糸依&スミレ
清瀬/糸依 > (夜更けの街の明かり達は、世界を背景に己を主役とする。きらびやかな恍惚の世界から逃れたそこには、見る者も居ない回りっぱなしの擦りきれたモノクロームが映る。街灯のめっきり減ったとある一路、國お抱えの魔術師の集団の一員が闇の中に瞳を睨ませていた。軍服……ではなくブラウスに袖を通して、マントを羽織り寒さから隠れた女は、ゆったりと進めていた足を一角で止めた。)「……止まれ、そこの」(手にした行灯を先へと掲げて、異形の姿を光の輪郭で浮き彫りにする。移ろう灯りのせいではない、ゆらゆらと、どろどろと歪んだ容貌をじっと見つめる。やっと会えた、誰でもよかった、“仇為す者であれば誰でも”。言葉は要らなかった。エゴを掲げる塊共に私のエゴをぶつけたところで、何にもなりはしないだろう。嫌悪の瞳で貴方を捉えて、ただ一つ呟く。)「イモータル、だな」 (2/10 18:06:10)
大和守/スミレ > (──ぎりぎり、ぎりぎり。ぽた、ぽた。ぎゅっと、首を絞めた。ぴちゃんと音を立てて"彼女"が落ちた。その"彼女"は既に落ちた"彼女達"に加わり、更に苦しみを増幅させるのだ。惨めにも地面に倒れ、土で汚れようともそんな事は思考に無いのだろう。今、それが考えているのは何もない。真っ白な思考の中、生きる方法を模索して。──ぷつり、命の糸が途切れた。抵抗が無くなる。力が入らなくなる。それは、その人物の死を表していた。)「あ」(また、やっちゃった。また、殺される前に殺しちゃった。殺される前に殺しては駄目だと、そう言われた筈なのに。そのままその場所に留まる理由など一つも無く、そこに罪無き民間人の死体を放置して。次なる標的──自分を殺してくれるような人物を求めて、イモータルは歩んでいく。どろどろ、ぽたぽた。その後には"彼女達"が堕ちていく。) (2/10 18:23:08)
大和守/スミレ > 「……そう、ですよ。──嗚呼、もしかして……アナタが、私を殺してくれるんですか」(止まれ。幾らか歩いた場所で掛けられた声に素直に従い、歩みを止めた。ゆったりと、今も尚溶けていく顔を向けて。そしてアナタの瞳を見て──思わずスミレは笑みを浮かべてしまった。きっと、きっと。アナタこそが自分を殺してくれるのだ。ずっと、己の姿を見ては逃げ惑う者ばかりだったから。小さく頷いては、首をぐにゃりと傾げて問うた。自分で口にしたにも関わらず、その言葉は歓喜に値するもので。思わず、アナタが返答を返す前に。)「そうだとしたら、とっても嬉しいです──私、私は、とっても死にたかったんです。だから、だから──嗚呼! さぁ、私を殺してください……!」(そう、腕を広げて。恍惚に、死への期待に──狂喜に満ちた声を溢したのだった。) (2/10 18:23:13)
清瀬/糸依 > 「殺す…はは」「思い上がるな、お前らなんてとうに死んでいる癖に」(慣れない方が幸せな匂いが充満する。ついしかめてしまった顔を今一度きつく締めて、靴の底で塗装の足りない道を削った。何度も貴方の前に廃れてしまっただろう生の残り香は、誰だったのだろうか。きっと誰かが守るべきだった人で、責任を課すならば目の前のアレで。生前を思うと可哀想になると誰かが言っていた、同情を抱くと言っていた。私にはない、持ち合わせるべきそんなものはないと、それを善として生きていたのに。足りないように演じて此所に来たのに。……だからこの八つ当たりは、貴方に向けるべきなのだろう。何事を為すにも生きてこそ、墓石に眠る歌が欲しいなら、歌詞を──貴方を黙らせる合言葉を──寄越してもらわないと。) (2/10 18:51:35)
清瀬/糸依 > 「未練ばかりを身に詰めて、哀惜を掲げて。自分でその瞳を閉ざすことができないなら──ああでも、あんまり手を煩わせられると困る。これだって慈善じゃない」(行灯の映す貌はどんどん蕩け、滲み、遂には何もなくなってしまうのではないかと錯覚する。梅雨の朝に纏わりつくような陰湿な禍々しさが心地悪い。生きていると烏滸がましくも思っているのがおぞましい。負に支配を促される頭に魔術師を生かすべく、貴方を永遠の消失に陥らせるべく、煽るような口振りを向ける。)「正者を騙るな、愚図が」 (2/10 18:51:52)
大和守/スミレ > 「…………あい、せき? グズ? ……かた、る?」(──分からない。わからない。アナタの紡ぐ言葉が、スミレにとっては理解が出来ないのだ。その溶けた風貌の通り、考える為の脳すらも既に溶けてしまっているのだろうか。意味が分からない。理解不能。アナタの言葉の意味を必死で考えたのだけれど、脳内にはクエスチョンが浮かぶばかり。一つだけ、アナタは殺すという言葉を嗤ったのは分かった。けれど他には何も分からない。終には先程までの幸福そうな表情から一転し、今にも泣き出してしまいそうな顔で、言葉を紡ごうか。)「──ぁ、う……?」「…………分かんない、分かんないよぉ……! そんな難しい事言われても、私はわかりませんよ……っ!! だって、だって私は馬鹿ですもん、難しい言葉なんか、理解出来ないんですよおっ!」 (2/10 19:21:54)
大和守/スミレ > (──こんな言葉を考えている暇はない。早く、死なないと。早く、早く。混乱する脳内に助け船を出すように、何時も囁き掛ける言葉が過った。その言葉だけに縋る様に、必死に己への死を促す。)「そんな事を言ってる時間があったら早く殺して、殺してくださ……ッ、あ、れ? ……殺しては、駄目? だっけ? ……じゃあ、終わらせて、私をこの世界から消して……? ……どうしたら、どうしたら……」(分からない。どんな言葉で殺してくれと頼めばいいのか。早く、早く、殺してほしいのに。こうして言葉に詰まってしまう様は、魔術師であるアナタからしたら滑稽に見えるだろうか。それでも、これしか分からない。これ以外にどうしたらいいのか、分からなくて。ひたすらに、殺される事を望むばかりだった。) (2/10 19:21:57)
清瀬/糸依 > (何もかもを溶かした紛い物が呻き、辰の昇る刻に共に昇華する淡雪宛らに、崩れ落ちては何事かを繰り返し呟いている。貴方の真髄を穿つ為の言葉を探しあぐねる中、沸々と登るのは怒りを香辛料とした気色の悪さであった。死を背後に連れたような存在が、無力にも一人では手招くことのできぬ終焉を私に恵んでもらおうとしている。譫言のように頭の中でこだまするそれが、この女への冒涜であるとも知らなかった。彼女が今から迎えるのは死ではない、果てのない闇底に終点を造るだけの、甘ったれた救済だ。)「五月蝿く喚くだけなら黙っててよ」(空を仰げば、朧に片鱗を隠された月は新月から三日を過ぎていた。情報を落とさない貴方に痺れをきらして、最初から僅かしかない忍耐の袋を弾けさせた。そっと手を掛けた、垣根から飛び出した椿の枝先は、晩年であるのか瑞と潤いを失っていた。) (2/10 20:06:35)
清瀬/糸依 > 「──今宵の月を如何とす 欠けし上弦 梓弓 退けど絡めど 世も直ぐ荒るる 然らば望めや 床伏の階」(月明かりの頼りない今に照る模様のない硬い葉が、貴方の脚──と呼べるであろう、本物を模したそれを目掛けて突き刺さんとする。刹那的に歪んだ静寂の空間と巻く風。変哲のない朝に颶が駆けるだけで幹から今にも溢れてしまいそうな余りの葉は、揺れてはらはらと風流のない誰かしらの庭へ落ちていった。起きた騒音の止んだ頃に、貴方の方へと足を進めながら、清流の水面を荒らすような声で投げ掛けた。)「……答えて。そうしたら…殺してやるから。愛も遺したいものもないなら、お前は何故此所に居る? 言えよ、この出来損ない。殺して欲しいって望んでるんでしょ? ……とっとと全部吐き出せよ」 (2/10 20:06:37)
大和守/スミレ > (──葉が突き刺さった。鈍くはあるがスミレの体にはまだ痛覚も存在してはいる。けれどもそれはスミレに小さな呻き声を溢すだけに留まり、どろどろと溶けた体はその葉すらも飲み込もうとしているのだ。ただ、それだけだった。まだ、死ねない。まだ、まだ。)「なんで……ここにいるか……? ……さぁ、なんで……何でなんでしょうね。分からないです」(荒々しく、怒りも垣間見えるようなそのアナタの声に。スミレは冷静に、けれども困ったような笑みを浮かべそう言葉を返そうか。アナタが行動を見せたからだろう。先程までの取り乱した様子は何処かへと消えてしまっていて、すぐに転々と変わるその様が何よりも気持ち悪い。)「私が分かっているのは、私が今すぐ死ななきゃいけないっていう事だけです」(そこには嘘など何一つない。純粋に死を望む少女だけがそこに居た。) (2/10 20:41:23)
大和守/スミレ > 「──だから死ねないのは、悲しいんです。……だけど、もし死ねたら、それはとっても嬉しくて……死ぬ瞬間には、きっと楽しくなっちゃうかもしれないんです。…………私には、それしかわかりません」(そうして、スミレは。──まるで、恋する乙女のような表情を浮かべた。それだけが叶えられれば良いと。それだけを一心に望み、希う彼女は異常だとも称せる。異常だからこそ、こんな事が言えるのだろうが。最後には、心底悲しそうな表情を浮かべてみせた。スミレにはそれしかない。それしか分からないのだから。後には何も、何もない。……果たしてアナタは、この虚しいだけの夢物語に終止符を打てるだろうか。) (2/10 20:41:26)
清瀬/糸依 > 「……そう」(実態の不完全な異形が囁く救済は、その見て呉に同じく満ちているとは凡そ言えない、大切なピースの欠けたパズルであった。他人よがりな露見を強謂る貴方が浮かべる恍惚が、本物であるように魅せられてしまうからこそ訝しむ。枠組みばかりで中身の探せない継ぎ接ぎの解答を、どうやって探してやればよいだろうか。一心に一つを望む貴方を相変わらず傲慢であると捉える凍てた心は変わらなかったが、一途に、そして純真に全てを何かに奪われている貴方は、私よりもずっと清い存在であるように思えた。人為らざる者からも己を悪とされるような、諾否を握られているようなそれに、苦さを露にするしかなかった。)「それがお前の“幸せ”か」(突き立てた言のない魔術師の武器が、矢が飲み込まれるのを眼前に、貴方を縛るものを探す。全身に絡み付いた枷を外す為の鍵が、その錠前に合ってくれるかはわからない。光の届かぬインク溜まりの中に筆を沈ませるか、続きを貴方が綴るか。それを知る為の頁は、私には捲れない。) (2/10 21:40:56)
大和守/スミレ > (『それがお前の幸せか』。アナタの言葉に、笑みを浮かべる。それは溶けていても尚、スミレの本来の姿が分かるような。スミレが本来であれば普通の少女として生きていたという、その片鱗が見えるような。そんなものだった。そうして、彼女は大きく頷いた。)「ーーーーはい。それさえ叶えられれば……私は、【幸せ】なんです」(ーーそれさえ、叶えられれば。死ねたら、それでいい。明確な様で不安定なそれはまるで【夢】の様であり、もしも仮にそれが【夢】であるとするのならば。彼女はそれを叶える瞬間、どんな感情を抱くのだろうか。【夢】というのは、叶えてしまえばもう夢ではなくなってしまう。その後には大きな存在であった夢が無くなってしまった多くの虚しさと、少しの達成感があるだけ。果たして、それはどうなるのか。それは、神のみぞ知る。引導を渡す側となる、アナタ達にしか分からないのだから。) (2/10 22:07:22)
清瀬/糸依 > 「……気色の悪い。その様子じゃあ連れ人は要らないようだけど。恋人はお前に訪れる死か?」(貴方は死を崇高で煌めく暖かな神とでも視ているのだろうか。生きているからこそ何事かを残していくことができる、その受け売りを密やかに、誰にも覚られぬように告げてくれた人を思い出す。文字の通り最期まで生へと執着し手を伸ばした彼らが、この醜い怪物を消し去れと怨念を轟かせる。きっと終わりを迎えて、どんな罵詈雑言が投げられようと責任を持ち、その舞台を完結させた彼らにとっては、イモータルというものは存在事態が悪であった。この悪を絶つには、私は己を邪の正義として奮わせなければならなかった。) (2/11 22:58:10)
清瀬/糸依 > 「でもそれも…甚だ哀れ。お前の思い描く総てはただのまやかしで、幻だということも知らないで。このうす汚れた──」(きっと最初から冷静ではなかったし、二度として逢うことのないだろう貴方に何を繕っても何も生まれない。ならば貴方には、砂時計から溢れた、時間のなりそこないの砂漠の底に埋めてしまった、誰にも見せることのできない業の一つくらい、無理やりにでも覗かせてしまいたい。焙れた者同士、舐めあう傷もなく、毒を皿まで食らうように貪れば、きっと愉しいことだろう。徐に近寄り、死の香水の包む貴方に手を伸ばした。何もかもを取り込む貴方の身に、首を模したその場所に、応えの少ない反発を感じながらぎりぎりと萎めていく。虚しいばかりのこの終始を、どうかこれっきりに、貴方が眠ることで世に知らしめずに、封じてしまいたい。)「憎らしい獣め」 (2/11 22:58:11)
大和守/スミレ > 「……連れ人? 恋人? ……ふふっ、そんなの私には要らないんです。これは恋でも、何でもない。ただ、ずっと望んでいたもの。……それだけ、ですから」(アナタの言葉に、ゆるゆると首を横へ振った。違う。己の抱いているモノは、そんな恋やら愛やら、明確に表せるようなモノではない。明確なようで不安定、けれども確かに抱いているそれは。スミレにとって【死】とは──【夢】、なのだろう。此方へ近寄るアナタを、蒼の瞳で見た。確かに、【夢】が叶う事を喜ぶ様な。期待に満ちた瞳で、視た。)「────ふふ、っ」(──首を絞められながらも、スミレは笑みを溢した。ぎりぎり、ぎりぎり。人間の様にちゃんとした形は持っていない。故にずぶずぶと中へと入り込んでいき、即座に再生した不安定な"彼女達"が入り込むアナタの手に被さる。それすらもゆったりと落ちていく。段々と萎められ、やがてその首はぐらぐらと揺れ、まだアナタがそれを続けるのならば、スミレの首は地に落ちてしまうだろう。)「…………あは、ははははっ、……!」(──それでもまだ尚、死ねない事を悟り。自然と笑みが溢れ。──そのままスミレは、笑い、嗤い、続けて、いた。ずっと、ずっと。) (2/12 13:12:42)
清瀬/糸依 > (甘美な望みを夢見る貴方の瞳は、奇しくも私と同じ青い瞳であった。深海よりも深くもどかしく、その狂気という名の異能に捕まれば乱されて、きっと二度とは夜明けの水平線を、明日を拝むことができなくなるのだろう。私が澄んでいるなどとは微塵も思っちゃいなかったが、どろどろとした陰湿な泥濘のような禍々しさを孕んだ双眸が、言いようもない程に悪寒を呼び寄せるのだった。) (2/13 23:01:37)
清瀬/糸依 > 「──黙れ」(嗤い声をかき消す為に、鼓膜に染み付いて何度でも繰り返す気色の悪さを払拭する為に。行きどころのない感情をぶつけて発してしまうことでしか、根本からすれ違った私たちにできる疎通は存在しなかった。呪いのように繰り返す囈は二つ。愉悦と悲哀に浸った可愛らしい錆びた鈴の音。木魚を無理やりに叩き割った、鈍くて聞き馴染みのない、低く唸る無粋な声。握り締めた拳が埋もれ、蝕み侵食しあい、貴方の頭たる部分を地へと落とした。鈍い音をたてたそれを睨むだけの気力もなく、彼方此方と定まらない重心を無理やりに乗せるように頭部の端に踵を食い込ませて──潰した。肩で荒々しく体の中の空気を取り替えて、息と心とを強制的に落ち着けた。痺れに支配された瞳の奥、瞼で隔離した視界をゆっくりと開いて、原型を取り戻しつつある貴方に吐き捨てるように叫んだ。)「これ以上…っ、何も言うな。お前のせい夢見が悪くなるなんて御免だ。……吐き気が、する」 (2/13 23:01:39)
大和守/スミレ > 「…………。…………あは、ふふ、ふふふっ。──そんなんじゃあ、まだ、死ねない……よ……ッ、?」(首が、地に落ちた。その首は転がる様な事もなく、まるで粘土の様に形を崩してみせた。それでも尚笑いは続いて──それがぐちゃりという音と共に、強制的に止めさせられる。スミレの頭部は無残にも潰され、けれどそれで終わりではない。潰された直後からその頭部は再生を始めつつあり、口が再び蘇れば笑いは始まる。黙れと言われた事も、何もかも知った事か。早く、早く殺せよと。アナタの叫びに重なるように、スミレも声をあげて──止まった。アナタの叫びの中の一つが、スミレを再び強制的に止めたのだった。) (2/15 14:30:12)
大和守/スミレ > 「……ぁあ、……う、……なに……?」(────『かわいそう』。……何、何が? ────『自分の事すら、自分てどうにも出来ないのね』。……そんなの知らない。……誰、誰……? ──ふつふつと沸き上がる得体の知れない言葉、記憶にスミレは苦し気に呻いてみせた。けれど、まだ不死性も異能も失われてはいない。少し、記憶が蘇っただけの事。それを表すように、こんな惨状になってはいてもまだ死ねずにいて。体は頭部の意思に動き、元の形に再生した頭部を持ち上げれば湿った音と共に元あるべき場所へ戻した。それでも尚、混乱と無理解は押さえられないようで。アナタが居る事も忘れたかのように、頭を抱えてその記憶に苦しんでいた。) (2/15 14:30:33)
大和守/スミレ > 「ーーッ、あ、……!?」(再び、紡がれた言葉。ーー『夢』。貴女の紡いだそれは確かにスミレの記憶を無理矢理呼び起こした。ずきり、と頭が痛んで、思わず苦痛の声を溢す。同時に、不死性も異能も全て消え失せた。だが、何よりもその記憶による衝撃が大きく、スミレはその瞳に怯えた色を浮かべて貴女から一歩距離を取った。そうだ、ずっと自分はーー。)「……や、だ、やだ、やだやだ、……っ……!! ころ、殺さないで、やだ、死にたくない……!!」(死にたくない、と。叫んでみせた。ーーずっと囁きかけていた死への誘いは、決して自分の思いでは無かったのだ。ーー夢を見たかった。自分の意思で、自分の夢を。それは他人の悪意という名の絵の具によってぐちゃぐちゃに塗り潰されて、原型なんて見れやしない。ーーずっと、夢を見たかった。幸せに生きるという夢を。その夢すら奪われて。悪意によって取り上げられて。だからずっと、それを望んでいた。生を。"夢"を。イモータルとなってからでさえ、生前の悪意に塗り潰されていた事に気付いた彼女は、ずっと死にたいと告げていた彼女は。【夢】を壊してしまう"死"に、怯えていた。) (2/16 23:55:14)
清瀬/糸依 > 「………は」(今まで向けられていたであろう恐れの色を跳ね返したように、異形は怯え狼狽える。札が裏返り、まるで別人のような顔を見せた。殺してやりたくて、それに手を招かれながら尻尾をいつまでたっても掴ませてはくれない胸糞の悪いあの姿はどこにもない。今はその逆鱗を必死に庇う袋の鼠。──迷うな、潰せ。そんな悪魔の声に従うのは容易くて、貴方の腕を捕まえることも呆気ない程に簡単だった。このまま私が魔術師として生きれば、きっとその思いは晴らせる。……それにしては後味が悪すぎて、きっとすぐにでも後悔の蜜が口内を満たすから。)「抵抗するな」(だからまだ、殺さない。)「私は魔術師だ。今から私は十数える、それでもまだ目の前に居たらお前の身体を魔術で──ぶっ壊してやる。……それが嫌なら二度と私の前に現れるな」(渋ったのは言葉を捨てたから、既に息絶えたそいつらに“殺す”などと宣言してしまっては、生者への、己の信仰への反逆となる。やけに乾いた腕を掴んでいた手を緩めて、貴方がその気になればいつでも逃げられるように、この彩度のない世界に紛れられるように。私は貴方の為を思う台本に言動を準えながら、私の為の慈悲をかけた。) (2/17 22:01:41)
大和守/スミレ > 「ひっ……ッ! ……あ……ぁ、ッう…………っ……」(腕を捕まれる。小動物の様に怯え悲鳴を溢し、がたがたと震えた。ずっと、貴女のその手に殺される事を望んでいたというのに。今や何もかもが反転してしまった様で、貴女が己をどうするのかと逃げられぬまま見つめていた。──『抵抗するな』。びくりと体を揺らしたものの、その後に続いた言葉に目を丸く見開いた。同時に手を掴んでいた力が緩む感覚がして、貴女が慈悲を掛けようとしているのだというのは恐怖で鈍った脳でも理解が出来た。貴女は本当なら、今すぐにでもスミレを殺す事が出来たというのに。それでも慈悲を掛けてくれた貴女に向けての場違いな感謝の言葉は、喉に引っ掛かって発せられる事はなかった。)「…………ッッ!!」(だからスミレは貴女の手を振り払い、逃げていく。遠く離れた──そう、陰鬱な森の中へと。此処には、居られない。此処に居たら、貴女以外の誰かにも命を消されてしまうだろうから。貴女の慈悲のままに、スミレはただ逃げていったのだった。)【慈悲】〆 (2/18 13:07:17)