ゼペタル&レーテー

あゝ無情

マリア/ゼペタル > (雷鏡との戦闘を終えて傷も回復した頃、ゼペタルは再び朝の街を徘徊していた。己を愚弄したかの男に、目にものを見せてやらねばならぬ。同胞と会う事ができれば何よりだった。)「……そこの女」(足を引きずりながら歩く、異様な姿に。ゼペタルは直感した。)「貴様は帝國人か、王国人か。……それとも。」「イモータルか。」(武器に、手はかけなかった。)「俺の名は黄昏のゼペタル。……この名に聞き覚えがあるならば、抵抗はしないほうが懸命だ。……貴様、欲しいものはないか?俺が、何でも用立てしてやろう。……こちらを向け、さもなくば─────」(殺すぞ、と口に出しそうになったのは、おそらくイモータルの本能によるものだ。それでもゼペタルはそれを一度引っ込めて、ゆるやかに口角を上げる。かつての老将が、大陸に戻ってこようとしていた。)   (2/15 20:13:00)


蟻ィぃいッ!!!/レーテー > 「_____、こんばんは、…はじめまして、かしら?」(背後から声を掛けられ、彼女はそちらへと半身で振り返り、こてんと首を傾げて見せる。その些細な所作に、首の皮膚はパリパリと細かく罅入り、欠片がぽろぽろと落ちる。彼女は君を知らないらしい、その名前も、容姿すらも。それだけ彼女は世間を知らないのだろう。自分の好きな事だけを常にしていたからか、きょとんと不思議そうな表情で君の方にその瞳を向けるだけで構える事も怯える事も、そして逃げ出す事も無い様だ。)「イモータル、イモータル?良くは知らないのだけれど、きっとそう呼ばれていたと思うわ。貴方は、サンタさん…?」(欲しい物を何でも、なんて言われた彼女は最も可能性が高いと思った人名を口にするのだ。ずいぶん寝坊助さんなサンタさんだけど、でも、まだ彼女はプレゼントを受け取った事が無かったから、ちょっとは期待したのだろう。) >ぜぺさん   (2/15 20:45:22)


マリア/ゼペタル > (どうやら、彼女はイモータルであるようだ。人形のような身体は荒廃の美を宿しており、まさしく不死の異形と言うべき姿だった。ゼペタルは満足げな表情を見せて、あなたの名を尋ねる。)「あぁ、イモータルなれば知らずとも無理はない。もう一度名乗ろう、俺は黄昏のゼペタル。……サンタとやらでも、なんでも構わん。お前の名はなんという。」(言うがはやいか、ゼペタルはポケットからナイフを取り出し、自身の腕に傷をつけた。血が流れきり、肉が見える頃、そのぱっくりとあいた傷口には、ぎょろぎょろとした目玉がいくつか潜んでいた。)「挨拶代わりにな。これが俺の異能だ───”全てを見通す目”。……過去も、未来も見通す事が出来る。……どれ。」   (2/15 20:52:22)
マリア/ゼペタル > (ゼペタルが目にしたのは、黒いスーツの男と対峙するあなたの姿であった。奴は────リューグナー、そう、リューグナーだ。ゼペタルも、彼に接触した事があった。)「……おや、この男の事をすっかり忘れていたな。奴にも、近いうちに会いにいかねばならん。……女、貴様、リューグナーという男と会ったな。これで俺の異能については証明されたか?」(さあ、次はお前の番だと言わんばかりに、ゼペタルはあなたに近寄った。)「……お前の異能について教えてはくれないか。」   (2/15 20:52:26)


蟻ィぃいッ!!!/レーテー > 「んー……、」(彼女は君の一連の言葉を聞いて、小さく唸るだろう。どうやら、お前や女という言葉遣いにむすっとしてしまったのだろう。リューグナーさんはもっと優しくしてくれたのに、なんて記憶の中の彼を引き合いに出して、異能を行使する。彼女の異能は対象の大事な記憶または自分に纏わる記憶を剥奪するという物。この瞬間に、君は彼女から見通した過去も、未来も、まるですっぽりと虫食いの様に失ってしまうだろう。)「私の力は記憶を盗む力なの、 ” はじめまして ” ゼペタルさん、私の名前はレーテーって云うのだけれど、"お嬢様"とか"お姫様"って呼んでくれないかしら?」(彼女はあからさまに不機嫌そうな表情をしたまま自分の記憶をすっぽりと奪い取った相手に改めて”初めまして”と声を掛ける。それはまるで、君からすれば、いつの間にか目の前に居た少女から能力を明かされ、そして同時に教えても居ない名前を一方的に呼ばれた事に等しい。君が何度彼女の事を見通そうとも、手に入れた傍から彼女にまつわる君の記憶はぱくぱくと食いしん坊な彼女の異能によって使い物にならない穴だらけのチーズみたいになってしまう。)   (2/15 21:10:52)


マリア/ゼペタル > 「……────」(はっとして、ゼペタルはまるで白昼夢から目覚めたような感覚に、暫くの間弛緩していた。)「……あぁ…」(名乗られた名に、生返事を返した。はて、自分はこの女に、自らの名を名乗っただろうか?───点となって散らばった疑問は、立て続けに語られるあなたの言葉によって辛うじて線で繋がった。)「……ふはは…ははははっ!……それはいい!」(相性の悪い相手だ。同胞だったのは僥倖だとゼペタルは思ったが、果たしてどうだろう。まだあなたがゼペタルのことを敵視しないという保証もないのに。それでもゼペタルは、声を上げて笑った。あなたの異能は、それ程魅力的だった。)「……また記憶を盗まれては堪らぬ、姫様と、そう呼べばよいのか。……良いだろう。」(ふ、とほころんだ目尻は、生前の。好々爺然としていたゼペタルを知る者であればデジャブを覚えるだろうか。しかし、あなたには関係のない事。───彼は人間であった時、そんな一面があった。それだけの話だ。)   (2/15 21:32:19)
マリア/ゼペタル > 「どこまで本当かはわからんがな、しかし、こうして狐につままれたように化かされたのだ、信じるしかあるまい。俺の記憶を掠め取った、そういう事なのだろう?」(そして、ゼペタルは先程言った言葉をまるまるそっくり同じに繰り返す。彼にとっては、それを言った記憶もない。)「欲しいものはないか?俺が、何でも用立てしてやろう。」   (2/15 21:32:25)


蟻ィぃいッ!!!/レーテー > 「ふふんっ!でも、なんでも奪えるわけじゃないのよ?…その人から奪えるのは私自身の事と、特に大事な記憶だけ。」(彼女は君に姫様と呼ばれれば至極満足げにそう応えるだろう。言うまでもない、彼女は世界を知らない、故に望みなんてそう多く在る筈が無いのだ。生まれてこの方、レーション食だけで生きてきて、他の食べ物を知らない子供が急に外界に解放されて何か食べたい物を強請ろうだろうか?否、そんなはずはないのだ。だから、君の質問にも無理難題を口にする事は無い。)「じゃあ、あのね、私ね、跪いて手の甲にキスして欲しいの!それから、それからね、とっても優しく愛を囁かれてみたいわっ!」(何でも、という物だから、恐らく金じゃ買えないような、そんな要求を君にする彼女はにへにへと至極期待した笑みを向けながら照れ臭そうにすっと片手を前に伸ばして、手の甲を君に見せつけるだろう。彼女が君のことを、生前の姿を知れば、そしてその功績を聞けば、この時のこの言葉は至極恐ろしい事だと気付くだろうが、きっと彼女にはそんな機会は来ないのだろう。)   (2/15 21:42:37)


マリア/ゼペタル > (彼女の言葉を耳にした瞬間、ゼペタルの頭は割れるように傷んだ。)「……っぐ、……う、あぁっ……!」(その場に蹲り、もはやレーテーの言葉は届かない。知らない言葉だ。知らない言葉だ。そんな言葉は、知らないはずだ。現実から目を背けるのは、これがはじめてではない。ふと腕に目をやると、目があったはずの腕は、ただ自傷の痕があるのみだった。ゼペタルはそこで、自信の異能がなくなったことを知るのだった。)「…あ……い…」(溢れ出す記憶は、かつての弟子────我が息子にまつわる思い出だ。俺は死に際、奴に愛してやるといえなかった。)「……それが……ほしいのか……。」(さめざめを涙を流す姿は、もはや人のそれと変わらなかった。恐らくは戸惑っているであろう彼女の顔を見て、穏やかに微笑んだ。)「……すまんが、『お嬢さん』。……そいつを、くれてやる事は出来ん。……息子にもくれてやれなかったものだ、『儂』はまだ、誰にも、愛していたと、愛していると伝える事が出来ぬまま去ってゆくべきなのだ。」(それがきっと、世界の理から外れて生まれ変わってしまった自分に課せられた神罰だ。)   (2/15 22:12:21)
マリア/ゼペタル > 「……申し訳なかったなぁ……こんな老耄の相手をさせ、時間を無駄にしてしまったろう?……お嬢さんのほしいものが、見つかるといいなぁ……。」(ゼペタルはもう、死を心に決めていた。それでも、わざわざ彼女の目の前で遂げる必要はなかろう。すっかり人が変わってしまった様子の彼は頭を抑えて、這うようにレーテーから離れていった。)「リューグナーという男にもしも会ったら、伝えてくれないか。『ゼペタルは死んだ』と。」(聞こえるか聞こえないかの声で、去り際につぶやかれた一言。それがかつて息子の代わりをさせてしまったイモータルの娘、アビゲイルに届けばいいと願いながら。)   (2/15 22:12:28)