明松&アンダンテ
runawayシロー/明松 > (尊華帝國、榮郷。休暇日である明松は、小袖に羽織姿で夕暮れの街並みに立ち止まり、路地裏の影から女物の呉服屋を眺めていた。)「⋯⋯うーん。」(振袖を見に来たはいいものの、知り合いに見られて勘づかれたり、変な風に勘繰られるのはどうにも避けたい所で。もう少し日が暮れたらにしよう、と白い息を吐き出した。イモータルを愛していると軍人に知られた時には、きっと軍には居られないだろう。そうなったら、かれんを連れて逃げ出す覚悟は出来ているとはいえ、かれんを危険な目に合わしたくは無かった。殺すのは自分なのだから。)「⋯⋯俺が⋯⋯俺が殺すんだ⋯」(自分に言い聞かせるように、小さな声で呟いた。 (1/31 21:01:14)
清瀬/アンダンテ > 「かったりぃなぁ……軍の奴らはおっかねぇ顔してるし、ここ最近で上の顔も変わるし……」(花の都は誰は彼時を迎え、行き交う黒と茶の髪はてらてらと橙の光に照らされている。そんな和の催をした街に浮いた一人の男は、赤毛を掻きむしり辺りを忙しなく見つめていた。間者として活動している王国での勤務報告の為に帰国したはいいものの、軍の内部の何と張りつめていることか。ささくれを剥かれるような居心地の悪さに街へとくり出した結果、どうやら自分の知る道から外れてしまったらしい。引き出す記憶は全て昔のもので、僅かに現在の有り様とは異なる。踏んだり蹴ったり、むかむかと胸のあたりに居座る押し売りをけっ、と吐き出すようにため息をつきながら、手頃な人は居ないかと周囲を見渡す。暇をもて余していそうなのは、何者かに呪縛をかける最中なのか、何事かを呟く男性だけであった。…他をあたるか?と視線を逸らしかけたその時、横顔に覚えたのは既視感。) (1/31 21:25:06)
清瀬/アンダンテ > 「……なぁお前。こっから大通りへの行き方、知ってるか? …女モンの服なんか見て、彼女か? それともそういう癖かなんかかよ、明松……だったかな、お前の名前は」(一度引き出してしまえば、あとは記憶を芋づる式に手繰るだけであった。小袖の襟を軽く引っ張ると、道を尋ねるついでに何かと図々しく小言を挟む。丁度退屈をしていた彼に捕まってしまった結果だ、ただ不遇としか言えぬだろう。名前まで口にしてしまえば此方が何者であるかも思い出して貰えるだろうか、と先日髭を剃った顎のあたりをなぞりながら細く、厭らしく瞳を細めた。) (1/31 21:25:10)
シロー/明松 > 「⋯⋯あっ、ああどうも。⋯大通りはあっち⋯⋯⋯えー。」(知り合いに見つからないように気を張っていた事もあって、まさか人に話しかけられるとは思いもよらず。肩をぴくりと跳ねさせると、突然の事で言葉もままならず、歯切れ悪く言葉を紡ぎながら大通りの方を人差し指で力無く指さした。⋯⋯が、相手は自分の字を知っていた。と、なると考えられるのは軍属であることのみで、覚えていないのも失礼かと思考を巡らせ、時間稼ぎに相手の顔を見つめたが、字までは出てこなかった。)「⋯⋯あぁ!お久しぶりですね。⋯⋯それは⋯⋯まぁ⋯はい、実は好きな人が居て、その人に振袖を贈ろうと思ってて。」(字を思い出せない程だ、殆ど自分が知らないということは、そこまでの仲では無かったのだろう。それならば、「そういう癖」と思われるよりは言ってしまった方が良い、と髪を掻きながら呟くと、羽織の襟を軽く正した。)「惚れた女の為なら、何だって出来ますよね、そう思いますか?」(自分がやろうとしている事を誰かに聞いて欲しかったのか、同意を得たかったのか、軽く笑みを零しながら呟いた。傍から見れば駄目な男にしか見えない一言ではあったが。 (1/31 21:39:13)
清瀬/アンダンテ > 「名前わかんねぇんだろ、俺こっちに居ること少ないし。アンダンテ、尊華帝國軍の間者だ。まぁあれだ、職業柄“覚える”ことに長けててね」(苦い顔のままでいる貴方に「きっと自分のことをよく知らない」という仮説を立てて話を進めていく。己の役職まですんなりと口にしてしまったのは、自分の記憶に誤りはないという自信が呼び起こした現象だろうか。顎に添えた手はそのままに、反対の腕でそっと路地の壁に凭れる。貴方を通りから遮るように身体を傾けると、ちらりと後ろを向いて呉服屋を一瞥した。)「女か、めでたいもんだな。あんまりにも辛気くさい顔してたから悩んでんのかと思ったけど、惚気られるんなら幾らか晴れやかみたいだな……ん、違うか?」(ただ愉しくお話がしたいのに、と嘆く被害者面は残念ながら持ち合わせていない。己が随分と失礼なことをしているのはわかっていたが、ここまで踏み込んでいくのは一種の勘であろうか。それが気に入らないのなら、これは神託だ。だからこの質問が向けられるのも、それは神の御心が呼び起こした何てことのない出来事の片鱗に過ぎない。) (1/31 22:14:45)
清瀬/アンダンテ > 「……そうだなぁ、その気持ちは俺にも痛いぐらいにわかる。何事も投げ出しちまいたいぐらいに一心不乱に、尽くすっつー甘ったるいそれに心酔して──なんて、な」(目蓋を下ろすと軽く数回頷き、少し明松に顔を近付けた。……次の瞬間、きっと目尻が締まった。街の騒ぎには消えていってしまうような静かな声も、此処が木陰の世界であるからか、やけに響いていく。)「お前も自己犠牲の質か?本当、軍人も例に漏れずに馬鹿の集まりだな。そうか、だからあんなに國の為にやれるんだもんな、たいしたもんだよ」(一体どちらが嘘であろうか、そんなことは些細なことだ。今一番大切なのは、相反する二つがこの男の口から発せられたという事実が存在することである。軽く放った冗談が連鎖させる波紋の荒れようを、彼は知る由もないのだろう。表情を緩めると、先程の事なんてなんでもないように首を掻く。)「冗談って奴だ、あんまり気にすんな。明松がどういう風に思おうが、生憎俺にはなぁんも関係ねぇからよ」 (1/31 22:14:47)
シロー/明松 > (流石、間者と言ったところだろうか。ぴしゃりと言い当てられると、バツの悪そうに苦笑いをしながら、貴方の字を呼ぶのだった。壁にもたれる仕草もやけに様になっていて、それを視線で追いかけては更にもうひとつ。投げ掛けられた言葉に喉を鳴らした。)「そう⋯⋯ですね。すみません惚気けてしまって。彼女が居てくれれば俺は、それだけで幸せですよ。」(辛気臭い顔、と言われて少しだけ表情を強ばらせたが、すぐに冗談っぽく言い放って覆い隠した。誰がなんと言おうと、これは真っ当な恋だ。出会ったのは運命で、なるべくして好きになったのだ。そんな彼女の為ならば、なんだって。そう、近付く〝終わり〟への恐怖や悲しみを打ち消そうと心の中で呟いた。それに続いたアンダンテの言葉も、自分の決意を固めてくれるものだった筈なのに、続けた放たれた言葉の魔力は、明松の心の中を一瞬で空っぽにした。) (1/31 23:33:46)
シロー/明松 > 「⋯⋯────あ⋯」(寝ても覚めても、彼女でいっぱいだった筈の明松は、熱がすう、と抜ける感覚に、まるで夢から醒めた時のような、記憶がぐしゃぐしゃに澱んで判別がつかないような感覚に蚊の鳴くような声を上げた。疑問ばかりが脳裏を過ぎって、最早アンダンテの言葉の一つ理解出来ず、何度かたたらを踏んで、「冗談だ」と言い放つアンダンテに顔を上げてから、また顔を伏せた。)「⋯⋯⋯⋯」(じわりと目の奥が熱くなって、涙で視界が歪む。涙の理由も分からなくて、ふらふらと壁に寄りかかったかと思えば、そのまま自分の額に手をやって目元を隠すと、何度も頭を振った。 (1/31 23:33:51)
シロー/明松 > 『イモータルなの。』『……私に甘えて。』一目惚れした筈だった、かれんとの記憶が次々と蘇って、必死で記憶を手繰る。『私を殺して、あなたも死ぬの』───『ねえ、気づいてる?あなたが私を愛してくれてるのは、この瞳のせいなんだよ。化け物になった私は、人を虜にする異能を持ったの。』金に輝いた瞳、冷たい肌、言葉を思い出して、また頭を振る。『……いつか正気に戻った時、私のこと、恨んでくれても良い……』胸がひどく痛んで、胸元を強く握りしめて衣服に皺を寄せた。そうまで考えて、明松は涙の理由に気付く。自分が必死で探していたのはかれんを好きな理由だと。嘘だと思いたくなかった、その一心で。かれんに掛けた言葉の一つ一つも鮮明に思い出せるし、かれんが自分にくれた言葉と感情も確かに本物で、今更捨てることなんて出来なかった。) (1/31 23:34:08)
シロー/明松 > 「⋯⋯⋯⋯すみません、アンダンテさん。俺どうかしてたみたいです、ええ⋯。」(『……それでも、私はあなたのこと、たぶん好きになってしまったから。』うれしかった。自分を好きだと言ってくれたのは、彼女がはじめてだった。ふらふらと悩み続ける明松だったが、どうすればいいのか悩んでいる時、一時の感情に任せて口を開いてしまうのは、明松の性分だった。眉を顰めると、言葉も纏まらないままに、一歩近づいて胸倉を掴み上げて口を開いた。)「⋯⋯おっ⋯⋯⋯俺はこの国に楯突く!アンダンテさん聞いてくれ俺イモータルの女が好きになったからさ、全部敵に回してもその人が好きやからさ!本部に報告してくれたらいい!!!報告しろよ、俺が裏切るって、もう一度言うぞ裏切る、俺は尊華帝國を裏切って、邪魔する奴は全員ぶっ殺す!!⋯⋯はぁっ⋯⋯はぁ⋯⋯ぶっ殺すからなぁ!!!⋯⋯分かったか⋯⋯っ、お、前も殺す!邪魔したら殺すからな!ころされたくなかったら、消えろッ!!ころすぞ!!」 (1/31 23:34:27)
シロー/明松 > (肩で息をしながら、襟首をあらんかぎりの力で捻りあげて、唾を飛ばしながら叫んだ。地面に叩きつけるように、押し付けるように手を離すと、肩で息をしながら一歩、二歩、と後退りした。語気も荒くしてこれだけの事を言った、暴力まで振るった。もうこれで、俺はもう軍人を続けることはできなくなった。『やくそく、』『やくそくね。』脳裏で響き続ける言葉に、喉の奥が切れたのか血の味がする唾を呑み込んで、眼下を見下ろして、己のしでかした事を俯瞰していた。)「はぁ⋯⋯ッ、⋯⋯はぁ⋯⋯っ⋯⋯どーでもいいんやよ⋯⋯!⋯⋯殺す、殺すからな⋯⋯っ!軍人なんて辞めてやるさ⋯」(もう、俺はお尋ね者だ。国も、好きになった理由もどうでもいい。俺は、かれんが好きだから、約束を果たすんだ。怖くなる前にこの場を逃げ出そうと、棒のようになった足を必死で動かして、じり、じり、と後ろへ下がった。暫くすればそのまま走り出すだろう。 (1/31 23:34:38)
清瀬/アンダンテ > 「おぉいおい、どうしたよいきなり。酔うにはまだ世は明るすぎるんじゃねえのか?」(冗談を投げ掛けた次の瞬間から、まるで気分屋で意地悪な北風に晒された凧のように揺れる貴方をじいっと見つめていた。暫くして、てんで脈絡のわからぬ言葉を吐き出す貴方はどう見たって異常であり、それに心配なんてしない自分は非情なのだろう。まるで廃人寸前の野郎を目の前に不気味さを感じていると、突如として伸ばされた腕を振りほどくことができず、そのまま壁へと背中をぶつける結果となった。)「お、ま……っ!」(ぎりぎりと音立てて締められる襟元。火事場のなんとやら、窮鼠のような明松を相手に身体はふらふらと揺れるばかりでちっとも離してはくれない。矛を突き刺すように繰り返し叫ばれたそれを、理解できる筈もなければしようとも思わない。客観的事実だけを拾う己の耳は、どうやら貴方が相当参っているのだということを教えた。) (2/1 19:31:16)
清瀬/アンダンテ > 「は、いや…急になんだよ。きっしょくわりぃなお前、頭沸いてんのか……?」(馬鹿な者は頗る嫌いであった。継ぎ接ぎに繋がってもいない欠片達がぼろぼろと投げられるばかりで、己はそれを視聴しているというのに結合部分である顛末すら知らされていないのだ。地面とつい挨拶をしそうになるのを堪えて、顔を袖で拭いながら視線を路地の外へと向けた。)「知るかよ、んなこと。俺がお前のやることになんで干渉しなきゃなんねぇんだ。勝手に辞めりゃいいじゃねえか……めんどくせぇ奴だな……」(評価なんてものを求めないで欲しい。晒しておいて反対すれば善悪も問答無用で討つというのはなんと狡いとは思わないのだろうか。決まっているというのなら……そう声を張り上げたくなるのを生唾と共に押し込める。人間として腐ってしまった自分だったが、軍人という立場において何が正しいかなんて、素人にだって簡単な事だ。本人に言いこそしないが敢えて助言をするならば……やはり枯れてしまった己からは何も言うことはあるまい。) (2/1 19:31:20)
清瀬/アンダンテ > 「んん゛、あー……待った、一個だけ言い忘れたわ」(心の痼を押し出すように濁った咳払いをすると、右腕を貴方の方に伸ばした。男にしても軍人にしても不自然な程に綺麗な指が数回、猫の喉を掻くように曲げられた。貴方の反応がどうであれ、彼の起こす結末は決まっている。サインを見せてもやってこないというのならずいと距離をつめて、前髪を鷲掴みにすると左の拳で明松の頬を殴り付けた。半ば振り下ろすような軌道で貴方を捉えた手を摩りながらさも己が被害者であるように眉をひそめて、かと思えば今度は貴方に怪訝の感情を込めて無遠慮な魔術を放るのだ。)「いきなり胸ぐら掴むとか、やってくれんじゃねえか。あーむしゃくしゃした……それだけだよ、ほら。とっとと消えろ、俺に見えねぇどっかに行っちまえ」 (2/1 19:31:32)
シロー/明松 > (もう戻れない。俺の居場所はもうない、これでいいんだ。どうなったって、もう、今まで通りこの国には居られない。鼓動は早鐘を打ち、顔や体も熱くて、吹き込んだ冬風が一層冷たく感じられる。肩で息をし、激しく揺れる瞳の焦点はアンダンテに合っているとは言い難い。変わらず冷たい外気と、上気する体の感覚が酷く乖離していて、未だに自分のした事を俯瞰している様な感覚でいた。アンダンテの言葉も硝子越しに聴こえる様な不明瞭さで明松へと届き、その動きだけが認識できた。)「⋯⋯はぁ⋯⋯っ、ぁ⋯⋯ぐッ!?⋯⋯⋯⋯っ」(アンダンテが動いても自分の足は精神に追い付いていないのか、動く気配も無く。気付けば前髪を鷲掴みにされて、鈍い衝撃と共に地面へと尻餅をついた。痛覚という原始的な信号だけは変わらず働いていて、尻餅をついて頬を襲う熱さに遅れて鈍い痛みがやってきた。俯いて痛む頬を手で抑えれば、鉄っぽい味がする。やけに鮮明になった意識の中でアンダンテを見上げれば、悪意ある魔力の籠る言葉を受け、おずおずと地面に手を着いて立ち上がった。) (2/1 20:29:31)
シロー/明松 > 「⋯⋯っ⋯、誰が来てもやめんよ⋯やめんからな⋯来たら、絶対ぇ殺す⋯、邪魔させん⋯」(感情的になって動いてしまったから、何もかもが追い付いていなかったのだろう。じり、と一歩滑らかに下がった時に、ついさっきまで思い通りに動かなかった足が動く事に気付いた。憎み事を吐き捨てると、潤んだ瞳でアンダンテを睨み付けてから踵を返して走り出した。来ても無駄だと、来たら殺すと脅すのは、友人と鉢合わせる事になるのが怖いからで。ここまでしておいて、知り合いを前にしたら怖がって躊躇いそうな自分が憎く、それらを振り切るように縺れそうな足を必死で動かした。)「⋯⋯はぁッ⋯⋯う゛ぅ⋯⋯っ!!かれん⋯⋯っ、かれん⋯⋯かれん、かれんッ!!!」(人混みに何度もぶつかりながら、必死の形相で兵舎に向かって走る。途端に竦み上がって足が止まりそうで、何度も何度も想い人の名を呼び続けて、駆けた。【runaway】 (2/1 20:29:43)