ヨハン&リィリート
マリア/ヨハン > (その日は、冬だというのに暖かな日差しが降り注ぐまさに小春日和であった。木々は優しくそよぎ、空は薄い水色を刷毛で塗ったように澄んでいて、じっと動かない凍雲がぽわ、ぽわりと浮かんでいる。宝石達が陽光を受けてきらきらとした影を柱に落としている簡素な神殿の中に、ヨハンは足を踏み入れた。神殿と呼ぶにはあまりにも小さく、風の吹き抜けるがらんどう。それでもここがヨズアの民の拠り所であった。先客はいない。となれば、礼拝の代表者を決めるゴブレットを手にする必要もないだろう。古びた木椅子に腰を降ろして、天井を見上げた。)「……神様、アガンに戻ってきました。……報告します、リントで小城を二つ落としたけど、3つ目で返り討ちにされちまいました。出来りゃあ続きをやってくれる旅団の人間との縁みたいなものを授けて欲しいところなんだけど……」 (1/8 16:58:45)
マリア/ヨハン > (と、自分の中の気持ちを整理するように独りごちる。誰も聞いていないのに口に出すなんて物語の登場人物でも気取ってるみたいで照れくさかったけど、魔術師となった以上は言葉の力を侮れないから。泊を置くようにきゅっと結んだ口をまた開いて、言葉を続ける。)「……っと、まあ、ないものねだりばっかりってのも烏滸がましいですかね。まずはご挨拶までに。」(礼拝を始めよう。ヨハンはゴブレットを数秒見つめた後、ゆっくりと立ち上がった。) (1/8 16:58:54)
愁空/リィリート > ――私たちの神様ってさ、案外、その辺に居ンのかもしれない。ハラカラ、アンタさんの願いは確かに聞き届けたよ。(冬の凍てつく風を纏い、暖かな祝福の光を背に。凛としていて良く響く、雲さえ切り裂くような真っすぐとしたその声は、少年の背に届けられた。清廉なる空気、神聖なる大神殿――とはいかない。伽藍洞、カランとした空気。神殿だとこれを呼ぶにはあまりにも小さい。しかしながら、神を想えば、祀れば神殿。言葉は届くし、想いも心も神に届いたからこそ、ムーングレイが場に滲む。夜の魔女、昼に出ずる。)……ホントだったんだね。アガンが落ちたって。ああ、そうか、ハラカラはやってくれたんだね。(足音を響かせながら、アガンの大地に自身の存在を示す。彼に示す。君を助ける魔女はここにいる、とばかりに。一歩ずつ近寄り、彼の目の前まで歩みを進めれば、フードを外し、黒のヴェールを脱ぎ捨てた。陽の光の下、煌めく艶髪。蠱惑的なコチニールレッドが目の前のヨズア人の背、一点に注がれる。) (1/8 17:27:12)
愁空/リィリート > 噂は聞いた。戦果も聞いた。アンタさんが攻め入った。うら若き、麗しきヨズアの少年(ワラドゥ)だね。(彼の視線がこちらに向くのを待ちながら、魔女は言葉を紡ぐ。その一言一言は童話の一句一言のよう。言葉の一粒々々が砂の上で遊び、時の上で跳ねるような心地の良い喋り口調。鷹のように鋭く、されど仲間を想う、労う優しさを声音に乗せながら。――旅団の活動が活発になってからというものの、仲間から噂は絶えず流れてきていた。名も姿も知らない。ただ、彼女の仲間からはこう聞いていた。――『うら若き、麗しきワラドゥが、戦果を挙げた』。アガンに来たのは偶然に。しかし、神殿に導かれたのは必然か。噂の少年に出会えたからか、リィリートは機嫌よく口端を持ち上げていた。) (1/8 17:27:18)
マリア/ヨハン > (耳朶に触れる音色のような声は、鳥というには妖艶で、鈴というには強かだった。数奇な出会いにちゃちな冷やかしをしようとも思えず、ヨハンの目をはっと見開かせ小さく手を震わせたのは、非日常を迎え入れる準備をとっくに整えさせていた神殿の存在だった。足音が肩を追い越さんとするその瞬間に、ヨハンは声の主を見上げる。ぱさりと落ちるヴェールの奥にある顔を捉え、若き血潮の滾るままに口角をにいっと上げて、魔女の降臨に応えようか。)「……ひゅー、すっげー美人。」(逆光を背負って微笑む女の凛とした立ち姿は、ヨハンのような若者にとって、ともすれば回りくどいと思われるかもしれないどこか耽美な語り口に説得力を与えるのにも充分だった。このまま彼女のペースに乗せられて、戦いの後の熱に酔いしれるのも悪くはない気がしたけれど―――彼女が神との繋がりとしての役割を今担ってくれているのなら、この場所を現実へと引き戻すのは自分の役目だろう。ヨハンはあえて口調を崩して、力強いまなこと言葉であなたを自分の世界へ引っ張ろうと試みた。) (1/8 18:22:47)
マリア/ヨハン > 「……うら若き麗しきだって?そりゃオレの事か?ったく照れるじゃんかよ、そりゃ間違ってないけどさ?……へへっ、なーんてな。……あんた、旅団の人?」(自分の噂を流してくれたのは、最近行動を共にしているギゼムの仲間たちだろうか。その推測がヨハンに仮説を立てせた。)「はじめまして、オレはヨハン。まだ旅団員じゃないけど。」(そう言うと、ヨハンは椅子から立ち上がり腰に手を当てた。)「けど、リントを落としたら刺青を入れてもらうって約束してるんだ。だから、未来のセンパイの顔を立てて、ゴブレットは譲ってやるとするか。」(礼拝中に同席者が現れた場合、先にゴブレットに触れたものが代表者となる。ヨハンは神殿の中心に位置するそれに目配せをして、あなたを促した。) (1/8 18:22:54)
愁空/リィリート > ――……お褒めに預かりこりゃ光栄。会えて嬉しいよ、ヨハン。旅団員だろうとそうじゃなかろうと、アンタさんは私たちヨズアの仲間に違いない。そでしょ?(此方を見上げる少年と目線を交錯させる。刹那、魔女の表情が月夜に掛かる朧雲のように霞んだ。ワラドゥとは聞いていた。しかしあまりにも――若い。顔立ちにはうっすらと幼さが残り、その口調は、その声は、正しく少年のそれそのもの。そんな少年が月城と花城を攻め、墜とした。その事実にぞわりとした、底知れぬ恐ろしさを感じる。それは決してヨハンに向けられたものではない。ワラドゥが、まだ20も行かないただの少年が。戦に赴き、自らの居場所を自らで手に入れなければいけない。そのことが――ひどく、恐ろしい。しかしとて、戦果は戦果。彼がどう戦ったのかを知らない。彼がどうして戦っているのかはしらない。けれどそう、彼はヨズアの仲間で、旅団だろうとそうでなかろうと、我々の為に戦ったハラカラである。そうであれば、自らの心の内に潜むこの罪悪は、この苦しみはしまっておかねばならない。――これは、戦争なのだから。努めて明るい口調で語り続けて、一息吐く。魔女の言葉をもう一度紡ぎなおす為。) (1/8 19:31:57)
愁空/リィリート > 刺青入れて貰うンなら、腕のイイとこ選びな。なんなら、私もなんかやったげるよ。画家だから。戦果の報酬、対価ってのはいくらあってもいーもんでしょ。(目の前の少年の頭をぽんぽん、と軽く二回叩き、一度優しく髪を撫でる。よくやったね、よく帰ってきたね、とでもいうように。かと言ってそれ以上何かしてやることも、話す事もなくふい、と視線をゴブレットに向け、神殿の中心へ足を向ける。ゴブレットを手に取り、自身が代表者を買う事を行動で示した。)覚えといて。私はリィリート。きっとアンタさんが大人になる頃に、安心して居られる場所を作り上げるから。(それは宣言であり、神に対する祈り。きっと今の子供たちが大人になる頃、みんなが暖かな場所で暮らせますようにと。二度と、あの戦火を見ずに済みますようにと。願いを込め、自身の抱く信仰の神に向かい、そしてヨズアを護る全てに向かい、祈りを捧げる。――リィリートの紡ぐ呪文は、冬の夜空のように澄んでいて、天高くから鳴く夜鷹の響きのようであって。 (1/8 19:33:37)
愁空/リィリート > 神秘的とも、力強いとも言える声は彼女特有のものだった。一音一音に濁りなく、澱みなく。呪文の最後、彼の幼くも確かな男性らしさの混じる声と、妖艶な女の声が深く重なり合ったことを確認すれば、空の器を軽く持ち上げ、飲むような仕草を見せてからヨハンに差し出した。) (1/8 19:33:45)
マリア/ヨハン > 「へぇ……画家なんだ。じゃ、次の刺青はおねーさんに頼もうかな。でも今度のはギゼム……旅団のおっちゃんなんだけど、そいつにって打ち合わせ済みなんだ。図案もね!」(自慢げに自らの肩をぽん、と叩いたかと思えば、頭上に振ってくる手に一瞬たじろいだ。困惑しつつも耳の近くをさざめくような柔らかい手の感触と、夜を思わせる香りを満更でもなく思い、されるがままにうつむいた。)「……いや、大人なんだけど、オレも……」(明らかな子供扱いを受け入れがたく思いつつも、本気で憤るのもそれこそ子供っぽい気がして、リアクションは苦笑に終わった。呪文のはじまりを思わせる彼女の息使いを耳にすると、ふい、俯いていた顔を上げて詠唱を聞き届ける。そこには迷いも何もない、高潔なまでに敬虔なヨズアの信徒が立っている光景があった。最後の句を口にし、目の前のあなたが手渡す空の盃を受け取る。彼もまた、神の聖杯を口にした。少年の唇に紅が薄く移る。ヨハンはそれを親指でわざとらしく拭い取り、からかうように笑った。)「……へへっ、ごちそーさま。」 (1/8 20:18:00)
マリア/ヨハン > (礼拝は卒なく終わり、椅子に戻る。あなたが神殿を出る様子がないのを確認すれば、つい先程神頼みをした事について言及してみようか。)「……ところで、おねーさんはなにか目的あってアガンに?……もしかして、オレが誘う前からリントを狙ってた?だとしたらしばらくオレ達のキャラバンに混じってきなよ。」(椅子の後ろに背もたれに片肘をかけて、もう片方の手を空中で差し伸べるようにして本題を切り出し始める。セールストークのはじまりというわけだ。)「……オレとギゼムはリントで戦い、一度前哨基地で体勢を立て直す為に撤退した。だから他の旅団メンバーはまだ近くにいる。しばらく好き勝手過ごしちゃいるみたいだけど、集まろうと思えばすぐだ。アンタをみんなに紹介するから、リベンジに付き合ってくれないかな?さすがに帝国は強かったよ。仲間を増やさなきゃと思ってたとこだったんだ。出会ったばっかでこんな事言うのは気が早いってわかっちゃいるけど、行動を起こすなら今なんだ。 (1/8 20:18:14)
マリア/ヨハン > (話すにつれ、あなたと似た赤いひとみが徐々に生き生きとしてくるのが解るだろう。ヨハンは真剣な顔で空中にあずけていた手をぱさりと膝に乗せて続けた。)「敵を休ませちゃならない。そう思わない?おねーさん。」 (1/8 20:18:29)
愁空/リィリート > ん。おねーさんに任せな。(感情の波が解りやすく顔と声色に出る少年を前に、やっぱりまだ子供だよ、と内心思いつつも移った口紅を拭う様子を見ては目を開く。「こんの、マセガキ。ヨハンにゃ私を食べるには早いよ」。揶揄われても表情一つ変えず、矢張り年下の弟を見るような柔らかな視線を向けた。――閑話休題、とばかりに椅子を軋ませ話に区切りをつける彼を見ては、こちらも上げた口端を引き締める。同じ赤色同士が混じり、深く絡まる。彼の考えている事が手に取るようにわかるのは、彼が話し上手だからか。それとも、同じヨズアの、同じ運命を持つ者同士だからか。爛々と輝く彼の瞳に合わせて、リィリートの瞳に情熱の炎が宿る。)――リントを明確に狙っていたか、と言われたらノー。でも、必ず取り戻すと決めてた。アガンにきたのは、アガンが堕ちたってきいたからね。私の仲間内じゃ情報の広がりが遅い。だからわざわざ画家業ほっぽって来たってワケ。(アガンに来た理由を話しながら、彼の話に耳を傾ける。しかし、彼の話したいことも、頼みも、そしてその答えさえも、始めから決まっていた。) (1/8 21:07:47)
愁空/リィリート > ああ、そう。そうとも。その通りだとも。ハラカラ、アンタの願い、このリィリートが受け取ったよ。(――幼いかと思えば、大人顔負けに話す。この少年は一体何なのだろうか。ただ一つ、確信を持って言えるのは彼の言っていることは何一つ間違えてないということ。そしてこの夜の魔女はヨズアの味方である。ならば協力しない手はない。――とはいえ、率いて戦う事は一切合切した事が無い。不安がないと言えばウソではあるが――不安だからといって、それを口にする程素直な女でもなく。不安をかき消すように、己の突き進む道を開くように。両の腕を広げ、高らかに唄うように紡ぐ。)戦の二番手、引き受けよう。切り開いてくれたその道が閉ざさないよう、こじ開けるよ。 (1/8 21:07:53)