糸依&ギゼム
アガン会戦清瀬/糸依 > (背に負うのは、他によって拓かれた故郷への道。我が生まれの地阿岸、ヨズアの旗を掲げた前哨基地は黒煙を棚引かせている。まさにここまで、私は魁として至れり尽くせり大層に煽てられてしまった。耳を澄ませば、囁く風に乗せて鼓舞の声が聞こえる。──勝たねばならない、帰る時には朗報をお伴にすると決めてしまった。周囲を見張る同胞を置いて、一人戦場を臨んだ。あの場所が向かえる物語は二つに一つ。尊華の旗を揺蕩わせるか、私の墓となるかだ。後戻りはできやしない。此処を越えればなんだって受け入れてやろう、だから今ばかりは──私の思うままに、稚拙な無茶の描くままにやってみせる。)「──怖くはないよ」(微かに震える指先で、運命を手繰る布を額に添える。黒の乱れた髪に潜らせて、赤い猫又の尾を垂らした。勇気をこの身に留めるように、貴方を側に置く為に、ほどけることのないよう固く結ぶ。魔除けに戦、赤は勝負の、覚悟の色である。僅かに草臥れた鉢巻の先を玩ぶと、己に言い聞かせるように独り呟いた。蒼の羽織を正し、その下には忠誠の軍服を着て、帽子を地に置いて行く。) (1/28 20:29:17)
清瀬/糸依 > 「いざ、貴殿と伝説を」(私は此れから、軍人たる誇りを地に埋める。大義名分、ましてや國の為に尾を震え戌を辞める。誠勝手に、私は私の我が儘を正義としよう。もっと判りやすく言うならば……どうも手荒い洗礼を有り難う、お返しを喰らわせてやる。)「──焦がれ放る粉 風の的 漕ぐは洒落の抜錨を 百や万の憤り 朱の濁流に逝き踊れ」(じっと大地に手を捧げ、瞳を閉ざした。信じるは己を紡ぐ、この地に住まう御神。彼は何処からこの戯れのような戦いを見守っているのだろうか。地這い大蛇は的を目掛けて、毒の牙を刺さんと盛り上がった。魔術師として又この地に立てたかどうか…その問いには、城の見張り台があげる低く唸った悲鳴が教えてくれるだろう。) (1/28 20:29:20)
シロー/ギゼム > (帝國軍の反撃は苛烈なものであった。王国と帝國が再び戦争を始めてからというもの、同志が落としたとされるヨズア国再編の牙城は幾度と攻撃を受けた。アガンへと呼び寄せた同志フィディアと共に守り抜いてきた土地だが、ついに決戦の時が訪れたらしい。)「俺の出番かねぇ、悪いけどこの土地を渡す訳にはいかないのよ⋯⋯」(ヨハンちゃんとの約束もある。無様な姿は見せられない。一騎討ちを御所望なのか前に出てきた一人の魔術師。彼女を城壁の上から見下ろすと、矢継ぎ早に呪文を紡いだ。)「霊冥へと続く扉 永遠に隠されし黄泉の門 霊たる歪みより出でよ 古の言葉に耳を傾け 今まこととならんことを」(砦の前の空間が歪み、まるで初めからそこにあったと思わせる淀みが出来上がる。陽炎のように歪んだ景色から実体を持って現れたのは、半透明の大きな人型だった。糸依の生み出した地の大蛇が物見櫓を倒壊させ、土煙が上がる中で呪文を続ける。) (1/28 21:22:12)
シロー/ギゼム > 「幻たる汝 我が言霊によってまこととならん 戒められし御力をここに かの者を討て ダー・ニト・ロロイ・ギゼム」(のっぺらぼうのように顔には表情のひとつ浮かばない巨人は、地面に腕を突っ込み、強く糸依の方向へと引き抜く。掘り起こされた地盤が糸依の方に大小様々な岩礫となりて吹き飛ぶ。糸依の魔術によって激しく城壁が揺れて、地面へと叩き落とされる。幸いあまり高度が無かった為に、致命傷とはならなかったが、足を引きずって前に出る事となった。呼び出した人ならざる者が消えていくのを背景に、糸依の方向を見て呟いた。)「ヨズアの⋯⋯魔術師を舐めてもらっちゃ困るな、その気概は買うけどさあ⋯⋯」(共に居た旅団の魔術師を呼び寄せる為に、指で輪っかを作り、口笛を鳴らすと、先程の糸依の魔術から逃げ仰せた魔術師が数人、疎らにギゼムの元へ向かって来る。土煙が晴れるのを待ち、瞳を細めていやらしく笑った。)「落とさせないよ、ヨズア国は」 (1/28 21:25:14)
清瀬/糸依 > (私の言霊は大地を、城を揺らした。地を私の言葉が司る最中、相手は空の歪みをすぐ側に呼び寄せた。人ならざる何かが見えぬ瞳で見つめるのは世の返る姿、二つの魔術が意思を孕んだ息吹きを呼び起こす。砂岩の織り成す雨粒が、身を庇った左腕を繰り返し殴打した。ちかり、白い星が瞳の夜空の奥で何度も瞬いては消えていく。鮮かな赤を羽織の下で滲ませて、苦し紛れの嘲笑を貴方に見せた。城壁に佇んだ彼が“落ちた”だけでも価値がある。手の届くところまで来たならば、今度こそ掴まえて北げる間もなくしてやる。)「久しゅう……こともなし。──やっと同じところまで降りてきてくれたな、はぐれの民の魔術師」 (1/28 22:16:07)
清瀬/糸依 > (土の霞が晴れた向こうでは一人の男が笑っていた。痛む腕を包むように身を縮め、尚声色では高慢を呈して貴方をきつく睨み付ける。いつかの前哨戦では容貌すら拝むことの叶わなかった彼は、今私と同じ目線で言葉を交わしている。某かが叫んだ、こいつを討ち取れと。ここまで来れば、後はどちらかが逆鱗を突き刺すまでの、激昂の痺れる刹那の闘いだ。)「とっとと尻尾を巻いて逃げろ。此処はお前達の国なんかじゃない、“私”のものだ!」(身体の中に張りつめた高揚が止めどなく零れ落ちる。敵であるという貴方に剣を突き立てようと、逸るばかりに盲目になっていた。背水、迫るは駆け巡る緊張。咆哮はらしくなく、そこに熟慮の入り込む余地はない。)「──若菰綰ねし追儺 朝の露と菊の宴 あぶる病き 霹靂く夜と糸桜 諾 皓々のみなわと水葱の音 瓊音導け 呼子鳥」(貴方の降らせた瓦礫の破片に右手を添えて、情動に準えて言葉を滑らせた。幾つもの矢が砂埃の軌跡を宙に描き、真っ直ぐにギゼムめがけて射出される。永遠にも思える苦悩の中、掻き出したくなる身震いすら魔術として、不乱に紡いだ。) (1/28 22:16:14)
シロー/ギゼム > (土煙の晴れた先、どうやらまだ息はあったらしい。殺すつもりだったが、いやはや帝國軍というのは。何度も帝國軍を撃退した自信、背後に控える同志の気配が頼もしく、程よい緊張が心地よく笑っていたのが、癪にでも触ったのだろうか?負傷しながらも怒号を吐く魔術師の姿にほくそ笑んで、売り言葉に買い言葉で、とてもじゃないが走れない程痛む足を悟られないよう、自然体で叫んだ。)「ヨズア人の国が元々どこにあったのか、君は知ってんの!? 分かんないんじゃないの!よくもまぁ、偉そうなこと言えるねぇ!」(態々聞こえるように声を張り上げた。怒り心頭のようだから、そのまま激昂して周りが見えなくなってくれれば御の字。魔術師にしては割り切れて無いねぇ、と甘く見ていたのもあったのだろう。小馬鹿にしていたギゼムの肩を礫が引き裂いた。) (1/28 22:55:14)
シロー/ギゼム > 「⋯⋯グぅ⋯っ!!」(一閃、また一閃、流星の様に尾を描いて飛来した礫が自分と、寄ってきていたヨズアの魔術師達を襲う。今度は脇腹、そして脹脛。ローブごと肉を裂き、足の骨を痛打し食いこんだ瓦礫。激痛に倒れ込むと、だらだらの流れる血を見て、苦悶の表情を浮かべてこめかみから脂汗を流した。)「⋯⋯ぃい゛⋯⋯ぐう⋯⋯⋯⋯クソ⋯⋯はぁっ⋯⋯!」(何だあの魔術師は。油断していたとは思えない、自分が敗けたのだ、魔術師として。そんな事を考える余裕も既に無く、余りの痛みに涙まで浮かんだ。砂埃が傷口に入ってジンジンとひり出したのを誤魔化すように、自分を叱咤するように地に伏せながら叫んだ。)「いつも⋯ヨズア人を見下して、さぁ~⋯⋯ッ!命が惜しかったら逃げたら、どーよ!⋯死ね!!俺を殺したら、お前を呪い殺すよ!!!」 (1/28 22:55:30)
シロー/ギゼム > (喉奥から何とかひり出した、魔術師らしからぬ罵倒は遠のく意識を引きずり戻すには十分だった。まだ呪文を紡ぐ程度には動く喉で魔術を紡いだ。)「まやかし⋯⋯まどろみの霊 古の言葉に耳を傾け 今まこととならんことを⋯⋯。⋯御姿をここに 生者を縛れ 我求む 幻たる腕 ダー・ニト・ロロイ・ギゼム⋯!」(糸依の足元からぬるり、と生まれでた半透明の腕が、何本も何本も、糸依の足から腕へ、掴み、絡みついていった。 (1/28 22:55:40)
清瀬/糸依 > (余裕の仮面に洒落た手癖、さも此方を下手と置くその態度が、憎らしい。黒い生地を蝕む血痕がとうとう地に垂れた。俯いた瞳に映るそれが、私が立つのは奈落へ通じる崖の縁だということを煩く告げる。時間は差程ない。早鐘を打つのに駆られて口上の喧嘩なんてものを、捨ててしまいたかった。……それができぬから、私は今魔術師として居るのだが。毅然としたギゼムの化けの皮をこの手で剥ぎ取って晒し者にしてやりたい。愉悦に浸り、後先も捨ててしまいたいほどに、戦場という舞台に渦巻く熱は強烈なものであった。)「……昔のことなんて。生憎と、私は今のことだけで精一杯でね!奪ってみせろ、守ってみせろ。ならず者の魔術師め! 散々と虐げられれば八つ当たりか?悔しいなら殺してみろよ、その前に私が息の根を止めてやる」 (1/28 23:45:33)
清瀬/糸依 > (歪んだ顔に、飾らない言葉に、加速する感情は益々文字に収まることを知らない。金槌で叩かれる頭が皮肉を連ねる、此処でつぐんでしまっては、ある種“敗走者”だ。死の淵に立たされて更に強く、私が生きていると、ギゼムと対峙し詞を刊んでいるという実感に悦びを隠せなかった。続けたいと乞うた、勝ちたいと願った。終焉という悪魔を高揚という化物が食らい尽くす。そんな私をうつつへと呼び戻したものも、皮肉なことに彼であった。)「は、ぁ……ぐっ!こ、の……くそったれが…っ」(ぐにゃりと視界の端で蕩けた捻れ、抗う刻も与えられずに地に伏した。傷口に塩を贈るように腕を、脚を身体から引き裂かんとするそれに、悲鳴という代物をあげることはできなかった。浅い息、身体の奥まで届いてくれない。左腕から地に引き摺られ、地面に臥せ隠した顔は悲痛を訴える。熱は消え、恐怖と共に寒気がした。呼吸は荒れる。泪と汗を土で拭った。)「呪ってみろ三下、もう一度…っ、お前を殺したるよって……。あ゛、ぅ……先に、冥土で……命を易々と掛けた己を、悔いてろ!」 (1/28 23:45:35)
清瀬/糸依 > 「砂塵に身撒いて翳せや脆刃 詩織り砂漠をさばさばと ……燃せ 紺碧の影法師 詠め 可憐の円舞曲 此に……深緋の華園を──!」(掠れた声で放り出した詠唱を、神に捧げる。刺が、茨が、己の手元から鋭く突き上がる。腰程の丈をした鋭利な蔓は、二度、ギゼムを目掛けて鋒を向けた。) (1/28 23:45:43)
シロー/ギゼム > 「────」(激痛の中、最早身動きも取れずに肩を動かして息をする。目の奥がかあっと熱くなって、視界の何にピントが合っているのかも分からず、遠近感がズレ始める。魔術師が何か喚いているのが分かったけれど、それが意味を持って入ってくることは無かった。脳裏にはただ、負けてたまるかという気持ちだけ。同じ様に地に伏す姿が映った。⋯⋯ああ、ヨハンちゃんやフィディアちゃんにかっこいい悪い所は⋯⋯)「⋯⋯ッ!!!」(地より突き出た蔦の矛先が、己の体を抉るように穿いた。痛みというよりはひたすらな熱さが脇腹を襲って、視界が揺れた。)「⋯⋯ヨズア国⋯⋯⋯⋯ヨハン⋯⋯刺青⋯⋯彫ってやらなくちゃあ⋯⋯なあ⋯」「⋯⋯⋯あの⋯おんなあ⋯⋯呪って、やるよお⋯⋯」(か細い声は誰にも聞こえない。おかしいなあ、急に静まり返ってしまった。助けに来てくれてもいいのに、同志達。俺一人にゃ⋯あんなのは⋯荷が重い⋯⋯。フィディアちゃん⋯⋯助けに来てくれても⋯⋯。脳裏で仲間に恨み言を吐きながら意識を手放した。 (1/29 00:26:38)