糸依&獅子唐
華の色は清瀬/糸依 > 「失礼致します、獅子唐殿。第拾惨番から第拾漆番の行きし哨戒報告書を上官提出しに参り候す故、文書を集めに参りました。未だ提出せぬが有りければ、承り申し候う」(一般兵達が活動をする何てことのない雑務部屋の一角で、片腕に紙の束を抱えた一人の女が声をかける。敵国であるウェンディアやヨズアの民とのせめぎあいがある中、神罰により生まれた…歪みの存在は、紛いものは、未だに活動を続けているらしい。彼らに人間のような知能や協調性がないのが功を奏してか、今のところ集団的な被害は報告をうけていないが。…とある一件があってからというものの、異形達をおざなりにしておく訳にもいかなくなったのだろうか、哨戒の増えた為に大量に出てきた報告書を、自分が届けるついでに回収に回っていた。──近付いたついでに、きっと大声では言えないこんな解れを呟く。)「──嫌ですね。異形共の現れたるは國を乱しけり……貴殿かは人為らざる奴等を、どう思し給ふ?」 (2/9 21:26:51)
山葵@獅子唐 > …あっ、糸依さん。わざわざありがとうございます。(古風な喋り方の彼女とは打って変わって、頼りなさそうなヘナヘナとした声でそう応えるのは、片腕のみとなった獅子唐。義手は、この前王国の万事屋に修理を依頼しているので今は無い。とは言え筆記をすることには何も不便は無いため、こうして雑務をつらつらとこなしているのだ。…昨今の戦争の最中、こうした異形による被害は何とか最小限まで収めたいところだが…そう上手くいかないのが現実というもので。はぁ、と小さくため息を一つ吐いた。)…元は彼らも人…とはいえ、こうして現世に甦り何かと事件を起こしているのを見ると、何か現世に対して未練があるのやも知れません。…こう言うと、甘ちゃんだと怒られてしまいますが…。……願わくば、その未練が晴らされれば良い、とは思います。 (2/9 21:38:01)
清瀬/糸依 > 「未練……」(細々と、僅かに灯された芯を消さぬように、荒れる風から身を護るような弱さを貴方は放っていた。彼の言葉が人の心を起こさんとしたが、生憎今の私というのは苛立っていた。醜い執着の塊に乱された國も、絆された情けない同僚も、その一つの例外だけで軍は嘆いてしまったのだ。なんて勝手をしてくれたのだろうか、軍を辞めれば迷惑もかからないと思っていたのなら、浅はかで尚更同情の余地などない。)「如何で皆、異形に慈悲を与ふか。斯く害を被りているというのに」(不満を悟られまいと机の報告書を手に取ると、駄目にしてはいけない大切な一つ一つの言葉達を見つめて大切に抱え直す。どいつもこいつも、甘いのなんてもう胸焼けがして散々だった。きっとこれは、貴方に落ち度はなくただツキの向かなかっただけの、小さな悲しい不運。最初こそ抑えていた声は段々と荒れて、まるで貴方を淵へと追いやるように、無責任にも投げ付ける。)「未練は弱さの象徴、神々がどんな気紛れを催したのかはわかりませんが…再び土に還して貰おうとするなんて、傲慢にも程がある」 (2/9 21:58:07)
山葵@獅子唐 > 人は到底聖人君子にはなれないですから、こうしてニコニコ慈悲に似た何かを振り撒くしかないんです。それで、不満を逸らしているんでしょう。(くい、と眼鏡を整えてから、不平不満を声に滲ませる糸依の言葉を静かに聞く。そうして口にしたのは、少し諦めにも似たような言葉。…少し前、異形とこの軍の者が心中した事件があった。あれがあってから、軍の雰囲気がピリついているように感じる。自分も馬鹿ではない。それを感じ取れるくらいには自身も経験は積んでいるはずで。だからこそ、優しい言葉を言わなければ、自分を保てない。どうか、少しだけでいいから聖人君子のフリをさせてほしかっただけで。)弱い者たちが我々を害しているなら、我々はその弱者に負ける軟弱者です。 (2/9 23:38:20)
清瀬/糸依 > 「……そう、ですね。私は──我々は、未熟です」(貴方の言葉は至極まっとうで、多くが掲げる何の変哲もないそれであった。自分は過激な思考をしているとわかっていたところで、どうしてもこうやって言わなければ気が済まなかったのを、貴方が宥めるから興が冷めてしまった。意地を張っている自分がみずほらしくて、不服そうに口を尖らせると表面上の声を落ち着かせる。)「否定はしません、私に人のそんなところまで否定できるような権利はありませんし。ただ…疑問に思っただけです。私も貴殿も、どちらも間違ってはいない筈ですから」(元は仲間であった彼らをどう捉えるかというのは、永遠に正解なんてものは見つからないのだろう。人間のみが感じる共感性が、思い遣りが、皮肉にも異物のような神罰を仲間であると認識させている。──“のみ”と限定している以上、私はきっと、わかりあえない。)「貴殿らはそれで宜しいのでしょう、なれば私は、非の人徳を行かん。私は所謂……天邪鬼、なり」 (2/9 23:54:22)
山葵@フュメオム > …糸依さん。お茶をお淹れしますね。少しお待ちください。(やがてその重い空気に耐えきれなくなったのだろうか席を立ち、そう伝える。部屋を出て休憩室へ行き、お茶を淹れる。果谷産の茶と、それに良く合う茶菓子。お盆に乗せ、片手で器用に運んできて机に置いた。)……これを。熱いので、お気をつけて。…要らなかったら飲まなくても大丈夫ですので。(そう一言告げれば、にこ、と少し遠慮がちな笑みを浮かべる。若草色のお茶が、白い湯気を立てている。) (2/13 19:14:31)
清瀬/糸依 > 「……ありがとうございます」(交わることのできぬ私たちは似ているようで全くもって異なる存在。私に比べて空気を変えるのが上手い貴方は、この辛気臭い空間に文字通り“薫”の彩りを添えた。湯気をたてた茶を受け取ると軽く数回その暖かな白霞を飛ばして口をつける。舌に若干の麻痺をもたらしてしまったのを悟られぬように咥内をもごもごと動かすと、誰をせせら笑うでもない、けれど乾いて空な笑みを浮かべた。)「申し訳ない………別の話でもしましょうか。──三年前に比べて、顔触れが変わりましたね。移ろう景色の中、私たちはまだこの箱庭の中。すっかりもう古参になってしまった、これではお局も近い」 (2/14 23:38:29)
山葵@獅子唐 > …落ち着かれましたか?…良かったです。(口を少しやけどしてしまった彼女に申し訳なさそうな表情を浮かべるものの、それを悟られまいと口をもごもごと動かす糸依に少し微笑みを溢す。)…そう、ですね。元帥殿も交代しましたし。…でも、私もまだ未熟者ですね…。季節はこのように素早く移り変わっているのに、私の周りだけその季節と同じように巡るのに…私だけはまだ、3年前のそれと変わりない。(糸依の言葉にゆっくりと頷き、そして記憶が蘇ってきた。思えば命の水騒動の時、狂った自分の眼鏡を叩き割り目覚めさせたのも、目の前の彼女だった。…思わず苦々しい歪んだ笑みを見せてしまう。) (2/20 23:46:34)
清瀬/糸依 > 「…………。変わらぬ物こそ、世の中をどれ程探せど見つからね。貴殿はなかなか……いえ、“寧ろ”。あの頃とは変わったように見えますけどね」(中々に愁いげな貴方の様子を横目に茶菓子を食むと、粒餡の皮の口の隙間に挟まるのを茶で流した。奇しくも、というよりは貴方の言葉が導くように同じ情景を思い浮かべて、まだじゃじゃ馬だった頃を思い出す。あの頃よりは私も大人しく慎ましくなったし、獅子唐も何がとは言わないが、変わったように思える。そういえば、魔術師から堕落したあの時に遭遇したのも彼だった。眼鏡の向こうに霞んだ瞳を一瞬見つめて、資料を抱えて立ち上がった。) (2/21 23:04:36)
清瀬/糸依 > 「私は移ろわないものが嫌いでして。不変は安泰かもしれないけれど、どうにも退屈で。……賄い、ありがとうございました。私はこし餡の方が好きなんですけどね」(軽く頭を下げると爽やかなせせら笑いを見せる。何を馬鹿にしているのか、それは貴方の言葉に対してであった。時の流れは角の鋭い石を削って丸く絆し、微量の柔らかさを晒す。その片鱗を出すのに、まだ素直にはなれそうにないが。)「“また”、お伺いします。その時には……どら焼きでもあったら嬉しいですね」(こんな生意気なことが言えるようになったのなら、少なくとも関係性というのは変わったのではないだろうか。……なんて、勝手な戯言は次の時にでも。)〆【華の色は】 (2/21 23:04:38)