鬼若&夕霧

熱に当てられた二人

大和守/鬼若 > (──今彼を強く動かしているのは、先日の前哨基地の防衛での事だ。先日、野蛮なるヨズア人が厘都へ攻勢を掛けてきたのだ。それを防衛するべく、鬼若は向かい──結果として厘都は奪われる事無く、鬼若は厘都を守れた。しかし、その過程が問題なのだ。結果だけを見て満足するなど気に食わない。過程こそ重要であり、見逃してはいけないのだから。鬼若はあろう事か二つも前哨基地の陥落を許してしまい、残るは一つのみ。全く以て情けない。何が『鬼』か。何が『蛇』か。鬼ならば一切奪われる事無く相手を蹂躙し、蛇であるならばその毒で相手を苦しめてやるべきなのだ。それだと言うのに、己は。まだ己は未熟だと、次はその行いを繰り返さぬよう、過去の資料を漁っては学ぶ。資料庫に行き、その場に居座る訳にも行かず大量の資料を抱えて己の執務室へ戻る。そして資料を戻しに資料庫へ赴き、資料を漁る。今現在、それを数回程繰り返した所だ。執務室へ戻る為、本部の廊下を何処かふらふらとした足取りで歩く。傾きつつある陽光が眩しく、隈に縁取られた瞳を何処か不機嫌そうに細めていて。)   (1/7 14:18:55)
大和守/鬼若 > 「……ッ、く」(夜も寝ずに調べていた代償だろうか。くらりと体がよろけ、乗せていた資料が音を立てて地に落ちる。その様子に舌打ちを一つ溢しながらも鬼若は屈み、それを一つ一つ拾い上げる。こんな無様な姿を他の者には見られたくないと、己の失態に溜め息を溢しそうになる。然し微かに手元が震え上手く拾い上げられず、そのもどかしさに、鬼若は今度こそ溜め息を溢したのだった。)   (1/7 14:19:16)


λ/夕霧 > (ぱらぱらぱら。)(それは何かが崩れ落ちる音。)(崩れ落ちたのは、2つ────)(いいや、その女性は見ていた。)(三つだ。)(三つ、その場に崩れ落ちた。)(ぐらついて、おぼつかなくて、ギリギリ均衡を保てていた物がぱらぱらぱら。)(──────)(一つは散らばり乱雑に広がるあなたは上手くやっていると自分につく言い訳の種。一つはあなたの体。そしてもう一つは、あなたの“鬼若という字の輪郭”、あるいはその有り様の心持ち。)「おん、やぁ…………………」(しとしとと降る雪のような。)(あるいは麗らかな冷水のような、冷たい声があなたの背中に降りかかる。)(カツン───カツ、カツン。)(氷の上を歩くような、甲高く冷たい足音が、ゆっくりとあなたに近づいてくる。)   (1/7 14:39:06)
λ/夕霧 > (華麗、華やか、下駄の歯を見せるかのような、堂々とした外八文字の特徴的な歩法。)(印象的な赤い着物、そして何より特徴的な、黒真珠のような艶髪なんかよりももっと暗いその双眸が、あなたを見下ろす様に手向けられていた。)「───これは大佐殿。何やら難儀しておりゃれると見えりんす。」「ああ、ああ、なんとおいたわしゅうお姿─────」(ふわりと、あなたに歩み寄れば、彼女の香り袋の芳香が、むせ返るくらいに薫ずるだろうか。)「遠慮なんていいなんすな……………。わっちが、“手を貸しなんす”。」(大佐であろうあなたは、あなたは、この中佐の女の噂を耳にすることもあっただろう。その企み顔は、最早隠してなんておらず、笑顔には嫌な悦がたっぷりと含まれてしまっていて。)   (1/7 14:39:34)


大和守/鬼若 > (──冷たい、音。冷たい、声。顔を見ずともその持ち主が誰かなど、易く理解する事が出来る。顔のみで振り向けば、そこには予想通りの人物──少佐、夕霧の姿がそこにはあって。艶やか、且つ華やか。そんな貴女の魅力に蕩けてしまう人も多いのだろう。だがしかし、何よりも暗い闇のようなその瞳。それに吸い込まれてしまえば終わり、である。嗚呼、全く以て面倒なモノだ。視線を散らばってしまった資料の方へ戻しては、己に起こっている不調を無理に制し全てを拾い上げ、ゆっくりと立ち上がる。貴女の手を借りる必要も無いと、そうはっきりと表す様に。)   (1/7 15:12:36)
大和守/鬼若 > 「……ハッ、手を貸すだと? 生憎、余は貴様の手など要らぬ──一切必要になる事など無い。余はもう既に他の者の手を取っている。二つも取る事は出来ぬ故な」(何を下らぬ事を、とでも言いたげに鬼若は貴女の言葉を鼻で笑ってみせた。貴女を冷たい紅で真っ直ぐに見つめ、貴女の言葉を【不必要】だと断じ。既に己は手を取っている。相手が、自分が鬼若に手を貸したとは思っていないだろうが。それでも、存在する理由を与えられた。生きる理由を得る事が出来た。──その御方以外に、一体誰を選ぶと言うのだろう。その他などどうでも良いのだと、鬼若は無意識ではあろうが、その人物に対する想いを言葉に乗せ発する。)   (1/7 15:12:49)


λ/夕霧 > 「そうでありんすか。…………あらあら、釣れないお人。」(手厳しく、その誘惑を振り切られた挙句、軽蔑交えた強い拒否を訴えられたというのに、その女はコロコロと笑うのみで、その表情に1点の陰りも与えるに能わなかっただろう。)(そも、2つ上の大佐ともあろう上官に対して、このような不敬千万な態度であろうが、その形のみを見れば、上官に気を遣う部下とも取れる手前、あなたも強くは出ないだろうと、その行動の至る所にべったりとした打算がついていた。)(しかし、一つ、非があるとすれば、あなたは余計な事を夕霧の耳に入れてしまったことだ。)   (1/7 15:40:01)λ/夕霧 > 「───へえぇ…………………。」(どろり)   (1/7 15:40:25)
λ/夕霧 > 「─────それは………………興味深い事を聞きんした。」(どろり。水を得た魚のように興味を得たその女は、微熱が籠った言葉を吐く。)   (1/7 15:40:59)
λ/夕霧 > 「なんと、わっちが微力を尽くす間でもなく、もう“大佐殿は助けられていた”でありんすか。」「ははぁあ、それはようござんす……………。」「わっちにも詳しく教えてくんなんしぃ…………?」「大佐殿がそれほどまでにお【熱】を向ける相手………………。」「わっちは、ああ、とても………………」「────それはとぉても知りたいと、思うでありんすえ……………。」(この堅物な武左に、それほどの相手は、一体誰なのだろうと。どろどろと、あなたに湿った言葉がへばりつく。)(だが、次の瞬間には、さっきまでの嫌な気配がすっぱり霧散して、何食わぬ顔で話を進行し始めただろうか。)「とは言っても、大佐殿は思慮深い殿方でおりゃれるでありんす。そんなポロポロおっしゃりんせん事と、わっちはこれでも信用しておりんす。」   (1/7 15:41:30)
λ/夕霧 > 「ただの、戯れでありんすえ。ほんざんす。」(果たして、本当にそうなのか、あなたはこの女の言う事に、どれほどの信用があるかも、きっと、それすらも……………)(この女は“解っておきながら”言っているのだろうね。)   (1/7 15:41:49)


大和守/鬼若 > 「………………戯れ、か」(彼女がどんな人物か、性格か。それは先程の誘い、言葉でよく実感している。理解している──つもりではある。しかし、想い人に興味を持たれれば、ぐぐと傾いてしまう機嫌の坩堝。そうなってしまえば、想い人の偉業を、そして功績を、素晴らしさを、と。思わず貴女に話したくなってしまう、だが待てと己の気持ちに自制心を働かせようとする。貴女は信用ならないと、黙っているべきだと。)「…………そうだな……」(──けれど。想いが、ぽつり。ぽたりと片鱗を見せる。鬼若の上向きに傾いた機嫌から溢れた、ほんの数滴。それは広大な海のたった一滴、壮大な空のたった一辺ではあるのだけれど。)   (1/7 16:25:34)
大和守/鬼若 > 「……華の様な方だ」(先代元帥、現大将として在りし御方。字を、白梅。決して叶わないとは思うているのだが、それでもその想い一つで此処まで成し遂げたのだ。あの御方に己が相応しいなどとは一切思っていない。寧ろ今は、あの方の部下として何と愚かしい事をしたと、自戒の最中でもあるが。それでも尊敬を、崇拝を、思い続ける事は止められなくて。)   (1/7 16:26:01)
大和守/鬼若 > 「──古今東西どの花にも劣らぬ、この世で最も美しい華。……そんな御方だ」(そう、秘めたる想いを、恋心を──【熱】を、溢したのだった。)   (1/7 16:26:21)


λ/夕霧 > 「………………。」(ぽつりと、一言のみ、彼は話した。)(よもや本当に話すとは予想もつかなかったが、ああ、本当に、惚気話を聞かされるとは。)「あいわかりんした………もうようござんす、大佐殿。」「それ以上はわっちは聞きんせん。」(少しおちょくるつもりだったが、こうも興をくじかれては、そそるものもそそらなかった。)(首を振って遠慮するように、両手で両耳に手を当てるジェスチャーをすれば、それ以上は望まぬと意思表明しただろうか。)「ご立派、ご立派、一途なことでありんすえ………………」「ほんと────」(お堅い人。)(とは口にまで出さなかった。)(上官は、一見もっと厳格な人だと思っていたが、少し揺さぶりをかけては、惚の字で熱々じゃないか。)(意外な一面を知れたところもあるけども、それ以上にもう少し話せば無限にずるずると聞きたくもない惚気話を聞かされそうな気配がしたので、事前に身を引く判断を本能的に下そうか。)   (1/7 16:48:42)
λ/夕霧 > 「なら、わっちはこれにて、どうやら、その重そうな紙束にも助けは無用との事でありんすから────」「わっちは、この辺で…………」(軽く格好だけの敬礼をすれば、くるりと振り返れば、もうあなたには興味も無いようで。そのまま、さっきの外八文字の歩法でカツン、カツンと歩き去っていくだろうか。)「おさればえ。」(そんな、短い挨拶を残して。赤い着物のシルエットが、ゆっくりと遠くなっていく。)(しかし、つまらない人だとは思っていたが、もう少し言葉を重ねれば、もっと面白いものが出てくるかもしれない。例えば、彼の内に秘めたる、もっと、根源的な、熱いモノとか────)「わっちは、ソッチのほおが気になりんすえ…………鬼若大佐殿。」(悪女は、誰にも知らない所でほくそ笑む。)【熱に当てられた二人】   (1/7 16:49:03)