花崗

離別、決意と意志は硬く重なる

黒助/花崗 > (日が沈み、月が登り、人々は眠りに付き、獣も住みかに引きこもる。そんな夜深い刻、空には数多の星が輝き、平原には冷たい風が吹き抜ける。そんな、冷たくすべてを飲み込むような静謐な平原を一人歩く。無論、今は城塞を陥落させるための戦いの最中だ、駐屯基地からそこまで離れはしない。体の至るところに武器である苦無を隠し持っているし、警戒だって解いていない。今は一人で居たい気分なのだ。でも、それは感傷からではない、泣きたいわけでもない――ただ、酒を呑みたい。それだけだ)   (1/12 08:59:50)
黒助/花崗 > (平原を歩く最中、少しだけ盛り上がったなだらかな丘のような場所を見つけた。頂きには手頃な岩が見え、ここならば丁度良いだろうと、片手に下げた徳利と盃を揺らしながら坂を登る。戦うために、誰かを守るために鍛えた体はあっという間に緩やかな坂を登り切り、岩の前まで辿り着いた。少しの汗も掻かず、息も切らさない自分に少しだけ、ほんの少しだけ反吐が出た。せめて、息を切らしていれば。汗を掻いていれば止められる。そんな風に思った自分を嫌った。決意を固めたはずだと、自分を叱った)   (1/12 08:59:54)
黒助/花崗 > ――すまない、とは言わない。勝手に死ぬな、とも思わない(辿り着いた岩に座り、持ってきた盃二つを並べて酒を注ぐ。その内の一つを岩の空いている場所に置き、もう一つの方を持ち、頭上に掲げて一息に呑む。喉を通りすぎる清涼感、口の中を通って鼻から吹き抜けていく匂い、その余韻を目を閉じて暫く堪能し、口を開いた――それは、独白のようなものだった。酒を呑むと考えていることがすらりと口から溢れ出る。言って良いことも、悪いことでさえも。だから、今日だけは誰にも邪魔をされない場所で飲みたかったのだ)それは、お前に対する侮蔑になる。お前の覚悟を、決意を…そして、その信念ですら(開いた視線を向けるのは何もない空中、全てを飲み込むような宵闇の空へと。漏れ出す言葉はその先にいるであろう、足を止めてしまった盟友に。それが届かぬと知ってもなお、酒に任せて吐き出させている)   (1/12 08:59:56)
黒助/花崗 > だから、代わりにこう言おう…今までご苦労だった。後は任せろ。と(謝罪でも、一喝でもない。彼に向けるべき言葉はそうではない。彼は全力で生き、命の灯が消えるまで駆け抜けた。その勇姿は立派だった、傷付き、倒れた仲間を背負い撤退するのを守るために前へ出て、そしてその儚い朱仇花を大地に咲かせたのだ。その最後を自分は絶対に忘れない。忘れることはない。だからこそ、彼に感謝を。だからこそ、その信念を引き継ぐと決めた――それを人はエゴと言うだろう。部下を死なせた無能な上司?あぁ、そうだとも。彼を庇っていれば助かったかもしれない?その通りだ。だが、あの決断を否定し、後悔することはない。それは、彼の生き様を侮辱し、自分を否定するから)   (1/12 09:00:38)
黒助/花崗 > (空の盃を再び酒を注ぎ、再び宙に掲げて呑む。最早溢れ出る言葉を止めることはできないだろう。だが、それで良い。全てを吐き出せば、他に出ていくものは無いのだから。頭の中で浮かべるだけでは、流したくもないものを流してしまう。それを彼は喜ばないだろうし、寧ろ少しだけ怒った表情を浮かべるだろう。だから、酒に任せて吐き出させ続ける。頬を要らぬ水で濡らす必要も、嗚咽を噛み殺すこともしない。ただ、言葉を吐き出し、他の全てを引っ込める――今、それを止めるものはいない)   (1/12 09:00:42)
黒助/花崗 > 離別、決意と意志は硬く重なる――〆   (1/12 09:01:42)