氷原&糸依

草枯れ

ゑゐりあん/氷原 > テンテン手鞠ノ音ガシテ(ここは尊華帝國軍専用の修練場のうちの一つ)彼岸此岸ノ河ノ上(弓や銃の腕前を磨くための射撃場)凍テツクオ顔ノ船頭ガ(端から端までの距離はおおよそ五十間)来マセ来マセトオ手招キ(そんな広い場所に響く歌声)サァサ皆様行キマセウ(今にも消え行ってしまいそうな、溶けてしまいそうな儚さを孕んだ歌声が射撃場にこだまし)黄泉比良坂ヘ行キマセウ(ヒュンッという一筋の矢が蒼穹を翔ける音とともに消えていった)   (1/14 21:46:16)
ゑゐりあん/氷原 > …見えない(帝國軍少尉の氷原である。歌声の正体。それは彼の魔術の詠唱であり、その詠唱で生み出した氷の矢を彼は放ったのである。…が、流石に五十間もあるのだから氷原の位置からは的がまるで豆のようである為、命中したのかはついぞわからなかった。しかし、彼からは見えないだけで的の真ん中に氷の矢は深々と突き刺さっていた。自ら見えないような的にすら当てる。それが、氷原が少尉たる所以ともいえよう)…ゲホッ。…やっぱコレ使うと体冷えちゃうな(そう喋る氷原の口からは白い吐息が漏れていた。詠唱をすることで黄泉の冷気を現世へと呼び寄せる為、魔術を使えば彼の体温も必然的に下がることとなるのだ。故に、実は魔術の多用は彼の体には毒なのである)…もう一回射るかな(そう言って再び氷の矢を生成し、ヒュンッと射る氷原。彼からは見えないが、やはり的の中心を穿っていたのであった)   (1/14 21:46:22)


清瀬/糸依 > 「──まぁ、見事なことで」(てんてんてんまり、てんてまり。)(凍った矢の軌道に張り積めた空気は息も曇らせる。細く冷気を帯びた部屋の中、心の内で拍手の音を響かせた。不思議な歌が聞こえてくると思えば、一寸すれば鋭利な氷矢が的を目掛けて射られ、あっという間に向こう側。奇妙な詠唱、見合わぬ軟弱な体、それでもこの老人擬きは確かに、この國に仕える軍人であり、氷原少尉その人である。魔術師が魔術師を敵とする所以は此れである──人間では最早、戦にすらならないのだ。私たちがたった一句呟けば、その戯れが兵器をも凌駕する。生ける戦機であるとも言えるだろうか、しかし決して私達の、魔術師の存在が消えようとも、きっと平和は訪れない。そうなれば、機械にまみれたからくり王国の独壇場だ。)   (1/14 22:21:01)
清瀬/糸依 > 「今日はお日柄もよく。……御機嫌は如何におざりますか、少尉殿」(白髪を揺蕩わせた彼にそう声をかけては一礼。鍛練に励んでいるのか、戦いを控えているのかはわからなかったが、恐らくは直向きが彼を向上させたのだろう。……無礼だとは毛ほども思っていない、そう思わざるを得ない程、彼が思慮深いとも、天性に恵まれているとも思えなかった。内心、舐め腐っている。反抗心とも言えるだろうが、それよりは気が立っていると言うべきか。暫しの沈黙の後に、突然口を開く。瞳は真っ直ぐに、貴方の奥底を見透かすように。)「……少尉殿、甚だ俄に申し訳ないのですが、一つ伺い申して宜しいか」   (1/14 22:21:03)


ゑゐりあん/氷原 > (まぁ、見事なことで。そんな声が聞こえ、気怠気に声のするほうへ振り向く氷原。そこに居たのは一人の女。誰だったかは思い出せないが、まぁおそらく帝國の兵士だろう。世話になった人間の顔しか覚えられぬ彼ゆえに、目の前の人物が帝國軍の糸依であることに気付かず、とりあえず挨拶をする氷原)鳴呼…居たんだ。びっくりした(頭を掻きながら、ぼさぼさの白髪の間から見える目でしっかりと彼女を捕え、抑揚のない声でそう言う表現。あまりびっくりしたようには見えないが、実際ちょっと驚いていた。まぁ、ただそれだけだが)ご機嫌?…うん、まぁそこそこだよ。…ケホッ(そこそこと言いつつ咳をする氷原だが、まぁ咳程度は呼吸と同じようなものなので問題はない)…ん。別にいいよ(彼女の自分を見つめる目に何か見透かされたようなものを感じつつも、質問があるといった彼女に質問をする許可を与える氷原。一体どんな質問なのだろうか)   (1/14 22:30:48)


清瀬/糸依 > 「──私は」「近く、阿岸へ言の葉を響かせに行く、しがない一兵卒にあり」(手が逸れて、阿岸から行くは何処。私は幼子の遊ぶ手鞠、転ぶ先はまにまに。官職を授かっているというのなら知らぬ訳のない話だ。何やらひょうきんな仕草をしてくれる貴方に、突きつけるこれは恐らく自己満足という代物だろう。)「死は恐れておらず。兵の皆昂るは、貴殿らにも届きおりべし」(静かな部屋は、鮮明に過去を映し出してくれる。握った拳はじとり、雨もない冬にはおよそ似つかわしくない。貴方がどうかなど知ったことではないのだ、寧ろ剣の切っ先は、貴方の喉元を見据えている。一歩、近づけば、見上げた瞳は可愛らしさの欠片もない。)「……神風の吹く日も近くあるらし。それを、貴殿は──」(きっと誰もが知っている。そしてある人は目を背け、ある人は向き合っては涙し、ある人は同じく、泥に沈む睡蓮となる。散りゆく命を、この人は何と“呼ぶ”のか。品定め、下克上などくそくらえ。)「答え給へ、氷原少尉。貴殿にとって國とは……戦とは、如何なるものか」   (1/14 22:51:53)


ゑゐりあん/氷原 > (彼女の話を黙って聞いていた氷原。普段なら、右から左へと聞き流していたが、流石にそこまで空気の読めぬ男ではない。黙って彼女の言葉を聞いていた。そして最後の質問。國とは、戦とはどのようなものであるか)…ケホッ(氷原はすぐには答えなかった。咳を一つ漏らし、白い吐息を吐きだしながら髪を掻いた。そして沈黙が数十秒続いたのち)…意味を(彼は沈黙を破った)意味を見出そうとする時点で、間違っていると思うよ(彼は髪の毛の隙間から目をのぞかせ、彼女を見つめそう言った)…國とか戦とか。…少なくとも俺にとってそれは意味づける価値のないものだって思ってる。…鳴呼、勘違いしないで欲しいんだけど、別に帝國が嫌いなわけじゃない。ただ…俺が王国に生まれれば王国の為に戦っただろうし、ヨズアの人間として生まれればヨズアのために戦った。…國なんてものは、生まれや環境で立場を変えるものだから、それに意味を見出そうなんて言うのは間違っていると思うよ。…ケホッ(淡々と、普段と変わらぬ調子で確かにそう言った氷原。それが至極当然だというような物言いである。國に、戦に意味を見出すことが間違っている。確かに彼は、そう言い放ったのだ)   (1/14 23:00:33)


清瀬/糸依 > (……成る程、そういう。短い咳払いを挟んだ答えに何か言うわけでもなく、僅かに鼻を鳴らす。私と似た答であった。刷り込まれれば何色にでもなってしまう身体、真っ白を塗り潰した人である。──ただ。)「くそったれが」(振り上げた手が彼の頬を赤く彩る。乾いた音を皮切りに、羽織ごと胸ぐらを掴んで引き寄せる。冷静さで感情を圧し殺した私の手にとって、彼はまだ、冷たかった。)「──意味をつける、価値がない。と」(震える声は、貴方のように寒さに震えるからではない。揺らぐ瞳から溢れんとするもの、震えた右手がぽっかりと空いて、次の衝動に靡くのを寸前で堪える。名も知らぬ兵が歯向かったのは上の人間、この状況で罰されるべきは私。引き寄せる力を少しばかり抜いて、それでもまだ私は離すわけにはいかない。嫌悪、憤怒、言葉にするにはあまりにも汚く混ざったその青色の双眸だけが、依然として牙を向ける。)「仮にも少尉であるお前が、戦地に赴く者に向けていい言葉とは、到底思えなかった訳ですが。……わからない、何故此処に居るんですか。理由も、価値からも目を背けた貴方は、一体どんな気持ちで。……その制服に、腕を通しているんですか」   (1/14 23:30:19)


ゑゐりあん/氷原 > ……(パァンと乾いた音が射撃場に響き、彼の白い肌に紅い紅葉が咲く。そして胸倉を掴まれ背丈の低い彼女に引き寄せられ忠越しとなり、彼女の眼を見つめる)…痛った(彼女の眼を見て開口一番にこの言葉を言ったのは流石氷原と言ったところであろうか。とにもかくにも、どうやら氷原は彼女の怒りに触れたらしい。普通ならここで慌てるものだろうが、しかし氷原はいつもの調子のままだった)…俺は、俺の思ったことを答えただけなんだけど。…わからないって言うなら、正直に質問に答えたのに殴られる現状がわからないかな(淡々とそう言った氷原は彼女に掴まれたままそう言った)   (1/14 23:45:24)
ゑゐりあん/氷原 > …早とちりしないで欲しいんだけどさ、確かに俺にとっての國や戦は価値を付けるに値しないものだよ。でも、それは俺が「誰かの役に立って死にたい」っていう目的を持ってるから。…その目的を果たすために俺は尊華に仕える兵士になっただけで、兵士以外にも道があればそっちを選んだかもしれないし、王国に生まれたら王国に仕えてたと思う。…言っただろ、立場を変えるんだって。…だから君の質問においては意味がないよ。…だって国に仕えるのも国のために戦うのも目的を果たす"手段"何だから(そう言うと氷原は中腰が痛くなったのか、彼女の手を無理やり払って元の体勢に戻った)   (1/14 23:45:34)
ゑゐりあん/氷原 > …でも、今の俺はその目的を果たすために尊華のために戦う"手段"を取ってる。…目的を果たすためなんだから、全力でやってるよ。少なくとも俺の中では…だけど。…どんな気持ちで制服に腕を通しているか…だよね。…普通に国に命を捧げるつもりで通してるよ(そう言うと氷原は頭を掻いて自分が矢を放ったほうを向いた)…もう一度言うけど、俺は君の質問に素直に答えただけだ。君が求める答えが返ってこなかったからって殴るのは随分と傲慢だと思うな(そう言って再び氷原は糸依に視線を戻した)…仮にも兵士である君が、思想が違うってだけで味方を打つとは到底思えなかったな   (1/14 23:45:43)


清瀬/糸依 > 「……よもや」(その瞳は虚ろ、想像に難くない結果。やはり華はとうに枯れていた。こいつだけではなかろう。舞い戻った老害は実をも結ばぬ草臥れた様、何がし某のお気に召した胡蝶も、養分を数だけの害蟲。下っ端の雑草も余分な華も、間引かなければ花壇そのものが駄目になる。いつからこんなにも醜い姿へと変わってしまったのか、と私が嘆くには相応しくないないのだろうけれど。私とてきっと、踏みにじられるがお似合いの名のない何かだ。)「欲しくもないのに与えられたからといって放棄するのが正しいとは思わない。何をするかまで口出しできるような立場じゃないのはわかる、けれど……兵に近しい者として、少尉という立場からして何も思わないなら、少なくとも“間違っている”のはそっちだ」   (1/17 00:59:56)
清瀬/糸依 > (これ以上何かを口にしたところで意味がないのは、理性のどこかでわかっていた。それを掻き消す程の衝動が、冷静さを滅ぼしていたのだ。艶やかな白髪をむしり、肌に爪を立てたくなるような感情、それを錆びた言葉の刃で撫でていく。)「消耗品、か。今度は偉く自虐的ですね。私が動かしたいのは国なんてそんな大きなもんじゃない。自分に酔ってるのはどっちだか」(毅然と指した貴方の胸に光る勲章、普通のものよりも幾らか豪華なそれは、彩度のない姿によく映える。)「──死にたがりが、よくそんなものを飾っていられるな」(逆流する不条理な鬱憤が胸でつっかえる。微かに息苦しさを訴える表情で、すう、と冷たい空気を吸う。気管を鑢にかけたそれが、二日酔いで胃液を張り付けた感覚を彷彿とさせて優れない。言いたいことがきちんと陳列しない頭の中、口の端を固く結んでとうとう、言葉が途絶えた。)   (1/17 00:59:58)


ゑゐりあん/氷原> …そう。君がそう思うなら…そう思えばいいさ(間違っている、などと言われてもやはりそう返すが、だが先程までのような口調ではなかった。どこかに苛立ちを含んだ、そんな物言いであった。彼は苛立っているのだ。その感情を表には出さぬものの、心の奥底で糸依に対する苛立ちを募らせていたのだ。そんな彼は早く糸依を振り払おうと考え始めていた。早くこの女を追い払い、鍛錬を続けようと。そう考え始めていた)…あぁそうかい。…そうだね。俺は自分に酔ってるよ。いつ死ぬかわからない体だからね。そんな自分に酔いながら戦っているよ。…なぁもういいだろ。俺だって暇じゃないんだし、君だってこんなところで時間を無駄にする理由はないはずだろ。だからそろそろ…   (1/17 04:32:14)
ゑゐりあん/氷原>(そう言って彼女との会話を打ち切ろうとした時だった)…あ?(死にたがりが。その言葉は、確かに糸依のくちから発せられ、氷原の耳に届いた。届いてしまった)…お前に…ッ(明らかに氷原の態度が変わった。様子が変わった。雰囲気が変わった)お前に何がわかる…ッ!!!(糸依は、氷原という氷の原野に爆弾を落としたのだ)俺だってこんな体になりたくてこうなったわけじゃない!もっと自分の力で生きたかったさ!もっと平和に過ごしたかったさ!実家で兄さんや姉さんたちと力を合わせて家を大きくしていくものだと思ってたさ!!だけどこんな体だから誰かの世話にならなくちゃ生きてけなくて、誰かの世話にならなきゃ生きていけなかったんだ!!   (1/17 04:32:31)
ゑゐりあん/氷原> そんな俺が嫌で!そんな俺を変えたくて軍に入ったってのにお前はなんだ!?自分の思い通りにならないからってそんなにも俺を嫌うのか!?ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁ!!!!!(髪を掻き乱し、目じりに涙を浮かべ、半狂乱になる氷原。先程までの彼とは、まるで別人のような反応である。)ァァァァァァァぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!(そうしてついに氷原は髪をぐしゃぐしゃにしながら地面に膝をつき、絶叫を上げながらうずくまってしまった)   (1/17 04:32:38)


清瀬/糸依 > (早く、早く。その化けの皮を剥がせ、私の目の前で伏してみせろ。醜い嫌悪が生んだ対抗心、行き過ぎた魔術の稚拙で脆いこと。きっとあと数日後ならばこんなことにはならなかった。貴方と会わなければこんなことにはならなかった。てんてん手鞠は屋根の上、据えたそれは蜜柑ではなく刃となる。意地を張って、我が儘の為すままに。負けやしない、そんな愚行の末にとうとう──)「っ、あ……」   (1/17 20:44:26)
清瀬/糸依 > (叫び声が響いた。それは何故か客観的に、まるで劇を見るような認識で私の脳へと刷り込まれてゆく。呆気ない結末の後味は苦い。焦燥が私を支配し、貴方の散らした声の半分も拾えてはいない。震えた手も煩い脈も羽織に隠してしまえば見えやしない。渦巻くのは優越感と自己嫌悪、乱れた貴方を傍に置いたたちの悪い冷静。きっと正しくないのは私で、落ち度があるのも私。共感もされなければ哀れまれるようなかこもない。ただただ、全てにおいて“糸依”が歪みとなっていた。踞った貴方を真っ二つにすれば、きっと皓々たる心が出てくる。私のそれは反して、汚れているから。反する思いが身を引き裂く。悪いのは、どちらか。善悪の白黒をつけたがる衝動を溢れさせてしまう前に、一歩ずつ貴方から。下がる、遠ざかる。)(かのメロスは走った、それは友の為か?メロスは激怒した、己の持った正義感を振りかざして。メロスは身を削った、己の私利が呼んだ友の危機の為に。それは友情か?それは正義か?私もまた走ろう、私の呼んだ私の危機の為に。それが一つの行動として、後世まで遺されているではないか。私だけがこれを、どうして咎められよう。   (1/17 20:45:05)
清瀬/糸依 > 貴方を一人、凍てつく部屋に置き去りにして、ひたすらに廊下を駆けた。それでもこの見て呉だけは、この外枠だけは崩してはならない。)「は、ぁ。はぁ……は、は……」(無意識の疾走が呼んだのは、私の部屋。息が厭に苦しい、視界が厭に眩しい。後ろ手で閉ざした扉に、ゆっくりと凭れかかる。そのまま、腰を落として沈んで。ばさばさと倒れる音、それに隠れた崩壊の音。私を責めないで、私を見ないで。あんな人を私に近付けないで。私を隠して、誰か。)「……麻耶、麻耶」(盲目な故人、愚者は二人、挑む阿岸も快からず。ずうっと後になって、やっと己を悔いることができた。貴方の愛した國が招いたのは、こんなくそったれた世界だ。子供に使われたパレットのような頭、酷い汚れは涙では落とせない。口も耳もない者への救いの悲願は、届きもしなければ応えもない。)「やっぱり、この國は──」〆【草枯れ】   (1/17 20:45:18)