どこを狙うか、この化け物を潰す為には。不死の身体を静める為の場所は。)「……死に、晒せぇ!!」(空のカノン砲を足元に捨てて、手袋を外す。冷たい機械の右手から取り出した小型の刃物を左手で握り締めて、貴方の…本来ならば脳髄の詰まったそこを目掛けて、腕全体を薙刀とするように振り上げた。)   (2/16 20:57:43)


大和守.袋の男 > (己の攻撃がかわされた事に苛立ちなど、怒りなど覚えない。ただ、まだ貴女が【遊ぶ】気力を残している事に三日月の様な不気味な笑みを浮かべただけだ。ーー嗚呼、楽しい。楽しい。楽しくて、仕方がない。)「ーーーーあはぁッ!! あ~らら? 見られちゃった~ハズカシイ!! ゲラゲラゲラゲラッ!!」(貴女が刃物を振り上げた。貴女のその軌道に合わせる様にして動き、回避行動を取るも麻袋ごと額が切り裂かれた。麻袋が切れれば当然のようにソイツの顔が一部見えてしまうだろうか。獣の様にぎらりと光る血の如く赤い瞳が貴女を見つめた。それを外に晒してしまった事に、この場に似合わずまるで媚びる様な色の声と、頬に空いている方の手を当てれば何時かディランにしたように恥ずかしそうに身を揺らしてみせた。それも一瞬の事で、まるで流れるように貴女の左肩から右腰までを撫でるように再び刀を振るったのだった。)   (2/16 21:14:33)


清瀬/ターラ > 「あ、あ…………」(赤の光は蛇の邪眼、不気味な閃光に身が竦んだ。振り上げた手が痺れを伴う。貴方のふざけた態度も言葉も情報として入ることはなくて、異国の言葉で演じられた舞台にいきなり放られたような気分だった。それ程までに現実味がなくて、心の底で願っていた幻を、体現したようで。石と化してしまった身体は、言うことを聞かない。)   (2/16 22:13:45)
清瀬/ターラ > 「い゛………ぁ。ひ、ぁ……や、だ……」(線を交差させるように振り下ろされた刃が身を微かに引き裂く。濃厚で薄い絵の具に、身に待とう騎士の証は青から紫へと変わり果てた。傷が浅いのか深いのか、自分ではわからなくて。ただ茹だった胴体がずきずきと痛覚の一つ一つを引きちぎって、その度に視界が暗転と発光を繰り返す。膝をついて肩を揺らしても、肺まで息が届かない。思いつきで挑んでみたはいいものの、貴方が大人しく仲間を返すなどとは誰が保証してくれるのか。……もっと言うならば、私がここで殺されてしまうという選択肢すら、大いに考えられてしまう。ここで意識を手放してしまってはいけないとわかっていても。敵である筈の貴方に助けを乞うように、朧に霞んだ瞳で見上げた。最早輪郭すらはっきりとしない黒景色が映って、その中に揺らめく二つの赤色が点滅する。逆襲の狼煙をあげることすら叶わず、灰色の瞳は段々と黒にくすみ、やがて糸が切れたかのように物も言わず地に伏した。)   (2/16 22:13:46)