ダリア

スレートグレイ

めりー/ダリア > 「〜〜〜っぷは、おっちゃん、もーいっぱい!」(目の前のアルコールの入った液体を飲み干して、ふわふわと浮かぶ気分のままに人差し指を立ててはそう叫ぶ。さて、ここは果たしてどこだったかな。地名も国も何も気にせずのらりくらりと歩んできてしまったものだから、自分がいる場所すら分からない。目の前にいる筋骨隆々なおじ様は黒い御髪を蓄えているように見えるけれど、天井に釣られた橙の電球の色も湛えているから橙の髪にも見える気がする。けれどまぁ、そんなことはどうだっていい。大事なのは、今此処にいる私がこうして満たされている事実だけだ。幸せ、素敵、最高。膨張する仮初の幸せは胸をギュウギュウに張り詰めさせて、風船のようにその身は軽く揺れている。『もうやめておけ』なんて言う忠告は右から左へ抜けて行き、再び喉を滑ったアルコールはゆらりくらりと視界を揺らして判断を鈍らせて、あぁほらまた、大事なものが抜け落ちていく。)「っへへ〜…」   (1/10 21:58:46)
めりー/ダリア > 「……んぁ、う、」(ここがどこかなんて、私が誰かなんて、目の前にいたはずの人が、隣に居たはずの人が、背中に触れる草の柔らかさが、どこかから聞こえてくる低い喘ぎ声が誰のものかなんて、全てどうだっていいことだ。触れる肌が熱い。さっきまであった暖かい白熱灯はどこかに消えて、橙の髪は陰に隠れて藍になって揺れている。自分の体が熱いのか、それとも誰のものとも分からない汗で冷えて冷たくなっているのかも分からない。胸にあった風船は泡のように消え去って、そこに居座る空白は男の白濁で埋められる。ただ獣の様に揺さぶられ、何かに喘いで慟哭をあげ、気付いた頃には端金と汚れた自分だけがそこにはあった。)「あーぁ………あー、これじゃあ足りないよ…ったく…」(極めて冷静に、普通に、なんでもないように。へらりと笑いを浮かべてはそこに転がるお金の勘定を。普段貰ってる分より幾分少ないそれにぶつくさとケチを付けて、ごろんとその場に横になる。目に映る橋の裏側に気がついて漸くここが橋の下だと気が付いたのなら、川辺に歩いて体を流そう。今日も月がきっと綺麗だから。月に見つからないように、そっとそうっと、橋の影に隠れながら。)   (1/10 21:58:49)


めりー/ダリア > 「いたい、なぁ。」(私の足に合わせて波形のように動く水面は、闇に飲まれて泥のようだ。ゆらり、ぬるり、どろり。ほんの先、橋の影から抜けた川の下流は月を映して透明に揺らいでいると言うのに、私のこれはこの有様だ。青臭いタンパク質は冷えた水にゆるりと乗っては消えていく。肌を刺すような冷たさに小さく悲鳴を漏らしてみれば、あぁ。私も人間なんだなと、ほんの少しだけ思える気がした。私の足に押されて上流側の水が歪む。歪んで、別れて、私の足を囲んで、またひとつになる。そうっと足を引いたのなら、それは淀むことなく真っ直ぐに、別れることなくそのままに流れていく。邪魔だ、退いていろ。まるでそう言われているようで、また少し心がきゅうと小さくなった。そう、そう。これでいいんだ。揺れる水面は形があるから流れているのが分かるけれど、水面の下は何も無い。水面の壁にそっと指を突き立てて、果ての無い世界へほんの少しだけ触れてみようか。刺すような冷たさは痛みとなって、じんじんと警告を鳴らす。ここには触れてはいけないよ。こちらに来てはいけないよ。誰も言わないその警告に、私は良い子だから従うのだ。それじゃあまたね、さようなら。)   (1/10 22:33:47)
めりー/ダリア > (先程まで自分がいたらしい場所に横たわった上着を拾い上げたのなら、そのポケットにぐいとお金を詰め込んだ。転がっていたズボンにズルズルと足を通す。濡れた足では履きにくいけれど、じとりと張り付くそれはほんの少し気持ち悪いけれど、きっとそれくらいがお似合いだから。)「ぁ、お酒の代金……そー考えればまぁ、足りるか。」(誰も聞かない独り言。ならば何のために呟くのだろうか?_私のためか、私じゃない誰かのためか、それとも果たして。__ひゅう、ひゅるり。冷たい風が肌を指すから、少しの価値を増した上着で身を包もうか。きゅうと膝をよせ、無機質に規則的に並ぶ平面の橋の裏をじいと見つめよう。生まれた頃はつまらないやつだったくせに、一丁前に薄汚れて模様なんて付けやがって、この裏切り者め。恨めしいものを望むように睨みつけ、薄い唇をそっとそうっと開く。吐き出された息は微かに空気を揺らすけれど、胸に空いた隙間に流れる空洞音が掻き消してしまったみたいだ。唇が震わせて紡がれる言葉にはなんの力も宿らない。誰の耳にも届きはしない。時計はどこにもないけれど、きっとそろそろ良い子はお休みの時間でしょう。おやすみさよなら、またあした。)   (1/10 22:34:18)