セオドア&ヘスティア
目覚めのキス清瀬/セオドア > 「やっほ、ヘスティア。怪我してるなら無理しちゃダメだよ~、オレが今から付き人になったげる」(めでたい就任式を終えて疎らに騎士達が帰っていく波の中に、極めて赤の強い桃色の長髪を見つけた。先程麗らかな女騎士達を食事に誘ったところ、虚しくも二連敗を期した。彼女ならば、愛らしい爪に引っ掛かれて傷ついた心も癒してくれることだろう。ヘスティアの肩に優しく触れるとにいっと笑いかけ、視線を包帯の夥しく巻かれていた腹部へと一瞬、僅かに悲しげに移ろわせた。)「アデルグント、様になってたね。キミが服を脱ごうとした時はひやひやしたけど…随分なパフォーマーなんだね、上手い具合に纏めあげていっちゃって。オレにはあんなのできないなぁ~」(今回の就任式においてオレが知らされたことといえば、アデルグントが次期団長になるということのみ。彼女達の間で何が行われていたかなんて知る余地もなくて、随分と驚かされてしまった。ケラケラと笑いつつ、仲間はずれにされたみたいでちょっと悲しかったよぅ~、なんてわざとらしく鼻声をあげた。) (2/16 11:24:52)
マリア/ヘスティア > 「……! 副団長。」(飄々とした声と、肩に触れた手に髪をなびかせて振り向く。就任式でのヘスティアの行動を見た上でおいそれと声をかける事の出来る肝の座った人物などあなたくらいしかいないだろう。ヘスティアの行動を”パフォーマンス”と言い切ってしまえるのも、また。……頭の切れるあなたのことだ、ややもすれば皮肉と取りかねない発言 ではあるが、それでも世渡り上手なその笑顔を向けられれば、氷の女王でも毒気を抜かれてしまう。屈託がないと言えば聞こえはいいけれど、やはりどこか、掴みどころがない。)「ふふ、そうだね。これからはアデルグント……いえ、騎士団長の事、よろしくね。……っと。」(はた、といつもの軽口を手のひらで押し込める。そう言えば、自分はもう彼の部下になったと言えるのか。)「これからは敬語を使ったほうがいいのでしょうかね、セオドア卿?……仲間はずれだなんて。あの旗や機械騎士への叙任には、私だってびっくりしたんですよ。」(それが嘘か誠か、あなたにはわかってしまうのだろうか。それでも『そういう事になっています』と含みを込めた片目を瞑ってみせた。) (2/16 12:01:35)
マリア/ヘスティア > 「私が出しゃばったのにも、アデルグントは驚いたと思いますよ。」(こっちは正真正銘、本当の事。ヘスティアは当たり前のように、そのまま廊下を突っ切っていく。あなたが肩を並べて、あるいは後ろをついて歩いてきてくれるというのは、合図なんかしなくてもツーカーだろう。)「ん、15時か……良い時間。万騎長の執務室は、まだお茶菓子もなんにもないの。喉が乾いたから、副団長執務室へお呼ばれしていただけるとうれしいのだけど」(階段に差し掛かった頃、”付き人になったげる”という言葉を受け取ってか、ヘスティアは淑女のように手を差し伸べてあなたをちらりと見た。談話室じゃあお天気の事くらいしか話せない。こうしてヘスティアが甘えてみせるのも、二人の関係においては常の事なのだろう。) (2/16 12:01:41)
清瀬/セオドア > 「それはもう、大船に乗ったつもりで安心して欲しいなぁ。オレが今までどうやってきたか、ヘスティアが一番よくわかってるでしょ?」(宜しく、だなんて言われなくても勿論のこと、ヘスティアから言われてしまったならなおのこと頑張らなくてはいけない。千騎長からの昇格、皆よりも近くで団長の存在を感じることは多々あった筈だけれど、どこかまだ馴染めない部分はある筈。保身の謙遜なんてらしくないことをするよりも、大口を叩いてしまった分しっかりやり遂げればいい。)「わぁ……これ言っちゃって良いのかな、違和感しかないや。オレどうだったっけ、真面目な時は兎も角、こういう時に敬語なんて使ってた覚えってあ~んまりないけどなぁ……」 (2/16 12:28:46)
清瀬/セオドア > (急な貴方の敬語とよそよそしい反応にむず痒さを覚える傍ら、はて、と己の行いを振り返る。勿論真面目な話の時にまで茶化すような真似はしてこなかった筈だが、では敬意を態度で払ってきたかと言われると否だろう。わざとらしく辺りを見渡しては、子供が過ちを隠蔽するような稚拙なひそひそ話を披露する。きっと貴方のことだ、気に入らなければもっと前から邪険に扱ってくれているのだろう。見せていないならそのご厚意に甘えて漬け込むまでだ。)「そっかぁ、じゃあ皆にとってサプライズだったわけだ」(瞑った片目、たまに覗かせてくれる茶目っ気のなんと可愛いことか。差程高さに差のない肩を並べる姿は、付き人にしては貴方が思うより少々強引で、馴れ馴れしいものかもしれない。でもきっと、どんなに高貴なお嬢様にだって、一人ぐらいこうして近すぎるぐらいの距離感を保っていたってバチは当たるまい。差し出された貴方の手を、手袋に包まれた己の手で優しく取る。)「勿論、ヘスティアお嬢様。お茶菓子は確か色々あったと思うけど~…飲み物ねぇ。そうだお嬢様、紅茶はお好きでしょうか?」 (2/16 12:28:47)
マリア/ヘスティア > (頼もしい言葉には一分の文句も出ない。セオドアは最も信頼のおける人物の一人だ。ヘスティアはにっと笑うだけで、そのまま足を動かし続けていた。)「あはっ、そっか。じゃ……今まで通りね。────ん、いいですね。紅茶は好きですよ。あなたの淹れるものとなればそりゃもう満点。」(気障な呼ばわいをすんなり受け入れ、あなたの手を取って階段を上がってゆく。そのまま執務室に通され二人きりになれば、ヘスティアはがらりと表情を変えてあなたに抱きこうと両手を広げるだろう。)「~~~……っあーーー!しんどかったぁ!もう今日は仕事しなくていい?いいよね、セオ。」(字が魔力を持つこの世界で、それを省略するのは余程の仲……という不文律。相手がヘスティアであれば尚更、その響きはやけにいやらしく、部外者達にとっては一層不埒なものに聞こえるだろう。あなたの醜聞を気にしてきたから、こんなふうに気安く呼ぶのは久しぶりだ。『しんどかった』のは就任式そのものか、あるいは騎士団長でいる事かまでは語られなかった。あなたの事だから、やはり色々と思い巡らせるのだろうけれど。) (2/17 21:38:01)
マリア/ヘスティア > 「チョコレートある?」(ぱっとあなたから離れ、ヘスティアは勝手知ったる様子で戸棚を物色し始めた。その間にお茶を用意してくれるだろうと踏んで。玩具を探す子供のように悪戯に動く細い指が、俄に、硝子をなぞってつと止まる。顔は戸棚を向けたまま、小さく呟いた。)「……ねえセオ、色々と騒々しくて言えてなかったけど。……改めてありがとう、私を迎えに来てくれて。」(あまりにも小さな声であったから、あなたには聞こえなかったかもしれない。次の瞬には『あったあった!』と無邪気に声をあげてあなたの言葉を遮った。チョコレートを手にした彼女はソファに座ると、カチューシャやらつけ襟やらブーツやら、外せるものを外して身軽になり、無作法にも足をソファの上に置き、顎と膝をぴったりくっつけてあなたを待った。チョコレートの箱を空けてテーブルに置き、折り目正しく中に詰められた正方形のガナッシュを『どれにしようかなー』なんて指さしながら。) (2/17 21:38:11)
清瀬/セオドア > (返事の代わりに自信に満ち溢れた……ように見える笑みを贈りましょう。何を誇れるかなんて、自分のこの草臥れきった態度ぐらいしか思い付かない。人の懐に潜り込むのではなく、空いている無用心なポケットを見つけるのが上手いだけ。ドアノブを捻り部屋へと貴方を通せば、妙に洒落た仕草で手袋を指から抜き取って外す。入り口の近くに佇むコートハンガーに手袋を預けると、視線の先に誘惑がちらつく。)「おおぉ~~~よしよしお疲れ様、じゃあ御褒美の……あっ。このお転婆姫はほんと……」(外行きの顔はもう沢山!とでも言いたげに羽を伸ばすヘスティア。呼ばれた“セオ”の名前は懐かしい響きでさえあり、切望の筈のそれが今はやけに心を締め付ける。それでも簡単に抗えるものではない。軽く撫でた和膚は厭らしさを孕んでやけに柔らかく、甘酸っぱいケーキの味の中に銀紙の味がする。背徳に浸りながら御褒美に何を、なんて言葉を捜しているとその隙にヘスティアはお菓子の棚へと浮気していた。 (2/18 19:31:06)
清瀬/セオドア > つれない方がありがたかった、ヘスティアにとっては単なる…とはならないかもしれないが、スキンシップの一つを、触れる一瞬を、憎らしくも己が切望していると突きつけられるのが、苦しくてしょうがない。)「ん~~他にやることあったっけ?オレはもうちょっとだけやることあるけど…いいんじゃないの?」(不機嫌を解りやすく表すのに唇を使う。脳内ブーイングを繰り返しながら尖らせて、最近お世話になっている小さな戸棚の中からティーセットを取り出した。そこにあるのはお菓子じゃなくて薬だとか、その棚には自分が来る前から鍵が掛かっている開かずの棚だとか。もう何度だって訪れた貴方に特別忠告する必要はないだろう。)「……なぁに、今更改まって。帝国でも言ったでしょ、キミはオレたちの───」(ソーサー二つを捜しながら、なんだかんだ意識はヘスティアに奪われたまま。此方の何をしっているのかは判らなかったが、急に何故部屋に訪れようとしたのかは謎である。それを言ってしまえばオレが彼女に俄に話しかけたのも不自然、特段と気にすることではないのかもしれない。 (2/18 19:31:43)
清瀬/セオドア > ある言葉を捨ててクサい台詞を探していると、打ち合わせでもしたように完璧な遮り。彼方から独り事を始めたのなら、わざわざ言い直す必要もあるまい。実家に帰ったかのような振る舞いをするヘスティアを見て、ようやっと、“どう呼ぶか”の決断ができた。)「──何れでも好きなの取っていいよ、“ヘスティア”。オレはなんでも好きだから……あっ!もしアーモンドかなんか入ってるのあったら残しといてぇ!!」 (2/18 19:31:58)
マリア/ヘスティア > (”言葉が先んじる”という点においてのみ特筆すれば、この二人は奇しくも同類であるようだった。もっともらしく、淀みなく。足元を見られない為の最善手であろうそれは板について、すっかり人物像になりかわる。異なるものはラベルか中身か、或いはもっと別のものか。見透かされる事を拒む厚い茶色の瓶越しに視覚は当てになりやしなくて、暗黙知の嗅覚だけが頼りで。どうしようもなく詮索じみた嗅ぎつけを交わしながら、彼女だけはきっと、そんな現状にどこか満足していた。目の前の男がうっかり何かを匂わせようとも、それがどんなに胡乱げな臭気を放っていても、彼女にとってはただ馨しいものでしかなく。あるいは本性を隠して阿ねているかもしれないなどという事は、温度差に結露したような滲みを見ても露にも思わないだろう。)「ん?んー。」(『アーモンドがあれば残して』との要望に生返事を返しながら、手元の箱の中にはナッツの乗ったものは無さそうであることを確認する。自分で把握してないなんて、コレ貰い物?嫉妬だなんて可愛い呼び方をする事すらも烏滸がましい自分本位な悪戯心で、チョコレートを口に運ぶ指が抜け駆けした。) (2/18 22:09:21)
マリア/ヘスティア > 「……─────ん!…むむ!」(……ところで、”こっちの”嗅覚はてんで使い物にならないようだ。口いっぱいに広がるほろ苦く香ばしいアマレット・リキュールの……裏切りの香り!噛み砕こうとする口を止めるが、チョコレートは舌の温度でみるみるうちに融解していった。)「……ん~~」(ソファの背もたれに首根っこをくっつけて、そのままヘスティアの視界は天地さかさまにあなたを見る。近づいてくれば強引に唇を奪って”アーモンドのやつ”をお見舞いする気でいた。) (2/18 22:09:28)
清瀬/セオドア > (執務室の主役ともいえる事務机。ある意味で人を表すそこに置かれているのは、手作り臭の漂う陳腐な縫いぐるみが数個とほったらかしの羽ペン、低めの資料の山きチェスやリバースのボードと駒。お世辞にも整頓なんてできていないが、自分がわかっているのだから気にしない。ハッチポッチの中では大切なものを見つけにくくなってしまうが、何ならこれが都合の良い人間なんて塵の数ほど居よう。ティーセットを乗せた盆をごちゃついたシェルターに一旦避難させ、資料の束の隙間に捩じ込まれた一枚を手にとった。裸の指に触れる心地の良い紙の質感、黒石インクに刻まれたそれは手触りと違って最悪の一言。書き殴った手記のようなそれは地図で、王国と風来の民とが手を取り合ったのが記憶に新しいスザンのものであった。赤いラインが蛇のようにうねり、東へと矢先を伸ばしている。外行きを崩した筈の時間の中神妙な顔を作っていると、ん~、なんて間の抜けた可愛らしい威嚇擬きが聞こえてきた。) (2/20 00:42:11)
清瀬/セオドア > 「こ~ら、お行儀悪いことしないの~。いくらオレしか居ないからって気ぃ抜きすぎ~~。チョコ鼻に入っちゃっても知らないよぉ~」(かっちりと前髪を留めておくカチューシャのなくなったヘスティアは、額と紅の髪の生え目を露にして此方を見つめていた。言っては失礼だが間抜けな菅平に思わず吹き出してしまった。気の置けない仲であると思って貰えているなら光栄で喜ばしいことか。紙を裏返しに伏せると盆を再び持って、彼女の野望をかわす形で向かいのソファに腰掛けた。)「ちょっと失礼。……あっ、ヘスティアはミルクと砂糖、どうする?」(温めたお湯に白い陶器、黄昏の最終幕が閉じる直前の色を閉じ込めたウバの茶葉のティーバッグ。机の上に盛大に主役達を広げると、シュガースティックとミルクの入ったピッチャーを貴方の方へと滑らせた。) (2/20 00:42:12)
マリア/ヘスティア > (窓から差す光の中に一瞬だけ、ちらちらと綿埃が舞っているのを目にした。その中で逆光を受けて顕になる横顔のラインに、ふと息を忘れかける。こちらを向いたかと思えば鼻から抜ける笑気にお叱りの言葉は吹き飛ばされて、これっぽっちも深刻さを残さない。そうして直前にあなたがしていた厳しい顔つきなどは、すっかり綿埃と共に陰へ掻き消えたようだった。向かいのソファにつれなく歩いていくあなたを視界の端に認め、ヘスティアはソファにもたれていた首を縦に立て直し、もう一度天地をひっくり返す。何の気なしに放たれたような御用伺いには軽く首を傾げていなし、テーブルの空中で指を滑らせる。ミルクのピッチャー、砂糖を順に指し、視線を誘導するかのような人さし指は、そのままヘスティアの頬へと。最後にとんとん、と頬のあたりを叩き「見て」と言外に含ませた後は、腰を浮かして二人を隔てるテーブルに片手をついて前のめりになった。もう片方の手があなたの頬に触れ、諦めの悪い赤い瞳が、じっとあなたを捉えて退路を絶つ。 (2/20 15:56:47)
マリア/ヘスティア > 顔を近づけて呆気なく唇を奪えば、あなたの頭の後ろに指先を滑らせてより深く、接吻を交わした。アマレット・ガナッシュの味がする生温い舌を押し付けがましく差し出し、そうしてようやく口を開いたのだった。)「……”アーモンドのやつ”。食べちゃったから返したかったの。」(ひらひらと揺らして見せる手の甲は『こんなのなんてことない』と言いたげだった。ぽす、と腰を降ろしてあなたを見上げる瞳は、もう余裕たっぷりの小悪魔の笑みを宿している。)「セオってばなんだか最近つれないね。避けてるみたい。───あ、このチョコレート、貰い物でしょ。噂の女性騎士?」(シャルロッテ……そう、シャルロッテだ。仮にも騎士団長であったヘスティアが、騎士達の名前を忘れるはずもないけれど、あえて口に出さずにかまをかけてみる。────嫉妬?いいえ。独占欲?いいえ。ただ私は心配なのです。あの子はアレイスと同じ人種に見えるから、あなたも私と同じ苦悩を抱える事になるのではないかとね。) (2/20 15:56:53)
マリア/ヘスティア > 「……そっかぁ。」(日常を取り繕ったような空々とした口調を互いに交わしながら、絨毯の非常事態に声を荒らげる事もなくどこまでも俯瞰を決め込むあなた。まるでちぐはぐなアンビバレントに、ため息も出なかった。逸らされた瞳を追うことが出来なかったのは、もうあなたのペースに巻き込まれている事の証左だ。情事の後にシーツの上を這うものような、あるいは朝に琺瑯のウォッシュスタンドをなめる流し残りの泡のような、濃艶か清廉か、どちらともつかない白濁の、重力に従い滴るに只、その瞳は捕らわれていた。)「なんかごめんね。プライベートな事に突っ込みすぎたみたい?私ただ、あなたがコーフの結婚式で言ったみたいな────そうそう、恋話?そういうのが聞けるかなーって、軽い気持ちで聞いただけ。流してくれてかまわないから。」 (2/20 23:07:37)
マリア/ヘスティア > (いつまでたってもあなたの人物像は掴みきれないけれど、こんな時普段なら『そうそう!』なんておちゃらけながら得意げに、戦利品を見せびらかすのではないのかと思った。あるいはよっぽど自分が名前を出した人物……シャルロッテの事だけは冗談にしたくないと思っているのか。それ程熱を上げているのなら、避けられていた理由だって簡単に説明がつくだろう。喉に引っかかる魚の小骨のような違和感は、俄に覚えた感傷と綯い交ぜになってヘスティア自身にも自覚のできないところへと隠される。きっと私は、ショックを受けているのだと。────セオドアの事を愛していたのかと言われたら、騎士たちの例に漏れずはいと答えられる。だけどそれを、世間は恋とは呼ばないはずだ。だからさしずめ、自己肯定を保ってくれる都合の良い存在が取り上げられて機嫌を損ねるような、私は女王様気取りの嫌な女なのだろう。無闇な自虐は趣味ではないけれど、それが最も論理的に腑に落ちる自己分析だった。)「……ごめん、”汚しちゃった”ね。」 (2/20 23:07:59)
マリア/ヘスティア > (ぽた、ぽた、と絨毯へ滴り落ちるミルクに視線を注ぎながら、まるで間を持たせるように呟く。眼前のテーブル下で起きている現象をただ、事実として述べただけだった。ヘスティアが騎士団長を卒業するのと同じように、あなたも”騎士団長の腰巾着”を卒業する時が来たのかもしれない。それをわざわざこれ見よがしに宣言してみせて我々の間に気まずさが残るくらいなら、穏便な形でフェードアウトしたいというのが、きっとあなたの選択なのだろう。騎士団に私情を持ち込まない最善を、理解できると思った。)「……あ~、今日は気分じゃなかった?セオドアってば、傷だらけの身体を見て気分が萎えちゃったりして。傷つくなぁ~!……なんてね、嘘嘘。私も手負いだし、しばらくはおとなしくしてよっかなぁ。これから譲位で忙しいしね。」(上滑りな軽口を叩きながら、床を拭きやすいように両手でテーブルを軽く動かした。”しばらく”の言葉に隠された本当は、”金輪際”だ。騎士団長という身分にあぐらをかいた女神ごっこに引導を渡してくれたのは 、他でもないあなたになりそうだった。) (2/20 23:08:04)
清瀬/セオドア > 「……なぁにそれ、もしかして妬きたかったの?オレからはもう散々聞いてきたんじゃない?飽きないもんだね、嬉しいけどさぁ~」(いつもの歯切れのよい商人のような口調はどこかへ出掛けてしまったようで、吃りがちな言葉は出るのを躊躇っては渋滞を起こしている。鼻の中も態度も甘ったるくて胸焼けしそう。今更いつもの調子に戻ったって白々しいだけで、脈絡の文字はどこにも見つからなくて。いつもの計らいに長けたセオドアは売り切れて、棚に寂しく並ぶのは鍍金の剥げた只の頼りない男一人である。) (2/20 23:58:33)
清瀬/セオドア > 「まぁ元々汚れてたようなもんだし丁度よかったや、ヘスティアが帰ったら久しぶりに洗おうかな」(そのままこんな自分を殺すような遊戯から足も洗えたなら、どれ程楽だろうか。同じく白いタオルに汚れは目立たない筈なのに、はっきりと穢れている。くすんだ瞳と荒んだ心には、そんな汚点がよく見える。このまま消えて欲しい、雪解けを見守る太陽のように蟠りを紐解く守り人になりたい。きっと此方の意図を汲み取ってくれているヘスティア、オレもそれを望んでいた。……心結は依然として苦しいまま、更に空気を肺から追いやろうとしてくる。貴方に、理解に長けた、きっと同じ穴の狢であるヘスティア伝えることができなければ、日の目を見ることもできずに醜さを閉じ込めるしかなくなってしまう。それが出来るほど、強くはないから。) (2/20 23:58:35)
清瀬/セオドア > 「────あのさ、ヘスティア。いや、ヘス」(さっき禁めたばかりの卑しい名を呼ぶ。魔術師にも、全てを露にした存在にもなれないから、二人で綺麗に飾った皮を被ろう。マスカレードをしているのはわかっているのだから、その下に鬼がいようが蛇がいようが関係ない。野獣に愛の華を手向ける必要もなければ、毒の果実に眠った姫を目覚めさせなくたっていい。ただせめて、時計の針を日の終焉に進める役目は、オレに担わせて欲しかった。)「オレさ、ヘスが好きだよ。でもそれはさ、神に誓えるような綺麗なもんじゃないんだ。……諦めるには、愛おし過ぎるんだよ。どんなに醜くなったってヘスは……いや、ヘスだけじゃない、誰だってそうだ。でもオレには誰かを愛する権利なんてないんだよ」(甘えていいだろうか、剥いでいいだろうか。半ば脅しのように赤裸々になると乗り出していた身を立たせて、貴方の座るソファの肘掛けに膝を乗せた。片手は背凭れに、もう片手は貴方の手に絡ませて、わざとらしい程に苦しげに、貴方を溶かす程に熱烈に見つめる。好きの言葉を紡ぐのを堪える代わりに握った手に段々と力が篭る。) (2/20 23:58:54)
清瀬/セオドア > 「……コーフの結婚式の時、アレイスと何があったの?キミはアレイスを拒んだような事してたけど。いや、そんなことはどうでもいいんだ。折角、諦められると思ったのに」(背凭れを掴んでいた手でヘスティアの肩を押して、そのまま覆い被さろうとする。それが許されたならば垂れた前髪が貴方の鼻先に触れるくらいまで距離を縮めて、哀愁と劣情と、数えきれないぐらいの感情のカクテルを凍てつく理性にstir。今のままでは誰も救えない、希望をちらつかせて絶望への落差を楽しむような真似しかできそうにない。小さく、救済を求める。)「ヘス、最後にしよう。今夜迎えに行く、だから──」(その先を口にすることは出来なかった。オレは悲劇の人魚姫を演じて、なのに短剣は貴方に握らせたがっている。こんな中で生きていくことは辛過ぎて、身が張り裂けそうで、いっそ殺して欲しかった。口から漏れた吐息を生温くして、手先を震わせた。) (2/20 23:59:06)
マリア/ヘスティア > (『妬きたかったの?』)「そうだね。」(『ヘスティアが帰ったら──洗おうかな』)「…うん、そうだね。」(生返事ともつかないものを、ずいぶん雑に返したようにみえるだろうか。だけどヘスティアにとってはそう答える他なかった。取り繕っているにしては、あまりにも核心が視界の端にちらつきすぎるから。)「──────……」(ん、と喉が鳴った。声として発したつもりだったのに、それはまるっきり魔力を帯びちゃいない。身体を揺さぶられて横隔膜を震わせるだけの、条件反射の喘ぎみたいだった。『好きだよ』か。改めて言う程の事でもないのにと普段ならば思えるのだろうが、あなたが誰かの為にプレイボーイを辞めるといったような憶測のせいで、妙に痛々しい響きに聞こえてしまう。恋や愛とは呼べなくても、私達は曲がりなりにも好き合ってきたはずじゃないか。なのに、どうして今はそれが哀れみや情けに聞こえてしまうのか不思議でならなかった。)「……ごめん、解んない。……えっと、セオドア?」 (2/21 01:17:51)
マリア/ヘスティア > (葛藤の末にまろび出たのだろうか、『綺麗なものじゃない』なんて否定する言葉の次には、『愛おしすぎる』とどこか未練がましげ。『醜くなったって』って、誰の事?ぼろぼろと溢れ落ちたパズルのピースだけじゃ、何を描こうとしているのか解らなくて。解るのはただ、おいそれと型には当てはめさせてくれない、気の遠くなるような大きさの額縁があるのだろうと言うことだけだった。全てを理解しようとか、見透かそうだとか、そんな事は端から望んじゃいない。二人で持ち寄ったピースが額縁のどこかの隅で絵らしいものを描けば、気持ちよくその続きを、他の誰かにプレイヤーを譲る事が出来る。これはただ、そういったエゴだ。)「愛おしすぎるって、醜くなったってって、誰の事?」(しらばっくれている訳じゃないのは、困惑した表情に現れていただろう。ヘスティアはあなたが買い被る程の共感力を持ち合わせた賢者ではなく、ちぐはぐなクエスチョンで、あなたの赤裸々な切迫をぶち壊してしまいそうな愚か者。)「権利ってなんのこ、……と──────」 (2/21 01:18:03)
マリア/ヘスティア > (続けざまに流れるような言葉は、しかし突然せき止められる。覆い被さるように見下ろしてくる金色の瞳や、絡みつく骨ばった指や、ヘスティアごと覆い隠してしまいそうに落ちる影は何よりも雄弁で。『今日はそういう気分なの?強引なのは嫌いじゃないけど』と、いつもなら巫山戯た官能に身を任せるところであろうのに、神を引き合いに出されてまで、それはできなかった。)「……アレイスがどうかしたの……待ってよ、勘違いしてない?どっちかっていうと拒まれたのはこっち。彼から何を聞いたのか知らないけど─────えっ、あっちょっと……」(男の力に任せて組み敷かれたというよりも、有無を言わせない雰囲気がそうさせた。らしくない感情を顕にしていてもなお、どこか策略に長けたあなたらしいのかもしれなかった。)「…………」(最後にしようの言葉に、沈黙が漂う。かち、こち、と時計の音が響く─────今、何時だろう?答えは決まっているけれど、ヘスティアは長い間言葉を選んで、そして吐息と共にそれを吐き出した。) (2/21 01:18:14)
マリア/ヘスティア > 「…………いーよ。」(『あなたはそれでいいのね?』と、胸の奥で鳴り響く。私達の不埒な関係を最後にすることが、というよりも、シャルロッテか、はたまた別の誰かかはわからないが、あなたを変えた誰かに対して操を立てなくてもいいのだろうか、という思いから。……パズルのピースが描く絵を、あなたはきっと、子供でも解るようなわかりやすい童話に仕立てあげたいのでしょう。だけど残念ながら、目の前に居るのはプリンセスなんて可憐なものではないのです。至近距離から香るアーモンドの香りが、苦く心を燻った。) (2/21 01:18:25)
マリア/ヘスティア > (果たしてあなたは解っているのでしょうか、もう”騎士団長”ではない私を抱く事が、意味するものを。)〆【目覚めのキス】 (2/21 01:18:34)