篠&鬼若
待つ者、往く者マリア/篠 > (同僚の衝撃的な風聞……まだ、噂の域を出ないそれを耳にした時の事を、篠は思い出していた。『……は?明松くんが?……イモータル?ん?間者を…えっ!?……ええええ…?あの、えー…と!ちょっと待ちたもんせ。情報量が多かですよ。』生き生きとゴシップを取り沙汰する年上の女性兵士に対して、引き気味に苦笑するしか出来なかった。俯きつつも異論を差し込まないよう適当な相槌をしながら、混乱の中には徐々に八つ当たりじみた怒りのようなものが湧いて来ている自分に気づいて、それ以上聞きたくはないと早々に切り上げたのだったっけ。自分のような末端の者にまで噂が伝わってくるのだから、上官は今頃明松の処遇について考えてはじめている頃なんだろう。今は冬の葉牡丹の植えられた花壇のふちに腰掛けて、ああ、と力ない声を漏らしてうな垂れるばかりだった。) (2/1 00:29:23)
マリア/篠 > 「……『恋愛において波乱』、かー…………もうそげん事どうでんよかやで、帰ってきやんせ明松くぅん……。」(篠が明松と仲が良くなかったとしても、こんな穏やかではない噂に胸がざわつくのは当たり前の事だった。髪に両手の指をさしこんでかきあげるように頭を抱えると、清潔にまとめた髪がくしゃりと乱れた。) (2/1 00:29:29)
大和守/鬼若 > (ーー全く、面倒な事になったものだ。その話を聞いた時、先ず初めに抱いた感想がそれだ。イモータルやら、裏切るやら。しかもそれが、先日助言をくれた明松が起こしたものだと言うのだから私情が入り余計に面倒になるのだ。さてはて、どうするべきか。明松の処遇についてという新たに考えねばならないモノに大忙しであり、息抜きでもしなければと外へ出てきたが。何やら、例の焼き菓子についての事で一時的に結束した貴方が居るではないか。何となしに近付いた所で。貴方の一人言が聞こえた。)「……明松、か。貴様らの所にまで話が届いているのか」(『明松』。その字に鬼若は思わずそう声を掛けてしまった。例の事で、鬼若には貴方との仲間意識……というものと呼ぶべきか。形容しがたいそれも相俟ってか、声を掛けるのにそこまでの抵抗は生じなかった。けれども何時もの仏頂面で、無表情である事には変わらない。そんな表情でありながらも、言葉の節々に彼を憂う気持ちが見え隠れしているのは、否めないのだが。) (2/1 00:50:39)
マリア/篠 > 「……へっ?」(頭上から降り注いできた声に、篠ははっと顔を上げた。乱れた髪を頬に纏わせ、きょとんと目を丸くして上官の姿を目に入れると)「……た、大佐!」(花壇から腰を上げ、ぱぱぱと髪を軽くなおして軍服の襟首に指を突っ込み、居住まいを正した。)「はぁ……。いえ、その……噂ですよね?ほんの噂じゃと……思うちょります……ましたが……。」(敬意の為に軽く下げた頭をゆるゆるともち上げて、涙に滲んだ瞳を向けた。)「……どうやら、そうも思うていられんみたいですね。……私は言いふらしたりしもはんじゃっど、もうそげん知れ渡っちょるようじゃ……駄目ですかね。」(不謹慎だと思えばこそ、苦笑のひとつも出ない。通夜のような雰囲気を漂わせて、篠の精神はこの上官にすっかりともたれかかってしまっていた。) (2/1 01:01:17)
大和守/鬼若 > 「…………どうで、あろうな。上でもまだ処遇をどうするかは正式には決まっておらぬ。……まぁ、決まったとしても……」(その先は、口にする事は無かった。彼は裏切った。裏切ると、そう言っていたのだ。裏切り者への処罰は当然重いものになるだろう。普通であれば。何の思い入れも無いような輩であれば、鬼若もそれを望んだ。厳格な処罰を推しただろうが。)「…………いっそ、余らの分からぬ所へ逃げてはくれないものか」(貴方の涙の浮かぶ瞳から逃れるように目を逸らし、そんな事を口にした。腕を組み、如何にも上から目線な奴だと言われそうな振る舞いをしてはいるも。けれど、人の心がない訳ではない。そして、彼のお陰で十年の想いが動きそうになっているのだ。そんな彼に、他の輩と同じ思いは抱けなくて。公私混同だと言われようと、鬼若はそう思っている。……だからこそ、軍の手が届かぬ所まで行ってくれればと。そうすれば、処罰を与える事すら出来ないからと。鬼若は、それを望んでいる。他人にここまで情が移ったのは、一体何時振りだろうか。) (2/1 01:18:36)
マリア/篠 > 「大佐……」(目を逸らしどこかぶっきらぼうに放たれた言葉だったが、あの辻占煎餅の一件に垣間見た大佐の意外な一面や、それとはとても結びつかない負担の振る舞いを目にしていれば、気遣わしげな機微を感じ取るのには充分だった。)「……じゃっどん……そしたや……明松くんな私らん知らんところでどうなってしまうんでしょうか。奴らは人ん理を外れちょっです。イモータルと懇ろになっなんて、嫌な予感しかしもはん。戦場で消し死んとは訳がちごっどですよ。」(当たりを少し見回し、声のトーンを落としてそう訴えかける。)「大佐、私……明松くんに、嫁に欲しかち言われちょりましたんですよ。彼ん中では終わった話なんかもしれもはんが、私は……私、ごめんなさい……大佐には関係なか話でした。ただ、割り切れんくて……。じゃっどん、それ以上に、心配ん方が勝っちょっですよ。大佐はどげんですか?」 (2/1 01:40:28)
大和守/鬼若 > 「……余には、分からぬ。……だが、……だが、それが、彼奴の選んだ道なのであれば……」(ふるふると、鬼若は小さく首を横に振ってみせた。自分達の知らない所で、彼がどうなるかだなんて。そんなもの、分かりはしない。イモータルなど、ただの殲滅対象であり、言葉を交わした事などない。交わす意味など無いと思ってきた。だが、今回の彼の事でその印象は大きく揺るがされた。だが、分からない事には変わらない。──もしかしたら、そのイモータルに殺されてしまうかもしれない。──もしかしたら、なんて。嫌な想像は幾らでも浮かぶ。けれど、鬼若は彼の意思を尊重してあげたいのだ。そんな一心で、鬼若は言葉を紡いでいた──のだが。言葉は、そこで途切れる。続いた貴女の言葉に眉を潜め、怪訝そうな表情を作ってみせた。) (2/1 18:03:32)
大和守/鬼若 > (────完全に、気が変わった。成る程、一途……否、【超】一途と言っても過言ではない鬼若の前で、随分と面白い事を言わせたものだ、彼は。嫁に欲しいと貴女に言ったにも関わらず、イモータルと共に往くとは。一つ……否、山のように積もったそれを彼に申さなければ気が済まない。)「余も、あの様に関われた者に対してまでも鬼という訳ではない。恋や愛の為にその道を進むのであれば、尚更。相手がイモータルとなれば不安はある。然し、彼奴の選んだ道ならばそれで良いと、応援したいと。思っていた。…………だが」(そう、最初は本当にそう思っていた。彼がそれで幸せならば良いと。心から、そう思っていたと言うのに。) (2/1 18:03:48)
大和守/鬼若 > 「…………なぁ、篠」(少しの沈黙。その後、静かに貴女の字を呼ぼうか。貴女が承諾しなくても良い。それならば一人で赴こう。そう、断られた時の覚悟も決めた。普段の彼には合わず緊張しているのか、深呼吸を一つ。小さく息を吸い、貴女を真っ直ぐに見つめる。)「余と、彼奴を探しに行かぬか。軍人としてではなく、一人の魔術師として。彼奴に言いたい事が山の様にある。お主も、彼奴に言いに行かぬか」(手を貴女に差し伸べて。そう、言葉を紡ごうか。軍人などという肩書きは捨て。言葉を、魔術を紡ぐ者として。共に行かないかと。貴女に誘ってみたのだった。) (2/1 18:04:04)
マリア/篠 > 「……えっ。」(鬼若の心境を、言葉からは推し量れなかった。軍人達への指導力を問われる佐官であるから、なんだかんだ情に熱くて部下を放っておけないのかと最初は思ったが、『軍人としてではなく』という枕詞にクエスチョンマークを浮かべる。彼と明松という軍人はそれ程に仲が良かったのだろうか、まさか自分の発言が鬼若の心変わりに影響しているとは結びつかなかった。結びついていたのなら明松の名誉の為にも、色恋沙汰にすらなりそこねた自分との関係を『何も起きちゃいない』と弁解してやる事くらい出来ただろうに。)「……明松君を、探しに……。」(言いたいことはすぐに思いつかなくても、聞きたい事なら無くもない。しかし何より不安なのはその消息で、誰も探しに行かないまま事務的に処遇だけを決められるなんて、あんまりだから――鬼若の申し出に、篠はどこかほっとした。けれど――) (2/1 22:32:27)
マリア/篠 > 「……大佐が行くんなら……私は、残っです。……あっ、流石に、佐官ん代わりが務まっとは思うちょりません。じゃっど彼がふらっと顔を見せきた時、迎えてやっ人が必要やないかと。きっと引っ込みがつかんで、誰かに背中を押されんな自分の意志で戻っことすらできんでしょうから。」(丸い目を鬼若に向けてじっと見つめ。篠は、託した。)「大佐――明松君を……見つけて下さい。」(祈るように俯き、おまじないのように魔術めいた歌を胸の中で響かせる。『たち別れ 往なばの山の峰に生ふ まつとし聞かば今帰り来む』彼の字に、願かけて。)〆【待つ者、往く者】 (2/1 22:32:33)