ターラ&ディラン

夢物語

清瀬/ターラ > 「えっと、ここ曲がって~。あったあった、よかったぁ……」(王国の中核であるウェントに置かれた騎士団本部、体が痛みに悲鳴をあげるのではないかと思うほどの冷気、今日は天気が皆の敵をする。風に晒されながら渡り廊下を駆け抜けると、袖と手袋の間の露呈した肌を擦りながら、ターラは建物のある一角で足を止めた。血とは違った、それでも同じ様に鼻をつく微細な酸の匂い。革の手袋の留め具を外しながら、作業の音にかき消されないように声を張り上げた。)「失礼しますっ。えっと…あ、ディランさん。筋電義体の検査に来たんですけれど、その。担当の整備士の方が来るまで、暫く此所で待っていても構わないでしょうか…?」(入り口から何かを探すように首を右往左往させると、貴方の姿を見つけてほっと胸を撫で下ろす。何度かだけ言葉を交わしただけの関係ではあったが、何も知らない0からの人間よりは話しやすかった。名前を呼んで声をかけると、壁に掛けられた時計を一度見ては肩身が狭そうに僅かに体を縮ませた。)   (2/8 19:40:29)


シロー/ディラン > (先日、イモータルから命からがら逃げ出したディランは仕事の最中であってもいつ目の前に現れるかと気が気では無かった。溶接棒から吹き出す煙すらもあのイモータルを彷彿とさせる有様で。休憩時間のディランは壁に凭れてしゃがみこみ、何度目かも分からないため息を吐いた。するとふと響いた声。工房に足を踏み入れてきた女性の方に視線をやると、釣られて辺りを見渡した。しかし運悪くか運良くか自分以外の整備士は皆出払っている最中で。だから俺に声を掛けたのかと内心納得し、しゃがんだまま会釈と共に苦笑いした。)「ああ⋯⋯ターラ。すまん、丁度皆出払ってるみたいだ⋯⋯」(しかし此処でと言ったらそのまま入口で棒立ちにさせてしまいそうで、いそいそと立ち上がって隅の長椅子の方に向かっては手招きした。)「立たせっぱなしも悪いし、ここに座ってて待っててくれていいよ。」(飲み物の一つ出してやりたい所だが、生憎此処には冷却水しか常備されていない。飲めるには飲めるのだろうがそれを出す訳にも行かず、自分は立てかけてあった折り畳みのパイプ椅子を広げて座り。作業服の煤を払いつつ話しかけた。)「今日は定期点検?⋯もしかして、戦争に出た?」   (2/8 19:59:21)


清瀬/ターラ > 「あ……はい、お邪魔します」(整備士として他に仕事もあるだろうに、わざわざ手を煩わせるわけにはいかない。「もうすぐいらっしゃると思いますから此所で大丈夫です」とでも断ろうか、なんて悩んでいるうちに彼は長椅子の置かれた方へと手招きをしていた。沢山の機材から外れたそこは整備士達の憩いの場だろうか。心なしかこの場所を汚してはいけないと感じとり、壁伝いにディランの方へと向かうとそっと腰を下ろした。年齢差もあれば性別だって違う、何を話してよいやら。まだ慣れることのないこの光景。寒さからか異様な冷たさの昇る右手を弄っていても、接合部をなぞってみても、元々存在のしなかった穴のような其所には擽ったさ何も案じなかった。)   (2/8 20:19:38)
清瀬/ターラ > 「い、いえ…それはまだ、です。でも…いつ声をかけられても、おかしくないんですよね……」(かけられた言葉に反応して顔を上げると、ふる、と首を振って否定の意を示す。“戦争”という言葉は後味悪く心を濁らせた。いつ戦火に焼かれるかもわからない、魔術師という絶対的な存在に仇を為すために作られた、王国が独自に設立した騎士。私が頼りなく見えるからの言葉だろうか、何だか試されているような気もしたが、でしゃばるような真似もできなくてそれ以上何かを言おうとはしなかった。埃のような砂塵のような、きっと何れとも違う喉の違和感を吐き出さんと徐に咳払いをして、よそよそしく話題を別の方へと切り出した。)「今日は…寒いですね、雪でも振るんでしょうか。ディランさんは此所に来てから、雪を見ましたか?」   (2/8 20:19:40)


シロー/ディラン > (どこか遠慮がちながら此方へとやって来て腰を下ろしてくれるのを眺めて、自分の問いに答える姿にずきりと胸が痛むのを感じた。整備士の中には騎士を戦いの道具だと見て関わる人物も居て、中には「戦うことが対価」と口にする者もいたが、やはり心の内ではそう思えなかった。言葉を詰まらせる姿は来たる戦いに脅えているように見えて、同じようにどう言葉を掛けるべきか迷っていた。)「雪⋯⋯そうだな、今年も粉雪程度なら見たよ。俺も来て長い訳じゃないから、昔の事は分からないけど、そう積もるのは珍しいな。」(たわいの無い話題を向けてくれた事も気を利かせてくれたのだとディランは感じ取り、愛想笑いを浮かべて肩を揺らすと、細めた瞳でターラの筋電義体である腕を見つめた。)「早く戦争が終わって欲しいとは思うけど、そうなったら、俺もターラもおまんま食いあげだな⋯。⋯⋯ターラはやっぱり戦争はいや?騎士みたいに誇りを持って命を掛けて戦いたいと思う?」(あまり大きな声で言えたことでは無いことは分かっているようで、声のトーンを落とした。)   (2/8 20:49:18)


清瀬/ターラ > 「そうですか……この辺りは街灯も多くて、設備も整ってて暖かいですからね。降っても沢山は積もってくれないんでしょうか……」(仕事の時に見せるのは、真髄でほんの少し近寄りがたい顔。その時とは違って柔らかな愛想笑いを見せてくれるディランにつられて、此方の緊張も少し解れたような気がする。声を潜めて此方の不安を汲み取ってくれたディランは、決して日の元には照らせそうにない話をもちかけてきた。誰かに聞かれてしまうのが怖くて、前屈みになり辺りをそうっと見渡すと、左手を口に添えて同じく囁くように答え始める。)   (2/8 21:20:37)
清瀬/ターラ > 「戦争は…あの……やっぱりちょっとだけ、怖いです。けど、沢山ある仕事の中で私が自分から、機械騎士になるのを望んだんです。そんなわがままは、言ってられません」(天性で死を恐れない人はそうそう居ないだろう、恐れるからこそ人間はここまで反映し、生き延びることができたのだ。それでも、仲間である貴方を心配させるわけにはいかない。頼りない面構えではあったが、言葉を更に続けた。)「それに、戦争が終わったって、私たちはきっとまだ働けますよ。戦争がなくなれば皆が命をかけることもないですし、同僚だったり友達も増える筈です。そうなったら……こんな綺麗事のようには、ならないかもしれないですけれど。素敵、ですよね」   (2/8 21:20:40)


シロー/ディラン > (騎士ではないにしろ、騎士団に所属するモノとして相応しいとは言い難い問いを投げた自分に対して、意外にも覚悟を決めた答えを返されてディランは少しだけ眉を動かし、「そうか⋯」と短く頷いた。最初の一言もあり、正直な答えに聞こえたし、少なくとも虚勢には見えず、心の中で立派だな、と呟くと、やはり穏やかな笑顔を零すのだった。)「そうだな、いいや、素敵だと思う。給与が減るのは少し困るけど、全部命あってのものだもんな。ターラならどんな仕事もできるさ」(彼女なりに覚悟を決めている姿を見ては、僅かな反論も出来る筈がない。彼女達機械騎士を整備する者として穏やかな精神を保っておいてやりたいと思うのだった。現実から目を逸らした夢物語としか、騎士修道会の彼等には思われないかもしれないが間違っているとは微塵も思わない。務めて穏やかな雰囲気を保つと、もうイモータルの話なんて出来るはずもない。余計な心労を増やさない為にも、楽しい話をしてあげようと思い立って。椅子に座ったまま前かがみになって口を開いた。)   (2/8 21:37:07)
シロー/ディラン > 「俺はね、お金を貯めたら自分の船を買うんだ。大きな蒸気船。ターラには夢とかあるか?叶わないような夢でもいいよ、俺だってこの安給与で船を買うなんて言ってるんだから。」   (2/8 21:37:09)


清瀬/ターラ > 「ありがとうございます。それならなおのこと、色んなことを頑張らなくっちゃ!」(こんな話を笑わずに聞き入れてくれたことが嬉しくって、つい声に力が入ってしまう。何か余計な、彼の心に引っかかることを口走ってしまっただろうか、なんて不安になりもするけれど、私に何も聞くことはできなくって、せめて元気で健気である姿を見せるくらいしかやることはなかった。)「船ですか、自分の船で海を渡れたらきっと…素敵だろうなぁ…!……この世界の果て、海の向こうには、一体何が有るんでしょうね」(明るい話題を努めてくれた彼は夢を語る。舟、カイナントを訪れた時に貿易船が沢山停泊しているのを目にしたことがある。人類の産み出したものが、海という雄大な原を悠々と進む光景は、きっととても鮮やかで感慨深いものだろう、己の所有する愛着あるものであれば尚更だ。窓枠の向こうに見える景色は生憎緑ばかりだが、想像ならばできる。夢を叶えた貴方の姿を思い浮かべて、そこから数々の未知に、魅力に思いを馳せる。)「私のですか?私の夢は…夢、は。あはは…これから探そうと思ってます。だからまずは、できることが沢山増えたら…それが夢…の為の夢、でしょうか?」   (2/8 22:02:59)


シロー/ディラン > (最初とは打って変わってにこやかに、声色も明るくなったのを見届けてディランは肩を揺らして笑った。良かった、と思ったのも束の間、ふと零したであろうターラの疑問はディランを心の底から楽しませるのだった。)「⋯!!だよなぁ!この世の果てに何があるのか、それを俺はこの目で見てみたいんだ。俺のこの手で⋯⋯俺の船で。」(身を乗り出すようにしてディランは表情を輝かせた。何があるのかも分からないからこそ、きっとこれまで岸辺をぐるりと回るだけだったのだろう。だけど風の精霊任せな帆船の時代はもう終わりを告げた。蒸気船ならば行きたい場所へと行ける。先人達が遺して来なかったということは、きっとなし得なかったのであろうあくなき憧憬。もしかしたら何かを見つけたけれど、戻れずに没した船乗りも居たのかもしれない。だけど俺ならきっと出来るはず。何度も夢見た栄光に表情を緩ませると、それを分かってくれた事が嬉しいのか、「その時はターラも船に⋯⋯」と言いかけた所ではっとして入口の方を見た。整備士に手を挙げて挨拶すると、ゆっくりと腰を上げたのだった。)「来たよ。それじゃあまた、今度また、ゆっくり話そうな」【夢物語】   (2/8 22:19:34)