竜灯&ヘスティア&トール
臥平会戦マリア/ヘスティア > (ガーラの城砦は、草原に囲まれたどこか長閑な場所だった。こんな所を戦場と化すなんて、騎士とは、軍人とは、甚だ狂っているものだ。一陣の北風がヘスティアの長い髪を浚い、指先を凍てつかせる。だけど、身体の芯は熱く煮え滾るようだった。連日の前哨戦にて兵もヘスティアも疲弊しており、睡眠も足りていない。それでもやはり騎士であることは天職であるとのある種、陶酔がヘスティアの目を見開かせていた。アドレナリン、ドーパミン、脳内麻薬に支配され、聞こえる風音や馬蹄音がやけに早く感じる。狂気は至上のドーピング。狂おしい程、それが愛しいと思った。)「……聖フィニクス騎士団団長、ヘスティアと申します!孤城での戦いぶりから察するに、あなたが部隊長ですね?……僻地とはいえ城砦を任されるとはさぞかし名のある将とお見受けしました。これ以上は互いに兵を浪費するだけでしょう。決戦として私は今あなたに直接宣戦布告致します。」 (1/1 04:23:16)
マリア/ヘスティア > (時刻は午前四時。こんな明け方にガーラ城砦への攻城を結構したのには訳があった。作戦と呼ぶには実にお粗末だが、ヘスティアの魔術は炎で、戦いながら明かりも暖も取る事ができるであろう事が有利に働くと考えたからであった。逆にいえば、この暗がりと寒波が尊華帝国を襲うだろう、と。この会戦が終われば、我がウェンディア王国の愛する太陽が見えるはずだ。ヨズア暦30680年。新年の日の出を、我が騎士団に捧げよう。ヘスティアは赤い馬に跨ったままあなたに向かって駆ける。)「……ちなみに」(力いっぱい手綱を引っ張ると馬は前足を高く上げ、暗がりの中で彼女に応じるかのように威嚇的に嘶いた。)「あなたに拒否権はありません!」(暗闇から突如突進し、号令を発した二匹の獣にあなたは慄くだろうか。竿立ちになった馬は大きく、あなたを見下ろす程の威圧感を放っていた。) (1/1 04:23:21)
シロー/竜灯 > (時刻は早朝。⋯⋯尊華帝國軍の一兵卒、竜灯は窮地に立たされていた。和平協定はどうなったのか、今や軍内でも和平派と再戦派が鎬を削っている中、王国騎士団から攻勢を受けた臥平。配備されていた魔術師を動員して防衛に当たったが、芙城、碧城と瞬く間に陥落し、魔術砦へと前線を下げることとなってしまった。王国側も同じではあるが、連戦に続く連戦で負傷し後方へ下がる仲間を見送って前に出た竜灯は、らしくもなく歯噛みした。)「こがな⋯⋯、王国が本腰入れて攻めてきゆうとは⋯⋯」(暗がりの先では指揮官らしき女が向かってきていて、はて、記憶ではこがな女の人ではなかった気がするが、思い出せない。⋯⋯⋯と、でも考えていなければ喉が冷えて固まりそうであった。前哨基地での攻勢では出てこなかった指揮官が出てきたという事は、そういう事なのだろう。もう一度気を引き締めて、息を吸い込んだ。女の言葉が響く) (1/1 05:11:12)
シロー/竜灯 > 「⋯⋯おう!!こん俺が指揮を執っちょる!そん一騎打ち、受けて立つ!⋯⋯おまんら下がっちょれ、巻き込むぜよ」(騎士道精神に溢れたお人らしい。好都合だ。背後に積み重なった敗北を帳消しにするには、俺が武功を立てる他ない。俺の伝説の為にも、他には下がってもらおう。俺を知らん女に負ける訳にもいかない。後ろを振り返り、兵を下げると再び向かい合い、ニヒルに口角を釣り上げた)「相手にとって不足なし、よう、焼き付けちょき!!!」(そして騎士団長ときた。こうなればらもう、下手な所は見せられない。深紅の軍馬の嘶き、その勇姿に竜灯は仁王立ちで迎え撃つ。すっかり熱が籠った口を動かした。) (1/1 05:11:30)
シロー/竜灯 > 「焔の神ぞ 依代をここに 火蜥蜴の主ぞ 御身をここに 蛮勇たる緋ぞ 昔なる火ぞ 地の底より出でし⋯⋯」(真っ赤な鉢巻に手を掛け、力任せにきつく結ばれたまま抜き取ると、詠唱と共に放り投げた。追い風に運ばれて翻った依代に、威嚇する二匹の獣の前に、獣が最も恐れる赤が生まれ落ちた。炎を纏い、肥大化する熱は離れた自分の所まで届く。詠唱の最後に現れた、二対の翼持つ火蜥蜴が声なき咆哮を上げて、ヘスティアへと向かった。家一つなど優に包みこめそうな爆発が起きたのは、その直後であった。)「俺の名を覚えちょき!伝説となる男、竜灯ぜよ」(爆ぜる炎を眺めて、竜灯は最後まで竜灯で居られた事にほっとしていた。 (1/1 05:12:45)
マリア/ヘスティア > (ヘスティアは馬を竿立ちにさせた後、攻撃の準備をするべく距離を取ろうと背後に回り込むようにして駆けた。肩越しに振り返ると宵闇に爛々と輝く好戦的な瞳を目が合う。その顔は笑っているのか、それとも怒っているのかわからない。だけど、ヘスティアは口角を緩やかにあげて彼女なりに感情を呼応させた。徐々に遠ざかり、呪文はまるで雪の中にかき消えるようでヘスティアの耳に届く事は無かった。しかし、一瞬の風やみに乗じた言葉を聞き直感的に理解したのは、彼が自分と同じ炎の魔術師であるという事だった。)「……まずいっ…」 (1/1 06:07:04)
マリア/ヘスティア > (手綱をぐいっと引き、馬をターンさせる。先手必勝を取らせてなるかと口を開き、頭の中に浮かぶ呪文を詠唱する。魔術師であるだけあってつらつらと文言は浮かぶものの、緊張と疲労で精度と速度は本調子ではなかった。魔術の強さは呪文で決まる。長さが全てではないが、より丁寧に心願をかけようとすればするほど長くなってしまうのは魔術師の定石で、夜闇によってこの魔術戦の本質は読みあいあるいは根比べのようなものになり果てた。どちらが先に締めの句を口にするか。相手の口はよく見えない。呪文もよく聞こえない。しかし、決めるなら一撃で致命傷を与えねば、消耗戦は勝っても得るものが少ない。呪文詠唱の時間など、よほどの大技でもない限り数分もないものであるが、その短い時間の中で駆け引きに思考を巡らせた。―――先に締めの句を口にしたのは、向こうだったようだ。己の短気さを抑えた事を後悔する間もなく、目に飛び込んできた赤に命が吹き込まれるのを目の当たりにする。)「………!」 (1/1 06:07:13)
マリア/ヘスティア > (初めはオーブのようだったそれはまたたく間に冷気を吸い込み大きく生長してゆく。ウェンディア人のヘスティアは、それが何かを知っていた。)「……ドラゴン…?」(『何故、尊華人のあなたが……』疑問を口にするよりも前に、その竜は火の粉を上げながら翼を広げた。愛馬は獣の本能のまま恐れ慄き凍りついている。手が痛むのも厭わずに力いっぱい馬の尻を何度も叩き、文字通り火が付いたように駆け抜けるそれに振り落とされないようにしがみつくので精一杯だった。竜の形をした炎は舞い踊るように火の粉を散らしこちらに向かってくる。 (1/1 06:07:35)
マリア/ヘスティア > ―――闇夜と寒波が帝国軍をどうするって?―――愚かなヘスティア。戦場はこんなにもまばゆく、熱い場所であるというのに!とうとう馬が身体を捩り恐怖に屈したその時、あっと思った時には遅く、既にかじかんだ手から手綱は外れた。城砦の端の瓦礫に身体を打ち付けながら落馬し、なだらかな坂を転がった先にある崖から落下する。その先で深い雪に飲み込まれるかのように埋もれると、落馬したあたりから爆発音がし、コンマ数秒送れて熱波が襲いかかった。咄嗟に顔の前に出した両腕が熱でちりちりと焦げ、驚きで口を開けていたヘスティアは煙をまともに吸い込んでしまった。)「……っ、ぁ……ザン……」(愛馬の名を呼ぼうにも、喉の奥が火傷で張り付いたような痛みに耐えかね、ヘスティアは言葉を失う。魔術師の最大にして唯一の武器である、声を奪われた。) (1/1 06:07:44)
マリア/ヘスティア > 「……」(『……直撃したら死んでたよね?』その思考に肝を冷やしこそしたが、生死を分かつ興奮は恐怖を凌駕していた。焼けた腕、おそらく折れた足。激痛で思うように動かない身体で這いずるように雪の中から脱し、力なく倒れ込む。……まさか彼の魔術も炎の力を借りる類であったとは、けれど中々扱いづらそうな大掛かりな魔術だった。考えられるのは、それほどにもガーラに思い入れのある人物で力の限りを振り絞って出した魔術であったとか。どれほど名高い名将かは解らないが、それが計算の上で出されたものであったなら自身のみならず王国にとってとんでもない強敵となる。あるいは、計算の上で出されたものではなく、彼はそういった魔術のみを得意とする軍人で鉄砲玉にするにはうってつけである、とか……。後者の仮説は笑ってしまうくらい都合がよくて、おそらく自分がそうだと思い込みたいから出てきたものなのだろう。でなければ、次の魔術で確実にトドメを刺されて終わりなのだから。さあ、仲間が来るのが先か、あの”ドラゴンさん”が引導を渡しに来るのが先か。腹をくくって待とうではないか。) (1/1 06:07:52)
シロー/竜灯 > (体から、力が抜けたような気がした。あの一瞬のクリアな思考がまた沈むような感覚。竜灯もまた同じように、平たくいえば戦場での自分に酔うようにして、戦いの最中の〝ゾーン〟でのみ持ちうる全てを向けられるタイプの人間であった。しかしながら、それが続かないのも竜灯という男の特徴であった。今の自分では先程のような魔術は熾せないであろう事を、自分自身で分かっていた。煙が晴れないうちに今だ、と逸る尊華人らしい魔術師達に振り返り、視線で待てと制すると、風で散り始めた煙の中を、雪解け水をぴちゃぴちゃと、燻る残り火を避けながら歩いた。)「⋯⋯ちょう待っちょれッ!!なんもせん!おまんらの大将の〝言葉〟を裏切る騎士はおらんじゃろう!のう!!」(騎士達も倒れ伏す団長を黙って見過ごす訳にはいかないのだろう、馬の嘶きが聞こえた途端に竜灯は眼前の騎士達に向けて声を張り上げた。ぴたりと、迷っているのか、動きを止めてざわめいた騎士を一瞥して今一度かの女の元へと歩を進める。少しの時間さえ稼げればそれで良い、少しばかり話がしたいだけだから。) (1/1 06:44:46)
シロー/竜灯 > 「騎士団長の美人さん、聞こえちょるか?」(見れば満身創痍というのはすぐに分かった。倒れ伏す様子は、最早抵抗も出来なさそうに見える。これがブラフで、欺く為の演技だとは竜灯には思えなかった。一騎討ちの前に高らかに名乗りあげた騎士団長が、そんな真似をするとは思えないのもあるが、何より美人だからであった。少し離れた場所でしゃがみこむと、にい、と笑って話しかけるのだった。)「字は確か、ヘスティアさんか?どうぜ、俺は尊華一になる男やきの、強いじゃろ。⋯⋯おまんの独断で来よったのか?」(情けを掛けられたと思って腹を立てるか、いつ向かってくるか分からない後ろの騎士を抑えて話をしてくれるか。どう取られるかは分からなかったが、少なくとも竜灯は、数ヶ月前に王国に滞在していたこともあって、疑問で仕方がなかったらしい。 (1/1 06:44:48)
マリア/ヘスティア > (水を含んだような足音が、こちらに近づいてくるにつれて、ぎゅ、ぎゅ、と雪を踏みしめる音に変わる。敗北を悟って一気に魔術のような脳内麻薬の分泌が収まり、隠れていた激痛が徐々にヘスティアを蝕み始めるが、毅然とした仕草で顔を動かして向かってくる男の姿を目に焼き付けた。『騎士団長に大切なのは、魔術の強さではない――太陽の令閨として相応しき気高さが、騎士達を導く光となるのだ。』いつかどこかで聞いた言葉を、ヘスティアは心の内にずっと仕舞っていた。だからこんな時こそ、凛々しく振る舞わなければならないと言う事を知っていた。)「……え、え゛。」(喉の痛みを圧しながら発した言葉は嗚咽に似ていた。醜く変貌した牛蛙のような声であり、声高らかな普段のヘスティアを知っている者が聞けばあまりに痛ましく聞こえるだろう。それでも、”喋れない”ということに甘えられるほど、戦も、この地位も舐めていないつもりだった。喋りはとつとつとし、時々声音は途切れ、近くで耳を済ませて推測を立てなければ聞き取れないような声。それはもはや、神には届かない事を意味していた。) (1/1 07:22:07)
マリア/ヘスティア > 「……独断も、何も。……私は、騎士団長です。私とは、騎士団であり、騎士団とは、私です。……私は、太陽神様に従うだけであり、そして、それが、我が聖フィニクス」(げほ、と咳込み苦しそうな顔をすると、男とヘスティアが何か喋っている事に動きを止めている騎士がびく、と前のめりになって所在投げに手のひらを空に差し伸べたりした。ヘスティアは騎士たちに目を向けゆるゆると首を振ると、改めて目の前の男へ視線を戻した。)「聖フィニクス騎士団の総意ですから。」(そう、もしもここで自分が死ぬ事になっても。それが太陽神の思し召しなのだ。戦争をせず、休戦に向かって動いてすらいたと聞く先代の騎士団長は退役し、現在新たに自分を騎士団長に据えたのは他ならぬ騎士修道会及び騎士団であり、そしてそれは法皇を意味している。この地位に駆け上がる為に手段は厭わなかったから、”蹴落とした”ととってくれても構わないけれど、とにかく、それが事実なのだ。説明など不要……なんて、この男に言っても無駄だろうな、と目を細める。) (1/1 07:22:15)
マリア/ヘスティア > 「……敗北は、仕方、ありませんね。」(攻撃を仕掛けたのはこちら、尊華帝国軍は故郷と民草を守り抜いた英雄といったところなのだろう。勝てば官軍ともいえただろうが、悪役が恨み言を言って団の品格を下げるのは本意ではない。であれば、潔く敗北を認めるのが筋。……しかし、敗北は認めても死を認めるつもりはまだなかった。)「……です、が、私にも立場があります。これで、終わりではありませんよ、ドラゴンさん。」(一瞬だけ、と目をつむり痛みに耐えながら上体を軽く起こし、しゃがみ込んでこちらの顔を覗くあなたの首に両手をかけてぐいっと引き寄せた。あなたが油断していれば、共に倒れ込む形になるだろうか。) (1/1 07:22:23)
マリア/ヘスティア > 「騎士団にも、誇りが、あります。……どうせ、殺されるのなら…このまま私が神罰を受ける事を覚悟し……懐に隠したナイフ、で、あなたと刺し違えても、構わないんですよ。……さて、取引です。」(つつ、と手を首に滑らせて誘惑するかのように男を胸に抱き寄せる。色仕掛けという訳でもないが、時間を稼げるならばこの期に及んで手段は選ばない。)「……百騎長との一騎打ちを受けて下さい。」 (1/1 07:22:29)
シロー/竜灯 > 「ほうかあ⋯⋯」(竜灯はヘスティアの言葉に酷く納得してしまった。言い切った事に凄いとさえ思った。騎士団長と言葉を交わした事などある筈もないが、これが王国の元帥のようなものか、これが騎士団長か、と讃えたいとまで思った。こがな人が騎士団長ならそりゃあ、騎士達も誉れだなあと一瞬考えて、後ろの騎士を制して敗北を認めたヘスティアを見下ろしてそのまま言葉を紡ごうとした。)「やけんども、俺は⋯⋯」(勇敢な騎士の誇りを踏みにじる事になろうとも、俺は俺のやりたいようにやらせてもらう。おまんにこそ俺を⋯⋯と考えて、言葉を選んでいた竜灯を制止したのは、ヘスティアの思いがけない行動であった。) (1/1 08:00:57)
シロー/竜灯 > 「ん⋯⋯っ」(首に手が回されて体を引き寄せられた。反射的に寸での所で前腕を地面に着けて、体重を掛け切る事はしなかったものの、それは反射的なものでしかなく。苦悶に表情を歪めながらも首筋を滑らせる動きに、何かを言う前に自分から体を寄せてしまった。体重を掛けすぎないように腕はヘスティアの体の横についたまま、鎖骨の辺りに顔を近づけて。さっきと同じくらいには昂っているのを感じながら、取引と銘打たれた言葉の続きをそのまま耳にする。⋯⋯全てを聞き終えてから、ゆっくり身動ぎすると覆いかぶさった体勢で顔を合わせ、二つ返事で返した。)「⋯⋯分かったぜよ。ええもん貰ってしもうたきに、のう」 (1/1 08:00:59)
シロー/竜灯 > (本当にいいものを貰った。状況も考えずに昂ってしまったのを表情に笑みとして映し出すと、体を起こしながら最後に、と言葉を続けた)「このまま何も出来んのが残念ぜよ。⋯⋯あとのうヘスティアさん、ドラゴンさんじゃのうて、竜灯じゃきに。次はそう呼んじょくれ」(あとは、騎士達がどうにでもするだろう。出来れば次会う時は、こんな状況じゃなければいいなあ。と最後に思ってから、騎士達の方へと向き直り、声を上げた。)「百騎長!!この俺、竜灯が一騎討ちを申し込む!おまんらの騎士団長の言葉ぜよ!」(気分は上々。今なら負ける気がしない。高らかに宣言すると、歩を進めた。 (1/1 08:01:11)
マリア/ヘスティア > (リンドウと改めて名乗った男の宣言を聞くと、騎士の一人、エルボがかけよりヘスティアに肩を貸した。彼女も前哨戦でかなり消耗したはずだろうに……しかし、これを人望と勘違いして思い上がりたくもない。彼女は”騎士団長”の為、ひいては太陽神の為、ここまで懸命に働くのだ。自分とまったく同じ、何も違わないひとりの騎士である。そうして陣営に戻り、トールとすれ違う瞬間……エルボの肩を叩き、少しだけその場にとどまらせた。)「……百騎長、聞こえましたね。……団長命令です、英雄になりなさい。」(片手でトールの顔を覆い、軽く頬にキスをしてからにっこりと不器用に笑ってみせる。こんな醜い声で、無残に敗北を晒し、勝利の女神を気取るなんて三文芝居かもしれない、と思った。けれど。)「……あなたの心の奥底にある優しさは、私がちゃんと知って、います。……それでも、戦士としてしか、生きられないのは、あなたも私も同じだと、思います。……誰かの為にしか、戦えないのなら、私の為に戦いなさい。」(そうして、彼女は陣営に帰ってゆく。勝利の命運を一人の部下に託して。) (1/1 08:18:07)
ゑゐりあん/トール > …おいおい。なんで俺が名指しなんだよ…(陣営の後方で戦況を見ていたトールは嘆息交じりに不満を漏らす。きっと騎士団長のことである。自分が一騎打ちをするように仕向けたとかそう言う話だろう。正直言うと部下たちも疲弊している故にこのまま何事もなく帰りたいのだが、それでも呼ばれたからには行かねばならないだろう。そう言って前線へと行こうとすると、彼の足元に一枚の紙が堕ちているのが目に入る。何となく察したトールはその紙を拾い上げてみると、そこには走り書きで短い文章が書いてあった)…チッ。ふざけやがって…ッ。こっちが何もできないからってよぉ…ッ (1/1 08:31:47)
ゑゐりあん/トール > (そう言うとトールは紙を握りつぶし、二人の元へと駆け出す。「勝て」。ただそう書かれただけの紙だったが、その紙だけで今のトールは操ることができるのだ。そんな彼が竜灯の元へと行く際にヘスティアとすれ違う。すると、彼女は立ち止まりこちらに語り掛けてきた)…言われずとも。俺はここで負けるわけにゃいかないんですよ(自分よりも年下だというのに随分としっかりとしている。彼女みたいな性格だったならばあるいは、こんな風に苦しむこともなかったのかもしれない。そう思っていると、彼女はトールの頬に軽くキスをした。驚いた彼はヘスティアを見る) (1/1 08:31:59)
ゑゐりあん/トール > …仰せのままに。あとは任せろ(そう言ってトールはヘスティアの頭を少々乱暴に撫でて竜灯の元へと向かう。自分がもっと強ければ、彼女にこんな風な重荷を背負わせることもなかったかもしれない。そんな年上としての想いと部下としての想いが入り混じった結果が頭をなでるという行為である。お疲れ様。ここからは死にぞこないの出番だ。そう言う決意を固めたトールは竜灯と少しだけ離れた距離まで来て立ち止まる)…よぉ。竜灯さん…だっけかな?聞き及んでの通り、俺はフェニクス騎士団百騎長、トールだ。よろしくな (1/1 08:32:14)
ゑゐりあん/トール > (じっと彼を見つめるトール)…ウチの団長が世話になったな。それに、部下たちも。聴いたところあんた、一兵卒らしいじゃねぇか。おそろしいねぇ、帝國ってのは。それとも、あんたが"伝説となる男"…だからなのかねぇ。ともかく、ウチは団長がやられてんだ。わりぃけど、メンツとか色々とあるからよぉ…。…勝たせてもらうぜ(そう言うと、トールの雰囲気が変わった。騎士団制服の中から取り出した数本のナイフ。それを両手に構え、じっと見据える)…ウェンディア王国フェニクス騎士団百騎長トール。…まかり通るぜ(雷神の、おでましだ) (1/1 08:32:23)
ゑゐりあん/トール > 行くぜ…。主よ。あなたの怒りは閃光となりて地を這う。主よ。あなたの閃光は怒槌となりて地を穿つ。主よ。万物を穿ちて万物を守護する力を、我に与えたまえ…ッ(トールは静かに詠唱を始める。神に語り掛け、己にその力を分け与えてもらうための言葉。その言葉に宿りし言霊がトールに力を与え、彼の髪が更に逆立ち、バチバチと電流を発し始めた)喰らいやがれ!(そう言うとトールは竜灯に二本のナイフを向ける。すると、彼の手に電流が走り、ナイフが目で追えぬスピードで射出され、竜灯目掛けて飛んで行く。これは、つまりは電磁砲である。トールが生成した電気を使い、物質を超高速で撃ちだす攻撃。これがトールの十八番である) (1/1 08:40:56)
シロー/竜灯 > (ゆっくりと歩みを止めた。ある程度の距離を取って、だが確りと聞こえてくる声に脳がバチバチと灼けるような気がした。団長からの激励に、これ以上ない絶好の舞台。まるで自分が脇役だ。お膳立てされたかのようなこの戦場(いくさば)で、ずっと追い求めて、ようやっと掴みかけた俺の手柄、俺の誉れ、俺の武功、このままぶんどられる訳には行かない。ひゅう。と口笛を吹いて散らすと、瞳を細めて見据えた)「そうじゃ、伝説になる男ぜよ。やき、おまんには負けん。⋯⋯勝つのはこの俺ぜ、百騎長さん。」(誰よりも見栄っ張りな男だからこそ、敵の前でも見えを張った有様がこれであった。必ず勝つ、俺ならやれる。と内心で繰り返して、呪文を解き放つ)「ゆくらゆくらと陽炎ぞ 釜の底におわす火の神ぞ いざ⋯⋯ァっ、ぐ、ぅ゛ッ⋯⋯!」 (1/1 09:10:38)
シロー/竜灯 > (私情に揺れたのが行けなかったのか、ウェンディア式の詠唱は締め句までが疾く、竜灯が紡ぎ切る前に楔が穿たれた。右肩に深く突き刺さった刃物から全身を走った痺れに、堪らず右足をがくりと曲げて膝をつき、詠唱が寸断される。首元まで痺れて震える喉から息を吐き出すと、射殺さんばかりに見つめた。私情を挟んだが故の結果だが、竜灯は頭に血が上っていた。)「⋯⋯負け⋯てたまるか⋯⋯、ぶっ倒してやらぁあ!!!」(ここで負けたら、何もかも全て水の泡だ、呪文を紡ぐ時間も取らずに、激昂の声を上げた。 (1/1 09:10:40)
ゑゐりあん/トール > …ッ(自分の打ち込んだナイフが深々と刺さり、苦しむ彼の姿を見ておもわず目をそむけたくなる。やめろ…これ以上意地を張るな…ッ。早く諦めてくれ…ッ。トールはそんな思いを必死に目線で訴える。しかしその訴えもむなしく竜灯は己を鼓舞するように激昂の声を上げた)…ッ!くだらねぇ意地張ってんじゃねぇぞ!てめぇにも守るべきもんがあるんだろうが!!今ここでくだらねぇ意地を張って死ぬようなことでもすれば、あんたの帰りを待つ奴が悲しむってまだわかんねぇのか…ッ!!!(そう言ってトールは再びナイフを相手に向けて放つ。しかしそれは竜灯にあたることはなく、彼の頬を掠めて後ろの地面に突き刺さった)…頼む。諦めてくれ…ッ(そうすれば孤児院の子供たちだってまだ生きられるし、お前だって生きられる。だからもういいだろ?) (1/1 09:18:12)
シロー/竜灯 > 「⋯⋯っ!!」(電撃が脳にまで達しているかのような錯覚まで感じられる程だった。負けた後ならまだしも、だ。トールが向ける視線は酷くふざけていた。あろう事か、情けのつもりか、知ったような口ぶりで並べられた御託。ヒュッ、と頬肉を裂いて過ぎたナイフを見て、かああと肺から熱が込み上げてきた。)「くだらねぇだぁ!?くだらねぇと言ったか!おいッッ!!!」(何よりも気に入らなかった言葉を繰り返すだけで何から何までキレそうだった。この俺が賭けてるもの、追っ掛けてるもの、負け戦にも思えた戦場で戦って、ここまで来て、自分が追いかけるものをくだらねぇと一言で吐き捨てられるのは我慢ならなかった。無理矢理に肩に刺さったナイフを引き抜いて、流れ出した血で雪原が赤く染まるのも厭わずにナイフを地面に投げ捨てて声が掠れて裏返るまで叫んだ) (1/1 09:54:12)
シロー/竜灯 > 「おんしゃあぶっ殺すぞ!!日和る軍人なんざいつまで経っても一兵卒から変わらねぇ!おんしの首で昇進してやらぁ!」(何故こんな奴が百騎長になれたのか分からない。俺はこんな奴よりも余っ程、覚悟も生き様も上等だ。ふざけよって!!最早何で怒っているのかも分からないくらいにグシャグシャに掻き回された脳内で、必死に呪文を紡いだ)「火の衣纏いし精よ 火の妖よ いざ給え 我繋ぐもの也 活火激発沙羅曼蛇!!」(腕を力任せに横凪に振るうと、生まれでた人間の頭程の火蜥蜴がトールへと向かった。 (1/1 09:54:19)
ゑゐりあん/トール > (あえて攻撃を外したのが悪かったのか。相手は戦意を失うどころか逆に戦意を上げてしまったようだ)…わかんねぇなぁ…おい…ッ(何故そこまでして戦うんだ。何故そこまでして抗うんだ。何故そこまでして向かってくるんだ。命あっての物種だろうが。トールには理解できなかった。大切なものの為に戦う気持ちはわかる。だが、死んでしまったら大切なものを護れないじゃないか)っぐぅ…ッ!!(素早いスピードで襲い掛かってきた相手の火蜥蜴が自分の右腕を喰らい、焼く。しかし、完全に避けることはできなかっただろうが、それでも多少なりともダメージを減らせたはずだ。それなのに避けなかった。下手をすれば右腕を落としてしまうやもしれないが、それでもトールは敢えて喰らった。 (1/1 10:08:45)
ゑゐりあん/トール > 脳が悲鳴を上げるほどの痛みがあっても、解放されたいほどの痛みがあっても、トールはじっと耐えた。そして火蜥蜴がいるままにトールは右腕を前に差し出し、苦しみに耐えつつも竜灯を睨みつけた)…お前の熱は、ちっとも熱くねぇんだよ。若造が…ッ(そう言うとトールの左腕から雷が放電された。普通なら竜灯にあたる雷はわずかだろう。しかし、先程彼の後ろに刺したナイフがあれば話は別だ。放電された雷は竜灯の背後にあるナイフ目掛けて宙を走り、そして竜灯を通電しナイフへと向かった) (1/1 10:08:51)
シロー/竜灯 > 「くそったれが⋯⋯!!」(余裕ぶっこきやがって、人を小馬鹿にする時間があるのがまたムカついた。これっぽっちの欠片も、一度も賭けてくれないような奴が、偉そうに説教垂れる事実がむかむかとせり上がる。火蜥蜴が食らいついても、尚、俺の魔術を受けても尚、平然とふざけられて、竜灯は最早気が狂いそうだった。)「ぶっ殺す!!!!!おんしゃあ殺してやるからそこを動くなよ馬鹿野郎!!」(裂けそうな程に口を開くと、喉から張り裂けそうな声で叫ぶ。その舐め腐った態度、二度と出来んようにしちゃる!!!無事な左肩を振り切って、だらんと下がった右腕を顧みず魔術を唱えようとした、その瞬間であった。⋯一閃。煌めいた閃光と同時に聞こえた嘶き、それを理解する以前に視界が真っ白に染った。) (1/1 10:39:22)
シロー/竜灯 > 「────────」(ダァン!!!と落雷の爆音が草原に響き渡って、竜灯は膝から崩れ落ちた。焼け焦げて背中の竜胆車も見えなくなった羽織だけが雪に浮かんだ。呆気なく地に倒れ伏した竜灯だが、執念か、それとも怒りか、吹き飛んだ意識の中で、もう景色もほとんど理解できない微睡んだ思考の中で顔だけを上げ、必死に腕を伸ばそうとした。)「ま⋯て⋯⋯、ころ、す、おれは⋯⋯」(しかし、腕はぴくりと反応を示すだけで動くことは無かった。体の中に残った電流が筋肉を痙攣させただけなのかも最早分からないまま、意識を手放した。悔しくて、悔しくて、泣きそうだった。 (1/1 10:39:24)