セオドア

濁る双眸

清瀬/セオドア > 「もうやって、らんないようぅ……ねぇ、きいてる~~?ねえぇ~………」(良い子は寝静まり、艶やかな顔で光に洒落込んたウェント。その一角で鈍く灯る橙のランタンは、磨り硝子の向こうに突っ伏した人影を浮き彫りにした。)「おれ、さぁ。本気だったんだよ、あれでも」(月の光を奏でるレコード、生憎現世は曇り空。白い皿に鎮座するチョコムースと寄り添う銀のフォークは未だに手をつけられていなかった。客人の手に握られたグラスには、木陰の喫茶店に似合わぬ果実酒が注がれていた。香る水面を揺らし甘ったれた声を更に上擦らせた男は、そばかすの目立つ鼻を啜り涙を孕ませていた。)「あんなに、綺麗なのに。皆になんかぁ、晒してほしく……なかったのにぃ……オレはあんな風に、愛せなかっらかやぁ、振り向いてくれなかっだぁ゛………」(字はセオドア。騎士団のNo.2を勤める彼は、僅かしかない威厳を地に落として憂いの宴を開いている。調子の良い笑顔はくしゃりと縮れ、未練に自棄酒、手放した高嶺の華をいつまでも夢見ていた。)   (1/30 17:39:40)
清瀬/セオドア > 「ダメだった。ああ、もう……オレがもっと頼りがいがあったら!!──あんなに怖い顔して気張らせなくても、よかった…のかな……大丈夫かなぁ、こっそり毒とかぁ!盛るような奴らに飯食わされてない、かなあぁ?」(正直、悔しいというよりは憎らしくて疎ましかったのだと思う。純真になれない己とは違って、清い己を晒すことのできるアイツに、嫉妬しているのかもしれない。それでも、こんなことを言ってしまっては幻滅されるに違いないから。他の可憐な子達を無下にするような未練など、ましてや魔術師であるオレが言葉にできる筈はないのだ。荒い声と共に、ダン──!と大きく鳴らしたのはカウンター。その音を皮切りに、昂った感情は再びぐずぐずと崩れ始める。)   (1/30 17:40:07)
清瀬/セオドア > 「尻尾見せつけるばっかりれさ!掴ませてくれなくって!!狡い…おんなだぁ、よ……」(軽くなったグラスを傾けると、カウンターに突っ伏して額と頬を乗せる。茹だりきった体から伝うひんやりとした心地よい冷気に微睡み、小気味良い硝子の音を響かせてグラスを倒す。結露と酒の水溜まりにこっそりと泪を隠して、鬱陶しい赤毛から同じ色をした瞳を見つめた。)「……ん、空ぁ、ぽ。ね、もう一杯……ちょう、らいよぉ~~」(濁りを溶かした葡萄の香りに包まれ、夜は更け行く。泥に沈む己を咲かせることはついぞ叶わず、落ち行くだけの意識に一切を委ねた。)〆【濁る双眸】   (1/30 17:40:22)