糸依

謝の吐き捨て

清瀬/糸依 > 「懐かしいなぁ」(賀正ゝと騒ぐ時期になると街角に現れる、奇妙な甘い香り。神社の脇に、見世棚の延長に、所狭しと道を覆うのは風物詩だった。人々は皆、一喜にしろ一憂にしろ手には紙切れを握っている。煉瓦を白く汚すのは雪なんて趣のあるものではない。風が吹けば桶屋が、正月がくれば清掃業が儲かるってね。毛糸の手袋が握るのは紙袋、中には律儀に例のクッキーが入っていた。私も大概、普遍的。)「……いと甘からず」(子供の頃は、年に一度の特別なお菓子が楽しみだったものだ。今となっては、そこらの店にも劣る味に顔をしかめる可愛げのなさ。誰が産み出したのやら、それでも景気づいた街並みは華やかで、めでたい正月には似合っている。中に入った御告げを覗こうと、残りのクッキーを口に押し込んで目を通す。)「…………。」「あほらしい」(会い、言葉を紡ぐ、誰がこんなものを頼んだだろうか。どうやら籤さえ私を嘲るつもりらしい。握りしめた手の中で皺を作った神託を手放してしまっては有象無象と変わらない。それができないあたり私も中々信仰深い、感謝するべきか。羽織の内収納に放り込んだそれを、思い出すのはいつ頃か。)【謝の吐き捨て】   (1/11 22:28:41)