明松&かれん

底なし沼

シロー/明松 > 「⋯⋯はぁ。」(尊華帝國、帝都榮郷。人混みと大通りから外れた路地裏を、両肩を落として俯きがちに歩きながら、何度目かも分からない重い溜息を吐いた。太陽は高い晴天だけれど、狭い路地に吹き込む風は酷く冷たかった。)「⋯⋯なんだよ、好きな人いたんかよ⋯。結局俺なんて⋯⋯俺だけかよ⋯⋯」(靴の裏で地面を擦るように、落ちている石ころや木の枝を態々蹴り飛ばすようにして歩きながら、誰も居ないからと思いを吐露した。誰かが聞いていてくれたら、この気持ちを、なんて思いが奥底にあった。⋯⋯篠が竜灯さんに告白した。そんな噂を本部で聞いた瞬間、先日の残った酒で痛かった頭を鈍器でぶん殴られたような衝撃を受けた。人気のある場所にも、日向にも居たくなくて、こっそりこんな場所に逃げてきて。情けないと思う自分が居るけれど、今は浸らないとやっていられなかった。   (1/17 03:51:59)
シロー/明松 > 「俺だけが気になっていたんか。」「最初から分かっとったし。」「ただの付き合いなことくらい」「元々機会なんてなかったし」「別に⋯⋯⋯⋯いいし」「⋯⋯いいし」告白の結果までは聞いていないけれど、ずっと篠が自分と二人でいる間も、好きな男が他に居て、自分のことなど眼中に無かった事が、気づけなかったことが情けなくて、虚しかった。最初から気づいていたと自分に言い聞かせないとやっていられなかった。──気づけば、寂れた小さな空き地のような、建物の日陰となった場所にいた。⋯⋯それでも、態々一人でこんな場所に来て、感傷に浸りたがってるのは一目瞭然だった。壁に背をつけて、軍服が汚れるのも厭わずにずるずると糸の切れた人形の様に腰を落とした。)「⋯⋯はあ⋯⋯」(ため息しか出ない。両足を曲げて立てると、顔を下げたり、またぼう、と上げたりして。兎に角人目のある場所にいたくないと思って、時間を潰したかった。   (1/17 03:52:01)


マリア/かれん > (暗い路地裏に、足音が響いた。羽のように軽く、生気を感じさせないとすら思わせるような浮ついた音だった。足音の主はあなたのいるところの数メートル先で一度停止し、トコトコと駆け寄る。一瞬だけ、白い髪が漏れる光の筋を受けてきらきらと輝く。その後は闇だった。)「……お兄さん?大丈夫、ですか?」(見下ろすように声をかけると、目の前で腰を折って軽く顔を覗き込んだ。色素のない白くすき通った瞳は不思議とは思われようが、この暗がりの中、彼女が異形であることを気づくかどうかは―――おそらく、余裕があるかないかの問題だ。)   (1/17 04:07:58)
マリア/かれん > 「……ご気分が優れないのでしょうか?……お医者様までお連れしましょうか?……ああ、軍人さんなんですね。それなら本部、かな……。」(やけに勝手知ったる様子で帝国軍本部の事を口にしたかと思えば、ひんやりと冷たい白魚のような手をあなたの額に恐る恐る当てる。)「熱は無い……のかなぁ。ごめんなさい、私体温が低くって、よく解らないかも、です。」「――二日酔い?」「おなか、すいてる?」(あなたの様子を伺いながら小首を傾げ、とぎれとぎれに言葉をかけていくうちに、彼女の虹彩は白から桃色に、うっすら色を変えていく。)   (1/17 04:08:03)


シロー/明松 > (視線を下げていると、足音が聞こえてきて。すぐに顔を上げたい、と思ったけれど、通りすがりの人かも。そんな疑念とかが入り交じって、足音がすぐ近くまでやって来て、ようやっと顔を上げたのだった。)「⋯⋯ん⋯」(落ち込んでいる様子でいたい、なんてそんな感情もあったのかもしれないけれど。女の人が、すごく綺麗で、可愛く見えて、しゃがんで視線の高さがあった女性を見つめて、肯定とも否定とも取れないような声を、喉を鳴らすことで上げた。)「いや⋯⋯体調は大丈夫、二日酔いも別に、お腹は⋯⋯」(視線を下げようとしたけれど、目が離せなかった。こんな風に優しくしてくれて、⋯⋯自然と手を伸ばしてしまって、抱き抱えることは出来なかったけど腰の辺りに両手を伸ばして、服の裾を掴むように、そのまま、縋るように腰辺りに両手を当てて、見上げてから、視線を下げた。)   (1/17 04:36:29)
シロー/明松 > 「⋯俺だけ、気にしとって。⋯⋯気になってた人と、居たのに、あっちは俺の事なんも気にしとらんくって⋯⋯。⋯⋯俺⋯⋯」(優しくされて、甘えてしまいたくなって。こうしてくれたのは善意かもしれないけど、どうにも抑えきれず。せめて、初対面の人にこんな事をしてしまっていたたまれず、顔を見ないように頭だけ俯かせたまま、それとは裏腹に腰に当てた手に力を込め。ごめん、と形だけのような謝罪をして。)「急に⋯⋯すみません⋯、寂しくて⋯⋯俺⋯⋯」(今は甘えてしまいたくて、強くあろうと言うよりも、弱みを見せてでもいいから甘えさせて欲しくて、偽らずに感情を口にすると、ゆっくりと視線を上げ、黒い瞳を今更ながらに見開いた。)   (1/17 04:36:31)
シロー/明松 > 「⋯⋯、⋯⋯あ、え?⋯⋯⋯」(その肌の冷たさとか、色々な違和感に今更気づいて。だけど、「イモータル」とは今口にできず、口をぱく、と動かして何も言えずに固まった。甘えてしまったからか、イモータルという未知の存在への恐怖か、それらが入り交じった両方か。兎に角冷静な行動を取るには時間が必要で、いつしか腰に回してしまった手を強ばらせながらも、解けなかった。   (1/17 04:36:39)


マリア/かれん > 「……うん?」(服の裾をつかまれたまま、あなたの弱々しい言葉に聞き入った。いまいち要領を得なかった内容も、『寂しくて』の言葉に、点と点が線で繋がる。『あぁ、この人も……私と同じ。』彼女の目が、とろりと黒く濁って、そして茶色く変わっていった。)「……そっか、寂しかったんだ。」(次の瞬間、自分の顔を見て驚いた様子を見せるあなたの表情に、眉尻を少し下げてさみしげに笑った。気づかれてしまった――だけど、狼狽える事もなく。地面に膝立ちになって、あなたの頭をぎゅうっと抱きしめた。)「……会ったばかりなのに、いきなりごめんなさい。でも、なんだか他人事に思えなくて……。私もずっと寂しかったから。」   (1/17 04:56:36)
マリア/かれん > (ぽろ、と涙を一滴零し、ゆっくりとその黒髪を撫でた。)「……私がおかしな女だと思われても構わないから、こうしてあげたくなって。だって、私はずっと、誰かにこうしてほしかったから。」(どこか秘めやかで切なげなトーンで、甘く囁きながら、ゆっくりと両手を頬に滑らせ、胸から顔を離した。覗き込むようにかちあわせた彼女の瞳は暗闇の中、金色に輝き始める。)「……私に甘えて。」   (1/17 04:56:42)


シロー/明松 > 「あ⋯⋯」(制止の一言も言えなかったし、抵抗する気力ももうなかった。一瞬でも甘えてしまって、いや、きっと今でも甘えているこんな状況で、振り払える訳もなく、抱きしめられて。冷たくても、それでも柔らかくて、いい匂いがして、綺麗な女の人に抱きしめられて、すっかり明松はこの甘さを甘受、享受してしまっていた。その証拠に背中に回した腕は解けなかった。おかしな女とも思える筈もなく、甘さに溺れている自分がいて、なすがまま────)   (1/17 05:22:08)
シロー/明松 > 「⋯⋯」(───金の瞳が凄く綺麗だった。ずっと見蕩れていた。イモータル、なのに。どうしようもなく綺麗で、整った顔は可愛くて、冷たさが暖かくて、欲しい。湧き上がる感情に振り回されているとも気づけないくらい既に、明松は惚れきっていた。胸から顔を外しても、じい、と黒い瞳を外せずにいた。また胸に顔を埋めて抱きしめたい気持ちもあったけど、もうどうにも、何もかも追いつかなくて、必死だった。離したくない)「名前、名前を、教えて欲しい⋯⋯っ。俺は、明松⋯⋯」(イモータルに名前なんてあるのか、そんな事もどうやら考える余裕がなくて、ただもっと繋がりが欲しくて必死に、腰に抱きついた腕をぎゅう、と力を込めて、背中を頼りに確かめるように少しづつ上りながら、自分も腰を上げて立ち膝になった。込み上げてくる気持ちに抗えなくて、ただ、この人のことが好きで。どうなってもいいから今は離したくなくて、きつく強く、背中を両手で抱きしめて首元に顔を埋めた。)   (1/17 05:22:09)
シロー/明松 > 「俺⋯⋯軍人やっとって、その⋯⋯!いつでもここに来れる、だから、⋯何処にいるのか教えて欲しい、いつも、すぐ会いに来るから、これからも⋯!!」(〝イモータル〟という単語を最早口にはしたくない。気付かぬふりをしよう、そうしようと思った。周りが見えなくなる、明松の性格では、心の底から惚れた貴女以外を見られるほど、視野は広くなかった。   (1/17 05:22:18)


マリア/かれん > 「明松……明松さん。素敵な”字”。」(這い上がるかのように抱きついてくるあなたの頭を、肩にあずけてぽんぽんと撫でながら、頬をすり、と擦り付けた。)「……私は、私の真名は、かれん。……かれんって呼んで、ね。……家は無いの。明松さんのところに行っちゃ……だめ?」(瞳はいつのまにか金色から深い桃色に変わって、熱っぽくあなたの顔を見つめる。この至近距離ではもうイモータルであることも隠しようがないのだろうが、構わなかった。初めから、隠すつもりなんて無かったのだから。)「……見て、私ね」(前髪をかきあげ、額を見せた。それは確かに、彼女の体に顕現した異形だった。)   (1/17 05:56:45)
マリア/かれん > 「イモータルなの。……だから、匿って欲しいな……って。昼間は外に出ないわ、だから、お願い……。」(ぱさり、手を下ろすとその額に刻まれた文字も見えなくなった。その文字がウェンディアの一部に伝わる古いもので、真実や真理を意味する言葉であることに、尊華人のあなたは気づいただろうか。)「……あなたの孤独は、私が消し去ってあげる。だから……」(それも、きっと、嘘偽りない真実の言葉だった。もう一度両手で頬を覆って、かれんと名乗ったイモータルは、冷たい唇をあなたに重ねた。)   (1/17 05:56:53)


シロー/明松 > (〝字〟⋯この人は、魔術師のことを良く識っていた。魔術師が名乗る時といえば、字。長年の生活で違和感無く口にしていたこともあって、次に名乗った貴女の〝真名〟に、真名を名乗ってくれたことに、胸がきゅううう、と締め付けられるような気持ちになるのを感じた。好きな人が自分に真名を教えてくれた、と魔術師の常識を当て嵌めて喜んでしまって、自分もと咄嗟に口を開きかけたが、途端にすり寄せられていた頬が離れるのを追い掛けて、掻き上げられた額を見つめた。)「分かった、分かったよかれんさん、⋯⋯かれん、俺が守る、かれんのこと、ずっと」   (1/17 06:24:25)
シロー/明松 > (気付かないふりをしようとした矢先のことだったけれど、それは、もう自分にとってかれんがイモータルだと人間だとか、そんなことは関係ないからであった。文字の内容まで、すっかりかれんしか見えていない自分には読み取る余裕もなく、読み取れていても考える余裕が無く。悩む素振りも見せずに二つ返事で返すと、気概を見せようと少し勇気を出して敬称を外した。)「⋯⋯ん、⋯⋯は、ぁ、かれん」(口付けをされても、もう冷たさは気にならないくらい熱くて、どうにかなってしまったかのようだった。生まれてはじめて惚れた人と交わした口付けは、想像もつかないくらい、甘いものだった。熱を持ったまま、頬に手を重ねられたまま、背中に回した手に力を込めながら、どこか茹だるような視線でじっと見つめた。)   (1/17 06:24:27)
シロー/明松 > 「俺の、俺の真名は柳。だから⋯俺の全部賭けて、守るから。信じて、何があっても俺が守る⋯⋯かれん⋯」(自分でもまだ気持ちに追いつけていなくて、好きや愛してるとは言えず。だけど、ずっと一緒に居たい、守るという気持ちだけは強く存在していて、躊躇なく己の真名を明かしてまで信じて貰おうと必死になりながら、もう一度、と頭を抱きしめ、深く唇を重ね求めた。すき。【底なし沼】   (1/17 06:24:36)