ジェフティ&ヨハン

海と月

λ/ジェフティ > (————————————ウェンディア王国、王都ウェント。)ㅤㅤㅤ(ウェンディア王国最大の都市部であり、政治的、軍事的、政殿の中枢機関が集結した、まさに王国の心臓部であり主要都市である。)ㅤㅤㅤ(とは言えども………………)(いくらそのウェントといえど、その地区の満遍なく都市が構成されている訳ではなく、王都から離れるに連れ、人の営みは掠れていく。)(末端、南南西のウェント唯一の海に面したここは、港町から少し離れればすぐに、何もない自然の領域ばかりがあった。)「………………………。」(波の音に耳を傾けながら、海岸線を歩く。両手の指先に、脱いだ靴をぶら下げて。不意に足を止めて、海風に逆らう様に、海の方を見た。)(宙に浮かぶ月は、浮かんだまま、ただ在るだけ———————— 不変 )   (1/2 21:02:37)
λ/ジェフティ > (だと言うのに、海に映る月の姿は絶えず自壊と再生を繰り返して、くしゃくしゃの紙の如き姿を見せ続ける。————不変じゃ、ない。)ㅤㅤㅤ(波の音)ㅤㅤㅤ「……………………………はあ。」「————————海は、嫌いよ……………」(ぽつりとぼやいた声は、簡単に掻き消えた。)ㅤㅤㅤ(海は、嫌いだった。)(昔から。)(もう、ずっと昔から。)(いつだって同じ姿を見せない。砂を這って、心に覆い被さるように迫る波は、常に変化を繰り返す。波の音だって同じだ。)「……………。」(露骨に不機嫌そうに目を細めた。)(だと言うのに、海は不変なのだ。人がいくら血を流して争おうが、涼しい顔をして、波を打ち続ける。不変。)(変化を繰り返すことが、変わらない、不変。)(その、どちらとも取れる有様が、ジェフティは、どうにも苦手だった。)(砂の海の、我が故郷と、少し似ていて…………。)「………………………………。」「ああ————————ほんと」   (1/2 21:03:02)
λ/ジェフティ > (新しく就いた上司の、あの忌々しい顔が目に浮かぶ。あの毒婦が新しく就任した頃から、治療対象が増えていく一方。消費するスクロールの量もバカにならない。)(億劫だ。)(鬱屈だ。…………………ほんと、クソッたれめ。)(だから……………今だけは休戦だよ。)(面倒臭いモノ、全部洗い流して欲しい。そんな願いを込めて、わざわざ貴重な休暇をとってまでここに訪れた次第だ。)   (1/2 21:03:14)


マリア/ヨハン > 「……よー、おねーさん、何してんの?」(そんなあなたの後ろから、男の声がする。男はあなたの前へひらりと回り、顔を覗き込むとにっと笑った。)「……寂しそ―だから声かけてみたんだけど。そんなふくれっ面したら美人が台無しだぜ~。」(彼はヨズア風の豪華な服に身を包んでいるのに、髪はぱさついて肌は乾燥しているのがどこかアンバランスだった。それを見て、彼のほうこそ寂しいのではないかという印象をもしかすれば与えるのかもしれない。だがそんな事はおくびにも出さないとでも言うのか、彼は両手のひらを後頭部にくっつけてけらけらと笑ってみせた。)「……こんな夜に海を歩くなんて身体が冷えちゃうよ。北風半端ねぇしさ。……ねえ、どう?誰かと温めあいたいなら、オレみたいなカワイイ系とか!後悔はさせないよ?」(人差し指を自分の鼻につけて男は笑う。)   (1/2 21:29:38)


λ/ジェフティ > (嫌いな波に乗って…………嫌いな人間の声が聞こえた。)(まるで、本当に風に乗ってやってきたかの様な軽やかさ。)(身形、身格好は小綺麗だっていうのに、それに似合わない言動が、更に目についてしまう。)「————あー………えー……っと…………」(それは、その、なんだ。)「私、女だったら誰でも良いような男、嫌いなのよね…………」(回り込んだ挙句に、軽率に顔を覗き込んでくるのを嫌がって、逃げるように顔をそっぽに向けながらそう言った。)(聖騎士団本部や神殿では、ジェフティのその偏屈過ぎる性格のせいで、近づく男もいなかった。)(街を歩けども、聖騎士団の司祭の格好をする者に軽々しく話しかける者もいない。)「ああ……………そうか。」(だが、今の自分は、そうではない。)(見た目だけならば一般人だ。)「だからか……………。」   (1/2 21:47:31)
λ/ジェフティ > 「ふうん。」   (1/2 21:47:44)
λ/ジェフティ > (腑に落ちたように、もう一度そっぽを向いた顔をあなたに向き直して観察する。)(あなたのセールストークの通り、整った中性的な顔。綺麗な肌や、クリッとした目は、甘いマスクとも言うべきか。)(服装だって、漂泊の身にしちゃ多少の解れは見受けられるものの、不自然に高価なものに袖を通しちゃいる。)「(何かしらね————————この感じ)あなたこそ、こんなとこで何してるのかしら。あなたの好きな女の子はここにゃいないと思うのだけど?」(私はいたが。)   (1/2 21:48:07)


マリア/ヨハン. > (ぷいっと高飛車にそっぽを向かれて、彼はあれ……と苦笑する。)「……そっか、そりゃ手厳しい。ま、半分冗談だ。でもあわよくばってのがないわけじゃないから、気が変わったら……おっとっと、これ以上はまた怒られちまうなァ。」(月の光を受けて天使の輪を作るあなたの髪が靡く後ろ姿を見かけて声をかけたのは、衝動的なものであった。ウェンディア人はもうこりごりと心のどこかで思っていたけれど、あなたがもしかしたらそうではないかもしれないという第六感に従った。あるいは、そうであってほしいという願望がそう思わせたのかもしれない。)「オレは行く宛てがないんで海を見に来たんだよ。このまま仮宿が見つからなきゃ凍死かなァ、その前にオレを慰めてくれる天使が居ないもんかなー―――……って、うそうそ!本気にしなくていいよ。冗談。……オレ、海って好きでさ。オレの実家は塩業から身を興して一族を築き上げたから、海はオレのルーツってわけ。ザルツベルグ家って言ったら地元じゃ結構名の知れた……って、知らないよなァ、悪い。」   (1/2 22:05:48)


λ/ジェフティ > 「聞き分けのいい所だけは気に入ったわ?ふふっ————」(サディスティックを唇に塗って、ゆっくりと、息が抜けるように笑えば、それをその線の細い指先で触れるように隠す。)(ああ、なんだか従順な所は気に入ったようで、あなたの軌跡に興味が湧いた。)(あなたが本当のところどう言う理由と経緯で声をかけたのか。そもそも、どうして“あなたのような人間が独りっきりこんな場所にいるのか”。気になる。暴きたい。その衝動が含まれた笑みは、もう手によって隠されては、あなたにゃ見ることも能わないだろうね。)(すると、月の祝福のお陰が、望んだ側からあなたは自身の出自を口に出すじゃないか。)ㅤㅤㅤ(大変、興味深く、実に、ああ————)ㅤㅤㅤ「ザルツベルグ家……………………」 (重要なワードを口に出して記憶に馴染ませる。聞き覚えのある単語だ。それも、自身の過去にも関わる。————————どうやら、予想以上に愉快な軌跡を聞き出せそうだ。)「……………根無草という訳ね。はあ」(表面上は気乗りしなさそうに溜息をついた。)「あなた————名前は?」   (1/2 22:21:46)


マリア/ヨハン. > 「オレかい?オレはヨハン。ヨハン・ザルツベルグだ。」(どこか気だるげで感情の起伏の少ないあなたを相手にするのは、若いヨハンにとって些かやりづらそうだった。そこで名前を尋ねられれば、降って湧いた好機とばかりに飛びつくだろう。にいっと人懐こい笑みを浮かべたかと思えば、吹き付ける北風にううっと身を縮こまらせた。)「……さ、さむぅっ…。なー、これ以上はホントに風邪ひいちゃうよ。町へでない?」(まるでもう同行するぞと有無を言わさず決定してしまったかのような口ぶり。)「じゃなきゃこのままあんたにつきまとってやろっと。……っと、大事なこと聞き忘れるとこだった。あんたのほうこそ名前はなんていうの?おねーさん。」(しきりにほう、ほうと息で手を温めては摩る。)「流浪の身だからさ、奢ってよって言いたいとこだけど……ワリカンでいいからさぁ!」   (1/2 22:36:56)


λ/ジェフティ > 「ヨハン…………ヨハンね。」(力強い名前だ。何故だかわからないが、この名前には、そういう魔力が宿っている。そして、ザルツブルク家特有の家名の名乗りを聞き入れれば、もうこの時には、あなたの事を記録したくてたまらない、性が疼くのである。きっと、体の少しの震えがあるのは、寒さだけじゃなくて。)「わかったわかった。とりあえず落ち着きなさい。」(一息挟む)「気が変わったわ………………」「あなたは、まだ私の名を知るに値しないのよ。でも————————」ㅤㅤㅤ「一つ」ㅤㅤㅤ(人差し指を立てた。ピンと垂直に真っ直ぐと。)「一つ、取引をしないかしら。」(そう言うと、彼女はすたすたと歩き、あなたの冷えた手を無理やり取る。)「今夜、一晩だけ、あなたを世話してあげる。夕飯もご馳走するし、そこそこいい部屋にも泊めさせてあげるわ。」「ただし、」「その代わり、細やかなお願いなのだけど————…………」(片目を瞑る。)   (1/2 22:56:09)
λ/ジェフティ > 「あなたの事、私に教えてくれないかしら。」「たったそれだけよ。簡単でしょう。だけど、もしあなたが断るというのなら————————」(とった手は振り解かれ、それを後押しする様に一際冷たく、強い海風と海鳴りがあなたに通り抜けて、独りきりとなり。)「ここで…………………………ㅤㅤㅤお別れねㅤㅤㅤさよならってことで」「どうかしら?」   (1/2 22:56:21)


マリア/ヨハン. > (月の光の下、凛としていながらもどこか優美なあなたの仕草は、言葉のひとつひとつに意味深な想像をさせた。”世話をしてあげる”?――”部屋にも泊めさせてあげる”?――そして、何より。”教えてくれないかしら”なんて言葉に、ウインクまで添えて。海岸はこんなにも寒いのに、身体の芯がぽかぽかとして手汗が出てくる。)「そこまで言われて断る訳ないよ!食えねェなあ。オレの事なら朝まで”教えて”やってもいいよ。明日までに絶対あんたの名前を聞き出してやるからなあ!」(彼女への第一印象は、表情の少ない気難しい人だった。笑った顔が見たいと思って放った冗談は須らく空振りであったが、そのウインクを引きずりだす事が出来たのは誇らしい戦果だ。値千金の価値がある、目利きのオレが言うんだから、間違いないぜ。―――その後、”教えて”という言葉の意味を履き違えている事をヨハンはすぐに知る事になるのだろう。二人の魔術師が数奇にも出会ったとき、己を温めうるのは人肌ではなく言葉になるのも、また自然な神の導きと思えた。ハレルヤ。)【海と月】   (1/2 23:14:29)