竜灯
軍人という生き物シロー/竜灯 > (遠くに屹立するのは、ヨズアの手に落ちた魔術砦。しかしだがその大きさに、いや、その存在に興奮を覚えるのは、自分が骨の髄まで軍人だからであろう。それはきっと、遥か遠くからでも薄ぼんやりとした守山の霊峰を綺麗だなと思うような、ごく当たり前の事なのだろう。最早糸依の故郷たる阿岸は、自分にとって守山に次いで、帝都と並ぶ入れ込んだ土地の一つであった。ざっ、ざっ、と足音が幾つか後ろから付いて来ている。)『某が一番槍を務めるでござる。』『勝手に決めないで頂戴。』(言葉を発さない者、談笑する者。それぞれではあるが、そこに居る誰もが軍人であった。独断と知りながら、この攻勢の首謀者である竜灯の誘いに乗った彼らの、それぞれの心の持ち方。やんごとなき事情で軍に所属する者も、覚悟定まらない青二才もここには居ない。戦に理由など求めていない。───紛うことなき総勢7名の『軍』であった。) (1/2 08:13:40)
シロー/竜灯 > 「おう螢一さん、帰ったら呑まんか?」『はは、勘定が折半なら乗りましょう。』(軍帽を被り直して笑う軍人の字は螢一。竜灯とは仲の良い友である。最も信頼の置ける彼以外に5人の軍人が付いて来てくれたのは上々。竜灯は近くに見えてきた前哨基地を見据えて、普段通りの口振りで呟いた。)「さあ、俺達で勲章でも貰うかの!」(何かをする訳でもなく、進軍は続く。栄誉、誇り、生き様。とうの昔に魅せられた諸々に、どっぷりと酔い続ける。自ら狂っていると認識出来ない程、純粋に。心地よい軍靴の音は、止まらない。) (1/2 08:13:42)
シロー/竜灯 > (出迎えたのは数名の魔術師であった。眼前に現れた漆黒の門。魔術の発露。色濃くなった戦の空気が、始まりを告げる。勝つこと、殺すこと、栄誉を上げること、砦を奪うこと。もうその頃には、それ以外の全てが遮断されていることに、誰もが気付けない。一番槍にと意気込んでいた一人が飛び込んで、火蓋が切って落とされた────) (1/2 08:13:58)
シロー/竜灯 > 「───やるのぉ⋯⋯!!あんの魔術師⋯⋯!!」(炎を撒き散らす敵の魔術師に向かって思わず呟いてしまう。最初こそ、一進一退の攻防を続けていた両軍だが、二番手かに出てきたこの魔術師が華々しい活躍を見せる。陽炎、紫電、丹頂、螢一と同じように魔術で負傷を負い、撤退するのを一瞥するも、視線はこの男から外せそうもなかった。劣勢も劣勢だが、竜灯はこの男の活躍に反して昂っていった。〝⋯⋯こいつを倒せば俺が一番の大手柄ぜよ⋯⋯!!〟決して自分が大将だからとふんぞり返って、前に出なかった訳では無い。すぐに伊夜が炎に包まれたかと思えば、苦しそうに出てきたのを見て、すぐ横をすれ違って躍り出た) (1/2 08:14:12)
シロー/竜灯 > 「見ちょれ伊夜さん。俺が砦を落としゆう所を」(すれ違いざまに、横目でニヒルに、心の奥底では獰猛に笑うと、敵と向かい合う。これ以上ない名誉を目の前にして、これが笑わずには居られるか。ゆっくりと表情を落ち着かせたかと思えば、声高に名乗りを上げた。)「字を覚えちょき!おまんらを屠って、語られる英雄ぜ!!こん俺は竜灯ッ!先ずはおまんから、一騎打ちを挑む!!!」(おまんら全員をたった一人で討ち取って、阿岸の奪還を土産に凱旋する。腰の重い上様を振り切って、独断で戦果を挙げた英雄、竜灯として語り継がれる。全てはこの為にあったのでは無いかと思える位、綺麗にお膳立てされた状況に興奮を高めながら、挑んだのだった。) (1/2 08:14:24)
シロー/竜灯 > (────竜灯達は、夕日の中歩いていた。誰もが手負いとなって、重い足を動かしていた。何度も味わったこの空気であるが、慣れることは無かった。その中でただ一つ、慣れたのは怯えや恐怖という感情だけ。誰も命を落とさなかった事だけが幸運で、振る舞いはそれぞれだが全員が次の戦の事を考えていた。) (1/2 08:14:49)
シロー/竜灯 > 「⋯⋯帰ったら一杯やるかあ」(竜灯もまた、悔しさという一点において、いつまでも慣れずにいた。普段から振る舞い方には気を入れて、弱みや都合の悪いことは見せない竜灯であるが、今も内心は烈火の如く燃え上がっていた。これからの処遇に意識を向けるよりも、手の届きかけた栄誉が掴めなかったことに対する悔しさと、大口を叩いておいて敗走したことに対する苛立ちが込み上げて止まらない。普段通りの口調を装っても、表情には色濃く感情が滲み出る。眉はきつく結ばれ、ギリギリと歯噛みした。⋯⋯次は必ず、あん砦は俺が落とす。俺の名誉だ、誰にも渡さん。俺は伝説になる男だ。⋯⋯何度も、何度も何度も繰り返して、脳裏を染めた。⋯⋯熱は冷めず、酔いは覚めず。暫くして竜灯も耐え切れずに感情をぶちまけたのだった。)「⋯⋯ッくっっっっそぉぉおおおおおおッッ!!!!」【軍人という生き物】 (1/2 08:15:02)