帆風&夕霧
運試しの駄賃うみの。/帆風 > (尊華の都市は様々な店で彩られ、田舎とはまた違った風景を見せる。いつだって人が消えないその景色の中で、少し白くなった息がもやもやと溶けていくのを見守った。)「せんそーっちゅーのも難しいもんやなあ、いや、そらそーやけども…」(石畳の上の小石をおもむろに蹴飛ばすと、ふと店の看板が目に入った。たまには気分転換も大事やなあ、なんて思うと、自然に足はそちらの方へ向かっていた。)(店に入ると、甘い菓子の匂いが鼻の奥へ入ってくる。唾液がわいて出てくる感じがする。ごくりとそれを飲み込むと、物色するために前に進んだ。チョコレート、キャラメル、カステラにプリン…。どれもこれも美味しそうで目移りしてしまうが、一つ、特別目を引いたものがあった。店員が用意したものと思われる紙が手前に置いてあり、何か書いてある。)「占い付きのクッキー…?へへっ」(初めて見るものだ。最近は悩みも多い。面白いものだし、買ってみよう。そう決めると、中身を見るのが楽しみでつい笑いが漏れてしまった。) (1/17 00:11:35)
うみの。/帆風 > 「んで、どないしょ……。おっ。長椅子あるや〜ん」(しめた!と小走りで向かえば、ドスンと音をたてる勢いで腰を下ろした。買ってきたクッキーを丸ごと頬張る。して、占いとはどこから出てくるのやら。噛んでいると、ぱりぽりと砕けていくクッキーの食感の中に、一つ違和感があった。)(…紙?)(中身まで食べてしまった焦りと占いの内容が気になる気持ちが混ざって恐る恐る口の中から引っ張り出すと、それは…)「…魔隠れやて」 (1/17 00:11:47)
λ/夕霧 > (からん━━━━━━)(からん、ころん━━━━━━━━)(高下駄の歯が、石床を打ち、軽やかな音が、規則的に繰り返し鳴っていた。)(女は、堂々と、道を外八文字の卓越した歩法で闊歩する。)(豪奢な着物を好んで着込むその見てくれもさることながら、洗練された所作の集合が、彼女の周りだけ空気が違っているようにも見えるだろうか。)(………………。)(しばらく歩みを進めたこと。)「…………………。」(ちょうど座ろうと思っていた長椅子には先客がいった。しかも、手に持った御籤を凝視しながら。)「(けど━━━━━━ この顔どっかで見覚えありんす………………… はてなあ、いったいどこで見た顔でありんしょう…………………)」(その顔覚えの悪さは、上から指折り数えた方が早いくらいだ。興味も欠片も抱いていなかった夕霧にとっちゃ、一兵卒のあなたの顔と結びつく名前なんて、記憶からさっぱととっくに忘却されてしまっていた。)「もし━━━━━━━━━━━ そこの主さん。」 (1/17 00:32:16)
λ/夕霧 > (あなたに、上滑りしていくような、しっとりとした雪のような声が降りかかるだろう。)「紙切れそんなあっつぅく見てなぁしたでありんすえ………?」「恋文…………?」「ああ……………………………」「_________________んふっ」(はなからわかっていたくせに。)「“その籤”でありんすか………………。」(舐るような視線を貴方にまきつけて、紅を引いた唇を下で舐めては艶をつけた。) (1/17 00:32:50)
うみの。/帆風 > (軽やかな、下駄を転がす独特な音。しゃなりしゃなりと、一つの動きから上品な香りが漂ってくるようだ。あの雰囲気、知っている。)「ンッ!!」(クッキーの欠片が口に残ったまま勢いよく立ち上がろうとするあまり、苦しげな声が飛び出して。ドンドン胸をノックしながら、背筋をぴいんと伸ばす。)「へっ!?え゛ッ…ゲホッ!ゴホッ、ゴホッ……う、うち…!?」 (尊敬している上司がこちらを振り向いてくれるなんて、まさか話しかけられるとも思っていない。あまりの出来事に動揺して、喉に溜まっていたクッキーのせいもあり、大きく咳き込んでしまった。) (1/17 01:25:40)
うみの。/帆風 > 「へ…へへ、あー、えと……。ここ、恋文ッ!?あっはは!そないな訳ありまへんて…こんなガサツな女に…ってそないなことどうでもええわ!へへ、へ〜………す、すんません…」 (口がよく回る。動揺を全く隠せていない。緊張だけが脳を支配して、まともな思考が一切できなかった。品のない、引きつった笑いを幾度か見せたあと、妙な上がり方をした口角のまま謝罪を述べた。)「く、くじ?あっ、そう!籤です!へへ、いや〜おもろいもんですね、これ!中に紙が入ってるなんて知らんくて、うちいっぺん全部口に放り込んだんですよお!口からこないに紙出しよって、いや、曲芸かて!あはは、は……」(生暖かい視線が身体を這っているようで、嫌な汗がじんわりと滲み出た。籤の話題に一目散で飛びつくと、聞かれてもいない経緯をべらべらと喋り続け、一通り話し終わると再び顔を青くしてやり場のない焦りを笑い声にして逃がそうと試みる。) (1/17 01:25:50)
λ/夕霧 > 「ぱたぱた、はたはた…………騒がしいお人でありんすなあ。」「愛らしゅうござんす。」(まるで小動物見たいに。見ているだけで暇にならないのは、退屈を嫌う夕霧にとって面白いものであった。)(しかし、あなたはこちらを見て飛び上がった。そして、まるでこちらに敬意を払うような言動。ああ、帝国軍の兵であるか。)(そう言えば、尚更、夕霧は揶揄うように、目を卑しく細めた。)「んふっ、ふふっ!籤を口に……………っ」「そんなお人初めて見んした…………。」「愉快な人でありんすえ、主さん………………。」(それに、何よりその籤の内容が気になった。信仰深い人間が、まだまだいる帝国民は、こんな籤でも律儀に従うのを好む。これは毎年の風物詩で、そして意地の悪い夕霧はその様子を見るのが楽しみでもあった。) (1/19 13:22:53)
λ/夕霧 > 「ここだけの話にしときんす…………。」「なあ、主さん。」「籤にはなんと書かれてありんした?」「わっち、気になって気になってなあ。“無理にとは言わん”けど…………………“わっちは”主さんの籤、気になりんす。」「なあ━━━━━━教えてくんなまんしぃ?」(と、嫌に圧をかけて迫るだろうか。)(所々に、意味深に語句を強めて。多分これも広義の魔術に違いない!)(1/19 13:23:49)
夕霧 > (……………………。)(見計らった様に、二人の間に北風が抜ける。)「なんて………………………」「戯れでありんす……………。」「んふっ」(気味が悪い程に引き際を分かっていた女は笑う。)(口に手を当て、さぞ可笑しいものでも見たかのように。)(紅い唇がやんわりと弧をなぞると同じく、風に赤い着物が弧をなぞってゆんらり揺れた。)(掴み所なく──────)「許してくんなまし」「わっちはなあ………………。」「気に入る物があるとすぅぐこうなりんす………………」「……………ほんと、」「悪ぅ癖……………」(ころころころんころ。)(さっきから笑ってばっかり。)(きっと本心なんて微塵も出していないのだろう。)(けど───)「ああ、でも」(このセリフだけは、) (3/21 02:32:32)
夕霧 > 「主さんの困ってるカオも……………」「見ものでありんしたけども。」 (3/21 02:32:53)
夕霧 > 「んふ、ふふっ」(本心をさらけ出していた。)(それを最後に、女は去っていく。)(ころんころ。という高下駄の音と、粘り着くような甘い匂いが遠ざかっていくにつれて、彼女の存在が薄れていく。)(ああ、面白いものを見たとでも言いたげに、散々あなたの心を引っ掻き回した女は上機嫌そうだったかも。)〆【運試しの駄賃】 (3/21 02:33:16)