ヨハン&ハヤタ

マリア/ヨハン > (刺青も随分と身体に馴染んで来たような気がするある日の昼下がり、スザンの海沿いで。潮風に吹かれればまだ、ひりひりと鑢をかけたように背中が痛む。それをかえって心地良いと感じるのは、決してこの男、ヨハンが妙な趣味をしているからではない。痒いくらいならば適度な痛みを覚えていられたほうが、どこか神経が研ぎ澄まされる感じがする。──シュクロズアリ旅団のキャラバンとは、まだ合流したまま。波打ち際と視線を並行にしながら白い息で手を温め、こすり合わせる。波の音は絶えず耳を擽って、頭の中を空っぽにするのを手伝った。ここ最近は色々ありすぎた。帝國に交渉に行く前に、少しここでチルアウトしていこう。)「おっ。」(石の中にきらきらと光るものを見つけて、ヨハンはその場にしゃがみ込んだ。)「……なんだ、ゴミか。随分と純度の高い青翡翠かと思ったら。」(気を抜いているからか、独り言もずいぶんに饒舌だ。指先でつまみあげたそれ、釉薬のかかった陶器の破片をぽい、と背中側に放り投げ、ヨハンはそのまま、なんとはなしに標石探しを続けた。彼は目利きにはめっぽう自信があって、本領を発揮できる事には身が入るというものだった。)   (2/14 00:55:54)


蕨/ハヤタ > (一人の青年によって素気無く擲たれたそれを視線で追う。湿った砂に紛れ込んで見失ってしまわない内に拾い上げると、透明度なんてものとは縁のない陶器の欠片だった。ハヤタは指で砂利を擦り落としながら、元は土塊に過ぎなかったであろうそれを放り捨てた彼に声を掛ける。)「……おーい、潮騒の魔術師。これだってさ、青翡翠くらい価値があったのかもしれないよ?」(波のさざめきの中、足音は砂浜に吸い込まれる。背後の気配を青年が覚ることが出来なくとも、不思議には思わなかった。こちらからすれば当て所無く佇む姿を目にしているのだから、人の声だって耳に届きやすいけれど。)「ゴメンね、独り言聞いちゃって。お邪魔だったかな……でも君のお陰で、こうしてスザンの海がゆっくり見られるから」(ハヤタは海に向き直り、目を閉じて肺に潮の匂いを満たす。――こうしていると、まるで故郷にいるようだった。)「ひとこと、お礼言いたくて。……ありがとね」   (2/14 01:25:48)


マリア/ヨハン > (旅団の証、刺青の彫られたところに向かって、“おーい、潮騒の魔術師。”だなんて、随分気の利いた声の掛け方だ。ヨハンはぴくりと眉を上げ、にやつく口元を抑えもせずに振り返った。)「ん、陶器の破片だろ、それ。欲しいならやるよ。」(両手を何度かはたき、早々に標石探しを切り上げてヨハンは立ち上がる。海から吹く風が向き合う二人の髪を攫った。毛先にいくにつれて白くなってゆく、珊瑚末を溶かし込んだような不思議な髪の色。海が似合う女だな、と思った。)「な、なんだよ、やぶからぼうに……へへっ、勝利のキスなら随時受付中だぜ」(とんとん、と指先で頬を叩いておどけ、照れを隠した。軽く肩を竦めてから、砂を踏みしめて歩み寄り、握手を求める右手を差し出す。)「旅団だよね。キャンプで見かけたけど、話した事なかったよな、オレ達……えーっと。」(あざとく呼び名をつっかえて、あ、と悪戯な笑みを浮かべた。随分しゃれた呼び方をしてくれたんだ、挨拶代わりの意趣返しに)「珊瑚。珊瑚ちゃんだ、あんたの渾名。」   (2/14 01:51:24)


蕨/ハヤタ > 「えぇ……?そっか、じゃあ……貰っておこうかなぁ」(ゴミと呼んで爪弾きにした物を、『欲しいならやるよ』と来た。単に興味がないからだと分かってはいても、思わず苦笑を零す。――おれだって別に要らないけど。実際、おれの焼いた陶の方が上物に決まってる。……多分。海と心置きなく一緒にいられるこの時間、それを賜った潮騒の魔術師直々に頂いた物でなければ、この欠片は再びスザンの砂浜に埋もれる運命だっただろう。ハヤタは彼と同じように放り投げる筈だったゴミを有難く頂戴することにし、ポケットの奥に突っ込んだ。)「うん、なるほどー……剽軽者だったんだね、スザンを落とした功労者は」(右手には右手を差し出して握手に応える。女にしては皮の厚い指が、ハヤタの物より幾らか大きな掌を掠めた。)「……あははっ、随分かわいらしいなぁ。センスいいよ。……でも、おれにはちょっと似合わないんじゃないかな~」(困ったように顔を綻ばせながら、今度はハヤタが肩を聳やかす。握られていた手を解くと、沖つ風に揺蕩わせながら、声をもそれに乗せようとした。)「ハヤタだよ、字。よろしくね、ヨハン……へへっ」   (2/14 02:31:40)


マリア/ヨハン > 「あぁ!ハヤタね。ん、よろしく。……なんだ、オレの名前は知ってたんだな。」(するり、と自然に握手を解きながら、ヨハンはハヤタと名乗った少女と肩を並べた。『少し歩こう』と目で合図し、足を動かして砂を蹴る。)「ハヤタは前線には出ないのか?もしかして、旅団に入って日が浅い?ハヤタの魔術って─────っと、質問攻めにしすぎ?だったらゴメン。あ、これだけ聞かしてよ。歳はいくつ?」(彼女はきっと、自分とそう変わらないだろうと思った。歳の近いヨズア人で、それもシュクロズアリ旅団。仲良くなれそうだなんて淡い期待を込めた瞳で、ちらりとその横顔を見た。ハヤタの振る舞いや言動はどこか軽妙洒脱な第一印象を抱かせたものの不思議と嫌味がなくて、気の抜けた語尾の声色なんかは、むしろずっと年下だったりするんじゃないか、なんてことをヨハンに思わせた。先輩風を吹かせるにはヨハンだって日が浅いけれど、立派なエイの刺青の威を借って、少しだけ気が大きくなっていたのだろう。この男は、そういう意味じゃ確かに剽軽者だ。)   (2/14 02:51:57)


蕨/ハヤタ > (ヨハンの目配せに応じて、彼の斜め後ろの砂浜に足跡を付けて行く。――今は波が覆い被さらないここも、いずれは潮が満ちて二人分の痕跡を攫って掻き消すのだろう。)「……孤独を友に浸る英雄かと思ったけど、全然違ったみたいだね。いやいや、いーんだよ。自分に興味を持ってくれるのって、悪い気はしないよね」(彼の質問はどれも素朴で、お互いを知り合おうとするのに真っ当な代物だった。今の所は幾ら尋ねられても構わない気分だったが、先ずはこれだけと言われた一つに回答を返すことにする。)「19だよ。……多分、そう変わらないよね?いやぁ、嬉しいなぁ。何となく、年の近い人が活躍してるってだけで、おれも頑張ろーって気になるもん」(それからええと、と呟きながらほんの少し前の記憶を遡る。塩気を含んだ風で肌がべたつくが、それすらも心地良かった。)   (2/14 03:28:48)
蕨/ハヤタ > 「おれの魔術は戦闘向きじゃないから……旅団では治療を担当してるよ。確かにベテランじゃないけど、でも多分、ヨハンよりは長く居るんじゃないかなぁ。どんぐりの背比べだと思うけど」(これで粗方ヨハンの疑問は解消されただろうか。うん、と独りでに一つ頷くと、また舌を忙しなく回す。)「ヨハンは何歳?旅団に入ったのは最近……だよね、何か良い巡り合わせでもあったの?刺青はどう、完成してる?まだ増やす予定?」(そこまで捲し立ててから息を吐くと、へらへらと軽い笑みを浮かべた。)「ほら……悪い気しないでしょ?」   (2/14 03:28:53)


マリア/ヨハン > (英雄だなんて、彼女は随分と自分を高く買ってくれているようだ。ヨハンはスザンの会戦でたった一度、勝っただけ。本当にそれほどの事ではないけれど、おだてられれば弱かった。)「英雄なんて、いやぁ〜、それほどでも、ははっ、はははっ!……いやー…旅団として根無草やってたら、人恋しいじゃないけどさ、同志の存在がより貴重に感じるだろ?ハヤタにとってもオレにとっても、仲良くしといて損はない、うん。」「19……って、うえぇっ、歳下かと思ってた。」(続け様に語られた答え合わせは、すっかりヨハンの先輩風を凪がせる。ぽりぽりと首根っこを掻き、次の瞬間には、まあいっかとばかりに快活な笑みを宿して。)   (2/15 11:29:41)
マリア/ヨハン > 「………っえ、……はは。本当だな、悪い気しねぇや。俺はハヤタの一個下だよ、旅団に入ったのは……──うん、こう言っちゃなんだけど、セリヤーナの影響かな。刺青は、筋彫りが終わってちょこちょこ進めて貰ってるとこだよ。あぁほら、ヒゲモジャの胡散臭いのいるだろ?ギゼムってんだけどさ。アイツにやって貰ってる。」(そして、増やすつもりなのかという答えに改めて考え、数秒の間の後に、にっと口角を上げた。)「そだな、次どこかを落としたら、ハヤタに入れて貰おっかな。……そういうの得意?」   (2/15 11:29:59)


蕨/ハヤタ > 「そっかあ、一コ下か。うん、おれも実はヨハンのこと歳下だと思ってた……おれの勝ちだね~」(些か情けない声と共に向けられた意外そうな反応は不本意だったものの、続け様に得られた思い通りの笑顔には口の端を吊り上げる。)「……セリヤーナ!そうなんだ」(期せずして耳にした憧れの人物の名に、ハヤタはぱっと表情を輝かせる。直接の面識はないものの、旅団に身を置いていて齎される彼女の風聞の数々は武勇伝と呼んで差し支えない種類のものだった。年の頃も自分とさして変わらない弱齢と来れば、朧気に思慕の念を抱くのも自然なことかも知れない。――いいなぁ、会ったことあるのかな……。彼女について詳しく聞きたい気持ちもありながら傾聴していれば、次に登場した名前もまた興味深いものだった。思い起こせば、確かに彼の言うヒゲモジャ――自分に言わせれば髪の毛と髭が入れ替わっても分からないような、全体的に手触りの良くなさそうな壮年の男とヨハンが一緒にいる姿を何度か見かけたことがある。そうして記憶を遡っていた所に投げかけられた突然の提案に、ハヤタは金の瞳を丸くして感嘆の声を上げた。)   (2/16 20:04:06)
蕨/ハヤタ > 「おー、それはいいアイデアだ。……けど残念、おれ元々は器用な方じゃなくてね。だから陶作以外はからきしなんだー……ん、そうそう、おれ陶工なんだよ」(端から自分がヨハンにどう見えているかなど大して理解していないにも関わらず、『こう見えてね』と付け加えながら言い忘れていた自らの生業を教える。残念そうに窄めた肩を戻しながら、再び口を開いた。)「……そうだ、ヨハンは?何をして糊口を凌いでるわけ?」(無邪気に真っ直ぐな視線を注ぎながらそう尋ねる。好きだと言う海の濤声よりも、今はヨハンの答えに耳を傾けるばかりだ。)   (2/16 20:04:17)


マリア/ヨハン > 「ふぅん……いやいや、ちょっと言ってみただけだよ。……へぇ、陶工!」(その言葉を耳にしたヨハンの目は、海から照りつける西日を受けて少年らしい光を宿したように見えただろうか。職人として生計を立てるというのは、いかにもヨズア人らしいし、どこか自由な感じがして憧れた。)「あっ、もしかしてさっきのゴ……じゃなかった、破片!青翡翠より価値があったかもって言ったのは、冗談じゃなかったのか……?」(記憶に紐づけて何の気なしに放たれたもので、あなたの返答は特に気にしないという独り言めいた声色。それよりも、次に聞かれた問いのほうがよっぽど、ヨハンにとっては核心だった。)   (2/17 22:23:05)
マリア/ヨハン > 「……あー」(どこかばつが悪そうに口角を上げて、目線は足元へと下げられた。)「ま、色々とやってるよ。最近はギゼムと一緒んなって……あー、占いしたりとか。けど、実を言うと胸を張ってこれが俺の生業だと言ええるもんはまだないんだ。」(その場しのぎで色々な事に手を出してはみるものの、風天には違いない。この世界じゃ必要に迫られて家業を継ぐなり、出来ることをして稼ぐのが普通の事。職業を選ぼうとする余裕があるだけ、やはりこの男は”お坊ちゃん”なのだ。)「なあ、そのうち陶芸について教えてくんないか?もちろん断ってくれてもいいけど。」   (2/17 22:23:09)


蕨/ハヤタ > (決まりが悪そうに足先へと視線を落とすヨハンを見て、ハヤタは小首を傾げる。飯の種を尋ねることがどうしてその仕草に繋がるのかすぐには思い至らなかったからだが、彼の口から出た淀みがちな返答に得心が行った。)「あ、そうなんだね。そっかそっかー、ヨハンは……えーと、自分探し中?なんだ」(その語調には眼前の同世代を責めるような気配は含まれておらず、ただ事実を淡々と受容して頷いた。何とはなしに自分も同じようにして双眸を伏せると、潮が満ちてきたのか、白く泡立つ波の先が視界の端に見て取れる。)「何だろな……そんな気まずそうにするようなことでもないと思うよ、うん。……ヨハンに与えられてる猶予も、おれに与えられた仕事も、おんなじ恵みだからさぁー」(頬を掻きながらそう応えた後、再びの思いがけない発案に目線を持ち上げた。沈みゆく夕陽が、彼の赤い眼差しをより煌めかせている気がする。)   (2/17 23:50:56)
蕨/ハヤタ > 「へへ……弟子を取るにはちょっと早いけどね、それならいいよ。同胞の誼だし……あ、でも、代わりに占いの口利きしてもらおっかな。ほら、そういうのって女子が好きそーじゃん」(まるで自分がその枠から外れているかのような物言いをしながら、ハヤタは差し込んだ右手でポケットの奥をまさぐる。)「あ、あったあった。……ま、ヨハンがおれよりぶきっちょだとしてもさ、これよりまともな物はすぐ焼けるようになるよ!」(『だってこれ、ゴミだもん』。傾いた日輪に青い欠片を翳しながら、けらけらと軽げに笑った。)   (2/17 23:51:02)