ヨハン
ネシア・トヴァ-後編-マリア/ヨハン > (彼女は意外にも、この申し出を快く承諾してくれた。個人主義とはいえ仲間意識の強いヨズア人だからなのか、彼女の目的であるリントまで送ってあげると言ってくれたのだ。道中はスザンのスラムや沙羅老女の家に引きこもっている時よりよっぽど旅らしいもので、ヨハンを少しばかり高揚させた。最初こそ列車も使わずに歩いてリントまで行くと聞いた時は弱音がこぼれたが、街へ寄り道をしたり、彼女の思想を聞きながら焚き火を囲んでみたり、同じテントに寝たりしているうちに親愛の情も湧き、ヨハンの課題への輪郭も見えてくる。彼女は自分の事を多くは語ろうとしなかったが、随分とストイックで、求道的な人だった。このままリントまで何事もなく着けば―――どんなに良かっただろう。彼は、やはり若かった。)「……動かないで」(テントの中、彼女ににじり寄るようにして顔を寄せるヨハン。魔が差したと言ったらいいだろうか。それは愛と呼ぶには薄っぺらくて―――恋と呼ぶには不純すぎた。) (1/4 17:46:24)
マリア/ヨハン > 「あんたも初めてじゃないだろ。」(口説き文句としては最低の部類だった。だけど、初めからまともに取り合ってもらえるとも思っていなかったから、遊ばれたい、あるいは遊びたいという態度で寂しさや郷愁を覆い隠し、ごまかした。彼女は―――――『地に足を付けるんだ、少年。』彼女は微動だにせず、ヨハンの目を見てそう呟いた。『そんな吹けば飛ぶようなぬくもりは、キミのためにならないよ。』―――キミの為……そう言っては、結局振られているのだろうということはすぐに理解できた。強姦する勇気がある訳でもないし、趣味でもないけれど、なんとなく引っ込みがつかなくて彼女の肩を押し倒してみる。彼女がもし、押しに弱ければなし崩しに……気まずいままより、どうにか夜を遂げる事に賭けたかった。まだ頭に血が登っていて、彼女の言葉はうまく響かない。)「……なぁ、」「セリヤーナ。」 (1/4 17:46:34)
マリア/ヨハン > (道中で彼女に教えてもらった名を呼んで、服に手を掛けた。初めて見た彼女の腕には――――シュクロズアリ旅団を意味する刺青が入っていた。)「………ッ!?……」(彼女は熱くなったヨハンとは対照的に、ドライな態度をとりつづける。『……それ以上は、嫌。』と零した小さな響きだけは、どこか女の子っぽかったけれど。)「………ごめん……。………その、……」(刺青を隠すように、手を震わせて服の乱れを直した。続く言葉が見つからず、無造作に放り投げてあったバックパックを掴んでよろよろとテントを出る。彼女は引き止めてくれていただろうか?……それも、あんまり覚えてない。 (1/4 17:46:51)
マリア/ヨハン > 最初こそ断られた事へのショックがあったが、徐々に心の比重を占める彼女の言葉。『吹けば飛ぶようなぬくもりは――』……闇夜の中で灯火の暖かさを知る事が、彼女にとってそれ程に卑劣な事なのだろうか。マッチ一本の明かりすらすがりつきたくなる孤独を、彼女は知らないのだろうか。あるいは、孤独を糧にしながらも―――恋なんてものを娯楽にする事が眼中にないような、炎の中に彼女は生きてるというのだろうか?旅団の刺青が、まだ脳裏にこびりついていた。)「……シュクロズアリ旅団………。」(この時、輪郭を形成しつつあったヨハンの課題に最後のピースが当てはまる。若者は、旅を続けた。)〆【ネシア・トヴァ】 (1/4 17:46:56)