明松&かれん
やくそくシロー/明松 > (アンダンテの元を去って暫くのこと。夕暮れだった日は沈み、夜の帳が降りた榮郷。息切れしながら兵舎に辿り着いた明松は、何事かと奇異の視線を軍人から浴びながら、これ以上怪しまれないよう兵舎を早歩きで駆けて、自室の扉を開いた。)「⋯⋯っ、かれん⋯」(自分が居ない時は明かりを消すと決めていたから、部屋の中は暗い。廊下の灯りが射し込んで伸びる自分の影にはっとして、急いで後ろ手に扉を閉める。すり足で部屋の中を歩き、机の上のランプを点けると、照らし出された座り込む影。つい昨日までかれんと居た時とは何処か違う黒瞳を向けたら、小さな人影の前でがくんと膝を着いて腕を伸ばし、きつくきつく抱き締めた。) (2/1 23:10:18)
シロー/明松 > 「かれん⋯、今すぐ、此処を出よう。荷物は要らないから、今すぐ。かれん⋯⋯」(耳元でそう伝えると、手早く小袖の上から着ていた羽織を脱いで、かれんに羽織らせる。小袖姿ではきっと冷えるだろうが、そんな事は気にしていない様で。外に漏れない程度の灯りを頼りにして何かを探すように、整頓された机の上に掌を滑らせたが、探していた紙幣の入った箱は無く。押し入れの奥に仕舞ってある事を思い出すと、部屋の中をぐるりと一瞬見渡してから、かれんの手を握って窓際へと進んだ。扉を開けば、冬の寒い風が入り込んで来て顔を強ばらせると、窓を先に越えて手を繋いだままかれんが窓を超えるのを手伝った。)「急いでかれん、かれんだけ居てくれたら俺はいいから、早く」(小声だが何処か普段より強い口調で軽く手を引いた。持っているものは少しばかりの金銭が入った巾着のみ。かれんと共に窓を越えたら、手を引いて本部の正門を駆け抜けて行くだろう。 (2/1 23:10:26)
マリア/かれん > (帝国軍の寮には、解語の異形が棲んでいる―――。異形は布団を被り息を潜めて、そのまま寝台に横たわる。布団は残り香に抱かれるようで、孤独を少しは癒やしてくれた。廊下を歩く軍靴の音にはいつまでも慣れないが、明松の帰りを待つ気分は悪くなかった。足音が近づいて、部屋の前で止まる時はいつも息をのむ。近頃ようやく、足音だけでそれが待ち人かそうでないか判断できるようになったけれど……今日のそれはやけに足早で、扉があいて姿が見えるまで、かれんは身体をかたくさせていた。)「……」(すぐにそれが明松だとわかると、肩の力が一気に抜ける。何か言おうと顔を上げると俄に抱き竦められて、瞳を朱くする。)「え?……っん、出るって……」(予定調和のように、驚いたそぶりを見せるものの。真剣な表情を見ればすぐに得心した。どうせずっとここには居られないだろうという事は解っていたのだ。かれんは明松の手を取り、小さくこくんと頷いた。言葉少なに彼の所作を追い、窓に手をかける。宵闇が手伝って、呆気なく外に出る事ができた。)「……走る?」(髪で顔を、羽織で肌を隠すように俯き縮こまりながら、小さな声でそうつぶやいた。) (2/1 23:20:52)
シロー/明松 > 「⋯⋯少しだけっ、少しだけ走るぞ、かれん」(正門を抜けると勝手知ったる榮郷の街並み。人気の無いであろう細道を選んで駆け抜ける。かれんの手を離さないようにしっかりと握って進んだ。いつかかれんと出会った場所もすぐ通り抜けて、明松は城壁の外へと向かっていたが、それより先に寄りたい所があった。暫く走って、完全に人気が無くなると、ゆっくりと走るのを辞め、隣のかれんを一瞥する。言いたい事はきっとある筈なのに、中々言葉が纏まらなくて、肩で息をしながら手を引いて歩いた。)「はぁ⋯⋯っ、⋯⋯俺⋯もう軍には居られんから、もう、終わらせる⋯。かれんの最後の願い、俺が叶える、⋯⋯殺す、これから⋯⋯」(もっと、何か気の利いた事を言いたかったけれど、口に出来たのは自分の決意だけだった。不死であると言われるイモータルをどうすれば殺せるのか、見当の一つついていなかったけどその一言しか言えなかった。暫くして立ち止まり、細道から覗き見えたのは呉服屋。かれんに向き直る、と手を離して一言呟いた。) (2/2 00:00:11)
シロー/明松 > 「⋯かれん、いいよって言うまで目閉じとって」(そう言い残すと両手を組んで、目を閉じ迷いなく言葉を紡いだ。)「お天道様 お天道様 眩きその御威光を此処に 遍く照らし給えと 恐み恐みも白す」(瞬間、夜だと言うのに眩い光が一角を包む。昼間のように閃光が照ったのは、本部からでも間違いなく見えるだろう。光を直接目にして行き交う人が呻いている間に、店先に綺麗に畳まれていたモノを奪って小脇に抱えると、またかれんを連れて走った。)「⋯⋯かれん、この奥の方に、誰も居ない神社があるから、そこまで⋯⋯」(きっとその内に帝國軍がやって来るだろう。もうこれで自分は犯罪者にもなった。急いでかれんの手を引くと、小さな神社へと向かった。)〆 (2/2 00:00:13)