袋の男&ディラン

完敗

大和守/袋の男 > (ーー可哀想なお姫様は未だ小屋の中。一人だけでは飽き足らず、再びソイツは王都へと赴いた。陽は完全に沈み、月が登る。こんなにも暗いこの場こそ、ソイツの本領を発揮できるというもの。家々の屋根を軽々と飛び移り、下を眺めながら一人の子供は居ないかと探しーー。けれども拐えそうな子供は中々見つける事が出来ず、ソイツは苛立たしさに大きな舌打ちを一つ溢した。)「あーー……? え~、何でこんないないのー!? あ~ムカつくわ~っ!! ……あ?」(人通りも少なくなってきた中、一人で歩いている貴方の姿を見つけた。見た限り子供では、無さそうだがーーまぁ、いい。別にソイツは子供"だけ"を殺している訳じゃあない。子供は"拐って"殺す。それ以外は、その場で殺すだけなのだから。跳躍しては、堂々と貴方の目の前に着地し。沸々と沸き上がる殺意と戦意のままに、何時もの様にゲラゲラと笑って声を掛けた。)「ゲラゲラゲラッ! よ~ぉ、そこのお前! なぁなぁアタシ退屈してんだよ、よけりゃあ是非是非アタシと遊んでくれよ! ーー勿論テメーが遊び相手だけど! ゲラゲラゲラゲラッ!!」   (2/13 23:44:42)


シロー/ディラン > (仕事が終わるのが遅くなった為に、夕飯を外で済ませたディランは足早に帰路へとついていた。以前イモータルに遭遇したのは記憶に新しかったのに。早く帰りたくて近道を通ってしまったのが運の尽きだった。大通りから少し外れて暫く。どこからともなく聞こえる笑い声にぞっとしたその時には、目の前に得体の知れない化け物がいた。袋を被っただけの人間に見えなくもないが、身の毛のよだつ様な感覚にディランはいつかの恐怖を幻視する。震えた声を喉奥から絞り出した。)「お前も⋯⋯怪物か⋯⋯っ!⋯⋯お、俺は丸腰だが、魔術師だ⋯!騎士団を敵に回せばただじゃすまないぞ!」(一度、イモータルに襲われた経験があることと、見た目が以前のイモータルよりもおぞましくなかったからか、語気は荒くなる。無論、その理由は恐怖を抑え込む為の虚勢に過ぎなかったが)「去れ、さもなくば、お、お前を滅する⋯⋯」   (2/14 00:09:11)


大和守/袋の男 > 「……あら? あらあらあら……?」(貴方の言葉にソイツはどこか驚いた様に腕を広げ、その両手を開いた。その手の平には鋭い牙のついた口が存在していて、本来ならば在る筈のないその存在が、ソイツをイモータルである事を確定させている。異質で、人間とは違うイモータルなのだと。)「あら~、もーしかしてだけど、アタシじゃご不満なのかしら~……? あ、別の姿が良いのかな? じゃあじゃあッーー」(ぐねぐねと、ぐにゃぐにゃと、ソイツの全身が蠢いた。次の瞬間には、そこには別の人物が居て。)「じゃあ、俺が良いか?」(ーーそこには、長身の男性が居た。声帯すらも変わっているのか、低く響く音が鳴る。そして、ソイツの体は再び蠢く。)「それとも、わたくしが宜しいですか?」(ーーそこには女性が居た。再び、蠢く。)「僕が良い?」「……私が、いい……?」(ーー少年が。ーー少女が。ソイツはあらゆる姿に己を変え続ける。貴方を惑わすように。貴方を翻弄するように。その果てには、元の麻袋を被り白布を羽織った得体の知れない姿に戻って。腕を大きく広げ、笑った。)「ーーさぁさ、どれが良い!? なーんでも、望む姿になって魅せるよ~? ゲラゲラゲラッ!」   (2/14 00:27:21)


シロー/ディラン > (広げられた腕には口、としか形容の出来ない器官が存在していて、やはりこれが異形たる化物だと視覚で訴えてくる。目を逸らした瞬間に殺されてしまいそうで、キッ、と睨みつけていたが、異様な姿の化け物がどろり、と姿形を失って蠢くのを見て、足を竦み上がらせた。)「⋯⋯う、っ⋯⋯!はぁーっ⋯⋯、は⋯⋯っ」(何度も何度も、恐怖心を刺激する為だけに行われたかのような一連の行動に息を荒くすると、恐怖からかちかちと歯を鳴らした。騎士修道会の敬虔な騎士達とは違い、強い心の一つ持ち合わせていなかった整備士のディランには効果覿面だったようで、おぞましく異様な光景に酷く狼狽し、確実に精神を蝕まれていく。)「ばっ⋯⋯化け物、⋯⋯!化け物めぇっ⋯⋯!⋯⋯はぁーっ⋯!⋯⋯おぞましい化け物め⋯⋯ッ!」(肩を上下させながら深い息を交え、必死に言葉を紡ぐと、呪文を唱えようと口を動かす。)   (2/14 00:48:54)
シロー/ディラン > 「我願う 漣よ 万里の波濤よ 今ここに⋯⋯っ!かのものを⋯押し流せ⋯⋯」(必死で口を動かしたが、未熟なディランの言葉には奇跡を熾す程の魔力が宿ることはなかった。恐怖のあまり、言葉の一つ一つの意味を意識することもままならず、己の無力さに地面に膝をつくと、静かに化け物を見上げた。)「⋯⋯俺を殺せば⋯、か、必ず天罰が下るぞ、醜い、異形の怪物め⋯⋯っ、い、今にも騎士団がここに駆けつけて来る⋯⋯っ!あ、あぁ、そうだ⋯っ、お前の事は知っていたから、最初から、お前を誘き寄せる罠だったんだ⋯⋯っ」(銃の一つ無い事よりも、先程のおぞましい、イモータルにとってはパフォーマンスの一環でしかなかったのかもしれない行為はディランの精神を強く削っており、せめて生き永らえようと必死で嘘を吐いた。   (2/14 00:49:04)


大和守/袋の男 > (ーー化物化物と、それしか語彙が無いのかと貴方を嘲笑うように見つめる。恐怖に押し潰されそうなその切羽詰まった表情が、狼狽が、たまらなくーー"イイ"。ぞくりと背を掛け上がる感覚に、ソイツは思わずにたりと口角を上げる。三日月のような、実に不気味な笑み。詠唱を行おうとその奇跡は顕現せず、ソイツに何も危害を被る事はない。それに愉悦を覚えていた。その筈なのに。)「あはっ」(ーー『必ず天罰が下るぞ』。途端、ソイツは笑みを掻き消した。何も浮かぶ事のない無表情。それだけをぽっかりと浮かべながら、乾いた笑みを溢した。)「ーーーーあぁ?」「何だよ天罰ってーー」(貴方の顔にずいとソイツは己の顔を近付け、麻袋のせいで表情は見えずともその声から怒気を感じる事は出来ただろうか。)「天罰が下るだの罰を受けるだのうっせぇなァーーあ? 今すぐ殺してやろうか? んで天罰が下るかどうかアタシ直々に試してやっても良いんだけど。なァ。どうする?」(いい加減に聞き飽きた言葉を繰り返され、ソイツは明らかに怒りを見せた。怒りに口角を引きつらせながらも笑みを浮かべ、するりと貴方の肩に指を這わせながらそう問おうか。)   (2/14 01:06:44)


シロー/ディラン > 「⋯⋯っ⋯!」(顔を近づけられ、ディランは逃げ腰に尻餅をついて、喉をひゅう、と鳴らしながら震え上がった。得体の知れない恐怖よりも、強烈な怒気を押し付けられる方が現実味があって、まだマシだと思えるのは間違いだと気づく。自分一人に対して濃密な殺意を向けられて、ついた後ろ手をがく、がくと折りながら動かない喉を恐怖に駆られて動かした。)「き、騎士が⋯⋯っ!う、う゛⋯⋯ぇほ゛っ!」(凝り固まった喉を無理矢理に動かしたからか、勢いよく嘔吐くと、口元からだらしなく涎を垂らし、口元を袖で拭いながら涙すら滲む瞳を一度強く閉じた。少しだけ落ち着いたというよりは、苦しみが脳裏を占拠して、喉が幾分かマシに動く。胃液の味が混じる唾液を飲み込むと、口のついたおぞましい腕を引き剥がそうと手首を握って力を込めながら声を上げた。)「騎士が⋯⋯騎士団はすぐそこまで来てるぞ⋯⋯っ、幾らお前でも、死ぬぞ⋯っ!!⋯⋯き、騎士は俺なんかよりも、強い⋯⋯、お、俺はッ、!助けて⋯⋯っ!!!⋯⋯ここだぁぁぁあッ!!」(誰も来る訳が無いのに喉が切れるかと思う程、情けなく声を掠れ、裏返らせながら叫んだ。   (2/14 01:38:09)


大和守/袋の男 > 「ーーあらあらあら? あっもうやだッ、そーんなに力込めて全くもう貴方って強引なのねッ……! アタシは別に強引なのが好きとかそういう訳じゃないけどーーまぁ、言うとすればーー」(貴方がソイツの手首を握ったのが引き剥がす為だと言うのはソイツも分かっている。けれどもそれを茶化してしまうのはちょっとした悪戯で、最早癖になってしまっていて。自由な片方の手を頬に当てればくねくねと恥ずかしそうに身を揺らしてみせた。何処までもふざけた仕草に言葉。それに貴方が反応する前に、ソイツは溜め息と共に表情をするりと落としてみせた。)「ーー黙ってろ耳障りだ」(低く、低く、囁いた。先程までは言葉までだったが、今度こそソイツは暴力に手を出してみせた。とは言っても片手は捕まれていて、その状態で殴ったりなど力が上手く掛かりはしない。だから。避けられないようにと貴方の頭に片手を添えて。そのまま、思い切り足を貴方の頭目掛けて振るったのだった。)   (2/14 02:00:06)


シロー/ディラン > (ころころと姿形を変えるのを見せられた後では、猫なで声も仕草の一つも扇情的に見える筈など無くて、おぞましい物を見る視線を向けて口をきゅっ、と閉じる事しか出来ず。背筋を何かが這い回る様な恐ろしさに体を硬直させた時には、低い声と共に自分の頭に手が添えられていた。)「───ぐッ!!」(くぐもった声が響いた。視界が一瞬で黒く染まり、強い衝撃が体と共に意識ごと吹き飛ばしそうになった。どさり、と地面に倒れ伏すと、灼けるような激痛が顬に走って、痙攣するようにのたうち回った。)「う゛⋯⋯ッ、ぐ、ううああああ!⋯⋯い、うううう⋯⋯ぐ⋯⋯」(脳が頭蓋骨に強くぶつかって、脳震盪を起こしているのか、焦点の合わない瞳を動かすが靄のかった視界には何一つ映らない。指先をぴくり、ぴくりと、跳ねさせて、蚊の鳴くような声が漏れた。)「⋯⋯たく⋯⋯ない⋯⋯」(微かに動かした口から漏れたのは情けない命乞いだった。だけれど、自分の情けなさに涙出来るほど、まともな状態ではなかった。   (2/14 02:14:24)


シロー/ディラン > 「⋯⋯う⋯⋯っ」(痛みも衝撃も、まるで全身の精神の感覚がすう、と意識と一緒に抜けていくような感覚の中、ガラス越しに聞くようなくぐもった声が響く。体を揺さぶられて苦しそうな呻き声を上げると、朦朧とする視界で必死に人影を見出した。)「⋯⋯あ、ああ⋯⋯騎士団⋯⋯っ」(恐怖から開放されて張り詰めた糸が切れたからか、それとも己の情けなさからか、単に痛みからか、きっとそのどれもが理由の涙を瞳に浮かべて、我慢出来ずに目尻に水滴が浮かんだ。)「⋯⋯っあり⋯⋯がとうございます⋯⋯っ、本当に⋯⋯来て⋯⋯。ありがとう⋯⋯、う、うぅ⋯⋯」(全身に力を込めて、何とか寝返りを打ったが、頭を持ち上げる事は出来ず、ぱちぱちと瞼を痙攣させながら声を絞り出すと、静かに服の裾を掴もうと手を伸ばした。)「ご迷惑⋯⋯を⋯⋯、あ⋯⋯字を⋯⋯字を教えて⋯⋯ください⋯⋯」   (2/14 20:28:00)


大和守/袋の男 > (──嗚呼、貴方はソイツに騙されているとも知らずその男を信じてしまったのか。『ありがとう』だなんて言葉が耳に入れば一瞬、きょとんとした表情を浮かべた。その言葉で、貴方が此方を騎士団の者だと信じているのを、ソイツも確信して。当然、こうして騙してしまい礼なんて言わせてしまった事に罪悪感を──感じる訳が無い。嗚呼、嗚呼、もしも此処で【嘘だ】と告げたらどうなるか──その反応を想像すると──実に、"ソソル"。)「……字。────ブギー、だ」(【ブギーマン】というのを知っているだろうか。親が悪さをする子に、『【ブギーマン】が拐うぞ』──と。脅す為に作られた伝承の様なものだが。まさしく、今のソイツはその存在と同義の様なものだ。貴方は子供で無くとも、ソイツからしたら、先程まで恐怖に怯えていた貴方は。こんな簡単にも騙せてしまう貴方は。まるで【子供】の様なモノだと言ってしまっても良いのかもしれない。故にこそ、その伝承の化物を名乗ったのだった。)   (2/14 20:56:02)
大和守/袋の男 > 「……今から本部に戻るから──暫く休め。担いで連れていってやるから、寝てても良いぞ」(偽りを口にしながら、男は貴方を担ぎ、そして歩き出す。本部に戻るだなんて言ってはいるが、そんなつもりは毛頭無い。向かう先は、本部ではなくソイツの住処だ。──貴方にまだ考える力が残っていたのなら、気付くだろうか。男の向かう先が、言葉とは真反対の事に。)   (2/14 20:56:05)


シロー/ディラン > 「⋯⋯ブギー⋯⋯さん⋯⋯」(『ブギー』自分を助けてくれた騎士の字を忘れないように反芻した。⋯⋯悔しい。自分にもっと力があれば。情けない。悔しさのあまり、手に力を込めて僅かに握り拳を作った。)「⋯⋯は、い⋯⋯」(このまま連れ帰られて、聖フィニクス騎士団の整備士だと言うのに、化物に襲われて情けなく命乞いをした男だと、騎士団の風上にも置けない男だと言われるのだろうか。それとも、所詮は整備士、騎士団の霊性一つ在りはしないとはなから笑われるだけなのだろうか。ふわりと体が浮いて、だらしなく担がれているのだと思いながら、遂にぽろぽろと涙を流した。それでも、この人にはしっかりと感謝しないといけない。助けられなければ命はなかったのだから。)「う⋯⋯っ⋯⋯う゛⋯⋯うぁ、あ⋯⋯、⋯⋯ぁあ⋯⋯ッ」(未来を幻視して、気付かれないように必死で嗚咽を押し殺しながら眦を熱くする。その内、ふっと意識が途切れるのであった。【完敗】   (2/14 21:24:19)