落陽&竜灯

よく当たるおみくじ

ひよ/落陽 > (世間は戦争の話ですっかり持ちきりであり、斯くいう己とてつい数日前までは大尉官として各地の尊華領を回り、これを防衛していたものだから、今が年明けであることなど、とうに忘れていた。尊華には“ふぉーちゅんくっきー”という、新年の運勢を占う焼き菓子があるようで、私の地元で言うところの“御神籤”に似通ったものがあると密かに関心を寄せていた。なんでも由来は陶器の占いだというのだが、これがどうして“くっきー”に化けたのか、大凡見当もつかぬものであるが、帝都に来て新たに見知った事実というのは、御神籤に似た焼き菓子が存在している、という事のみに他ならない。見たことなど以ての外であったが、つい先程行きがけの下士官に“新年なのだから大尉もどうぞ”と、栗色の薄い煎餅のようなものを渡されていた。どうにもこれが例の代物であるようで、昼下がり、執務室の書類地獄から束の間ではあれど解放されるべく、特に数名の兵らの休息する姿が見られる広間に向かって、適当な長椅子の端に腰掛けては、貰い物の焼き菓子を眺めていた。)   (1/10 20:10:56)
ひよ/落陽 > 「──“ふぉーちゅんくっきー”か。しかしこれでどう占うのだ……?」(周囲にはそれぞれ兵が、思い思いの過ごし方をしているものだから、勤務中としてその口調を崩すことは決してなく、あくまで“軍人落陽”として振る舞い独り言ちる。しかし慣れない、初めて聞いたと言ってもおかしくはない固有名詞にどこか辿々しくなるその声色は紛れもないただの少女のものだ。ひとつ勲章の増えた胸元辺りにクッキーを持ち、何度も表と裏を返して、神妙な顔つきであって。)   (1/10 20:10:58)


シロー/竜灯 > (阿岸への攻勢準備を整えた竜灯。会戦前に願掛けのつもりで、例年より少し真面目に引いたみくじクッキーだが、その内容もまた、例年と比べても途方もない無茶振りであった。)「⋯⋯落陽さん」(にっこり、というよりはにぃ、と笑って、長椅子の後ろから肩を叩いた。男の声とは裏腹にそこに居たのは振袖姿のおとこおんな。黒地に紫色の竜胆が描かれた振袖を纏った人物はそのまま前へとやって来て隣に腰掛ける。普段外股な上に大股であるために、かなり窮屈そうで違和感を隠しきれない足取りであった。隣に腰を下ろすと、またしても足を広げて座れない事に気付きながら、僅かに生えた髭を袖で隠すジェスチャーをしてみせた。)「あまり見られると恥ずかしいちや。⋯⋯⋯へへへ落陽さん、どうですかの?似合っちょりますか?」(よよよ、と顔を背けてからちらり、と落陽の顔を確認して満足そうにして、膝を落陽の方に向けて普段通りに笑った。ハチマキも巻いてはいないし、普段よりも大人しめにさらさらと落ちた前髪を指で払うと、ようやっと貴女の手元のものに気づいたようで、お。と声を上げた。)   (1/10 20:32:09)
シロー/竜灯 > 「お!落陽さんもそがなもの買うんですか、俺も願掛けのつもりがこれですちや、さあさあ落陽さんも早う早う食ってください」   (1/10 20:32:12)


ひよ/落陽 > (ふと、背後から最早聞き慣れてしまったと言っても過言ではない人物の声が聞こえたかと思えば、ぽんぽんと肩を叩かれたので、上官に遠慮のないやつだなと、ゆっくり振り返る。──とすればどうだ、普段は最も基本的な軍装に羽織に鉢巻姿の彼が、どういった経緯か分からぬが振袖姿で、にっと笑っていた。薄っすら青かった髭を袖先で隠して。)「──どうした、戦を前に気でも動転したか」(普段ズボンで過ごす相手は、どうにも振袖姿では歩き難いといった様子で、いかにも窮屈そうに隣へ回っては腰を下ろしてきた。彼のことだ、どうせこういった祭事は嬉々として取り組むものだろう。厳つい男の風貌がどうにも消しきれておらず、お世辞にも“可愛い”とは言えぬものではある。普段少なくとも私の中では厚顔無恥といった印象で描かれる彼が“恥ずかしい”などと口にするのを聞いては“何を世迷言を”と言わさりそうになるのを、すんでのところで抑えつつ、“願掛け”なんて言われれば何とも此奴らしいと、“良い心がけだ”とだけ返し。曰く、どうやらこの焼き菓子は食べればよいらしい。   (1/10 20:49:42)
ひよ/落陽 > しかし肝心の占いをまだしておらぬぞ、と、怪訝な顔つきで、隣に座る相手の方をちら、と見れば、“さあさあ”と言わんばかりの表情で返されたもので、これ以上の問答は意味をなさないようである。不思議なものだと、数度焼き菓子を眺めた後に一口、小さな口で齧っては、白手袋をはいた左手を口元を覆うようにして咀嚼し、煎餅とはまた違う食感に新たな発見の予感を感じつつも視線を下ろせば、欠けたクッキーの中に紙切れの入っているのが見えて。)「──竜灯、焼き菓子の中に紙切れとは何事だ。これは一体何だ、貴公知っておろう?」   (1/10 20:49:46)


シロー/竜灯 > 「ははは、こがな格好するだけでええなら安いもんですちや」(良い心掛けだ、と言われて、そうだろう。とでも言いたげに無い胸を張るようにしてどっかり長椅子に凭れた。これで神様が見ちょってくれるなら十分、折角だからと良い振袖を借りてきたのだ。少し窮屈ではあるが。落陽がフォーチュンクッキーを手に、飛び出た紙切れを何だと聞くものだから、それも知らないのかとそのまま感情を顔に出して、笑いながら紙切れを指さした。)「落陽さんそれも知らんのですか、これがおみくじですちや。ここに神様からのお告げが書いてありますき、その通りすればええって奴ですよ。気になりますのぉ、俺が見てしもうたら悪いですき、はよう抜いてください。」(クッキーから御籤を引っこ抜くジェスチャーをしながら、ニヤニヤ笑いを隠そうともせずに急かした。   (1/10 21:01:40)


ひよ/落陽 > 「……わざわざ焼き菓子の中に入れる必要はあるのか? ──まあよいわ、これを開き見れば、よいのだな……」(焼き菓子の中の紙切れは決して異物などではなく、むしろこれが御神籤そのものであるのだというのだから、なんとも紛らわしく手間を掛けているものだ。“早う”と急かされては、“あいわかった、暫し待て”と短く返しては御神籤を引き抜き、残った焼き菓子を口に一旦咥えては、白手袋の指先を動かして折られたそれを開く。──とすればどうだ、“迷い多き年となり、ことばを躊躇い幸運を逃し、……決して躊躇わず、……異性に、愛を、囁かねばならぬ、と。お告げだということを告げてもよいが、異性が去るまで止めてはならぬ……と。さすれば幸運を掴める……と。)「待て、如何にしてそうなった」(思わずそう声を零す。なんだこのふざけた御籤は、何処ぞのペテン師の用意した代物ではないのかと内心、神凪として憤慨するところがいくつもいくつもあったが、それを堪えて顔を上げれば、隣では祭り男が“気になるから早く開け”と言わんばかりの面持ちでこちらを見てくるので、紙についた焼き菓子の屑を確かにほろってから、   (1/10 21:14:01)
ひよ/落陽 > “……これを見たまえ。何だこれは”と、呆れたような困惑したような、そんな声色と表情で相手に対して。)「貴公のそれといい、この“ふぉーちゅんくっきー”なる御籤はまともな事が何一つとして書いておらんのではないか? のう、竜灯よ」   (1/10 21:14:04)


シロー/竜灯 > 「なんでしたかのう?⋯⋯どれどれ⋯⋯」(どうしてそうなった、とは。お堅い大尉の事だ、余程面白いお告げが書かれていたに違いない。お告げの内容はこの世界に幾万とあるから予想はつかないが、それでも面白いという事は分かった。どれどれと覗き込んで瞳を細めると、おぉ~と口をすぼめた。)「いやあ~しかしですけんど落陽さん、御籤は御籤ですき、無下には出来んのでは無いですか?こりゃまっこと、面白いですけんど簡単じゃないですか。落陽さんが想いを寄せる人が居よったら、そん人に『私はあなたが好きです。格好よくて男らしくて、ずっと惚れていました。貰ってください』⋯⋯と、言えばいいだけじゃやいですかあ。」(まさか、お堅い落陽さんには居ないんじゃ...?とは一瞬思ったものの、まだまだ若い、年頃といえば年頃なのだから、もしかしたらと思い。人差し指を一本立てると膝を揃えて落陽さんらしく姿勢を正し。目を閉じてつらつらと述べてみると、ちらりとまた落陽に視線をやって、肩を竦めながら苦笑した。)「なあに、ここに、お告げで仕方なくと言うてもええと書いてありますき、そがな難しい事じゃないはずですちや。なんなら俺でもええですよ!あはは!」   (1/10 21:29:15)


ひよ/落陽 > 「私に居ると思うか? 故郷にも帝都にも居らぬわ、そのような者は。仮に居れば御國の為と、そう易々と命も投げ出せぬ……待て、何を言わせた」(此奴はやはり面白いと、そして簡単だと、まこと軽くあしらってみせる。想いを寄せる人なんていうから、記憶を遡って小さな故郷と帝都をそれぞれ振り返ってみたのだけど、故郷に関しては人がごく少なく、家こそ違えど殆どが身内のようなものであったからこそ、色恋なんて考えられぬ。では、帝都に来てからというものはどうだと思えば、こちらはこちらで、やれ田舎将校だの女狐だの散々な言われようであった士官学校時代からついこの間迄ずっと、そんなことにうつつを抜かす暇などなかった。考える余裕すらなかったのだから、そう簡単に言われたって仕方がない。──しかしどうだ、彼の言うように、これが“御籤のお告げで仕方なくやっている”と話す事ができるのだから、或いは何も気にすることではなかろうに、と。何を狼狽しておる落陽、御主は少なくとも“此処”では、そんなこととは縁のない、威厳ある大尉官であろう、と自分を一度落ち着かせて、一息をつく。   (1/10 21:57:42)
ひよ/落陽 > 御籤の内容自体で言えば、凶までいかないだろうか、しかし厄は寄り付かないことに限る、己が神凪であれば尚更のことだ。ではこの場で早く済ませて仕舞えばよかろうと、苦笑して声を上げつつ提案する相手の方を見ては、声こそやはり普段の竜灯だが、粧し洒落たような振袖姿が可笑しくて、口元が緩みそうになるのをきゅっと堪えては、以前変わらぬ面持ちで。)「ああ……此の場で済ませておけば後に困らぬわ。では竜灯、かみがみの……かみがみなのか? いやなんだ、御告げに従うとしよう。であるから貴公、右から左へ聞き流しておれ。よいな」(ここは提案に乗り、厄落としを早々にしてしまおう。きっとそれがよい。──私は確かに御籤の結果に基づくことを告げたが、しかしそれでも此奴には愛人がおったか。極力、知らぬ女からそんな言葉など耳にしたくなかろうと、そう命令口調に念を押すような言葉で。──しかし、いくら心など微塵も込めぬとはいえ、此奴にか……変なところで感の鋭い奴だ、さしずめ私がそういったことに興味がない輩だと助け舟を出したつもりか、上官相手に何とも、まあ……。   (1/10 21:57:46)
ひよ/落陽 > 一息置いて、統制された軍人の面持ちで、翡翠色の瞳で何とも奇妙な装いの相手を見やり、口を開いた。)「私は貴公のことを良く思っておる。眉目秀麗にして男らしく……? 長らくおも、……。想っておった。……貰いたまえよ。──のう?」(ひどく事務的な語感で切り出し、一句一句重ねていったが“想って”で一度、ほんの僅かに気恥ずかしく(というのも、斯様な場で御籤の結果とはいえ女子(おなご)の装いをした男にこんなことを言う自分を客観的に見てしまった事にのみ起因するが)感じ、徐々に視線と顔を下げていけば、一般的なそれとは拵も変わる大きな軍帽が段々と下がっていく。言い切った。早く終わらせてくれ、上手くまとめて行ってくれ、これ以上何も言わせるな、と。“疾くせよ竜灯”と圧のある瞳で上目に睥睨しつつ。)   (1/10 21:57:55)


シロー/竜灯 > 「あいわかりました、しかと聞いちょきます」(右から左に聞き流せと言われても、それは無理というものだ。落陽大尉の愛の言葉など中々聞けるものでは無い。落陽大尉に限らずとも、心が篭っていようといなかろうと忘れる事など自分には出来そうにないが。頬を綻ばせると、膝を揃えたまま背筋を伸ばし、視線の刹那も逸らさずに見つめ続けた。よう思うてくれちょるのは本音かのう、と考えながら、何処か命令口調な言葉をしっかり聞き届けてから、穏やかに弧を描いていた口元をやはり緩ませて頷いたのだった。)   (1/10 22:22:11)
シロー/竜灯 > 「受けとりましたぜよ、確り心の内に留めちょきます。⋯⋯やけんど、ちっくと命令口調でしたの、俺はとてもええと思いましたけんど。いやぁ、落陽さんにこう言われた人が居ったら幸せですのう!」(良いものを聞けた、と嬉しそうに笑みを浮かべると、視線を下げて、目元を隠すようにずれた軍帽を見つめて。裾を正しながら立ち上がると、振袖姿のまま軽く敬礼しておいた。落陽大尉の勇姿に。)「落陽さん、やっぱりこん御籤当たっちょります、こん通り着て落陽さんと会うたお陰でええもんが聞けましたちや。攻勢前にはまっことええ激励になりました!───では、大尉。また」(ぴしっ、と敬礼をしたら、もうすぐに肩の力を抜いて、一礼して踵を返す。早速幸運だったなあ、と歩きながらに己の振袖を見下ろして⋯⋯⋯⋯やっぱりちっくと恥ずかしいの。そう独り言ちる竜灯であった。【よく当たるおみくじ】   (1/10 22:22:14)